「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

川﨑の事件、不安な気持ちは、担任や養護、学校カウンセラーの先生、そして私達小児科医にご相談下さい。/病児保育鋭意実施中。

マイコプラズマ感染症 その流行と抗菌薬耐性菌増加の問題を考える。

2012-10-31 23:00:00 | 小児医療

今、話題のマイコプラズマ感染症の流行についての話題と、マイコプラズマ感染症に投与する抗菌剤の耐性化の問題を取り上げます。


Q君:マイコプラズマ感染症が流行しているのですか?


A先生:はい、昨年(2011年)そして、今年(2012年)と流行していることが、国立感染症研究所のデータからわかります。

  以下、途中まで引かれた赤の線が2012年です。大きな流行があった2011年を上回っています。



Q君:マイコプラズマ感染症は、どんな病気ですか。

A先生:肺炎を起こすことが多いです。肺炎は、年長児、児童に多く、症状所見、検査所見に乏しいこともしばしば経験します。
   そのほかにも、胃腸炎なども起こすこともあります。

   専門的になりますが、ただ、肺炎といっても、マイコプラズマが直接、細胞障害を起こすのではなく、患者自らがもつ細菌に対する免疫応答(IL-18,IL-8などのサイトカイン)が過剰に起こすことで、自らを傷害するという特異的な反応によって病態が引き起こされています。

Q君:治療はどうしますか?

A先生:マイコプラズマは、細菌の一種で、抗菌剤を投与して治療します。
    マイコプラズマは、特殊な細菌で、細胞壁を持っていません。細胞壁に作用するペニシリン系やセフェム系の薬剤は効かず、タンパク質合成を阻害する薬剤(マクロライド系)が効きます。   


Q君:今、抗菌剤の耐性化が起きていることが言われていますが、大丈夫ですか?

A先生:マイコプラズマ感染症でも、抗菌剤の耐性化が言われています。
    50%が耐性化という報告もあります。
    病院では、9割耐性化という報告もあります。

Q君:抗菌剤が効かないということですか?

A先生:理論的に考えると、抗菌剤が効かないということになるのですが、ここで、「細菌学的耐性」と「臨床的耐性」を分けて考える必要があります。
    耐性菌の場合、耐性菌でない場合より、平均2日程度の発熱する期間が延びますが、しかし、例え耐性菌であってもマクロライド系抗菌剤を投与して、臨床の現場では、すみやかな改善が見られるという事実があります。

Q君:どのように考えればよいのかな?

A先生:マクロライド系抗菌薬が、病態の他の部分に作用して、回復へと向かわせていることがひとつ考えられます。
  もうひとつに、耐性菌は、マイコプラズマの場合、タンパクを合成するのに必要なリボソームの二つのユニットからなっているひとつ50sサブユニットの23sリボソーム(r)RNAドメインV(ファイブ)という箇所の塩基配列2063番目がAアデニンであるところがGグアニンに塩基点突然変異(A2063G)を起こすことが多い(他にA2063C,A2064G,C2617Gなど)のですが、そのような点突然変異を起こした耐性菌の増殖力は、変異のない(すなわち薬剤耐性のない)菌より増殖力が劣り、病原性も低いことが関係しているのかもしれません。


Q君:耐性菌の増加と、マイコプラズマ感染症の流行は、関連性がありますか?

A先生:耐性菌の増加と、マイコプラズマ感染症の流行の関連性については、安易に結び付けることができません。

   耐性菌のため、排菌期間が延び、同時に周囲のひとの感染の機会も増えるという点では、結びつくかもしれません。
   ただ、耐性菌のない(耐性化率数%)の北欧でも大流行が起こったということもあり、一概に耐性化と流行が結び付くともいえないです。もしかして、あくまで仮定ですが、マイコプラズマがひとに感染しやすいなんらかの変化を起こしていることも考えられなくもありません。

   流行の裏には、検査キットの普及で診断がしやすくなったこと、マスコミで取り上げられ関心が高まったことなども影響しているかもしれません。


  まとめますと、

  マイコプラズマ感染症は、増加している。

  耐性化の率も増えている。

  ただ、耐性化と感染症の増加がどう関連しているか、ひとつの要因として考えられるが、他の要因もありうる。

  耐性化の菌でも、マクロライド投与で速やかな改善がみられる。あっても、2日程度発熱が長く続く程度。

  

  よって、抗菌薬があっても、対処していける現状をご理解いただければと思います。

  もちろん、耐性化を減らすため、抗菌薬の適正使用が必要なことはいうまでもありません。
   

  以上、
  

コメント

平成25年司法試験考査委員 学者教員のみ 

2012-10-30 17:35:20 | シチズンシップ教育
 なんでもそうですが、あらゆる角度から、敵を知ることは、必要です。

 王道ではありませんが、選考委員から、出題傾向を知ることを、ほんの頭の片隅に置いておいてもよいかもしれません。



平成25年司法試験考査委員

(憲法) 青柳、安西、矢島、毛利 

(行政法) 大橋、中原、山本 

(民法)滝沢、道垣内、山本(敬)、山野目

(商法)野村、洲崎、神田

(民訴)宇野、山本(弘)、畑

(刑法)佐伯、只木、高橋(則)

(刑訴) 大澤、酒巻、宇藤 



(選択科目) 

(租税法)谷口、増井 

(倒産法) 中西、田頭 

(環境法)大塚、北村 

(経済法)岸井、根岸 

(労働法)島田、土田

(知財) 茶園、大渕 

(国際公法)薬師寺、兼原 

(国際私法) 野村、横山 


(敬称略) 学者教員のみ  情報提供:hisayaz ‏@towad55

 



