「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

担当省庁も仕組みに関与して、事業者団体が団体会員の利益を優先する独占禁止法上の違法について

2014-11-26 23:00:00 | 経済法、独占禁止法
 以下、教室事例は、どのような業界団体でも、ありうる事例だと思います。


 独禁法上、いかにして、公正な競争を確保して、需要者を守ることができるか。

******************************************
(2014/11/26第2稿)


 X協会の問題となる行為は、以下、3点考えられる。

 a.A社からの加入申請に対し、留保とし、加入を認めなかったこと。

 b.丙を原料とする甲製品の原案作成しないことの議決。

 c.X協会が、価格について、従来からの乙を原料とする価格を下回らないようにすることを要請したこと。

 以下、独禁法の適用を検討する。

(1)a.A社からの加入申請に対し、留保とし、加入を認めなかったことについて

 A社は、X協会に参加していないアウトサイダーである。
 甲製品を製造販売できないのであって、甲製品製造販売分野における現在又は将来の事業者の数を制限している。

 従って、8条3号に該当し、独禁法違反である。


(2)b.丙を原料とする甲製品の原案作成しないことの議決(以下、「本件議決」という。)について

 X協会は、甲製品の公的規格の原案作成は、Y省から事実上任されているのであって、本件議決がなされるということは、丙を原料とする規格がY省が設定する公的規格となることはないこととなる。
 すると、丙を原料とする甲製品を製造販売するA社が、甲製品市場に参入することが著しく困難になるのであって、共同ボイコットがなされたこととなる。

 従って、8条1号に該当し、独禁法違反である。


(3)c.X協会が、価格について、従来からの乙を原料とする価格を下回らないようにすることを要請したこと。(⇒まだまだ、文章の検討の余地あるところ)

 X協会員となったA社を含めX協会員に対し、X協会は、丙原料を用いた甲製品の価格を、本来であれば低価格で抑えることができるところ、乙原料の甲製品と同程度の販売価格を設定するように、活動を制限している。
 甲製品の製造販売分野において、低価格製品の参入を阻止しており、競争を実質的に制限しているのであって、共同ボイコットがなされたこととなる。

 従って、8条1号に該当し、独禁法違反である。


 以上


**********************教室事例********************************

1 建設用資材である甲製品については、同製品を所轄するY省が公的規格を設定しており、甲製品の公的規格に適合しないと、製造・販売することはできない。甲製品の製造業者は約20社あるが、そのほとんどがX協会という事業者団体に加入しており、X協会は、Y省から甲製品の公的規格の原案の作成を事実上任されている。

 甲製品は、従来、原料乙を使用して製造されてきており、甲製品についての公的規格は、乙を原料とするもののみが対象となってきていた。

 ところが、近年、原料丙を使用した甲製品の商品化の研究が進められており、実現すれば、従来からの乙を原料とする甲製品に比べ、機能や品質面で遜色がなく、製造コスト面で有利とされている。

2 最近、丙を原料とする甲製品の商品開発を進めるA社から、X協会に対し、丙を原料とする甲製品の規格設定の必要性が指摘されるとともに、X協会への加入申請がなされた。

 X協会では、この問題を検討した結果、丙を原料とする甲製品の商品化はメンバー企業にとって脅威であるとの認識で一致し、丙を原料とする甲製品の開発を進めるA社からの加入申請は当面保留とし、丙を原料とする甲製品の規格設定問題は議論しないことを決定し、その旨をA社に回答した。

 その後、A社は、丙を原料とする甲製品の商品化に成功したが、丙を原料とする甲製品の規格が設定されていないため、その製造・販売を見合わせた。


3 ところが、Y省が、丙を原料とする甲製品ンお公的規格を設定するためX協会に原案の作成を求めてきたところから、X協会では、A社に対し、丙を原料とする甲製品の販売価格については乙を原料とする甲製品の価格水準を下回らないようにすることを約束すれば、X協会への加入を認め、丙を原料とする甲製品の規格設定活動を開始する旨申し入れた。

 A社がこの協会の申し入れを受け入れたことから、A社のX協会への加入が認められ、ほどなく丙を原料とする甲製品の公的規格が設定され、A社はその製造・販売を開始した。
 
 しかし、丙を原料とする甲製品の販売価格は、製造コストが低いにも関わらず、従来からの乙を原料とする甲製品の価格と同程度であり、丙を原料とする甲製品の商品化のメリットが需要者に届いていない。


設問1 上記のX協会の行為について、独禁法上の問題点を具体的に論じなさい。
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医療関連の独禁法問題:安心安全な医療用材料、医薬品が流通されますように。

2014-10-29 23:00:00 | 経済法、独占禁止法
 医療用材料、医薬品は、安全なものが、確実に供給されることが必要です。

 卸売段階、小売段階で、以下の教室事例のような取引方法が用いられる場合があり、独禁法上の問題が生じます。

 設問に答えるようにして、自分なりの独禁法に関する考え方を書きます。

*******教室事例*******

1 甲製品は、医療用材料の一種であり、メーカーから直接又は卸売業者を通じて販売業者に供給され、販売業者は医療機関に納入している。甲製品については、品質管理上の理由から、品質保証期限が比較的短期間に設定されている。また、甲製品の販売については、安全性の理由から、法令により、取引内容の記帳義務が課せられている。
  X社は、40%のシェアを有する甲製品のトップメーカーであり、X社製の甲製品は医療従事者間でブランド力もあり、流通業者にとってX社製の甲製品を取り扱わないことは営業上不利である。
  一般に、甲製品を含め、医療用材料の流通に携わる業者の数は多く、流通経路も複雑になっている。医療機関は、一般に価格交渉力が強く、甲製品についても購入価格を販売業者と個別に交渉しており、その価格は医療機関ごとにかなり異なっている。医療用材料の流通業者は、その共通の利益の増進を図るため、任意団体としてY協会を設立しており、Y協会は、医療用材料に関連する医療・技術情報の伝達等において重要な機能を果たしている。
  X社は、平成26年7月から、甲製品の販売政策を次のとおりとすることとし、これを実施している。
  ア 従来取引していた販売業者のうち一定規模以上の取引がある者を「特約店」とし、「特約店契約」により取引する。
  イ 従来取引していた卸売業者を「代理店」とし、「代理店契約」により取引する。
  ウ 従来取引していた販売業者であって、特約店にはなれなかった者を「協力店」とし、「協力店契約」により取引する。

  ○特約店契約においては、次の内容が定められている。
   1 特約店は、X社製の甲製品のみを扱い、X社からのみ購入する。
   2 特約店は、医療機関向け販売のみを行い、仲間卸を行わない。
   3 特約店は、医療機関向けに医療・技術情報の伝達等のサービスを行わなければならない。

  ○代理店契約においては、次の内容が定められている。
   1 代理店の販売価格は、X社が定める卸売価格を基準として、X社と代理店との間で協議して決定する。
   2 代理店は、Y協会の会員(特約店および代理店を除く)に対してのみ販売する。

  ○協力店契約においては、次の内容が定められている。
   1 協力店は、代理店からのみ購入する。
   2 協力店は、医療機関向け販売のみを行い、仲間卸を行わない。
   3 特約店は、医療機関向けに医療・技術情報の伝達等のサービスを行わなければならない。


2 X社は、特約店および協力店に対し、「医療機関向けに医療・技術情報の伝達等のサービスを行わなければならない」旨の条項を根拠に、通信販売・ネット販売を行わないよう求めている。また、X社は、品質保証期限の遵守および法令上の記帳義務の履行を確認する必要があるとして、特約店および協力店に対し、販売先医療機関、販売価格、販売数量等を毎月報告させている。さらに、X社は、代理店に対し、同社が定めた卸売価格を通知するとともに、品質保証期限の遵守および法令上の記帳義務の履行を確認する必要があるとして、販売先協力店、販売価格、販売数量等を毎月報告させている。
   なお、X社製の甲製品のうち、約7割が特約店経由で、約3割が代理店経由で、販売されている。

設問1 X社の販売政策が卸売段階の競争に及ぼす影響について具体的に論じなさい。

設問2 X社の販売政策が医療機関向けの競争に及ぼす影響について具体的に論じなさい。

設問3 X社の販売政策に対する独占禁止法の適用について具体的に論じなささい。


************************************

(2014/10/29第3稿)

第1、設問1 卸売段階の競争に及ぼす影響について

1、販売政策後の卸段階の流通経路について

 販売政策実施前は、甲製品の流通経路が複雑な状態にあったが、販売政策を実施後、X社が、卸売業者と代理店契約を締結し、販売業者と特約店契約または協力店契約を締結することで、1)卸売業者は、Y協会の会員の協力店にのみ甲製品を販売することとなり、2)特約店は、X社からのみ購入することとなり、3)協力店は、代理店からのみ購入することとなって、甲製品の流通経路が二系統に統一化されることとなった。
 すなわち、一つの系統は、卸業者を経由しない経路(特約店経由)であって、一定以上の販売業者が特約店として、X社から直接購入することとなり、もう一つの系統(代理店経由)は、卸売業者を経由する経路として、X社から、代理店に甲製品が販売され、協力店は、代理店から甲製品を購入することとなる。
 また、販売政策後に、仲間卸が禁止される。

 販売政策後の流通経路の変化を念頭に、卸売段階でなされた4つの政策の影響を、以下、検討する。


2、特約店が、X社製製品以外を取り扱えないこと(専売店化)の影響

 特約店は、X社製甲製品以外は扱えなくなる(特約店契約1項)。この政策は、特約店を専売店化するものである
 
 X社製甲製品は、甲製品の40%のシェアを占めており、また、医療従事者間でブランド力があり、流通業者にとって、X社製の甲製品を取り扱わないことは営業上不利であることから、一定規模以上の有力な販売業者のほとんどは、X社の特約店になることを望んでいることが思料され、結果、X社製の製品を扱うために他社製品を取り扱わないようになることが考えられる。

 従って、X社の競争メーカーは、有力な販売ルートであるX社の特約店との取引ができなくなり、かつ、これに代わる流通ルートを容易に確保することができなくなるため、競争上極めて不利を被るおそれがあり、他社製甲製品が、甲製品市場から排除されて行く影響が考えられる。


3、卸売価格の拘束による影響
 特約店は、自由に価格を決めることが出来るが、代理店の販売価格は、卸売価格が基準とされることとなる(代理店契約1項)。この政策は、代理店の販売価格の自由な決定を拘束するものである。

 この政策により、代理店経由の価格では、代理店は、自主的に卸売価格を決定することができなくなり、約3割を占めるX社製甲製品の卸売段階における価格競争が減少するおそれがある。すなわち、X社製製品価格のブランド内競争が制限される影響がでることが考えられる。


4、仲間卸の禁止による影響
 卸売段階で、仲間卸が禁止されることになり、特約店から協力店に販売されることがなくなり、代理店から購入せざるをえなくなる。協力店等が特約店等の仲間卸を通じてX社製甲製品を購入しようとするのは、現在購入している価格よりも安く買えるからに他ならない。
 
 従って、代理店の販売価格は、X社の販売価格が基準となったものとなり、他のルートから購入することによる価格競争ができず、価格の維持がなされる影響がでることが考えられる。


5、代理店、特約店への販売先、販売価格、販売数量などを毎月報告させる流通政策について

 この政策は、上記234の販売政策の実行確保手段として用いられるものである。
 
 X社の競争メーカーが有力な販売業者と取引できなくなることにより、甲製品の販売分野において40%を占めるX社の市場支配力がさらに強まり、価格競争をはじめ各種の競争が減少するおそれがある。



第2、設問2 医療機関向けの競争に及ぼす影響について

1、販売政策後の医療機関向けの小売段階の流通経路について

 販売政策後、小売段階の流通経路は、特約店契約と協力店契約には、医療機関向け販売のみを行い、通信販売・ネット販売業者から医療機関へ流通しなくなる。

 販売政策後の小売段階の流通経路を念頭に、小売段階でなされた3つの販売政策の影響を以下、検討する。

2、特約店の専売化について

 当該政策により、甲製品の流通経路は複雑で、医療機関は一般に価格交渉力が強く、甲製品についても購入価格を販売業者と個別に交渉している現状を変革し、特約店のX社製甲製品の価格交渉力を高めることができ、価格維持がしやすくなる


3、医療機関向けの伝達サービスの義務づけの影響について

 甲製品が医療機関へ販売が行われるのは、特約店とY協会の協力店ということとなる。特約店や協力店では、医療機関向けの伝達サービスが義務づけられるから(特約店契約3項、協力店契約3項)、通信販売・ネット販売で、甲製品を医療機関へ提供されないこととなる。
 
 医療機関が通信販売・ネット販売を通じてX社製甲製品を購入しようとするのは、現在購入している価格よりも安く買えるからに他ならない。

 従って、当該政策により、同製品の価格が維持されるおそれがある。


4、販売業者に報告義務が課せられることの影響について
 特約店および協力店には、販売先医療機関、販売価格、販売数量などを毎月X社に報告させ、代理店には、販売先協力店、販売価格、販売数量などを毎月報告させている。

 報告によって、X社は、廉売している業者を把握することが可能なしくみができ、小売価格維持の実行確保手段として用いることも可能になり、医療機関への販売価格の維持に影響を及ぼすことが考えられる。



第3,設問3

1、再販売価格の拘束(2条9項4号)について

 本事案では、X社の代理店に対する行為が、再販売価格の拘束(2条9項4号)に当たるかどうかが問題である。

 再販売価格の拘束とは、1)価格維持を合意することや、2)人為的手段を用いて価格を維持することをいう。事業者が市場の状況に応じて自己の販売価格を自主的に決定することは、事業者間の事業活動において最も基本的なことであり、かつ、これによって事業者間の競争と消費者の選択が確保される。事業者が再販売価格を拘束することは、流通業者間の価格競争を減少・消滅させることとなるから、競争回避によって自由競争を減殺するものとして、原則違法である。

 本件では、X社が、代理店と協議し卸売価格を決定すると代理店契約1項で約束事項として契約(代理店契約1項)がなされ、実際は、X社が、卸売価格を代理店に通知することになっていた。販売価格は、X社と代理店の協議で決定とあるが、販売価格をX社に報告する義務が課せられており、人為的手段を用いて価格の維持を図っており、再販売価格の拘束である。

 従って、再販売価格の拘束(2条9項4号イ)に該当し、19条に違反する。



2、排他条件付取引(一般指定11項)について

 本事案では、X社の特約店に対する専売店化の行為が、排他条件付取引(一般指定11項)に当たるかどうかが問題である。

 事業者が相手方との取引に伴い条件を付けることは事業者の自由であるから、原則違法とはならないが、もっとも、排他条件付取引として、1)有力な事業者が、2)競争品の取扱制限を行い、3)競争者が代替的な流通経路を容易に見つけられない場合には、競争者排除により、自由競争の減殺が認められ、公正競争阻害性が認められ、違法である。