*****法務省ホームページより*****
http://www.moj.go.jp/content/000103380.pdf

1 平成25年司法試験及び司法試験予備試験考査委員(90名)
青 柳 幸 一憲 法明治大学大学院法務研究科教授
吉 川   崇憲 法法務省刑事局参事官
菅   芳 郎憲 法弁護士(東京弁護士会)
内 藤 惣一郎憲 法法務省刑事局参事官
中 川 綾 子憲 法司法研修所教官
中 俣 千 珠憲 法司法研修所教官
西 川 篤 志憲 法司法研修所教官
松 本   修憲 法弁護士(東京弁護士会)
宮 田 祥 次憲 法司法研修所教官
毛 利   透憲 法京都大学大学院法学研究科教授
矢 島 基 美憲 法上智大学法学部教授
安 西 文 雄憲 法九州大学大学院法学研究院教授
山 内 由 光憲 法法務省刑事局国際刑事企画官
大 橋 洋 一行政法学習院大学専門職大学院法務研究科教授
角 井 俊 文行政法法務省大臣官房財産訟務管理官
川 神   裕行政法東京地方裁判所部総括判事
菊 池   章行政法内閣法制局参事官(第一部)
小 林 美智子行政法弁護士(第一東京弁護士会)
近 藤 裕 之行政法法務省大臣官房参事官(訟務担当)
品 田 幸 男行政法最高裁判所事務総局行政局第二課長
島 根 里 織行政法法務省大臣官房行政訟務課付
中 原 茂 樹行政法東北大学大学院法学研究科教授
松 田 純 一行政法弁護士(東京弁護士会)
八 木 一 洋行政法東京地方裁判所部総括判事
山 本 隆 司行政法東京大学大学院法学政治学研究科教授
岡 山 忠 広民 法法務省民事局参事官
加 藤 英 継民 法元さいたま家庭裁判所長
志 賀 剛 一民 法弁護士(東京弁護士会)
高 島 義 行民 法司法研修所教官
滝 沢 昌 彦民 法一橋大学大学院法学研究科教授
筒 井 健 夫民 法法務省大臣官房参事官(民事担当)
道垣内 弘 人民 法東京大学大学院法学政治学研究科教授
堂 薗 幹一郎民 法法務省民事局参事官
流 矢 大 士民 法弁護士(東京弁護士会)
二 宮 照 興民 法弁護士(第一東京弁護士会)
桃 崎   剛民 法司法研修所教官
山 口   浩民 法法務総合研究所教官
山野目 章 夫民 法早稲田大学大学院法務研究科教授
山 本 敬 三民 法京都大学大学院法学研究科教授
相 澤   哲商 法東京地方裁判所部総括判事
梅 野 晴一郎商 法弁護士(第二東京弁護士会)
河 合 芳 光商 法法務省民事局商事課長
平成25年司法試験考査委員及び司法試験予備試験考査委員推薦者名簿
別紙
神 田 秀 樹商 法東京大学大学院法学政治学研究科教授
清 水   真商 法弁護士(第二東京弁護士会)
志 村 康 之商 法法務総合研究所教官
洲 崎 博 史商 法京都大学大学院法学研究科教授
谷 口 安 史商 法東京地方裁判所判事
内 藤 順 也商 法弁護士(第一東京弁護士会)
野 村 修 也商 法中央大学大学院法務研究科教授
松 井 信 憲商 法法務省民事局参事官
村 中   徹商 法弁護士(大阪弁護士会)
宇 野   聡民事訴訟法名古屋大学大学院法学研究科教授
大 木   卓民事訴訟法弁護士(東京弁護士会)
金 子   修民事訴訟法法務省民事局民事法制管理官
木 下 直 樹民事訴訟法弁護士(東京弁護士会)
小 林 康 彦民事訴訟法法務省民事局参事官
齋 藤   聡民事訴訟法司法研修所教官
坂 本 三 郎民事訴訟法法務省民事局参事官
鈴 木 和 孝民事訴訟法法務省大臣官房民事訟務課付
 松 宏 之民事訴訟法法務省大臣官房司法法制部参事官
奈 良 輝 久民事訴訟法弁護士(第二東京弁護士会)
畑   瑞 穂民事訴訟法東京大学大学院法学政治学研究科教授
森   健 二民事訴訟法司法研修所教官
山 本   弘民事訴訟法神戸大学大学院法学研究科教授
佐 伯 仁 志刑 法東京大学大学院法学政治学研究科教授
佐 藤   剛刑 法法務省刑事局付
高 橋 則 夫刑 法早稲田大学大学院法務研究科教授
高 橋 和 人刑 法司法研修所教官
只 木   誠刑 法中央大学大学院法務研究科・法学部教授
津 田 敬 三刑 法司法研修所教官
外ノ池 和 弥刑 法司法研修所教官
野 嶋 慎一郎刑 法弁護士(第一東京弁護士会)
野 村   賢刑 法司法研修所教官
橋 本 ひろみ刑 法司法研修所教官
松 居 徹 郎刑 法司法研修所教官
山 内 久 光刑 法弁護士(第二東京弁護士会)
吉 井 隆 平刑 法司法研修所教官
粟 田 知 穂刑事訴訟法司法研修所教官
宇 藤   崇刑事訴訟法神戸大学大学院法学研究科教授
大 澤   裕刑事訴訟法東京大学大学院法学政治学研究科教授
岡 本 安 弘刑事訴訟法司法研修所教官
甲 斐 順 子刑事訴訟法弁護士(第二東京弁護士会)
川 越 弘 毅刑事訴訟法司法研修所教官
酒 巻   匡刑事訴訟法京都大学大学院法学研究科教授
平 谷 正 弘刑事訴訟法元福島地方裁判所長
福 田 あずみ刑事訴訟法司法研修所教官
船 木 誠一郎刑事訴訟法弁護士(福岡弁護士会)
保 坂 和 人刑事訴訟法法務省刑事局参事官
丸 山 秀 和刑事訴訟法司法研修所教官
三 村 三 緒刑事訴訟法司法研修所教官
別紙
2 平成25年司法試験考査委員(40名)
江 原 健 志倒 産 法法務省民事局民事第二課長
金 澤 秀 樹倒 産 法東京地方裁判所判事
 井 章 光倒 産 法弁護士(第二東京弁護士会)
田 頭 章 一倒 産 法上智大学大学院法学研究科教授
中 西   正倒 産 法神戸大学大学院法学研究科教授
定 塚   誠租 税 法東京地方裁判所部総括判事
谷 口 勢津夫租 税 法大阪大学大学院高等司法研究科教授
藤 谷 俊 之租 税 法法務省大臣官房租税訟務課長
増 井 良 啓租 税 法東京大学大学院法学政治学研究科教授
宮 崎 裕 子租 税 法弁護士(第一東京弁護士会)
大久保 正 道経 済 法東京高等裁判所判事
岸 井 大太郎経 済 法法政大学法学部・大学院法務研究科教授
小 嶋 英 夫経 済 法公正取引委員会事務総局審査局特別審査調整官
高 橋 善 樹経 済 法弁護士(東京弁護士会)
根 岸   哲経 済 法甲南大学大学院法学研究科教授
飯 塚 卓 也知的財産法弁護士(東京弁護士会)
大 渕 哲 也知的財産法東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授
東海林   保知的財産法東京地方裁判所部総括判事
茶 園 成 樹知的財産法大阪大学大学院高等司法研究科教授
松 井   洋知的財産法法務省大臣官房司法法制部参事官
島 田 陽 一労 働 法早稲田大学大学院法務研究科教授
竹 田 光 広労 働 法東京地方裁判所部総括判事
土 田 道 夫労 働 法同志社大学法学部・大学院法学研究科教授
東 山 太 郎労 働 法法務省刑事局付
水 野 英 樹労 働 法弁護士(第二東京弁護士会)
牛 島 聡 美環 境 法弁護士(東京弁護士会)
大 塚   直環 境 法早稲田大学大学院法務研究科教授
小 原 一 人環 境 法法務省大臣官房参事官(訟務担当)
北 村 喜 宣環 境 法上智大学大学院法学研究科教授
鈴 木 義 和環 境 法東京地方裁判所判事
兼 原 敦 子国際関係法(公法系) 上智大学法学部教授
北 村   大国際関係法(公法系) 弁護士(第一東京弁護士会)
菅 宮 真 樹国際関係法(公法系) 法務省入国管理局参事官
細 田 啓 介国際関係法(公法系) 東京地方裁判所部総括判事
薬師寺 公 夫国際関係法(公法系) 立命館大学大学院法務研究科教授
石 井   隆国際関係法(私法系) 法務省民事局民事第一課長
清 水   響国際関係法(私法系) 東京高等裁判所判事
田 中 みどり国際関係法(私法系) 弁護士(東京弁護士会)
野 村 美 明国際関係法(私法系) 大阪大学大学院国際公共政策研究科・法学部教授
横 山   潤国際関係法(私法系) 一橋大学大学院法学研究科教授
別紙
3 平成25年司法試験予備試験考査委員(24名)
赤 坂 甲 治一般教養科目東京大学大学院理学系研究科教授
新 井 潤 美一般教養科目中央大学法学部教授
入不二 基 義一般教養科目青山学院大学教育人間科学部教授
大 橋   弘一般教養科目東京大学大学院経済学研究科教授
奥 井 智 之一般教養科目亜細亜大学経済学部教授
小 澤   実一般教養科目立教大学文学部准教授
筧   三 郎一般教養科目立教大学理学部教授
片 山 善 博一般教養科目日本福祉大学社会福祉学部保健福祉学科准教授
加 藤 友 康一般教養科目明治大学大学院文学研究科特任教授
久 保 健 雄一般教養科目東京大学大学院理学系研究科教授
下 村   裕一般教養科目慶應義塾大学法学部教授
白 井   宏一般教養科目中央大学理工学部教授
菅 原 克 也一般教養科目東京大学大学院総合文化研究科教授
助 川 幸逸郎一般教養科目横浜市立大学国際総合科学部講師
鈴 木 毅 彦一般教養科目首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授
  正 夫一般教養科目東京農工大学大学院連合農学研究科教授
竹 内   幹一般教養科目一橋大学大学院経済学研究科准教授
谷 口 将 紀一般教養科目東京大学大学院法学政治学研究科教授
椿   真智子一般教養科目東京学芸大学教育学部教授
萩 原 孝 基一般教養科目法務省大臣官房司法法制部付
半 田 淳 子一般教養科目国際基督教大学教養学部上級准教授
丸 山 嘉 代一般教養科目法務省大臣官房司法法制部付兼法務省大臣官房付
宮 村 一 夫一般教養科目東京理科大学理学部化学科教授
山 川 修 治一般教養科目日本大学文理学部教授