 本件では、1)シェア4割のメーカーであるX社が、2)一定規模の取引がある販売業者に対し、他社の甲製品の取扱をせず、X社とのみ取引をする特約店となる合意を特約店契約1項でし、3)甲製品を製造する他社が、甲製品を売る代替的な流通経路を容易に見つけられないおそれを生じさせることとなっている。従って、競争者排除による自由競争減殺が認められるから、X社の行為は、排他条件付取引である。

 よって、排他条件付取引(一般指定11項)に該当し、19条に違反する。



3、拘束条件付取引(一般指定12項)について

 本事案では、X社の特約店と協力店に対する行為が、拘束条件付取引(一般指定12項)に当たるかどうかが問題である。

 事業者が相手方との間でいかなる条件を付して取引を行うかは、当該事業者が自由に決定できるものである。もっとも、拘束条件付取引として、1)有力な事業者が、2)横流しの販売を制限するなど拘束条件を付し、3)当該商品の価格が維持されるおそれがある場合には、流通業者間の価格競争を減殺するものとして、公正競争阻害性が認められる。

 本件では、1)シェア4割のメーカーであるX社が、2)契約により、特約店は、医療機関向け販売のみを行い、仲間卸を行わないとする合意(特約店契約2項)をし、また、協力店も同様に、医療機関向け販売のみを行い、仲間卸を行わないとする合意(協力店契約2項)をしている。3)第1、4で述べたように、流通業者間の価格競争を減殺するおそれがあって、拘束条件付取引として、公正競争を阻害性している。

 従って、拘束条件付取引(一般指定12項)に該当し、19条に違反する。


4、単独の取引拒絶について

 本事案では、X社の特約店に対する行為と、協力店に対する行為が、単独の取引拒絶(一般指定2項)に当たるか問題である。

 単独の取引拒絶とは、取引を拒絶することである。基本的には、事情者の取引先選択の自由があり、原則として違法ではないが、取引拒絶を独占禁止法上違法な行為の実行確保手段としてなされる場合は、違法となる。

 本件では、他メーカーから特約店に、甲製品以外の購入を拒絶させており、2で述べたように、違法な行為(排他条件付取引)の実行を確保する手段でなされており違法である。

 また、本件では、特約店と協力店が、仲間卸に、甲製品の供給を拒絶させており、3で述べたように、違法な行為(拘束条件付取引)の実行を確保する手段でなされており違法である。

 従って、単独の取引拒絶(一般指定2項)に該当し、19条に違反する。


5、優越的地位の濫用について

 X社が、特約店、協力店に対し、販売先医療機関、販売価格、販売数量等を毎月報告させるとこと、代理店に、販売先協力店、販売価格、販売数量等を毎月報告させることが、役務の提供(2条9項5号ロ)に当たらないか問題となる。

 この報告は、品質保証期限の遵守及び法令上の記帳義務の履行を確保するためとの名目であるが、法令上の記帳義務は、各特約店、協力店、代理店にあるのであって、報告する義務まではない。

 従って、販売価格の報告は、優越的地位の濫用に該当し(2条9項5号ロ)、19条に違反する。


6、排除型私的独占について

 「排除」とは、他の事業者の事業活動を継続困難にし、または新規参入を困難にすることをいう。
本件では、甲製品の40%の地位にあるX社が、甲製品の再販売価格の拘束(上述2)を行い、X社製甲製品のブランド内の競争制限をする一方で、甲製品の他の製造メーカーとの取引を排他条件付取引(上述3)で排除させ、一定の取引分野である甲製品の市場において、甲製品のブランド間の競争を実質的に制限している。

 X社の行為に、公共性はない。

 従って、X社の行為は、排除型私的独占(2条5項前段)に該当し、3条前段に違反する。
 

 以上


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独禁法違反:指定県以外での低価格販売禁止、製造工場建設した社へ原料供給拒絶、価格差補填金強制

2014-10-15 22:59:59 | 経済法、独占禁止法
(2014/10/15水曜日 23:00作成第2稿) 

 前のブログの事案を簡略化した教室事例です。

 独占禁止法の適用について、考えてみます。

1、A連について
 A連は、農業協同組合法に基づき設立された農業協同組合であり、22条に該当する一定の要件を備えた協同組合であり、かつ、会員に対する青果物用段ボール箱の供給その他の経済事業を行っている事業者である。


2、本件の一定の取引分野について
 一定の取引分野とは、競争制限が行われる場であり、競争の実質的制限とは、特定の事業者・団体がその意思である程度自由に価格・品質・数量等の競争条件を左右することによって市場を支配できる状態をいう。
 本件では、各県におけるJA出荷組合(以下「需要者」という。)への青果物用段ボール取引条件の価格等の競争条件が、下記で述べるように、A連によって支配される状態にあり、「各県の需要者の青果物用段ボール取引市場」が一定の取引分野である。


3、事実4において
(1)単独の取引拒絶(一般指定2項)について
 単独の取引拒絶(一般指定2項)とは、不当に、ある事業者に対し取引を拒絶することをいう。事業者がどの事業者と取引するかは、基本的には事業者の取引事業者の取引先選択の自由に属するので、他の違反行為の実行確保手段として取引拒絶が行われる場合、もしくは、有力な事業者が競争者を市場から排除するための手段として行われる場合に限られる。

 本件では、本件では、A連が、X県での指定メーカーであったB社が、Y県で系統外販売を行おうとしたのに対し、それを阻止するため、B社に低価格販売中止を申し入れ、B社をX県での指定メーカーから除外した。
 A連によるB社から供給を受ける段ボールを拒絶しており、当該単独の取引拒絶は、低価格販売をする業者を排除するという違法行為の実行確保手段で取引拒絶が行われている。

 A連の行為は、単独の取引拒絶に該当する。

(2)拘束条件付取引(一般指定12項)について
 拘束条件付取引(一般指定12項)とは、有力な事業者が、地域外顧客への販売を制限し、当該商品の価格が維持され、よって、流通業者間の価格競争を減殺することをいう。

 A連は、さらに低価格で販売を続けたときは、他の指定県についても除外する旨を伝えて、B社に他の指定県で取引を行っている。
 指定メーカーB社とその取引の相手方である需用者との取引について、指定県以外の自己の顧客に直接販売しないという取引先についての拘束条件を付け当該指定メーカーと取引しているのであって、一般指定12項(拘束条件付取引)に該当する。

(3)小括
 従って、A連のB社に対する行為は、一般指定2項及び一般指定12項に該当し、不公正な取引方法であり、かつ、22条但書前段の不公正な取引方法にも該当するため、除外事由とはならず、19条違反である。


4、事実5について
 単独の間接取引拒絶(一般指定2項)とは、不当に、他の事業者に、ある事業者に対し取引を拒絶させることをいう。
 事業者がどの事業者と取引するかは、基本的には事業者の取引事業者の取引先選択の自由に属するので、他の違反行為の実行確保手段として取引拒絶が行われる場合、もしくは、有力な事業者が競争者を市場から排除するための手段として行われる場合に限られる。

 A連は、C社がZ県で工場建設し段ボール箱の製造を開始したため、Z県の指定メーカーD社が、C社にシートを供給することをやめさせた。
 供給をやめさせたのは、その供給をうけてC社が青果物用段ボール箱を製造し、低価格でZ件に販売することを阻止する目的であって、有力な事業者が競争者を市場から排除するための手段として行われたものといえる。

 従って、A連のD社に対する行為は、一般指定2項に該当し、不公正な取引方法であり、22条但書前段の不公正な取引方法にも該当するため、除外事由とはならず、19条違反である。


5、事実6について
 2条9項5号ロの「優越的地位の濫用」とは、取引上の地位が相手方に優越している者が、正常な商慣習に照らして不当に、継続取引先に経済上の利益を提供させることをいう。このことを許すと、取引上の一方当事者である地位が優越した者が、他方当事者に対して、取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障となるため、優越した地位の者が他方に著しく不利益な要請などを行っても他方が受け容れざるを得ないで取引されることとなり、不公正な取引方法である。

 本件では、段ボールメーカーは、1回あたりの取引量が多く、安定的需要が見込まれることから、A連との取引を強く望んでいる状況にあり、A連は、優越的地にあったといえる。
 優越的地位のA連は、系統外ルートで低価格の売り込みがあったときは、系統ルートによる需用者向け価格と当該低価格との差額に一定の数量を乗じた金員の補填をすることを、指定メーカーに「市況対策費」と称して支払わせた。各県のJAが負担すべき価格差補填金を、当該売り込みの発生とは関係のない指定メーカーに負担させており、指定メーカーの自由かつ自主的な判断を侵害しており、公正競争阻害性を認定でき、2条9項5号ロに該当する。
従って、A連の当該指定メーカーへの行為は、2条9項5号ロに該当し、かつ、22条但書前段の不公正な取引方法にも該当するため、除外事由とはならず、19条違反である。



6、私的独占について
 私的独占とは、事業者が他の事業者の事業活動を排除また支配し、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

 A連は、単独にまたは、他の事業者である指定メーカーと通謀して、上述3ないし5の各不公正な取引方法を用いて、系統外ルートの排除を行っており、結果、青果物用段ボール取引条件の価格等の競争条件を支配しているといえ、一定の取引分野における競争を実質的に制限している。

 なお、公益性はないし、22条但書後段にも該当するため、除外事由とはならない。

 従って、私的独占(2条5項)に該当し、3条前段違反である。   



以上



***************************教室事例******************************************

1 A農業協同組合連合会(以下「A連」という)は、農業協同組合法に基づき設立された農業協同組合であり、会員に対する青果物用段ボール箱の供給その他の経済事業を行っている。
  A連は、地域ごとに組織されている農業協同組合(以下「JA」という)が構成員となっておおむね都道府県ごとに設立されている都道府県経済農業協同組合連合会(以下「経済連」という)を会員としている。

2 わが国の青果物用段ボール箱の主要な流通経路は、段ボール箱メーカーからA連・経済連を経て、JA・出荷組合(以下「需要者」という)に供給されるルート(以下「系統ルート」という)と、段ボール箱メーカーから直接又は農業用資材販売業者を経て需要者に供給されるルート(以下「系統外ルート」という)とがあり、系統ルートが流通量の約5割を占めている。
段ボール箱メーカーは、1回当たりの取引量が大きく、安定的需要が見込めるA連との取引を強く望んでいる状況にある。

3 A連は、段ボールシート・段ボール箱のメーカーの主要な者との間に「売買基本契約」を締結し、これらの者(以下「指定メーカー」という)から青果物用段ボール箱を購入している。また、A連は、青果物用段ボール箱の購入に際し、原則として、その製造に要する段ボール原紙をそのメーカーから購入し指定メーカーに供給することとしている。
  A連は、青果物用段ボール箱を系統ルートにより供給するに当たり、指定メーカー別にそれぞれが製造した青果物用段ボール箱を納入する地域を指定することとしており、この地域をおおむね経済連の事業区域ごとに定め、これを「指定県」と称している。

4 A連は、X県を指定県とするB社が、指定県ではないY県において青果物用段ボール箱を系統外ルートにより系統ルートより低価格でJAに販売していたところ、同社に対し、右低価格販売を中止するように申し入れるとともに、同社の指定県からX県を除外し、また、さらに低価格での販売を続けたときは他の指定県についても除外する旨を伝えた。このためB社はA連に対し、Y県の需要者に対し受注活動を行わない旨を約束・実行している。

5 A連は、C社がZ県において段ボール箱製造工場を建設し、青果物用段ボール箱の製造を開始したため、Z県を指定県とする指定メーカーに対し、C社に青果物用段ボール箱向けに段ボールシートを供給しないよう要請した。これを受けてZ県の指定メーカーであるD社はC社へのシートの供給を中止した。

6 A連は、需要者が系統外ルートにより青果物用段ボール箱を購入するのを防止するため、系統外ルートによる低価格での売り込みがあったときは、その売り込みを受けた地区のJAの申出に応じ、当該JAに対し、系統ルートによる需要者向け価格と当該低価格との差額に一定の数量を乗じた金員を補填することとし、これに要する費用を指定メーカーに「市況対策費」と称して支払わせている。支払を要請された指定メーカーは、A連との青果物用段ボール箱の取引の継続を必要とする立場上、「市況対策費」の負担を余儀なくされている。

設問 上記のA連の行為に独占禁止法上どのような問題があるかを論じなさい。
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独禁法 拘束条件付取引・優越的地位濫用等の例 全国農業協同組合連合会VS青果物用段ボール箱製造会社

2014-10-15 17:18:15 | 経済法、独占禁止法

 公正取引委員会から勧告が出された例。

 青果物用段ボール箱の供給に関連した事例です。


 引用条文は、現在改正されています。



********公正取引委員会ホームページより*************************
http://snk.jftc.go.jp/JDSWeb/jds/dc005/DC005?selectedDocumentKey=H020220H02J02000001_ 

全国農業協同組合連合会に対する件

独禁法19条
一般指定2項(現行、法2条9項1号ロ)一般指定・13項(現行、同12項)・14項2号(現行、法2条9項5号ロ)




平成2年(勧)第1号

勧告審決





東京都千代田区大手町1丁目8番3号
全国農業協同組合連合会
右代表者 理事 鹿垣 籾義

 公正取引委員会は、平成2年1月11日、右の者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第48条第1項の規定に基づき勧告を行ったところ、右の者がこれを応諾したので、同条第4項の規定に基づき、次のとおり当該勧告と同趣旨の審決をする。

主文
一 全国農業協同組合連合会は、
(一) 株式会社トーモクに対し昭和57年11月19日に、日本ハイパック株式会社に対し昭和60年4月上旬及び昭和61年2月中旬に、並びに鎌田段ボール工業株式会社に対し昭和60年3月中旬に行った青果物用段ボール箱を系統外ルートにより需要者に販売しないようにする旨の申入れ
(二) 昭和56年10月下旬、「関東5県対策」の実施に際し、レンゴー株式会社、本州ダンボール工業株式会社、福岡製紙株式会社、株式会社トーモク及び森紙業株式会社に対し、青果物用段ボール箱を系統外ルートにより需要者に販売しないようにするために確認させた事項をそれぞれ撤回し、これらと同様に東日本において取引先段ボール箱製造業者に対し行っている青果物用段ボール箱を系統外ルートにより需要者に販売しないようにさせる措置を取りやめるとともに、今後、これと同様の行為を行ってはならない。

二 同連合会は、
(一) セッツ株式会社に対し昭和60年7月中旬に行った青果物用段ボール箱の需要者に対する受注活動を取りやめるようにする旨の申入れ
(二) 東日本段ボール株式会社に対し昭和62年1月中旬及び日本マタイ株式会社に対し昭和62年3月ごろ行った株式会社トキワパッケージに青果物用段ボール箱向け段ボールシートの供給をしないようにする旨の要請
(三) レンゴー株式会社、本州製紙株式会社、株式会社トーモク及び森紙業株式会社に対し昭和62年夏から秋にかけて行った常盤産業株式会社から段ボール中芯原紙を購入しないようにする旨の要請
をそれぞれ撤回するともに、今後、取引先段ボール箱製造業者以外のものが青果物用段ボール箱の製造販売を開始することを妨げる行為を行ってはならない。