以上
コメント

今、まちの小児科医が、考えていることは何か。第22回日本外来小児科学会年次集会秋季カンファより

2012-10-29 10:38:10 | 小児医療
 今、まちの小児科医師が考えていることは、なにか。

 一言でいえば、「子ども達が心も体も健康に育ち、自己実現できる大人になることを支えること。結果として、しっかりと次世代を担う大人になってもらうこと。」
 病気を治すということは、そのための一つの手段であるが、それだけにとどまっていてはならない。
 多くの子ども達に関わるひとと連携協力の下、成し遂げていくときが来ています。

 その思いを共有した会であったと思います。

 以下、10/28 10:00-15:30の日程で、外来小児科医師の学会に参加し、多くの学びをいただきました。

 手弁当で準備企画して行われています。
 携われた先生方、医療関係者の皆様、本当にありがとうございました。

****学会のプログラム******
http://sagpj22.net/site/program-autumn.pdf


第22回日本外来小児科学会年次集会
秋季カンファレンス
第2 9 回東日本外来小児科学研究会共催
 
10:00 開会挨拶

10:05~10:25 予防接種で100人続けて子どもを泣かせない工夫
一般演題1 横井茂夫(医)小川すゞか(看)青山孝子(看)藤田えみ子(看)
細川潤子( 看) 横井こどもクリニック( 東京都世田谷区)
クリニックという処は、子ども達にとって楽しい場所であることは滅多になく「痛い・怖い」の連
続です。治療のためには「痛い・怖い」も必要なことがあるが、出来る限り少なくてすむように外
来小児科の医師、看護師、スタッフは工夫している。特に採血以上に回数の多い予防接種では、子
どもの不安感が最小限になるように工夫し、子どもの頑張る力を引き出して、その子なりに乗り越
えていけるように関わっている。今回当クリニックでは、予防接種で「泣いてしまう前の泣かせな
い工夫」・「泣いてしまったら早く泣き止ませる工夫」・「泣いたが次の接種で泣かせない工夫」を
行い、幼保育園児の年長児、小学1 ・2 ・3 年生( 男・女) を対象に、予防接種で連続1 0 0名以上
続けて泣かせないようにできるか挑戦した。工夫として、本人に注射器( 大・小) を選ばせる、キ
ャラクターの携帯電話( 音を聞かせる)、リキッド商品( 目で見ること)、接種部位を接種前に圧
迫、針なし注射器の持ち帰り( 泣かなかった子ども)、注射器の針を細く、接種部位に貼る絆創膏
にキャラクターのシールを張るなどをした。医師、看護師が予防接種で泣かせないようにする色々
な工夫を、診察・予防接種場面の写真・グラフを使用して解説する。



10:25~10:45 千葉市における「命を守る教育推進プラン」(小・中・高で救命講習授業を)
一般演題2 -千葉市を日本のシアトルに!!-
中村眞人( 医) なかむら医院( 千葉県千葉市)
3 0~ 4 0 %と驚異的に高いアメリカのシアトルの救急救命率を目標に、昨年度より救命講習授業「命
を守る推進授業」を開始しました。もしバイスタンダード( 救急現場に居合わせた人) となったと
きにも躊躇せず救命措置に協力できる能力をつけるには、子どもの頃から繰り返し「救命講習」を
受けることが不可欠と考え、小学校、中学校、高等学校で各1 回ずつ講習を受け高校卒業の時点で
救命講習に習熟することを目指しています。さらに、子供達に命の尊厳について考える機会を与え、
それを家庭に持ち帰り家族に伝えることで「救命の連鎖」を広げる効果や貴重な人的資源喪失の減
少も狙い、最終的には子供達が住む街が安全で暮らしやすい街になり、千葉市が日本一住みたい街
になることを夢に進めています。昨年度は、モデル地区でのパイロットスタディーでしたが、本年
度はそれをさらに拡大する予定です。その為に、教職員プロバイダー・インストラクターの養成。
医師会主催のI C L S ・J P T E C などの開催。9 講座からなる救急医研修会。医師会作成のB L
S 用D V D の作成と配布。市医師会認定救急医制度の設立。救急タマゴッチの配布などを行いまし
た。現在、医師会・消防局と教育委員会が連携するC E M T E C 委員会を医師会内に設け、これら
の事業を推進しております。今後は一地区だけでなく、千葉市全体へ、そして千葉県へ、最終的に
は我が国の救命率アップにつなげるために事業の拡大を目指しています。



1 0 : 4 5 ~ 1 1 : 0 5 2 0 1 1 年夏に流行10:45~11:05 2011した手足口病に伴う爪の変形・剥離について
一般演題3 葉桐美佳(看)佐野正(医)渡邊優香(看)増田智恵子(看)
佐野寿枝( 事) 渡邊佐江子( 事) 飯田純理( 事) 深野歩( 事)
キッズクリニックさの( 静岡県静岡市)
2 0 1 1 年夏に西日本を中心に流行した新型の手足口病は例年の3 倍超に達した。その特徴は、高
熱、上腕・大腿・時に全身に及ぶ強い水疱性発疹で、痂皮を残した。口内炎は少なくヘルパンギー
ナの合併が多い、従来とは著しく異なる症状を呈した。同定されたウイルスは新種のC o x A 6であっ
た。静岡市でも同様の疾患が流行し、その後爪の変形・剥離を来たす患者が多発した。爪の異常は
一過性で、無痛・非炎症性であった。C o x A 6は元来ヘルパンギーナを生じるウイルスであり、爪の
異常を伴う手足口病の流行は我国では経験されていない。昨夏当院にて手足口病と診断された患者
の内、爪異常を来たした頻度と重症度を調査する為にアンケートを実施した。患者は2 3 5名で、2 27
名( 9 6. 6% )から回答が得られ、1 05名( 4 6 . 3% )で爪変形、7 7名( 3 3. 9% )で爪剥離が見られた。
爪異常は乳児~ 成人まで全年齢層で見られたが、乳児では有意に少なく、成人では全例で生じた。
手指は橈骨側にやや多く、足趾は母趾に集中した。発症~ 爪変形までは平均3 0~ 4 0日を要した。高
熱児・重症児に爪異常の比率はやや高かったが、発疹の殆どない例でも爪異常を見た。本疾患は20
08年フィンランドで、2 01 0年台湾で流行したA 6 の臨床象と酷似しており、それ以前のA 6 とは遺
伝子的にも異なると言われている。今後同様の流行に対し、注意と理解を深めるべきであると思わ
れた。



11:10~11:35 小児科外来診療における看護師の価値について
アフタヌーンセミナー報告山本淳(医)川本加奈(看)關本千代子(看)小林晴美(看)
中紙八重子( 看) 中元珠美( 看) 新井千春( 看) 今野恵( 看)
亀井雅恵( 看) 村田絵美子( 看) 梶原真理子( 看) 山崎裕美子( 看)
石井靖子( 看) 星川小児クリニック( 神奈川県横浜市)
年次集会( 8 / 2 5 ) のアフタヌーンセミナーでは、「ママを育むクリニック- 看護師だからでき
ること・看護師とだからできること- 」と題し、当院の川本加奈看護師が、ナースの立場から、当
院における看護師の役割をビデオを中心にして紹介をしたほか、看護師の看護介入が患者に評価さ
れているかの調査も行ったのでその報告もあわせて行いました。
聴講していただいた医師、看護師からは、「うちでもナースを増員しよう」ということになったと
いう話をお聞きしたり、小児科の救急外来でも同様な看護介入ができるのではないかというヒント
を得たという声もありました。秋季カンファレンスでは、看護師の発表をサポートした医師の立場
から、年次集会の発表の準備をしながら看護師から学んだこと、発表後にいただいた反響から考察
したことを中心に小児科外来における看護師の価値についてお話してみたいと思います。
年次集会で使用した当院の診療の様子( 看護師の役割にスポットをあてたもの) を収録したビデオ
も再上映させていただきます。



11:35~12:00 外来小児科における研究とは/質的研究で何が出来るか
セッション報告伊藤純子(医) 虎の門病院(東京都港区)
斉藤匡( 医) 国保多古中央病院小児科( 千葉県香取郡多古町)
前原幸治( 医) まえはら小児科( 東京都多摩市)
外来小児科学会リサーチ委員会は、第一線の臨床現場で「しか取り上げない」「しかやれない」「や
るのが最も適切な」、問題を課題として取り上げ、その研究を支援することを目的としてきました。
リサーチを進めていくときは、A: 臨床の疑問を整理し、B: 信頼できるエビデンスを検索し、エビ
デンスのない時は、C: 自らリサーチを計画するという手順を踏むことになります。リサーチの研
究デザインには様々なものがあり、一般にランダム化比較試験( R C T) がエビデンスレベルが高い
と言われます。しかし外来小児科における問題ではR C Tができないものも多く、疫学的手法できち
んと計画されたケース・コントロールスタディやコホート研究が適していることが多々あります。
従来行われていた「量的研究」においては、客観的に、個々の偏りを排して、普遍的な結論を出す
ことが目的でした。しかし、臨床現場の判断においては、個別の要因を重視した主観的な要素が重
要になります。それを評価する方法が「質的研究」です。本セッション報告では、「質的研究で何
ができるか」をわかりやすく紹介します。



1 2 : 2 0 ~ 1 3 : 1 12:20~13:10 輸入不活化ポリオワクチン接種を体験して
ランチョンセミナー(提供:サノフィパスツール)
司会宮津光伸( 名鉄病院予防接種センター)
演者松山剛( 千葉県立佐原病院小児科)
1 0年以上前から、専門家達により生ポリオワクチン( O P V) 投与に伴うワクチン関連麻痺性ポリオ
( V A PP) の危険性が指摘されていたが、広く認知されるには至らなかった。
医師・保護者達にV A P Pが知られるようになったのは、平成2 2年春頃より、マスコミがV A P P患児を取
材しニュース・記事として取り上げるようになったことと、同年8月日本小児科学会が発表した「経
口ポリオ生ワクチンの接種について」という提言に対し、臨床現場から提出された意見書と署名活
動によると思われる。特に後者は、改めて小児科医にV A PPを認知させる機会となった。
マスコミ報道によりVA P Pを不安視した保護者達は、より安全とされる不活化ポリオワクチン( I P V)
に関心を寄せ、要請に応える形でごく少数の小児科医によりI P Vが海外より輸入・接種されるよう
になった。これによりさらにマスコミでV A P Pの問題が取り上げられる頻度が増加し、それに呼応し
てI P Vの需要は急増した。
平成2 3年初頭よりI P V実施医療機関は急増し、最終的には日本全国で4 公立病院・3 準公立病院・2
大学病院を含む2 5 0を超える医療機関が接種を実施した。さらに平成2 3年1 2月からは、神奈川県が
知事の指示のもと、独自にI PVを輸入し実施した。
こうした動きはI P Vの国内承認・早期導入を求める流れを加速させ、これを受けて臨床試験途中の
本年2月IP Vの承認申請が受理され、4月に承認、9月より定期予防接種として実施されるに至った。
一方、輸入I P Vを接種している医師達は、国内に接種ガイドラインが存在しないため、情報の共有
・交換のためメーリングリストを組織し、米国C D C の勧告などをもとにE B Mに基づいた接種スケ
ジュールの共通化や副反応情報の共有をはかってきた。
今回は、これら臨床現場での経験を中心に、輸入I P Vの総括を報告したい。