三 同連合会は、東日本において取引先段ボール箱製造業者に対し行っている「市況対策費」と称する金員の提供を要請する措置を取りやめるとともに、今後、これと同様の行為を行ってはならない。


四 同連合会は、前三項に基づいて採った措置を、東日本に所在する青果物用段ボール箱の製造業者、販売業者及び需要者に周知徹底させなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、当委員会の承認を受けなければならない。

五 同連合会は、前各項に基づいて採った措置を速やかに当委員会報告しなければならない。


事実
当委員会が認定した事実は、次のとおりである。

一(一) 全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)は、肩書地に主たる事務所を置き、昭和47年3月30日、農業協同組合法(昭和22年法律第132号)に基づき設立された農業協同組合連合会であり、会員に対する青果物用段ボール箱の供給その他の経済事業を行っている者である。
全農は、農業協同組合(以下「単協」という。)単協が構成員になっておおむね都道府県を地区として設立されている都道府県経済農業協同組合連合会(以下「経済連」という。)その他の農業団体を会員としており、会員の数は、平成元年6月末日現在、いわゆる総合農協のうちのほとんどすべての単協及びすべての経済連を含む3,654名である。
全農は、全国に東京支所等5支所を置いており、そのうち東京支所の事業区域は東北6県、関東1都6県、新潟県、山梨県及び長野県(以下「東日本」という。)である。
(二) 我が国における青果物用段ボール箱の主要な供給経路は、段ボール箱製造業者から全農及び経済連を経て単協、出荷組合等の需要者(以下「需要者」という。)に供給される経路(以下「系統ルート」という。)と段ボール箱製造業者から直接に又は農業用資材販売業者等を経て需要者に供給される経路(以下「系統外ルート」という。)である。
青果物用段ボール箱の供給数量全体に占める系統ルートによる供給数量の割合は、昭和62年7月から昭和63年6月までの1年間において、東日本で約6割、全国で約5割である。
青果物用段ボール箱の製造業者は、1回当たりの取引数量が大きく、かつ、安定的需要が見込めること、代金回収が確実であること等から、全農との取引を強く望んでいる状況にある。
(三) 全農は、段ボールシート及び段ボール箱を製造している者のうち主要なものとの間に「売買基本契約」を締結し、これらの者(以下「指定メーカー」という。)から青果物用段ボール箱を購入している。また、全農は、青果物用段ボール箱の購入に際し、原則として、その製造に要する段ボール原紙を段ボール原紙製造業者から購入して指定メーカーに供給することとしている。
全農は、青果物用段ボール箱を系統ルートにより供給するに当たり、指定メーカー別にそれぞれが製造した青果物用段ボール箱を納入する地域を指定することとしており、この地域をおおむね経済連の事業区域ごとに定め、これを「指定県」と称している。
指定メーカーのうち東日本にその指定県を有する者は、平成元年6月末日現在24社である。

二 全農は、かねてから、系統ルートによる青果物用段ボール箱の供給数量の維持拡大に努めているところ、その一層の推進を図るため、東日本において、指定メーカーが青果物用段ボール箱を系統外ルートにより販売しないようにさせる措置及び指定メーカー以外のものが青果物用段ボール箱の製造販売を開始ることを妨げる措置を講じ、また、需要者が青果物用段ボール箱の購入を系統ルートから系統外ルートに変更することを防止する対策を行うために要する金員を指定メーカーに提供させる措置を講じている。
これらに関する事例は、次のとおりである。

(一)イ 全農は、指定メーカーであって神奈川県等を指定県とする株式会社トーモク(以下「トーモク」という。)が、昭和57年ごろ、指定県でない長野県において青果物用段ボール箱を系統外ルートにより系統ルートによる需要者向け価格より低い価格(以下「低価格」という。)で約20の単協に販売していたところ、同年11月19日、同社に対し、右低価格販売を直ちに取りやめるよう申し入れるとともに、同社の指定県から神奈川県を即日除外し、また、更に右低価格販売を続行するときは、他の指定県についても順次これを除外し、最終的には取引を停止する旨を申し渡した。
このため、トーモクは、昭和57年11月下旬、全農に対し、長野県下における青果物用段ボール箱の販売先及び販売先別数量を報告するとともに、以後は、同県の需要者に対し受注活動を行わない旨及び需要者から引き合いがあった場合にはその数量、価格等を全農に連絡する旨を申し出た。
その後、トーモクは、前記単協向けの青果物用段ボール箱の販売を取りやめている。
ロ 全農は、指定メーカーである日本ハイパック株式会社(以下「日本ハイパック」という。)が、指定県でない山形県において出荷組合からの引き合いに応じ昭和60年産ブドウ用段ボール箱を系統外ルートにより低価格で販売することとしていたところ、昭和60年4月上旬、同社に対し、今後需要者に対し受注活動を行わないよう申し入れた。
次いで、全農は、右の出荷組合が昭和61年産ブドウ用段ボール箱についても日本ハイパックに発注しよとする動きを示したので、昭和61年2月中旬、同社に対し、需要者から引き合いがあっても系統外ルートにより販売しないようにする旨を確約するよう申し入れた。
これを受けて、日本ハイパックは、同月下旬、全農対し、以後は、全農の指示を遵守し、需要者に対し受注活動をしない旨を申し出た。
その後、日本ハイパックは、山形県において青果物用段ボール箱を需要者に販売していない。
ハ 全農は、指定メーカーでなかった鎌田段ボール工業株式会社以下「鎌田段ボール工業」という。)がかねてから岩手県等において青果物用段ボール箱を系統外ルートにより低価格で需要者に販売していたところ、昭和58年夏ごろ岩手県経済連とその対策について検討した結果、鎌田段ボール工業が低価格販売等を行わなければ指定メーカーとすることとし、同社にこの旨を伝えた。しかして、鎌田段ボール工業がこれを了承したので、全農は、昭和58年秋ごろから1年間同社の販売状況を監視した後、昭和60年3月中旬、同社に対し、
(イ) 岩手県内において、今後、需要者直接販売しないようにする旨
(ロ) 岩手県外において需要者に直接販売しているものについては、協議の上、今後、系統ルートによる供給に切り替える旨
を申し入れ、その遵守を確約させた上、同社を岩手県を指定県とする指定メーカーとし、取引を開始した。
その後、鎌田段ボール工業は、青果物用段ボール箱を供給するに際し、右確約事項を遵守している。

(二)イ 全農は、段ボール原紙の購入先であるセッツ株式会社が埼玉県熊谷市に段ボール箱製造工場を建設し、昭和60年6月ごろから青果物用段ボール箱の需要者に対して受注活動を行っていたところ、同社がこの分野に新たに参入すると系統外ルートによる低価格販売が拡大することが懸念されたため、同年7月中旬、同社に対し、右受注活動を取りやめるよう申し入れた。
これを受けて、セッツ株式会社は、全農との段ボール原紙の取引に悪影響が出ることを懸念して、右受注活動を取りやめた。
ロ 全農は、株式会社トキワパッケージ(以下「トキワパッケージ」という。)が埼玉県児玉町に段ボール箱製造工場を建設し、昭和61年9月ごろから青果物用段ボール箱の製造販売を開始したところ、これを取りやめさせるため、次の措置を講じた。
(イ) 全農は、昭和62年1月中旬、東日本段ボール株式会社埼玉県を指定県とする指定メーカーとの会合において、これら指定メーカーに対し、トキワパッケージに青果物用段ボール箱向け段ボールシート(以下「青果物用シート」という。)を供給しないよう要請した。
このため、これら指定メーカーのうちトキワパッケージに青果物用シートを供給していた東日本段ボール株式会社は、全農から青果物用段ボール箱の取引を停止されることを懸念し、昭和62年2月初旬、トキワパッケージに対する青果物用シートの供給を停止した。
(ロ) また、全農は、東日本段ボール株式会社が右(イ)の青果物用シートの供給を停止した後、指定メーカーである日本マタイ株式会社がトキワパッケージからの求めに応じ青果物用シートを供給しようとしていたところ、同社に対し、昭和62年3月ごろ、トキワパッケージに青果物用シートを供給しないよう要請した。
このため、日本マタイ株式会社は、全農との青果物用段ボール箱の取引に悪影響が出ることを懸念し、トキワパッケージに対し青果物用シートを供給しないこととした。
(ハ) トキワパッケージは、右(イ)及び(ロ)により青果物用シートの入手が困難となったため、昭和62年6月ごろ、段ボールシートの製造設備を導入して自社で青果物用シートを製造し、青果物用段ボール箱の製造販売を行うこととした。
そこで、全農は、トキワパッケージに青果物用段ボール箱の製造販売を取りやめさせるための方策して、同社の実質的な親会社である常盤産業株式会社(以下「常盤産業」という。)に対し経済上の不利益を与えることとし、昭和62年夏から秋にかけて、常盤産業から段ボール中芯原紙を購入しており、かつ、指定メーカーであるレンゴー株式会社(以下「レンゴー」という。)、本州製紙株式会社(以下「本州製紙」という。)、トーモク及び森紙業株式会社(以下「森紙業」という。)の4社に対し、これらとの会合等において、常盤産業から段ボール中芯原紙を購入しないよう繰り返し要請した。
これを受けて、右4社のうち森紙業を除く3社は、全農からの要請が再三であったことにかんがみ、全農との青果物用段ボール箱の取引に悪影響が出ることを懸念して、同年11月以降、順次、常盤産業からの段ボール中芯原紙の購入数量を削減していった。
(ニ) しかして、トキワパッケージは、昭和63年10月1日、段ボール箱の製造販売を中止するに至った。

(三) 全農は、かねてから、東日本において、需要者が青果物用段ボール箱の購入を系統ルートから系統外ルートに変更することを防止するため、同一の規格の青果物用段ボール箱について系統外ルートによる低価格での売り込みがあったときは、その売り込みを受けた地区の単協の申出に応じ、当該単協に対し、系統ルートによる需要者向け価格と当該低価格との差に同一の収穫期用として系統ルートにより購入した当該規格の青果物用段ボール箱の全数量を乗じて得た額の金員を補てんすることとしている。
全農は、右の補てんに要する費用について、必要に応じ、その全部又は一部を「市況対策費」と称して当該単協が系統ルートにより購入した青果物用段ボール箱を製造した指定メーカーに提供させることとし、当該指定メーカーにその提供を要請している。この要請は、他の段ボール箱製造業者等が行った売り込みに係るものについてまで行われている。
しかして、右要請を受けた指定メーカーは、全農との青果物用段ボール箱の取引の継続を必要とする立場上、「市況対策費」の負担を余儀なくされており、また、指定メーカーは、この負担を回避するため、自ら青果物用段ボール箱を系統外ルートで需要者に低価格で販売しないようにしているほか、他の段ボール箱製造業者に対しても同様の行為をしないよう要請している。


(四) 全農は、かねてから、段ボール箱製造業者等による青果物用段ボール箱の低価格での売り込みが頻繁に行われ、同段ボール箱の系統ルートによる供給割合が東日本の中で相対的に低かった茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県及び千葉県(以下これらを「関東5県」という。)において、この供給割合を引き上げるため、その方策について関東5県の各経済連と協議、検討してきた。
その結果、全農は、昭和56年9月ごろ、関東5県における有力な段ボール箱製造業者であり、これら5県のすべてを指定県としていたレンゴー並びに一部の県を指定県としていた本州ダンボール工業株式会社、福岡製紙株式会社、トーモク及び森紙業の5社(以下「5社」という。)が指定メーカーであるにもかかわらず青果物用段ボール箱を系統外ルートにより低価格で販売していたので、これらの系統外ルートによる販売を系統ルートによる供給に切り替えさせること、指定メーカー以外のものが行う系統外ルートによる低価格での販売を防止させること、本州ダンボール工業株式会社、トーモク及び森紙業の3社についてはレンゴーと同様に同地区のすべての県を順次指定県として追加していくこと等を内容とする「関東5県対策」と称する措置を講じることとした。次いで、全農は、昭和56年10月下旬、「関東5県対策」を実施するため、5社の青果物用段ボール箱の営業担当責任者を東京支所に招致し、5社に対し、
イ 直接需要者に又は農業用資材販売業者等に青果物用段ボール箱を販売しないようにする旨及び系統外ルートにより販売する他の段ボール箱製造業者に青果物用シートを販売しないようにする旨
ロ 系統外ルートにより販売しいる青果物段ボール箱については、全農及び関係経済連と協議の上、段階的に系統ルートによる供給に切り替える旨
ハ やむを得ず系統外ルートにより青果物用段ボール箱を販売せざるを得ない場合には、事前に全農及び関係経済連と協議する旨及び原則として系統ルートによる需要者向け価格以上の価格で販売するようにする旨
ニ 5社が右イ、ロ又はハに反した場合は、ペナルティとして、指定県の一部除外、取引の停止又は「市況対策費」等を負担させる措置を採る旨
を確認させた。

なお、5社のうち福岡製紙株式会社は昭和58年6月28日に、本州ダンボール工業株式会社は昭和61年6月30日に、それぞれ本州製紙に吸収合併された。
右確認に基づき、5社及び本州製紙は、多数の取引先に対し、青果物用段ボール箱又は青果物用シートの販売を中止し又はその販売数量を削減するとともに、青果物用段ボール箱を系統外ルートにより販売するときは全農と協議している。


法令の適用

右の事実に法令を適用した結果は、次のとおりである。

一 前記事実の一、二(一)及び(四)によれば、全農は、指定メーカーと青果物用段ボール箱を取引するに当たり、指定メーカーの事業活動を不当に拘束する条件をつけて当該指定メーカーと取引しているものであり、また、前記事実の一及び二(二)イによれば、全農は、段ボール原紙製造業者から段ボール原紙を購入するに当たり、段ボール原紙製造業者の事業製造業者の事業活動を不当に拘束する条件をつけて当該段ボール原紙製造業者と取引しているものであり、これらは、いずれも不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第13項(現行、一般指定12項)に該当し、

二 前記事実の一及び二(二)ロによれば、全農は、不当に、指定メーカーに、段ボール箱製造業者に対する青果物用シートの供給を拒絶させ、又は段ボール原紙製造業者からの段ボール中芯原紙の購入数量を制限させているものであり、これらは、前記不公正な取引方法の第2項(現行、法2条9項1号ロ)に該当し、

三 前記事実一及び二(三)によれば、全農は、自己の取引上の地位が優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、指定メーカーに対し、自己のために金銭を提供させているものであり、これは、前記不公正な取引方法の第14項第2号(現行、法2条9項5号ロ)に該当し、

それぞれ、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。


よって、主文のとおり審決する。

平成02年02月20日

委員長 梅澤 節男
委員 宮代 力
委員 伊従 寛
委員 佐藤 徳太郎
委員 宇賀 道郎

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市発注工事指名競争入札における談合・受注調整行為(2条6項)の独禁法違反(3条後段)とたたかう公取委

2014-10-08 23:00:00 | 経済法、独占禁止法
(第3稿2014年10月15日水曜日23:00)

 刑法上の談合罪とまではいかなくても、受注調整行為に係る独禁法違反の問題。


第1、設問1

1、A,B,C,D,E及びFについて
(1)事業者について
 独禁法(以下、「法」という。)2条1項でいう事業者とは、経済活動を反復継続するものをいう。
 A,B,C,D,E及びFは、建設業者であり、下水道更正工事を反復継続して行い、利益を得ているのであるから、事業者に該当する。

(2)一定の取引分野(法2条6項)について
 法2条6項にいう「一定の取引分野」とは、実質的に競争が制限される場を言い、商品・取引段階・地域ごとに成立する。

 本件では、以下に検討する4社が、Y市の下水道更生工事での発注において、乙工法の入札において価格と入札業者等を申し合わせ、取引条件に実質的な制限を加えており、一定の取引分野は、Y市の発注の下水道更生工事全体であると考える。

 なお、下水道更生工事には、甲工法及び乙工法があるが、工法については、甲工法、乙工法いずれでもよいため、Y市の発注の下水道更生工事全体として画定される。


2、4社による不当な取引制限(法2条6項)について
(1)4社の共同行為について
 法2条6項に言う「共同して」とは、「意思の連絡」があったと認められることが必要である。すなわち、特定の事業者が、他の事業者との間で談合に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動にでたような場合には、「意思の連絡」があるものと推認される(東芝ケミカル事件 東京高裁判決平成7年9月25日)

 本件では、4社は、平成21年2月1日、Aの会議室で開かれた会合(以下、「会合①」という。)で、3つの事項(1)(2)(3)の合意をし(以下、「基本合意」という。)、その合意通りの行為を行ったのであって、会合①で意思の連絡をし、基本合意に沿った行動に出たものといえ、共同行為に該当する。

(2)「競争を実質的に制限すること」について
 以下、(1)(2)(3)の各合意の内容の行為をすることが、「競争を実質的に制限すること」に該当するかを検討する。
 「競争を実質的に制限すること」とは、特定の事業者がその意思でる程度自由に価格・品質・数量等の競争条件を左右することによって市場を支配できる状態をいう。
ア、合意(1)について
 同年4月1日以降入札が行われる下水道管更生工事について、あらかじめ4社の営業部長が話し合いにより各入札で指名された者の中から受注予定者を決定するというものである。
 合意(1)が実施されると、一定の取引分野において、相手方であるY市の入札先が決定されることになり、事業者が取引条件を制限するもので、競争を実質的に制限することに該当する。

イ、合意(2)について
 4社の間でその受注金額が出来る限り均等になるようにすることの合意は、受注価格を事業者が、自ら操作することで実現できるものであって、相手方の取引条件である受注価格を実質的に制限することを意味しており、一定の取引分野において競争を実質的に制限していることに該当する。

ウ、合意(3)について
 ①受注予定者の落札金額については、その者におおむね20%程度の粗利が確保できる水準とし、②受注予定者とrの協議により指名された者の入札額を決定し、事前にその額を当該入札参加者に連絡するという合意は、相手方の取引条件である受注価格を決定するとともに、その受注価格で入札が行われるように入札参加者の入札額をあらかじめ決定するというもので、一定の取引分野において競争を実質的に制限することに該当する。

エ、小結
 4社は、会合①において、一定の取引分野における競争を実質的に制限することを行うべく合意(1)ないし(3)の基本合意をなしているといえる。


(2)4社の基本合意の相互拘束性について
 Y市の下水道更生工事の入札は、平成21年4月1日から平成22年5月9日まで(以下、「本件実施期間」という。)に25件が行われ、rが合意の方法で受注調整を行った結果、B、C及びDがそれぞれ8件を落札したとある。
 基本合意の相互拘束性は、あったと言える。

(3)4社の基本合意の公益性について
 4社の基本合意は、専ら4社の利益を図るもので、公共性は見出し得ない。

(4)以上より、4社は、一定の取引分野において、相互に拘束性のある合意(1)ないし(3)の基本合意をし、取引条件である価格や取引の相手方などの取引条件を実質的に制限しており、法2条6項の不当な取引制限に該当し、法3条後段に反し違法であると考える。


3、A社が下請けであったことについて
 A社は、平成21年3月1日から1年6ヶ月の間、Y市において指名停止の処分を受けている。

 指名自体に実際に参加していないのであって、Y市と工事の契約も締結していないため、本件違法の主体となりえるのか問題である。

 不当な取引制限となる事業者は、形式的に、相手方と契約する事業者だけをいうのではなく、その事業者の①不当な取引制限における役割、②取引における合意の内容、③利益獲得の割合等その関わりから、実質的に違反行為の参加の有無を判断すべきと考える。

 A社は、労働災害を起こし、相手方から指名停止を受けたが、本来であれば、指名入札に参加する立場にあった。そして、指名入札に参加できない代わりに、平成21年3月5日に再度、BCDの営業部長とA社営業部長rが会合(以下、「会合②」という。)を開き、「BCDの受注する下水道厚生工事の半分についてAが下請けに回り、受注者からその利益の50%を受けることの合意(以下、「合意(4)」という。)を得ている。そして、実際に、本件実施期間において、Y市の下水道更生工事の入札25件中にBCD合わせて24件入札をしたが、そのうちの半分に当たる12件をAが下請けになっており、合意(4)は相互拘束性を持って、実行されたことがわかる。

 以上から、A社は、本件不当な取引制限(法2条6項)において、実質的に参加したものと判断でき、従って、A社もまた、法3条後段の違法があると考える。


4、EとFについて
 EFの担当者は、平成21年1月20日、Dの営業部長uと偶然に会った際に、uから、談合をおこなうべくrstと交渉中である旨を聞いている(以下、「本件会話」という。)。そして、EFの担当者は、近い将来、談合に参加させてもらえることを来し、自らは落札できない価格で入札をしてきた。本件でのABCDの不正な取引制限に該当するか問題である。

 特に、相互拘束性のもと共同行為がなされたかどうかが問題であり、以下、検討する。

 法2条6項に言う「共同して」とは、上述の通り、「意思の連絡」があったと認められることが必要である。すなわち、特定の事業者が、他の事業者との間で談合に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動にでたような場合には、「意思の連絡」があるものと推認される(東芝ケミカル事件 東京高裁判決平成7年9月25日)

 本件会話は、前述の会合①②のような会議室を用いた会議の形を用いたものではないが、談合が交渉中であるという本来であれば、秘密にすべき事がらを、uから伝えられている。
 
 本件では、談合が交渉中であるということを聞いたEFは、談合に協力しておけば、その後は、談合に参加させてもらい談合により落札できるようになると考えて、自らは落札できないと考える価格で入札をした。ABCDの談合に歩調をそろえる意思で、落札できない価格で入札しており、あたかも本件会話に拘束性があるとして、EFは行動している。

 しかし、EFが不当な取引制限の相互拘束性にあたる意思の連絡というためには、EFが、ABCD間の合意を認識して一方的に協力・協調することだけでなく、ABCDもEFが協調していることを認識している必要があるが、EFとの間では相互拘束に該当する意思の連絡は存在していない。

 従って、EFは、相互拘束のある共同行為をなしていないため、不当な取引制限にあたる行為をしたとはいえない。


5、結論
 ABCDの行為は、法2条6項に該当し、法3条後段の違法があると考える。
 EFに独禁法上の違法はない。


第2 設問2について
 仮に、平成21年3月15日に公正取引委員会(以下、「公取委」という。)の立ち入り検査を受け、結果、本件期間において、1件も受注できなかったとした場合、会合①と②はすでになされており、合意(1)ないし(4)はあるが、実際の合意に基づく入札をしていない段階でABCDEFに違法性があるか、不当な取引制限の成立時期の問題である。
 たとえ、不当な取引制限が行われていないとしても、拘束力のある合意があるのであれば、違法性はあると考える(石油価格カルテル刑事事件最高裁判決昭和59年2月24日)。なぜならば、その時点において、法益侵害の危険性は具体的にあったと考えられるからである。

1、ABCDについて
 本件では公取委の立ち入り検査の前に合意(1)ないし(4)がなされ、合意内容から具体的に入札価格を連絡する方法や、指名停止を受けたA社を下請けとするなどの具体的配慮がなされる合意内容からすると、合意には拘束性があったと判断しうる。
 従って、ABCDは、通謀して、不当な取引制限に該当する合意(1)ないし(4)をなしている以上は、法2条6項に該当し、法3条後段の違法があると考える。

2、EFについて
 EFは、当初から独禁法に抵触していない。

以上




 


**************司法試験平成22年(2010年)*******************************

〔第2問〕(配点:50)
Y市では,昭和30年代に下水道を整備したが,近時,下水道管が老朽化し水漏れ事故が急増し
ている。このような状況は各自治体で起きているが,多くの自治体では,下水道管の取替えよりも
大幅な経費の節約となることから,下水道管の内部を補修する下水道管更生工事を行うようになり,
その発注件数が増えている。下水道管更生工事には,甲工法及び乙工法の2つの工法がある。甲工
法が従来採用されていた工法であるが,この数年,甲工法より高い技術を求められるものの,甲工
法より約20%費用を節約できる乙工法が普及しつつあり,大規模及び中規模の建設会社は乙工法
を施工できるようになっている。Y市内には,甲工法を施工できる建設業者がA,B,C,D,E
及びFの6社あり,乙工法を施工できる建設業者は,そのうちのA,B,C及びD(以下「4社」
という。)である。Y市は,下水道管更生工事の契約者を市内業者の中から指名競争入札の方法によ
って決定しており,工法については甲工法又は乙工法のいずれを採用してもよいこととしている。

Aの営業部長rは,B,C及びDの営業部長s,t及びuに呼び掛けて交渉した結果,平成21
年2月1日,Aの会議室で開かれた会合において,これらの間で,⑴同年4月1日以降入札が行わ
れるY市発注に係る下水道管更生工事については,あらかじめr,s,t及びuの間で話合いによ
り4社のうち各入札で指名された者の中から受注予定者を決定すること,⑵4社の間でその受注金
額ができる限り均等になるようにすること,⑶受注予定者の落札金額については,その者におおむ
ね20%程度の粗利が確保できる水準とし,受注予定者とrの協議により受注予定者を含めた4社
のうち各入札で指名された者の入札金額を決定し,rにおいて事前にその金額を当該入札参加者に
連絡することを合意した。rが,E及びFの担当者に参加を呼び掛けなかったのは,E及びFの担
当者はそれらの従来の入札態度からいずれにせよ談合に協力すると予想されたし,協力しなくても
甲工法はコストが高いことから大部分の談合は成功すると考えたからである。

ところが,AがY市内において労働災害を起こしたことから,Y市は,平成21年3月1日から
1年6か月の間,Aを指名停止とした。そこで,rは,同月5日,Aの会議室においてs,t及び
uと再度会合を開き,B,C及びDの受注する下水道管更正工事の半分についてAが下請に回り,
受注者からその利益の50%を受け取るよう求めたところ,s,t及びuはこれに同意した。
Y市の下水道管更生工事の入札は,平成21年4月1日から平成22年5月9日まで25件が行
われ,rが上記の方法で受注調整を行った結果,B,C及びDがそれぞれ8件を落札し,そのうち
12件についてAは下請となった。

E及びFの担当者は,これに先立つ平成21年1月20日,Dの営業部長uと偶然会った際に,
uから,談合を行うべくr,s及びtと交渉中である旨を聞いた。E及びFの担当者は,それぞれ,
近い将来,自ら乙工法の技術を取得できる見込みであることから,談合に協力しておけば,その後
は談合に参加させてもらい談合により落札できるようになると考えて,自らは落札できないと考え
られる価格で入札してきた。しかし,1件については,Fが想定落札価格の計算を誤り,落札した。
公正取引委員会は,平成22年5月10日,関係各社に立入検査を行った。

〔設問1〕A,B,C,D,E及びFの行為は独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。

〔設問2〕上記の事案で,仮に,平成21年3月15日に公正取引委員会が立入検査を行ったこ
とにより,同年4月1日からの入札につき1件も受注調整をすることができなかった場合,A,
B,C,D,E及びFの行為は独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。
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独占禁止法下での、「生コン製造業者及びその協組 VS ゼネコン」 の事例

2014-10-01 23:00:01 | 経済法、独占禁止法

 以下、教室事例

 独占禁止法を適用すると、どうなるか。

 「生コン製造業者及びその協組 VS ゼネコン」の教室事例です。


************教室事例*********************

一(一)A県生コンクリート工業組合(以下「A生コン工組」という。)は、肩書地に事務所を置き、A県の区域を地区とし、地区内において生コンクリート(以下「生コン」という。)の製造業を営む者を組合員として、昭和○○年○月○日、中小企業団体の組織に関する法律に基づいて設立された商工組合であって、組合員は、平成○年○月○○日現在37名であり、これら組合員の生コン販売量の合計は、地区内の生コンの総販売量の大部分を占めている。
A生コン工組は、意思決定機関として、総会及び理事会を置いている。

⇒ 〇行為主体は、「A生コン工組」という事業者団体

  〇一定の取引分野は、「A県地区内の生コンの製造販売業」


(二) A生コン工組の組合員のすべては、地区内において中小企業等協同組合法に基  づいて設立されているB生コンクリート協同組合(以下「B生コン協組」という。)、C生コンクリート協同組合(以下「C生コン協組」という。)及びD生コンクリート協同組合(以下「D生コン協組」といい、これら3協同組合を以下「生コン協組」という。)のいずれかに属し、A生コン工組の役員のほとんどが生コン協組の役員を兼ねており、生コン協組が実施している生コンの共同販売事業(以下「共販事業」という。)についてA生コン工組が指導、調整を行うなど、A生コン工組と生コン協組は密接な関係にある。

⇒ 〇生コン協組は、事業者であり、協同組合であるため、独禁法22条の適用除外もありうる。



(三) 生コン協組は、A生コン工組の指導、調整の下に、組合員の製造する生コンの全量について共販事業を実施し、それぞれ、A県南西部生コン卸商協同組合、C生コンクリート販売協同組合又はA県北部生コンクリート販売協同組合(これら3協同組合を以下「卸協組」という。)を通じてA県建設業協同組合(以下「建設協組」という。)に販売量の半ばを供給しており、建設協組の組合員である建設業者は、建設協組を通じて生コンを共同購入しているところ、生コン協組は、卸協組及び建設協組との間における申合せにおいて、建設協組の組合員に販売する場合には、割戻しと称して事実上の値引きを行うことにより、建設協組の組合員以外の一般の建設業者に販売する場合(以下「一般扱い」という。)とで差を設けている。

⇒ 〇組合員と非組合員製造業者で、割戻しに差をつけている。




二(一) A生コン工組は、生コン協組の共販事業を維持、強化すること等を目的として、昭和○○年○月○○日開催した通常総会において、A生コン工組の非組合員(以下「非組合員」という。)の生コンの製造設備を買上げ廃棄し、又は新増設の計画についてはその中止を求める旨を同組合の方針として決定し、以後同方針に基づき次のとおりこれを実施している。