13:20~13:40 採血や点滴の際に親に抱っこしてもらう方法の有効性について
一般演題4 ―実際の手技と成功率―
中村朱里( 看) 朝賀智恵子( 看) 櫻井淑子( 看) 新垣純子( 看)
森田多恵子( 看) 道之前直美( 看) 水口智美( 看) 小澤典子( 看)
くまがいこどもクリニック( 兵庫県尼崎市)
【目的】以前は採血や点滴の際、抑えることなく一人でできる子ども以外は、看護師が預かりタオ
ルで体を巻き押さえつけて行っていた。子どもの苦痛を少しでも軽減できるよう、また親と一緒に
行えば子どもも親も安心してできるであろうと考え、親に抱っこしてもらい処置を行う方法を取り
入れた。そこで、処置の際に親が抱っこすることは、付き添いや介助より子どもの頑張る力を引き
出せるか? 親子とも安心して処置を受けることができるか? 医療者側のメリット、デメリット
は何か? を目的とし検討した。
【対象・方法】2 0 1 1年9月から2 0 1 2年7月末までに、採血や点滴などの処置をした6 5 1例に対し、抱
っこによる処置、親へのアンケート、看護師による観察などについて検討した。
【結果】対象期間中の採血、点滴は6 5 1件、抱っこ処置は2 6 4件で全体の4 1% 。抱っこ処置を行った
年齢は1歳2 7件、2歳6 4件、3歳6 2件、4歳5 5件、5歳3 0件、6歳1 8件、7歳以上8件であり、2歳以上の
子どもは9 0% 以上が可能であった。また、1歳でも2 0% あまりが可能であった。抱っこ処置の際、
約7 0% の子どもはあまり動かずにでき、処置の際に子どもと一緒にいたいと希望した親は約60% で
あった。親に対するアンケートでは、一緒にできてよかった、安心してできた、今後も一緒がいい、
との回答がほとんどであった。
【考察】抱っこでの処置は利点が多く、有用性が高いと考えられる。しかし途中で中止となった例
もあるため、子どもの反応や親の協力性などを見極め、その子に応じた処置を選択していくことが
大切だと思う。また、親の協力が必要であるため、今後は処置前の親への説明をさらに配慮し、よ
り良いポジショニングができるよう工夫していきたい。今後も積極的に抱っこ処置を取り入れてい
きたい。



13:40~14:00 「鼻汁吸引器の無料貸し出し」の効果と患者満足度
一般演題5 ~「昨夜は咳鼻でまったく眠れなかった」というとき、どうしていますか?~
飯泉哲哉( 医) いいずみファミリークリニック( 静岡県富士市)
【目的】鼻をかめない乳幼児にとって、鼻汁による鼻閉や咳は睡眠を妨げる要因になる。一方で、
有効が証明される感冒薬は少ない。鼻汁吸引器を、在宅処置用としてレンタルすれば、夜間症状を
緩和させ、母子共々、楽になるのではと考えた。
【方法】レンタルの対象は診察時に必要と判断した患者。期間は2 0 1 1年1 0月~ 2 0 1 2年7月。返却時
にアンケート回収した。
【結果】9 6人にレンタルをして8 7人からアンケート集計できた。レンタルした季節は1 1月~ 12月の
冬のR Sウイルス流行シーズンに多かった。0歳~ 1歳の乳幼児への貸し出しが9 0% を占めた。92% の
保護者が症状が楽になったと回答した。
【考察】
1 . 乳幼児で、夜間の睡眠が妨げられている親子に対して、夜間鼻汁吸引してあげることは症状緩
和につながった。
2 . 外来小児診療のなかで、内服薬を処方するという医療に加え、適切な在宅医療処置を施すこと
ができる環境を提供することも重要であると思われた。



1 4 : 0 0 ~ 1 4 : 2 0 子育て支援を14:00~14:20 目的に小児科クリニックで実施した取り組み
一般演題6 中野希巳江(看)仁科美由紀(保)逢坂紀子(栄)高橋実和子(事)
広田晶子( 他) 高田慶応( 医)
たかだこどもクリニック( 奈良県生駒市)
【目的】当クリニックは病気を治す場だけでなく、スタッフ全員で子どもとその家族が成長し、安
心できる地域でのもうひとつの家となる場所となることを目指している。その一環として、クリニ
ックを活用した育児支援の催しを実施してきたので報告する。
【対象】主に子育て中の保護者および子ども( クリニックの患者以外でも参加可)
【方法】クリニックのフリースペースを利用し、スタッフや外部講師により、子育て支援を目的と
した種々の催しを無料で実施する。
【結果】『ベビーマッサージ』生後7 ヶ月までの児と保護者を対象に、タッチケアの指導を月1~ 2
回実施した。『きれいになる会』母親のリフレッシュを目的として、エステティシャンによる自宅
でできる簡単なお手入れの方法の講習会を月1~ 2回実施した。その他、予防接種や食事、ホームケ
ア、絵本に関する勉強会、親子で楽しめる行事などを実施した。
【考察】診療以外に保護者と接することで、より身近な存在となり、疑問や悩みを相談しやすい環
境をつくることができた。また、クリニックからの一方的な発信にとどまらず、保護者同士の交流
や意見交換の場にもなっていると思われた。【今後の展望】現在は母親対象の内容が多いが、父親
や祖父母あるいはそれ以外に対象者の幅を広げた内容も検討し「育児は母親のみならず地域全体で
行うもの」といった認識を広げるための一端を担いたい。



14:25~14:55 小児医療現場での子どもの貧困
セッション報告武内一(医) 耳原総合病院(大阪府堺市)・佛教大学福祉学部
和田浩( 医) 健和会病院
セッションでは、①「入門レクチュア・子どもの貧困の基礎知識」を行い、②自己負担発生で急性期の受診
率が減る、短期保険証の場合、任意予防接種の接種率が極端に減るといったデータと海外での貧困と子ども
の健康の関係に関する文献が紹介された。③産科のある医療機関から、児の医療保険が生活保護・母子世帯
の場合、母親の低年齢出産、喫煙、母乳栄養未確立が目立つことが示された。④電気・水道が止められてろ
うそく1本で生活していたなど、家庭訪問してはじめて見える現実、大阪府では妊婦を支える妊娠SOSを始め、
相談できない妊婦に対して「相談していいよ。誰もあなたを責めないよ」と伝えていることが紹介され、⑤
病院ERから、せっぱつまった子に出会いやすい中、外見やにおい、親の受診についてきた子どもの様子など
から気づける点はあることが、事例を通じて紹介された。⑥地方で経験した厳しい貧困事例が示され、それ
は行政・保育教育機関・児相など多機関で連携しチームで対応すれば、都市部でも見えてくると強調された。
⑦最後に、貧困の気づきとして、子どもの様子、親子関係、受診状況、問診票への記載具合、モンスターペ
アレント、ドクターショッピングなどが糸口になると紹介された。
この企画を通じて、実は子どもの貧困は見えていて、それを小児科チーム内や地域連携で相互に共
有することで、はっきり見えると確信がもてた。



14:55~15:25 子ども社会への入り口としての児童館
セッション報告栗山智之(医) 中標津こどもクリニック(北海道中標津町)
私たち小児医療従事者の責務は、もはや診察室にやってくる子どもの病気を治すことだけでなく、
彼らの心身の成長を見守る伴走者としての役割を付託されています。言い方を変えれば、社会全体
での次世代の育成に他職種とともに積極的に関わってゆくことで、その最終的な目的は自分らしく
伸びやかに次の社会を支えてゆく大人になってもらうことです。
しかし、昨今の子ども達を取り巻く環境は貧困と言わざるを得ず、とりわけ彼らが仲間と群れて成
長を遂げる場である「子ども社会」は失われています。今からそんな居場所を新たに築いて行く事
が困難である以上は、そんな子ども社会が何とか残っている既存の施設に地域の力を結集すべきで
あり、私達小児医が期待され役立つことができる場所が「児童館」です。
私たちはクリニックを出て地域社会に飛び込み、子どもの育ちに関わる他の職種の人達と連携し、
良い部分を持ち合って地域社会全体での子育てに参加する必要があります。私たちは「医療関係者
の中の、子どもを扱う真部分集合」ではなく、今や「子どもの育ちに関わる全ての職種の中の、健
康や発達を専門とする真部分集合」となるべきです。
そんな地域の一員として子ども社会に関わってゆく入り口としての児童館の意義や可能性について
知っていただければ幸いです。



15:25 東日本外来小児科学研究会世話人会報告
次回担当世話人挨拶( 東日本外来小児科学研究会)
閉会挨拶


以上
コメント

メモ:医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方についてH14.12医道審議会医道分科会H24.3改正

2012-10-28 23:00:00 | 倫理(医療倫理、弁護士倫理、企業倫理…)

 どのような職業でもそうですが、医師もまた、ひとの命に関わるその職の使命の重要性から、
思い社会的責任が規定されています。


****厚労省ホームページより******
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000024nfz-att/2r98520000024nvn.pdf

平成14年12月13日
医道審議会医道分科会
平成24年3月4日改正

医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について



(はじめに)
医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師その他の医療の担い手
と医療を受ける者との信頼関係に基づいて行われるものであり、医師、歯科医師その他の医
療の担い手は、医療を受ける者に対し良質かつ適切な医療を行うよう努めるべき責務がある。
また、医師、歯科医師は、医療及び保健指導を掌ることによって、公衆衛生の向上及び増
進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保することを任務としている。
医師法第7条第2項及び歯科医師法第7条第2項に規定する行政処分については、医師、
歯科医師が相対的欠格事由に該当する場合又は医師、歯科医師としての品位を損するような
行為があった場合に、医道の観点からその適性等を問い、厚生労働大臣はその免許を取り消
し、又は期間を定めて業務の停止を命ずるものである。
医師、歯科医師免許の取消又は業務の停止の決定については、基本的には、その事案の重
大性、医師、歯科医師として求められる倫理上の観点や国民に与える影響等に応じて個別に
判断されるべきものであり、かつ、公正に行われなければならない。
また、より公正な規範を確立する要請に基づき、一定の考え方を基本としつつ処分内容を
審議することが重要である。
このため、今後、当分科会が行政処分に関する意見を決定するにあたっては、次の「行政
処分の考え方」を参考としつつ、医師、歯科医師として求められる品位や適格性、事案の重
大性、国民に与える影響等を勘案して審議していくこととする。
この「行政処分の考え方」については、行政処分における処分内容が社会情勢・通念等に
より変化しうるべきものであると考えるため、必要に応じて、当分科会の議論を経ながら見
直しを図っていくものとする。
なお、行政処分は、医師、歯科医師の職業倫理、医の倫理、医道の昂揚の一翼を担うもの
でもあり、国民の健康な生活の確保を図っていくためにも厳正なる対処が必要と考えている。
国民の医療に対する信頼確保に資するため、刑事事件とならなかった医療過誤についても、
医療を提供する体制や行為時点における医療の水準などに照らして、明白な注意義務違反が
認められる場合などについては、処分の対象として取り扱うものとし、具体的な運用方法や
その改善方策について、今後早急に検討を加えることとする。



行政処分の考え方
(基本的考え方)
医師、歯科医師の行政処分は、公正、公平に行われなければならないことから、処分
対象となるに至った行為の事実、経緯、過ちの軽重等を正確に判断する必要がある。そ
のため、処分内容の決定にあたっては、司法における刑事処分の量刑や刑の執行が猶予
されたか否かといった判決内容を参考にすることを基本とし、その上で、医師、歯科医
師に求められる倫理に反する行為と判断される場合は、これを考慮して厳しく判断する
こととする。
医師、歯科医師に求められる職業倫理に反する行為については、基本的には、以下の
ように考える。
① まず、医療提供上中心的な立場を担うべきことを期待される医師、歯科医師が、そ
の業務を行うに当たって当然に負うべき義務を果たしていないことに起因する行為に
ついては、国民の医療に対する信用を失墜するものであり、厳正な対処が求められる。
その義務には、応招義務や診療録に真実を記載する義務など、医師、歯科医師の職業
倫理として遵守することが当然に求められている義務を含む。
② 次に、医師や歯科医師が、医療を提供する機会を利用したり、医師、歯科医師とし
ての身分を利用して行った行為についても、同様の考え方から処分の対象となる。
③ また、医師、歯科医師は、患者の生命・身体を直接預かる資格であることから、業
務以外の場面においても、他人の生命・身体を軽んずる行為をした場合には、厳正な
処分の対象となる。
④ さらに、我が国において医業、歯科医業が非営利の事業と位置付けられていること
にかんがみ、医業、歯科医業を行うに当たり自己の利潤を不正に追求する行為をなし
た場合については、厳正な処分の対象となるものである。また、医師、歯科医師の免
許は、非営利原則に基づいて提供されるべき医療を担い得る者として与えられるもの
であることから、経済的利益を求めて不正行為が行われたときには、業務との直接の
関係を有しない場合であっても、当然に処分の対象となるものである。