イ B生コン協組及びC生コン協組の地区内において生コンの製造設備を有し生コンの製造販売を行っていた非組合員6名の製造設備について、昭和○○年○○月から平成○年○月にかけて同設備を買上げ廃棄するとともに、買上げに際し、今後生コンの製造販売を行ってはならない旨の条件を付した。

⇒ 〇事業者団体である「A生コン工組」は、非組合員製造業者に対し、生コン製造設備を買い上げ+生コン製造の禁止
               ↓
         独占禁止法8条3号に該当

独占禁止法:
第八条  事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
三  一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。



ロ B生コン協組の地区内において建設協組の組合員である建設業者が生コン製造設備を共同して設置し、生コンの製造販売を行おうとした2つの計画について、これが実現した場合生コン協組の生コンの販売量が大幅に減少するとともに同様の計画が今後続出し、ひいては共販事業の存続そのものに重大な影響を与えるとの判断の下に、昭和○○年9月に開催したA生コン工組の臨時総会に相当する全オーナー会議と称する会合及び昭和63年2月に開催した理事会においてその計画の中止を求めることを決定するとともに、代表理事等を交渉担当者として繰り返し中止を求め、もって同計画を中止させた。

⇒ 〇事業者団体である「A生コン工組」は、建設協組生コン製造業社が出現することを阻止させた。
               ↓
         独占禁止法8条3号に該当

独占禁止法:
第八条  事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
三  一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。   

    

ハ 非組合員が存在しないD生コン協組の地区内に非組合員が新たに生コン製造設備を設置し、生コンの製造販売を行おうとして土地の購入を契約したことについて、この非組合員の同地区内における生コン製造業への進出を防止するため、平成○年○○月、土地所有者に代わって解約金を負担するなどして同契約を解約させた上、自ら同土地を買い上げた。

⇒ 〇事業者団体である「A生コン工組」は、D地区に非組合員製造業社が出現することを阻止させた。
               ↓
         独占禁止法8条3号に該当

独占禁止法:
第八条  事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
三  一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。   


 〇土地売買契約を解約させたこと
         ↓
不公正な取引方法:
(昭和57年公正取引委員会告示第15号)(平成21年公正取引委員会告示第18号による改正後のもの)
(競争者に対する取引妨害)
14 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。



(二)
イ A生コン工組は、建設協組の組合員である建設業者が非組合員からも生コンを購入していることに対処するため、平成○年○月○○日に開催した理事会において、生コン協組が実施している共販事業に関し、建設協組の組合員に対する割戻しは全量生コン協組から購入することが条件であるとし、非組合員からも生コンを購入している建設協組の組合員については1立方メートル当たり1,200円の割戻しを行わず、一般扱いとすることを決定し、同決定を生コン協組をして実施させることとするとともに、この旨を建設協組に通知している。
ロ 生コン協組は、右決定を受けて、それぞれ、平成○年○月に開催した理事会等において同決定を実施することとするとともに、必要に応じて建設協組の組合員の生コンの使用状況を調査し、非組合員の生コンを使用していた建設協組の組合員については、自ら又は卸協組を通じ一般扱いにする旨を建設協組に通知するなどにより、建設協組の組合員が非組合員の生コンを購入しないようにさせている。


⇒ 〇事業者団体である「A生コン工組」は、事業者である生コン協組に実行確保手段として「不公正な取引方法3項及び4項」を用いて、「不公正な取引方法11項」を行わせた。
             ↓
      独占禁止法8条5号に該当

独占禁止法:
第八条  事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
五  事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。


不公正な取引方法:
(昭和57年公正取引委員会告示第15号)(平成21年公正取引委員会告示第18号による改正後のもの)
(差別対価)
 3 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「法」という。)第二条第九項第二号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。

 

(取引条件等の差別取扱い)
 4 不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。

 

(排他条件付取引)
 11 不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。




<全体として>
 事業者団体である生コン協組は、非組合製造業者を排除しており、8条1号に該当する。
 私的独占には、22条は適用されない。
            ↓
       独占禁止法8条1号に該当

独占禁止法:
第八条  事業者団体は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
一  一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。



以上

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経済民主主義の要、『独占禁止法』を一枚のシェーマで表現するとすれば・・・

2014-07-30 16:07:17 | 経済法、独占禁止法

 経済民主主義を守ってこそ、日本経済の復活があると思っています。

 その要の法律が、独占禁止法です。

 

 独禁法は、一枚のシェーマで表現すると、以下の表5のようであると、学んでみて、感じます。
 その体系・全体像が、シンプルに表現されています。





『経済法』尚学社 鈴木満、鈴木深雪 18頁

 

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10独禁法 課徴金 その減免制度 

2014-07-29 19:54:32 | 経済法、独占禁止法

(演習10 2014.7.16)


1 資本金15億円の建設業者であるA社は、平成20年4月1日以降、同業のB(資本金10億円)、C(同8億円)、D社(同1億円)とともに、甲市が指名競争入札により発注する建設工事について、受注予定者を決定し受注予定者以外の者受注予定者が受注できるように協力する行為(以下「入札談合」という)を行ってきた。
 しかし、A社は、入札談合に対する社会的非難の増大に対処するため、首脳の指示により、平成23年10月15日以降、入札談合から離脱するとともに、平成24年1月4日、公正取引委員会に課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を提供した。
 公正取引委員会は、平成24年3月31日、A社の情報提供に基づいて立ち入り検査を行った。B社は、1)CD社と話し合って入札談合をとりやめるとともに、2)課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を公正取引委員会に提供した。
 なお、平成20年4月1日から平成24年3月31日までの4年間における、4社の甲市からの建設工事受注(契約)額は、それぞれ、以下のとおりである。

 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度
A社 20億円  15億円   22億円   18億円

B社 10億円  15億円   12億円   16億円

C社  5億円  7億円    8億円   5億円

D社  2億円  1億円    2億円   1億円

ただし、A社の平成23年度分のうち8億円は平成23年10月15日以降の入札分である。

ABCD4社のそれぞれの課徴金額を、契約基準に基づき、算定の根拠と総額を示しなさい。


回答:

1) 入札談合の実際の実行期間:平成20年4月1日~平成24年3月31日

   算定期間は3年間さかのぼる(7条の2第1項) 平成21年4月1日から平成24年3月31日

2) B社 15+12+16=43億円

   課徴金 43億円の10%(建設業 7条の2第1項)=4.3億円

   調査開始後の申請者 課徴金減免 30%(7条の2第12項)

 
   4.3億円×(1-0.3)=3.01億円


3) C社 7+8+5=20億円

    課徴金 20×10%(建設業 7条の2第1項)=2億円

    申請なし 減免なし

4) D社 1+2+1=4億円

   課徴金  4×4%(建設業、中小企業 7条の2第5項3号)=0.16億円

   申請なし 減免なし

5) A社 15億円+22億円+18億円=55億円

   課徴金 55億円の10%(建設業 7条の2第1項)5.5億円

   最初の申請者 減免によりゼロ(7条の2第10項)


    
   





2 大規模小売業者のE社は、約100社の納入業者から商品を継続的に仕入れている。
 E社は、新規店が行うオープニングセールに際し、納入業者に対し、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間、以下のことを要請していた。
 ア 顧客誘導係として従業員を派遣すること。
 イ 通常の仕入れ価格から一律30%相当額を仕入れ金額から差し引くこと。
 これら要請を受けた納入業者は、E社との今後の取引の継続を行う立場上、これら要請を受け入れることを余儀なくされていた。
 なお、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間のE社と納入業差との取引額は100億円に上る。
 E社の課徴金額について、算定の根拠と総額を示しなさい。


回答:
 不公正な取引方法

ア 顧客誘導係として従業員を派遣すること。  →2条9項5号ロ該当
イ 通常の仕入れ価格から一律30%相当額を仕入れ金額から差し引くこと。 →2条9項5号ハ該当

 優越的地位の濫用 1%(20条の6)

 100億円の1%→1億円
 


************************************

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9独禁法の不公正な取引方法とは?抱き合わせ販売、取引妨害、優越的地位の濫用

2014-07-29 19:52:24 | 経済法、独占禁止法

(演習9 2014.7.9)

1 コンピューターのソフトウェア(以下「ソフト」という)は、かつてソフト開発業者が開発したものを一般消費者が選んで購入していたが、現在では、コンピューターメーカーが、ソフト開発業者からソフトを購入し、あらかじめ、コンピューターに搭載する「同梱」という形態が一般的になっている。
 ソフト販売会社A社は、コンピュターメーカーに対し、A社製の表計算ソフトを購入する場合は、A社製のワープロソフトを合わせて購入するよう要請した。
 A社製の表計算ソフトは、他に競争品はなく、コンピューターメーカーにとっては必需品で、これを同梱しないわけにはいかなかった。
 コンピューターメーカーは、それまではB社製ワープロソフトを購入し同梱ししていたが、A社の上記要請を踏まえ、B社製ワープロソフトに代えてA社製のワープロソフトを購入することにした。
 その結果、B社製ワープロソフトの売上高は急減した。

回答:

○A社の行為が抱き合わせ販売(2条9項6号に基づく一般指定10項)にあたるかを問われている。

○抱き合わせ販売とは、相手方に対し、不当に商品の供給に併せて他の商品を自己から購入するように強制することをいう。

○本件では、A社は、相手方コンピューターメーカーに対し、自己の計算ソフト(強い製品)の供給に合わせて、A社のワープロソフト(弱い製品)を購入するように要請しており、要請を受けたコンピューターメーカーは、A社製表計算ソフトが必需品で、買うほかに選択の余地がなかった。
 行為の外形は、抱き合わせ販売に該当する。

○抱き合わせにより、コンピューターメーカーの顧客の商品選択の自由が減少し、結果、B社製のワープロソフトが排除され、売上が急減することになっており、公正な競争を阻害されている。

○一般指定10項に該当し、19条違反である。

*シェアが大きいと、私的独占(2条5項)の問題にも該当する。一定の取引分野:ワープロソフト。

参考:マイクロソフト事件、一太郎問題


2 エレベーターは、ビルを建設する際、エレベターメーカー(以下「メーカー」という)によって設置される。エレベーターの定期的な保守点検業務や故障した場合の修理業務は、メーカーの系列会社(以下「系列会社」という)に任せる建物所有者が多い。
 しかし、独立系の保守業者(以下「非系列会社」という)の従業員は、元メーカーや系列会社の従業員であった者が多く、技術力は系列会社の従業員と遜色ないこと、また、代金が系列会社よりも安いことから、非系列会社と取引する建物所有者も少なくない。
 非系列会社Cは、自分が保守管理するエレベーターが故障したため、このエレベーターを設置したDメーカーに修理に必要な部品を注文した。しかし、Dメーカーは、「その部品は、在庫がなく、3カ月後にならないと納入できない」と回答した。
 この旨をCから聞いた建物所有者Eは、「エレベーターが3ヶ月も動かないのでは困る」として、Cとの保守管理契約を解除するとともに、直接、Dメーカーに対して部品を供給してくれるよう要請した。これに対しDメーカーは、「部品をすぐ供給して欲しかったら当社の系列会社に保守点検業務も任せてもらいたい」と回答した。
 Eは、これを断り、このビルを建設したゼネコンをつうじてDメーカーに部品を供給してくれるよう依頼した。Dメーカーは、これに対応してすぐEに部品を供給した。


回答:

1 取引妨害
○D社の行為が、秘系列会社に対する行為が、競争妨害(一般指定14項)が問題である。

○自己や自己が役員となっている会社と競争関係にある事業者とその取引の相手方との取引について、取引を不当に妨害することをいう。

○本件では、系列会社がD社が株主なら要件に該当し、秘系列会社と、相手方建物所有者との取引の不履行を誘引している。
 
○部品の供給を不当に遅らせ、系列会社と非系列会社の競争を減殺し、公正競争を阻害している。

○一般指定14項に該当し、19条違反である。


2 抱き合わせ販売

○一般指定10項が問題である。

○本件では、Dメーカーは、建物所有者に、エレベーター部品の供給にあわせて、Dメーカーの系列会社の保守点検業務について自己の指定することを強制しており、外形は、抱き合わせに該当する。

○建物所有者の取引選択の自由を奪い、非系列会社を排除されており、公正競争を減殺している。

○一般指定10項に該当し、19条違反である。


3 大規模小売業者Fは、新規に出店した店舗のオープニングセールに際し、商品陳列等の作業をさせるため、納入業者に対し、従業員等の派遣を要請した。
 また、Fは、オープニングセールで値引き販売し、納入業者に責任がないのに、その値引き分を納入業者に負担させている。
 さらに、Fは、オープニングセール協賛金として、納入取引額に一定率を乗じた額を提供させている。
 なお、要請を受けた納入業者は、今後の取引の継続を考慮し、Fの要請に応じている。

回答:

○2条9項5号優越的地位の濫用が問題である。

○優越的地位の濫用

 1 取引上の地位が相手方に優越している

 2 正常な商慣習に照らして不当に

 3 ロ 継続取引先に経済上の利益を提供させる

   ハ 相手方に代金減額

 本件では、

 1 大規模講義業者Fが

 2 正常な商慣習に照らして不当に

 3 ロ 商品陳列などの作業をさせるため、従業員の派遣

   ロ 納入取引額に一定率を乗じた額を提供させている

   ハ 納入業者に責任がないのに、その値引き分を納入業者に負担させている

 ○納入業者にとって、正常な商慣習に照らして、不当であって、今後の取引の継続のため余儀なくされており、自主的判断を妨げられており、公正競争阻害性がある。

 ○2条9項5号に該当し、19条違反


以上


********今後、回答書きます。*******************
***************************

1 資本金15億円の建設業者であるA社は、平成20年4月1日以降、同業のB(資本金10億円)、C(同8億円)、D社(同1億円)とともに、甲市が指名競争入札により発注する建設工事について、受注予定者を決定し受注予定者以外の者受注予定者が受注できるように協力する行為(以下「入札談合」という)を行ってきた。
 しかし、A社は、入札談合に対する社会的非難の増大に対処するため、首脳の指示により、平成23年10月15日以降、入札談合から離脱するとともに、平成24年1月4日、公正取引委員会に課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を提供した。
 公正取引委員会は、平成24年3月31日、A社の情報提供に基づいて立ち入り検査を行った。B社は、�CD社と話し合って入札談合をとりやめるとともに、�課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を公正取引委員会に提供した。
 なお、平成20年4月1日から平成24年3月31日までの4年間における、4社の甲市からの建設工事受注(契約)額は、それぞれ、以下のとおりである。

 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度
A社 20億円  15億円   22億円   18億円

B社 10億円  15億円   12億円   16億円

C社  5億円  7億円    8億円   5億円

D社  2億円  1億円    2億円   1億円

ただし、A社の平成23年度分のうち8億円は平成23年10月15日以降の入札分である。

ABCD4社のそれぞれの課徴金額を、契約基準に基づき、算定の根拠と総額を示しなさい。


2 大規模小売業者のE社は、約100社の納入業者から商品を継続的に仕入れている。
 E社は、新規店が行うオープニングセールに際し、納入業者に対し、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間、以下のことを要請していた。
 ア 顧客誘導係として従業員を派遣すること。
 イ 通常の仕入れ価格から一律30%相当額を仕入れ金額から差し引くこと。
 これら要請を受けた納入業者は、E社との今後の取引の継続を行う立場上、これら要請を受け入れることを余儀なくされていた。
 なお、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間のE社と納入業差との取引額は100億円に上る。
 E社の課徴金額について、算定の根拠と総額を示しなさい。


************************************

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8「不公正な取引方法」とは?不当な単独取引拒絶、差別対価、不当廉売、排他条件付取引、拘束条件付取引

2014-07-29 13:04:42 | 経済法、独占禁止法

(演習8 2014.6.25/7.2)

1 A社は、自社製品の流通経路を調査し、取引卸売業者に対して、廉売を行う小売店のA社製品を販売しないよう要請した。

回答:  

〇A社の行為が、不当な単独の取引拒絶(2条9項6号に基づく一般指定2項)を問う問題である。  

〇契約自由の原則があるから、原則合法である。  

〇しかし、公正競争阻害性がある場合(�違法行為の実効確保手段となる場合または�有力事業者の競争者排除手段となる場合)は違法となる。  

〇本件では、A社は、廉売したことを理由に取引拒絶しており、価格競争を減殺し、違法な行為実行確保手段として用いられている。  

〇不公正な取引方法に拒絶し、19条違反である。

2 B製品のメーカーらは、B製品卸売協同組合の組合員に対し、同組合の員外者よりもB製品の卸売価格を15%安くし、かつ、割戻金を15%増額して支払うという優遇策を講ずることにより同協同組合の育成を図ろうとした。  

回答:  

〇B製品メーカーの行為が、差別対価(2条9項2号(課徴金対象)、または、2条9項6号に基づく一般指定3項)と差別取扱い(2条9項6号に基づく一般指定4項)に該当するかを問う問題である。  

〇差別対価で、員外社のほうが、割高になる。員外者を競争上不利にしている。→一般指定3項は該当。   

さらに、他の事業者の事業活動の困難性あり→2条9項2号に該当することとなる。   →19条違反  

〇差別取扱い    アウトサイダーを排除する   →19条違反

参考事例:北海道新聞社対北海タイムス事件 東京高判昭和29.12.23


3 Cスーパーは、1リットルパックの牛乳(以下「パック牛乳」という)を、他スーパーと同様、1本あたり160円で仕入れ、これを180-200円で販売していた。  
 隣接するDスーパーがパック牛乳を1本あたり150円で販売し始めたため、Cスーパーも対抗して同様に1本あたり150円で販売し始めた。  
 ところが、Dスーパーは、バック牛乳を1本目100円、2本目150円で販売し始めた。これを見、Cスーパーも、1本目100円、2本目150円で販売した。  
 この影響を受けて、CDスーパーの周辺の牛乳専売店の牛乳の販売量は大幅に減少した。

回答:  

〇不当廉売(一般指定6項、または、2条9項3号)を問う問題である。  

〇不当廉売  2条9項3号  

1正当な理由(品質低下、流行おくれ、新製品を出したなどして需給対応など)ない   

2原価を割る   

3継続して販売  

4他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ  

この除いた場合が、一般指定6項である。  

本件では、  

1正当な理由(品質低下、流行おくれ、新製品を出したなどして需給対応など)→ない   

2原価を割る→ 仕入れ価格を割っており、コストを著しく下回る対価である。  

3継続して販売 → D⇒C⇒D⇒Cと継続している  

4他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ→ 他の事業者の売り上げが大幅に下がっている。   2条9項3号に該当し、19条違反。  

〇Cは、追随しただけであるが、正当な理由に、他のものに対抗してということは抗弁にならない。  

参考:小売における廉売の考え方



4 F製品のメーカーであるE社はシェア40%でトップメーカーである。
F製品のメーカーはE社の他に4社存在し、それぞれのシェアは25%、20%、10%、5%である。  
F製品の流通経路は、メーカー→卸売業者→小売業者→消費者であり、従来、卸売業者・小売業者はどのメーカーの製品も取り扱う併売店であった。  
E者は、主だった卸売業者に対し、F製品の売上高に占める自社製品の販売シェアに応じて割戻金を支払うことにした。  
その結果、主要卸売業者のF製品の売上高に占めるE社のシェアは大幅に増加し、2位以下のメーカーのF製品の売上高は大幅に減っている。

回答:  

〇排他条件付き取引(一般指定11項)、私的独占(2条5項)に当たるか問われている。  

〇排他条件付き取引  

1有力な(シェア10%以上の)事業者が  

2競争品の取扱い制限を行い  

3競争者が代替的な流通経路を容易に見つけられない場合  自由競争減殺した場合、一般指定11項に該当する。  

本件では、  

1有力な(シェア10%以上の)事業者  ⇒有力な事業者で、シェア40%  

2競争品の取扱い制限を行い      ⇒専売リベートで、卸売業者が  

3競争者が代替的な流通経路を容易に見つけられない場合 ⇒主要な卸がE社以外に扱わなくなると、流通経路を容易に見つけられなくなる。  

自由競争減殺し、一般指定11項に該当する。  


〇私的独占  単独で、E社の40%がさらに上がり、2位以下の売り上げが下がり、その意思で競争条件を左右しうる。  

2条5項に該当し、3条違反  


5 G製品のメーカーであるH者は、都道府県単位に卸売会社を設け、各卸売会社とのG製品販売契約書において、「指定した地域外への販売をしてはならない」旨を規定している。
このような規定を設ける理由は、都道府県別のG製品販売量を正確に把握したいためである。


回答:  

〇拘束条件付き取引(一般指定12項)が問われている  

1 有力な事業者  

2 地域外顧客への販売を制限し  

3 当該商品の価格が維持  

本件では、問題文に詳細に書かれていないが、  

1 有力な事業者 ⇒シェアが40%、2位以内の業者であり  

2 地域外顧客への販売を制限し⇒ 地域制限し  

3 当該商品の価格が維持 ⇒価格の維持した場合ならば、  


一般指定12項に該当し、19条違反  

以上


********今後、回答書きます。*******************

1 コンピューターのソフトウェア(以下「ソフト」という)は、かつてソフト開発業者が開発したものを一般消費者が選んで購入していたが、現在では、コンピューターメーカーが、ソフト開発業者からソフトを購入し、あらかじめ、コンピューターに搭載する「同梱」という形態が一般的になっている。
 ソフト販売会社A社は、コンピュターメーカーに対し、A社製の表計算ソフトを購入する場合は、A社製のワープロソフトを合わせて購入するよう要請した。
 A社製の表計算ソフトは、他に競争品はなく、コンピューターメーカーにとっては必需品で、これを同梱しないわけにはいかなかった。
 コンピューターメーカーは、それまではB社製ワープロソフトを購入し同梱ししていたが、A社の上記要請を踏まえ、B社製ワープロソフトに代えてA社製のワープロソフトを購入することにした。
 その結果、B社製ワープロソフトの売上高は急減した。


2 エレベーターは、ビルを建設する際、エレベターメーカー(以下「メーカー」という)によって設置される。エレベーターの定期的な保守点検業務や故障した場合の修理業務は、メーカーの系列会社(以下「系列会社」という)に任せる建物所有者が多い。
 しかし、独立系の保守業者(以下「非系列会社」という)の従業員は、元メーカーや系列会社の従業員であった者が多く、技術力は系列会社の従業員と遜色ないこと、また、代金が系列会社よりも安いことから、非系列会社と取引する建物所有者も少なくない。
 非系列会社Cは、自分が保守管理するエレベーターが故障したため、このエレベーターを設置したDメーカーに修理に必要な部品を注文した。しかし、Dメーカーは、「その部品は、在庫がなく、3カ月後にならないと納入できない」と回答した。
 この旨をCから聞いた建物所有者Eは、「エレベーターが3ヶ月も動かないのでは困る」として、Cとの保守管理契約を解除するとともに、直接、Dメーカーに対して部品を供給してくれるよう要請した。これに対しDメーカーは、「部品をすぐ供給して欲しかったら当社の系列会社に保守点検業務も任せてもらいたい」と回答した。
 Eは、これを断り、このビルを建設したゼネコンをつうじてDメーカーに部品を供給してくれるよう依頼した。Dメーカーは、これに対応してすぐEに部品を供給した。


3 大規模小売業者Fは、新規に出店した店舗のオープニングセールに際し、商品陳列等の作業をさせるため、納入業者に対し、従業員等の派遣を要請した。
 また、Fは、オープニングセールで値引き販売し、納入業者に責任がないのに、その値引き分を納入業者に負担させている。
 さらに、Fは、オープニングセール協賛金として、納入取引額に一定率を乗じた額を提供させている。
 なお、要請を受けた納入業者は、今後の取引の継続を考慮し、Fの要請に応じている。

***************************

1 資本金15億円の建設業者であるA社は、平成20年4月1日以降、同業のB(資本金10億円)、C(同8億円)、D社(同1億円)とともに、甲市が指名競争入札により発注する建設工事について、受注予定者を決定し受注予定者以外の者受注予定者が受注できるように協力する行為(以下「入札談合」という)を行ってきた。
 しかし、A社は、入札談合に対する社会的非難の増大に対処するため、首脳の指示により、平成23年10月15日以降、入札談合から離脱するとともに、平成24年1月4日、公正取引委員会に課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を提供した。
 公正取引委員会は、平成24年3月31日、A社の情報提供に基づいて立ち入り検査を行った。B社は、�CD社と話し合って入札談合をとりやめるとともに、�課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を公正取引委員会に提供した。
 なお、平成20年4月1日から平成24年3月31日までの4年間における、4社の甲市からの建設工事受注(契約)額は、それぞれ、以下のとおりである。

 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度
A社 20億円  15億円   22億円   18億円

B社 10億円  15億円   12億円   16億円

C社  5億円  7億円    8億円   5億円

D社  2億円  1億円    2億円   1億円

ただし、A社の平成23年度分のうち8億円は平成23年10月15日以降の入札分である。

ABCD4社のそれぞれの課徴金額を、契約基準に基づき、算定の根拠と総額を示しなさい。


2 大規模小売業者のE社は、約100社の納入業者から商品を継続的に仕入れている。
 E社は、新規店が行うオープニングセールに際し、納入業者に対し、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間、以下のことを要請していた。
 ア 顧客誘導係として従業員を派遣すること。
 イ 通常の仕入れ価格から一律30%相当額を仕入れ金額から差し引くこと。
 これら要請を受けた納入業者は、E社との今後の取引の継続を行う立場上、これら要請を受け入れることを余儀なくされていた。
 なお、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間のE社と納入業差との取引額は100億円に上る。
 E社の課徴金額について、算定の根拠と総額を示しなさい。


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7独禁法でいう「不公正な取引方法」とは?再販売価格の拘束(2条9項4号)→公正競争阻害性あれば19条違反

2014-07-29 12:38:10 | 経済法、独占禁止法

(演習7 2014.6.25)

1 A社は、甲製品をデパートを通じて一般消費者に販売しており、デパートとの取引に当たり、「甲製品についてはA社が定めたメーカー希望小売価格で販売する」旨の条件を提示し、この条件を受託したデパートとのみ取引をすることとしている。


回答:

 〇A社の行為は、再販売価格の拘束(2条9項4号イ)に当たるか問われている。

 〇�価格維持の合意がなされている。(下のスライド)

  A社が、甲製品について、小売価格を約束したデパートでのみ取引することにしている。

 〇A社の行為は、正当な理由なく甲製品の価格競争を減少消滅させる行為である(公正競争阻害性)。

 〇不公正な取引方法に該当し、独禁法19条に違反する。





2 B社は、自ら開発したゲームソフト(以下「B社製品」)を卸売業者・小売業者を通じて一般消費者に販売している。B社は、B社製品にメーカー希望小売価格よりも安い価格で販売させることのないよう、小売業者への指導を徹底することを要請するとともに、価格調査員を使ってB社製品の小売価格を調べている。
 この調査の結果、家電量販店Cが値引きして販売していることがわかり、そこで、B社は、取引先卸売業者に対し、C家電量販店に対しB社製品の出荷を停止するよう指示した。

回答:

 〇B社の行為は、再販売価格の拘束(2条9項4号ロ)に当たるか問われている。

 〇再販売価格の拘束のIIのタイプに該当する。(上のスライド)(人為的手段を用いて価格を維持)

 値引き業者への出荷停止をしている。

 〇B社製品の価格競争を減少させる(公正競争阻害性)。

 〇不公正な取引方法に該当し、独禁法19条に違反する。



3 D社は、ライセンシーとの特許ライセンス契約において、「当該特許製品についてはD社が定めた価格よりも安く販売しない」という条件を付した。


回答:

 〇製造方法のライセンシー:役務。 同じ製品でないと、再販売ではない。

 〇拘束条件付き取引(一般指定12項)にあたるか

 〇価格維持であって、公正競争阻害性あり。

 〇不公正な取引方法に該当し、独禁法19条に違反する。

参考:小林コーセー事件

******今後、回答書きます。**********************
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1 A社は、自社製品の流通経路を調査し、取引卸売業者に対して、廉売を行う小売店のA社製品を販売しないよう要請した。


2 B製品のメーカーらは、B製品卸売協同組合の組合員に対し、同組合の員外者よりもB製品の卸売価格を15%安くし、かつ、割戻金を15%増額して支払うという優遇策を講ずることにより同協同組合の育成を図ろうとした。
 


3 Cスーパーは、1リットルパックの牛乳(以下「パック牛乳」という)を、他スーパーと同様、1本あたり160円で仕入れ、これを180-200円で販売していた。
 隣接するDスーパーがパック牛乳を1本あたり150円で販売し始めたため、Cスーパーも対抗して同様に1本あたり150円で販売し始めた。
 ところが、Dスーパーは、バック牛乳を1本目100円、2本目150円で販売し始めた。これを見、Cスーパーも、1本目100円、2本目150円で販売した。
 この影響を受けて、CDスーパーの周辺の牛乳専売店の牛乳の販売量は大幅に減少した。


4 F製品のメーカーであるF社はシェア40%でトップメーカーである。F製品のメーカーはE社の他に4社存在し、それぞれのシェアは25%、20%、10%、5%である。
 F製品の流通経路は、メーカー→卸売業者→小売業者→消費者であり、従来、卸売業者・小売業者はどのメーカーの製品も取り扱う併売店であった。
 E者は、主だった卸売業者に対し、F製品の売上高に占める自社製品の販売シェアに応じて割戻金を支払うことにした。
 その結果、主要卸売業者のF製品の売上高に占めるE者のシェアは大幅に増加し、2位以下のメーカーのF製品の売上高は大幅に減っている。



5 G製品のメーカーであるH者は、都道府県単位に卸売会社を設け、各卸売会社とのG製品販売契約書において、「指定した地域外への販売をしてはならない」旨を規定している。このような規定を設ける理由は、都道府県別のG製品販売量を正確に把握したいためである。



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1 コンピューターのソフトウェア(以下「ソフト」という)は、かつてソフト開発業者が開発したものを一般消費者が選んで購入していたが、現在では、コンピューターメーカーが、ソフト開発業者からソフトを購入し、あらかじめ、コンピューターに搭載する「同梱」という形態が一般的になっている。
 ソフト販売会社A社は、コンピュターメーカーに対し、A社製の表計算ソフトを購入する場合は、A社製のワープロソフトを合わせて購入するよう要請した。
 A社製の表計算ソフトは、他に競争品はなく、コンピューターメーカーにとっては必需品で、これを同梱しないわけにはいかなかった。
 コンピューターメーカーは、それまではB社製ワープロソフトを購入し同梱ししていたが、A社の上記要請を踏まえ、B社製ワープロソフトに代えてA社製のワープロソフトを購入することにした。
 その結果、B社製ワープロソフトの売上高は急減した。


2 エレベーターは、ビルを建設する際、エレベターメーカー(以下「メーカー」という)によって設置される。エレベーターの定期的な保守点検業務や故障した場合の修理業務は、メーカーの系列会社(以下「系列会社」という)に任せる建物所有者が多い。
 しかし、独立系の保守業者(以下「非系列会社」という)の従業員は、元メーカーや系列会社の従業員であった者が多く、技術力は系列会社の従業員と遜色ないこと、また、代金が系列会社よりも安いことから、非系列会社と取引する建物所有者も少なくない。
 非系列会社Cは、自分が保守管理するエレベーターが故障したため、このエレベーターを設置したDメーカーに修理に必要な部品を注文した。しかし、Dメーカーは、「その部品は、在庫がなく、3カ月後にならないと納入できない」と回答した。
 この旨をCから聞いた建物所有者Eは、「エレベーターが3ヶ月も動かないのでは困る」として、Cとの保守管理契約を解除するとともに、直接、Dメーカーに対して部品を供給してくれるよう要請した。これに対しDメーカーは、「部品をすぐ供給して欲しかったら当社の系列会社に保守点検業務も任せてもらいたい」と回答した。
 Eは、これを断り、このビルを建設したゼネコンをつうじてDメーカーに部品を供給してくれるよう依頼した。Dメーカーは、これに対応してすぐEに部品を供給した。


3 大規模小売業者Fは、新規に出店した店舗のオープニングセールに際し、商品陳列等の作業をさせるため、納入業者に対し、従業員等の派遣を要請した。
 また、Fは、オープニングセールで値引き販売し、納入業者に責任がないのに、その値引き分を納入業者に負担させている。
 さらに、Fは、オープニングセール協賛金として、納入取引額に一定率を乗じた額を提供させている。
 なお、要請を受けた納入業者は、今後の取引の継続を考慮し、Fの要請に応じている。

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1 資本金15億円の建設業者であるA社は、平成20年4月1日以降、同業のB(資本金10億円)、C(同8億円)、D社(同1億円)とともに、甲市が指名競争入札により発注する建設工事について、受注予定者を決定し受注予定者以外の者受注予定者が受注できるように協力する行為(以下「入札談合」という)を行ってきた。
 しかし、A社は、入札談合に対する社会的非難の増大に対処するため、首脳の指示により、平成23年10月15日以降、入札談合から離脱するとともに、平成24年1月4日、公正取引委員会に課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を提供した。
 公正取引委員会は、平成24年3月31日、A社の情報提供に基づいて立ち入り検査を行った。B社は、�CD社と話し合って入札談合をとりやめるとともに、�課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を公正取引委員会に提供した。
 なお、平成20年4月1日から平成24年3月31日までの4年間における、4社の甲市からの建設工事受注(契約)額は、それぞれ、以下のとおりである。

 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度
A社 20億円  15億円   22億円   18億円

B社 10億円  15億円   12億円   16億円

C社  5億円  7億円    8億円   5億円

D社  2億円  1億円    2億円   1億円

ただし、A社の平成23年度分のうち8億円は平成23年10月15日以降の入札分である。

ABCD4社のそれぞれの課徴金額を、契約基準に基づき、算定の根拠と総額を示しなさい。


2 大規模小売業者のE社は、約100社の納入業者から商品を継続的に仕入れている。
 E社は、新規店が行うオープニングセールに際し、納入業者に対し、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間、以下のことを要請していた。
 ア 顧客誘導係として従業員を派遣すること。
 イ 通常の仕入れ価格から一律30%相当額を仕入れ金額から差し引くこと。
 これら要請を受けた納入業者は、E社との今後の取引の継続を行う立場上、これら要請を受け入れることを余儀なくされていた。
 なお、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間のE社と納入業差との取引額は100億円に上る。
 E社の課徴金額について、算定の根拠と総額を示しなさい。


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6独禁法でいう「不公正な取引方法」とは?共同した供給拒絶(2条9項1号)、購入拒絶(一般指定1項)

2014-07-29 10:32:17 | 経済法、独占禁止法

(演習6 2014.6.18)

1 エアーソフトガンのメーカーの団体であるAは、銃刀法の定め(一定の威力を超える製品の製造販売を禁止)よりも厳しい自主基準を作成している。
 AのアウトサイダーであるB社がこの自主基準に違反する製品を製造販売しているとの情報をえたため、Aは、エアーソフトガンの卸売業者・小売業者に対して「自主基準に違反したB社の製品は取り扱わないように」と通知した。
 B社は、自社製品は法律に従って製造したもので安全性に何ら問題なく、Aの「通知」によって自社製品の安全性に対する誹謗中傷を受けたとして裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。
 なと、団体内部にも自主基準を守らない会員がいたが、Aはこられに対しては特に措置をとった形跡はない

回答:

 〇事業者団体が、8条5項の不公正な取引方法(間接購入ボイコット、2条9項6号に基づく一般指定1項2号)をさせようとしている。8条5号違反。

 〇事業者団体が、会員の競争者であるアウトサイダーを規制し、排除型私的独占(8条1号)をしようとした。8条1号違反。

 〇「正当な理由がないのに」(一般指定1号)=「公共の利益に反して」
  自主基準は、正当な理由がある。
  自主基準(インサイダーが守る基準)を適用するのは、まず、事業者団体内部のものするのがなされるべきところ、自主基準の名を借りてアウトサイダーを排除している。


参考:日本遊戯銃組合事件

2 東北地方のA港で木材輸入業を営む5社は、輸入した木材を一時的に保管しておく倉庫(「保税倉庫」という)を共同で所有し、保税倉庫はインサイダーのみ利用することを申し合わせた。このため、ある木材業者が木材を輸入しようとして保税倉庫の利用を申し合わせた。このため、ある木材業者が木材を輸入しようとして保税倉庫の利用を申し出たが断られた。
 東北地方にはA港以外にも港はあるが遠方なためこの保税倉庫を利用できないと、事実上、木材の輸入事業を営むことができない。

回答:

 〇5社が行為主体、共同行為。

  共同して役務(保税倉庫の利用)の供給を制限(キャパシティーがないなど正当な理由なく)、2条9項1号イに該当するから、19条違反だが、以下3条違反で論ずる。

  一定の取引分野:ユーザーの立場からみて、東北地方。

  新規参入者に対する排除型私的独占(2条5項)、3条前段違反。

  役務の提供(2条6項)を制限(不当な取引制限)、3条後段違反。

参考:パチンコの知的財産権に関する事件

3 A地区の生コン業者10社は、A生コン協同組合に加盟している。 
 A生コン協同組合は、B生コン卸売協同組合の組合員に対してのみ生コンを販売することを申し合わせた。
 なお、A地区には、A生コン協同組合のアウトサイダーが2社存在し、その合計シェアは40%である。




 協同組合からの供給拒絶(2条9項1号)。

 8条1号該当性。
 しかし、アウトサイダー2社のシェアは40%。
 A生コン協同組合で、価格を自由にコントロールする状況は、生まれにくいと考えられ、実質的な競争制限は生じないと考えられる。

 22条の協同組合の適用除外。
 もし、2条9項1号該当するなら、適用除外にならず、19条違反。





******今後、回答書きます。**********************

1 A社は、甲製品をデパートを通じて一般消費者に販売しており、デパートとの取引に当たり、「甲製品についてはA社が定めたメーカー希望小売価格で販売する」旨の条件を提示し、この条件を受託したデパートとのみ取引をすることとしている。


2 B社は、自ら開発したゲームソフト(以下「B社製品」)を卸売業者・小売業者を通じて一般消費者に販売している。B社は、B社製品にメーカー希望小売価格よりも安い価格で販売させることのないよう、小売業者への指導を徹底することを要請するとともに、価格調査員を使ってB社製品の小売価格を調べている。
 この調査の結果、家電量販店Cが値引きして販売していることがわかり、そこで、B社は、取引先卸売業者に対し、C家電量販店に対しB社製品の出荷を停止するよう指示した。


3 D社は、ライセンシーとの特許ライセンス契約において、「当該特許製品についてはD社が定めた価格よりも安く販売しない」という条件を付した。


*****************************


1 A社は、自社製品の流通経路を調査し、取引卸売業者に対して、廉売を行う小売店のA社製品を販売しないよう要請した。


2 B製品のメーカーらは、B製品卸売協同組合の組合員に対し、同組合の員外者よりもB製品の卸売価格を15%安くし、かつ、割戻金を15%増額して支払うという優遇策を講ずることにより同協同組合の育成を図ろうとした。
 


3 Cスーパーは、1リットルパックの牛乳(以下「パック牛乳」という)を、他スーパーと同様、1本あたり160円で仕入れ、これを180-200円で販売していた。
 隣接するDスーパーがパック牛乳を1本あたり150円で販売し始めたため、Cスーパーも対抗して同様に1本あたり150円で販売し始めた。
 ところが、Dスーパーは、バック牛乳を1本目100円、2本目150円で販売し始めた。これを見、Cスーパーも、1本目100円、2本目150円で販売した。
 この影響を受けて、CDスーパーの周辺の牛乳専売店の牛乳の販売量は大幅に減少した。


4 F製品のメーカーであるF社はシェア40%でトップメーカーである。F製品のメーカーはE社の他に4社存在し、それぞれのシェアは25%、20%、10%、5%である。
 F製品の流通経路は、メーカー→卸売業者→小売業者→消費者であり、従来、卸売業者・小売業者はどのメーカーの製品も取り扱う併売店であった。
 E者は、主だった卸売業者に対し、F製品の売上高に占める自社製品の販売シェアに応じて割戻金を支払うことにした。
 その結果、主要卸売業者のF製品の売上高に占めるE者のシェアは大幅に増加し、2位以下のメーカーのF製品の売上高は大幅に減っている。



5 G製品のメーカーであるH者は、都道府県単位に卸売会社を設け、各卸売会社とのG製品販売契約書において、「指定した地域外への販売をしてはならない」旨を規定している。このような規定を設ける理由は、都道府県別のG製品販売量を正確に把握したいためである。



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1 コンピューターのソフトウェア(以下「ソフト」という)は、かつてソフト開発業者が開発したものを一般消費者が選んで購入していたが、現在では、コンピューターメーカーが、ソフト開発業者からソフトを購入し、あらかじめ、コンピューターに搭載する「同梱」という形態が一般的になっている。
 ソフト販売会社A社は、コンピュターメーカーに対し、A社製の表計算ソフトを購入する場合は、A社製のワープロソフトを合わせて購入するよう要請した。
 A社製の表計算ソフトは、他に競争品はなく、コンピューターメーカーにとっては必需品で、これを同梱しないわけにはいかなかった。
 コンピューターメーカーは、それまではB社製ワープロソフトを購入し同梱ししていたが、A社の上記要請を踏まえ、B社製ワープロソフトに代えてA社製のワープロソフトを購入することにした。
 その結果、B社製ワープロソフトの売上高は急減した。


2 エレベーターは、ビルを建設する際、エレベターメーカー(以下「メーカー」という)によって設置される。エレベーターの定期的な保守点検業務や故障した場合の修理業務は、メーカーの系列会社(以下「系列会社」という)に任せる建物所有者が多い。
 しかし、独立系の保守業者(以下「非系列会社」という)の従業員は、元メーカーや系列会社の従業員であった者が多く、技術力は系列会社の従業員と遜色ないこと、また、代金が系列会社よりも安いことから、非系列会社と取引する建物所有者も少なくない。
 非系列会社Cは、自分が保守管理するエレベーターが故障したため、このエレベーターを設置したDメーカーに修理に必要な部品を注文した。しかし、Dメーカーは、「その部品は、在庫がなく、3カ月後にならないと納入できない」と回答した。
 この旨をCから聞いた建物所有者Eは、「エレベーターが3ヶ月も動かないのでは困る」として、Cとの保守管理契約を解除するとともに、直接、Dメーカーに対して部品を供給してくれるよう要請した。これに対しDメーカーは、「部品をすぐ供給して欲しかったら当社の系列会社に保守点検業務も任せてもらいたい」と回答した。
 Eは、これを断り、このビルを建設したゼネコンをつうじてDメーカーに部品を供給してくれるよう依頼した。Dメーカーは、これに対応してすぐEに部品を供給した。


3 大規模小売業者Fは、新規に出店した店舗のオープニングセールに際し、商品陳列等の作業をさせるため、納入業者に対し、従業員等の派遣を要請した。
 また、Fは、オープニングセールで値引き販売し、納入業者に責任がないのに、その値引き分を納入業者に負担させている。
 さらに、Fは、オープニングセール協賛金として、納入取引額に一定率を乗じた額を提供させている。
 なお、要請を受けた納入業者は、今後の取引の継続を考慮し、Fの要請に応じている。

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1 資本金15億円の建設業者であるA社は、平成20年4月1日以降、同業のB(資本金10億円)、C(同8億円)、D社(同1億円)とともに、甲市が指名競争入札により発注する建設工事について、受注予定者を決定し受注予定者以外の者受注予定者が受注できるように協力する行為(以下「入札談合」という)を行ってきた。
 しかし、A社は、入札談合に対する社会的非難の増大に対処するため、首脳の指示により、平成23年10月15日以降、入札談合から離脱するとともに、平成24年1月4日、公正取引委員会に課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を提供した。
 公正取引委員会は、平成24年3月31日、A社の情報提供に基づいて立ち入り検査を行った。B社は、①CD社と話し合って入札談合をとりやめるとともに、②課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を公正取引委員会に提供した。
 なお、平成20年4月1日から平成24年3月31日までの4年間における、4社の甲市からの建設工事受注(契約)額は、それぞれ、以下のとおりである。

 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度
A社 20億円  15億円   22億円   18億円

B社 10億円  15億円   12億円   16億円

C社  5億円  7億円    8億円   5億円

D社  2億円  1億円    2億円   1億円

ただし、A社の平成23年度分のうち8億円は平成23年10月15日以降の入札分である。

ABCD4社のそれぞれの課徴金額を、契約基準に基づき、算定の根拠と総額を示しなさい。


2 大規模小売業者のE社は、約100社の納入業者から商品を継続的に仕入れている。
 E社は、新規店が行うオープニングセールに際し、納入業者に対し、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間、以下のことを要請していた。
 ア 顧客誘導係として従業員を派遣すること。
 イ 通常の仕入れ価格から一律30%相当額を仕入れ金額から差し引くこと。
 これら要請を受けた納入業者は、E社との今後の取引の継続を行う立場上、これら要請を受け入れることを余儀なくされていた。
 なお、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間のE社と納入業差との取引額は100億円に上る。
 E社の課徴金額について、算定の根拠と総額を示しなさい。


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経済法 様々な問題事例

2014-07-28 09:04:25 | 経済法、独占禁止法

1 エアーソフトガンのメーカーの団体であるAは、銃刀法の定め(一定の威力を超える製品の製造販売を禁止)よりも厳しい自主基準を作成している。
 AのアウトサイダーであるB社がこの自主基準に違反する製品を製造販売しているとの情報をえたため、Aは、エアーソフトガンの卸売業者・小売業者に対して「自主基準に違反したB社の製品は取り扱わないように」と通知した。
 B社は、自社製品は法律に従って製造したもので安全性に何ら問題なく、Aの「通知」によって自社製品の安全性に対する誹謗中傷を受けたとして裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。
 なと、団体内部にも自主基準を守らない会員がいたが、Aはこられに対しては特に措置をとった形跡はない。


参考:日本遊戯銃組合事件

2 東北地方のA港で木材輸入業を営む5社は、輸入した木材を一時的に保管しておく倉庫(「保税倉庫」という)を共同で所有し、保税倉庫はインサイダーのみ利用することを申し合わせた。このため、ある木材業者が木材を輸入しようとして保税倉庫の利用を申し合わせた。このため、ある木材業者が木材を輸入しようとして保税倉庫の利用を申し出たが断られた。
 東北地方にはA港以外にも港はあるが遠方なためこの保税倉庫を利用できないと、事実上、木材の輸入事業を営むことができない。


参考:パチンコの知的財産権に関する事件

3 A地区の生コン業者10社は、A生コン協同組合に加盟している。 
 A生コン協同組合は、B生コン卸売協同組合の組合員に対してのみ生コンを販売することを申し合わせた。
 なお、A地区には、A生コン協同組合のアウトサイダーが2社存在し、その合計シェアは40%である。





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1 A社は、甲製品をデパートを通じて一般消費者に販売しており、デパートとの取引に当たり、「甲製品についてはA社が定めたメーカー希望小売価格で販売する」旨の条件を提示し、この条件を受託したデパートとのみ取引をすることとしている。


2 B社は、自ら開発したゲームソフト(以下「B社製品」)を卸売業者・小売業者を通じて一般消費者に販売している。B社は、B社製品にメーカー希望小売価格よりも安い価格で販売させることのないよう、小売業者への指導を徹底することを要請するとともに、価格調査員を使ってB社製品の小売価格を調べている。
 この調査の結果、家電量販店Cが値引きして販売していることがわかり、そこで、B社は、取引先卸売業者に対し、C家電量販店に対しB社製品の出荷を停止するよう指示した。


3 D社は、ライセンシーとの特許ライセンス契約において、「当該特許製品についてはD社が定めた価格よりも安く販売しない」という条件を付した。


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1 A社は、自社製品の流通経路を調査し、取引卸売業者に対して、廉売を行う小売店のA社製品を販売しないよう要請した。


2 B製品のメーカーらは、B製品卸売協同組合の組合員に対し、同組合の員外者よりもB製品の卸売価格を15%安くし、かつ、割戻金を15%増額して支払うという優遇策を講ずることにより同協同組合の育成を図ろうとした。
 


3 Cスーパーは、1リットルパックの牛乳(以下「パック牛乳」という)を、他スーパーと同様、1本あたり160円で仕入れ、これを180-200円で販売していた。
 隣接するDスーパーがパック牛乳を1本あたり150円で販売し始めたため、Cスーパーも対抗して同様に1本あたり150円で販売し始めた。
 ところが、Dスーパーは、バック牛乳を1本目100円、2本目150円で販売し始めた。これを見、Cスーパーも、1本目100円、2本目150円で販売した。
 この影響を受けて、CDスーパーの周辺の牛乳専売店の牛乳の販売量は大幅に減少した。


4 F製品のメーカーであるF社はシェア40%でトップメーカーである。F製品のメーカーはE社の他に4社存在し、それぞれのシェアは25%、20%、10%、5%である。
 F製品の流通経路は、メーカー→卸売業者→小売業者→消費者であり、従来、卸売業者・小売業者はどのメーカーの製品も取り扱う併売店であった。
 E者は、主だった卸売業者に対し、F製品の売上高に占める自社製品の販売シェアに応じて割戻金を支払うことにした。
 その結果、主要卸売業者のF製品の売上高に占めるE者のシェアは大幅に増加し、2位以下のメーカーのF製品の売上高は大幅に減っている。



5 G製品のメーカーであるH者は、都道府県単位に卸売会社を設け、各卸売会社とのG製品販売契約書において、「指定した地域外への販売をしてはならない」旨を規定している。このような規定を設ける理由は、都道府県別のG製品販売量を正確に把握したいためである。



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1 コンピューターのソフトウェア(以下「ソフト」という)は、かつてソフト開発業者が開発したものを一般消費者が選んで購入していたが、現在では、コンピューターメーカーが、ソフト開発業者からソフトを購入し、あらかじめ、コンピューターに搭載する「同梱」という形態が一般的になっている。
 ソフト販売会社A社は、コンピュターメーカーに対し、A社製の表計算ソフトを購入する場合は、A社製のワープロソフトを合わせて購入するよう要請した。
 A社製の表計算ソフトは、他に競争品はなく、コンピューターメーカーにとっては必需品で、これを同梱しないわけにはいかなかった。
 コンピューターメーカーは、それまではB社製ワープロソフトを購入し同梱ししていたが、A社の上記要請を踏まえ、B社製ワープロソフトに代えてA社製のワープロソフトを購入することにした。
 その結果、B社製ワープロソフトの売上高は急減した。


2 エレベーターは、ビルを建設する際、エレベターメーカー(以下「メーカー」という)によって設置される。エレベーターの定期的な保守点検業務や故障した場合の修理業務は、メーカーの系列会社(以下「系列会社」という)に任せる建物所有者が多い。
 しかし、独立系の保守業者(以下「非系列会社」という)の従業員は、元メーカーや系列会社の従業員であった者が多く、技術力は系列会社の従業員と遜色ないこと、また、代金が系列会社よりも安いことから、非系列会社と取引する建物所有者も少なくない。
 非系列会社Cは、自分が保守管理するエレベーターが故障したため、このエレベーターを設置したDメーカーに修理に必要な部品を注文した。しかし、Dメーカーは、「その部品は、在庫がなく、3カ月後にならないと納入できない」と回答した。
 この旨をCから聞いた建物所有者Eは、「エレベーターが3ヶ月も動かないのでは困る」として、Cとの保守管理契約を解除するとともに、直接、Dメーカーに対して部品を供給してくれるよう要請した。これに対しDメーカーは、「部品をすぐ供給して欲しかったら当社の系列会社に保守点検業務も任せてもらいたい」と回答した。
 Eは、これを断り、このビルを建設したゼネコンをつうじてDメーカーに部品を供給してくれるよう依頼した。Dメーカーは、これに対応してすぐEに部品を供給した。


3 大規模小売業者Fは、新規に出店した店舗のオープニングセールに際し、商品陳列等の作業をさせるため、納入業者に対し、従業員等の派遣を要請した。
 また、Fは、オープニングセールで値引き販売し、納入業者に責任がないのに、その値引き分を納入業者に負担させている。
 さらに、Fは、オープニングセール協賛金として、納入取引額に一定率を乗じた額を提供させている。
 なお、要請を受けた納入業者は、今後の取引の継続を考慮し、Fの要請に応じている。

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1 資本金15億円の建設業者であるA社は、平成20年4月1日以降、同業のB(資本金10億円)、C(同8億円)、D社(同1億円)とともに、甲市が指名競争入札により発注する建設工事について、受注予定者を決定し受注予定者以外の者受注予定者が受注できるように協力する行為(以下「入札談合」という)を行ってきた。
 しかし、A社は、入札談合に対する社会的非難の増大に対処するため、首脳の指示により、平成23年10月15日以降、入札談合から離脱するとともに、平成24年1月4日、公正取引委員会に課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を提供した。
 公正取引委員会は、平成24年3月31日、A社の情報提供に基づいて立ち入り検査を行った。B社は、①CD社と話し合って入札談合をとりやめるとともに、②課徴金減免制度を利用して入札談合に関する情報を公正取引委員会に提供した。
 なお、平成20年4月1日から平成24年3月31日までの4年間における、4社の甲市からの建設工事受注(契約)額は、それぞれ、以下のとおりである。

 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度
A社 20億円  15億円   22億円   18億円

B社 10億円  15億円   12億円   16億円

C社  5億円  7億円    8億円   5億円

D社  2億円  1億円    2億円   1億円

ただし、A社の平成23年度分のうち8億円は平成23年10月15日以降の入札分である。

ABCD4社のそれぞれの課徴金額を、契約基準に基づき、算定の根拠と総額を示しなさい。


2 大規模小売業者のE社は、約100社の納入業者から商品を継続的に仕入れている。
 E社は、新規店が行うオープニングセールに際し、納入業者に対し、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間、以下のことを要請していた。
 ア 顧客誘導係として従業員を派遣すること。
 イ 通常の仕入れ価格から一律30%相当額を仕入れ金額から差し引くこと。
 これら要請を受けた納入業者は、E社との今後の取引の継続を行う立場上、これら要請を受け入れることを余儀なくされていた。
 なお、平成23年5月1日から平成24年4月30日までの間のE社と納入業差との取引額は100億円に上る。
 E社の課徴金額について、算定の根拠と総額を示しなさい。


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5不公正な取引方法(独禁法2条9項)の一般概念

2014-07-27 18:45:09 | 経済法、独占禁止法

(演習5 2014.6.11)

1 「公正な競争を阻害する」と「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」との異動

 「公正な競争を阻害する」おそれ 2条9項6号に基づく一般指定と、2項9項1号ないし5号

 「公正な競争を阻害する」(公正競争訴外性)の3タイプのひとつ

 ①自由競争を減殺するおそれ  → 競争の実質的制限にいたる手段となる行為
 他の二つのタイプ(②能率競争阻害するおそれ、③自主的判断を妨げるおそれ)は、競争を制限していない。



 「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」は、競争がなくなる場合のもので、2条5項、2条6項、8条1号、4章など
 2条9項は、おそれの段階で規制できる。


2 「不当に」と「正当な理由がないのに」との異同

 ○「不当に」 原則合法、例外違法

 例、廉売は、原則合法。

 ○「正当な理由がないのに」 原則違法、例外合法
 2条9項では、1号共同ボイコットと4号再販売価格の拘束の二つが、原則違法。なお、2条3号は、「正当な理由がないのに」と文言があるが、原則違法ではない。


3 「共同ボイコット(取引拒絶)」と「単独ボイコット」の異同

 ○「共同ボイコット(取引拒絶)」 競争者と共同 2条9項1号(共同供給拒絶) これ以外、一般指定 1号(共同購入拒絶)

 ○「単独ボイコット」 誰と取引するかは、原則自由


4 甲工事をするには特定の機械乙を必要とする。乙はA社が一手に販売している。
  丙地区には、乙を使用して甲工事を行う業者が15社存在する。
  乙を持っていない業者(アウトサイダー)が乙以外の機械を使って甲工事を行うことも可能であるが、効率が悪く従って採算も悪い。
  このためアウトサイダーBは、まずA社に乙を売ってくれるよう求めたが、「15社以外には売らない方針である」と断られた。
  そこで、このBは、15社に対し「乙を売るか貸してほしい」と要請したが、15社のいずれもが「A社からの要請を受けて、15社以外に乙を売ったり貸したりしないと15社で申し合わせたので、応じられない」と断った。

回答:
 A社 乙機械購入 申込拒否 (原則、契約自由) 単独ボイコット :一般指定2項

 15社 乙機械貸すのを拒否の申し合わせ 共同ボイコット:2条9項1号イ

 →19条違反

 一定の取引分野
 ①乙機械を用いる甲工事
 ②甲工事 
 施主からみて、甲工事である。乙機械のありなしでコストに差がありすぎると、「乙機械を用いる甲工事」が一定の取引分野とも考え得る。

 →3条違反

以上

(2014.6.11)

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3独禁法の企業結合規制(第4章)の事例

2014-07-26 23:00:00 | 経済法、独占禁止法

(演習3 2014.5.21/5.28)

1 国内でX商品のすべてを製造販売するABCの3社は、共同で出資し、甲社を設立し、今後は、X商品を直接取引先小売店に販売することはやめて、すべて甲社を通じて販売することとしたが、独禁法に違反するか。


回答:独禁法10条に違反するかが問われている。

 10条では、他の会社をもって、一定の取引分野を実質的に制限する場合。

 甲社からすべて販売で、甲が価格をコントロールできる。

 独禁法に違反し、認められない。



2 X鉄道会社は、Yバス会社の株式の過半を取得するとともに、役員を派遣し、その一人は社長に就任した。この地域には、これら2社の鉄道とバス路線しかなく、競合する業者はいない。
 独禁法上違法であるとすれば、どのような排除措置を講ずるべきか。


回答:10条と13条に違反するかが問われている。

 一定の取引分野とは、当該地域の旅客運送である。

 二以上の事業者が競争することがなくなり、X鉄道会社は、取引条件を支配することとなる。

 排除措置は、XがYの経営を支配できなくなるまで持ち株を放出させる(目安は、11条の5%を超える部分)、役員の辞任。

参考:広島電鉄事件

3 2において、X鉄道会社が、「自らYバス会社の株式を取得するのはまずい。自社の社長に株を取得してもらおう」と考えて実行しようとした場合は、独禁法上違法にあたるか。


回答:14条違反。


4 東宝・スバル事件は、東宝が、有楽町にあるスバル座と銀座近くにあるオリオン座の2館を賃借しようとして発生したものである。高裁は、本件の「一定の取引分野」をどのように確定したのか。


回答: 映画しか娯楽のない時代において、一定の取引分野とは、洋画の封切館。全体の3/4を東宝が占めることとなった。
  顧客が、どう選ぶかで、市場を決める。

5 日本の自動車メーカーすべてが出資して設立した研究機関において、新しいディーゼルエンジンを開発しようとの計画について、独禁法上どのように評価すべきか。


回答:自社開発をしない=技術の競争をやめようという相互拘束

   一定の取引分野:ディーゼルエンジン

  公共の利益あり:技術競争をやめようという申し合わせが、形式的に自由競争経済秩序に反するが、当該行為によって守られる利益、技術を集め集中的に開発し、燃費のよいディーゼルエンジンが開発されるという利益が、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進するという独禁法の究極の目的に実質的に反しないと認められる例外的な場合に当たる。

 独禁法の違法性が阻却される。


以上

(2014.5.21、2014.5.28)

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