(事案別考え方)
1)医師法、歯科医師法違反(無資格医業、無資格歯科医業の共犯、無診察治療等)
医療は国民の健康に直結する極めて重要なものであることから、医師法、歯科医師
法において、医師、歯科医師の資格・業務を定め、医師、歯科医師以外の者が医業、
歯科医業を行うことを禁止し、その罰則規定は、国民保健に及ぼす危険性の大きさを
考慮して量刑が規定されているところである。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが国民の健康
な生活を確保する任務を負うべき医師、歯科医師自らが、医師法又は歯科医師法に違
反する行為は、その責務を怠った犯罪として、重い処分とする。


2)保健師助産師看護師法等その他の身分法違反(無資格者の関係業務の共犯等)
医療関係職種の身分法は、医師、歯科医師の補助者として医療に従事する者の資格
・業務について規定した法律である。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、医療にお
いて指導的な立場にある医師、歯科医師自らが、医療に関する基本的な法令に違反す
る行為は、医師、歯科医師が当然に果たすべき義務を怠った犯罪として、医師法、歯
科医師法違反と同様に、重い処分とする。


3)薬事法違反(医薬品の無許可販売又はその共犯等)
薬事法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保に必要な措置等を講じること
により、保健衛生の向上を図ることを目的としている。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健
康な生活を確保する任務を負う医師、歯科医師自らが、同法令に違反することは、基
本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらす行為であることから、重い処分とす
る。


4)麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反(麻薬、向精神
薬、覚せい剤及び大麻の不法譲渡、不法譲受、不法所持、自己施用等)
麻薬、覚醒剤等に関する犯罪に対する司法処分は、一般的には懲役刑となる場合が
多く、その量刑は、不法譲渡した場合や不法所持した麻薬等の量、施用期間の長さ等
を勘案して決定され、累犯者については、更に重い処分となっている。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、国民の健
康な生活を確保する任務を負う医師、歯科医師として、麻薬等の薬効の知識を有し、
その害の大きさを十分認識しているにも関わらず、自ら違反したということに対して
は、重い処分とする。


5)殺人及び傷害(殺人、殺人未遂、傷害(致死)、暴行等)
本来、人の命や身体の安全を守るべき立場にある医師、歯科医師が、殺人や傷害の
罪を犯した場合には厳正な処分をすべきと考えるが、個々の事案では、その様態や原
因が様々であることから、それらを考慮する必要がある。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、殺人、傷
害致死といった悪質な事案は当然に重い処分とし、その他の暴行、傷害等は、医師、
歯科医師としての立場や知識を利用した事案かどうか、事犯に及んだ情状などを考慮
して判断する。


6)業務上過失致死(致傷)
①交通事犯(業務上過失致死、業務上過失傷害、道路交通法違反等)
自動車等による業務上過失致死(傷害)等については、医師、歯科医師に限らず
不慮に犯し得る行為であり、また、医師、歯科医師としての業務と直接の関連性は
なく、その品位を損する程度も低いことから、基本的には戒告等の取り扱いとする。
ただし、救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案については、行政処分の対象
とし、行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、人
の命や身体の安全を守るべき立場にある医師、歯科医師としての倫理が欠けている
と判断される場合には、重めの処分とする。
②医療過誤(業務上過失致死、業務上過失傷害等)
人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する医師、歯科医師は、その業務の性
質に照し、危険防止の為に医師、歯科医師として要求される最善の注意義務を尽く
すべきものであり、その義務を怠った時は医療過誤となる。
司法処分においては、当然、医師としての過失の度合い及び結果の大小を中心と
して処分が判断されることとなる。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、明らか
な過失による医療過誤や繰り返し行われた過失など、医師、歯科医師として通常求
められる注意義務が欠けているという事案については、重めの処分とする。
なお、病院の管理体制、医療体制、他の医療従事者における注意義務の程度や生
涯学習に努めていたかなどの事項も考慮して、処分の程度を判断する。



7)猥せつ行為(強制猥せつ、売春防止法違反、児童福祉法違反、青少年育成条例違反等)
国民の健康な生活を確保する任務を負う医師、歯科医師は、倫理上も相応なものが
求められるものであり、猥せつ行為は、医師、歯科医師としての社会的信用を失墜さ
せる行為であり、また、人権を軽んじ他人の身体を軽視した行為である。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、特に、診
療の機会に医師、歯科医師としての立場を利用した猥せつ行為などは、国民の信頼を
裏切る悪質な行為であり、重い処分とする。


8)贈収賄(収賄罪、贈賄罪等)
贈収賄は、医師、歯科医師としての業務に直接関わる事犯ではないが、医師、歯科
医師としての品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付すること
とし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。
なお、特に医師としての地位や立場を利用した事犯など悪質と認められる事案は、
重めの処分とする。


9)詐欺・窃盗(詐欺罪、詐欺幇助、同行使等)
詐欺・窃盗は、医師、歯科医師としての業務に直接関わる事犯ではないが、医師、
歯科医師としての品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付する
こととし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。
なお、特に、医師、歯科医師としての立場を利用して、虚偽の診断書を作成、交付
するなどの方法により詐欺罪に問われるような行為は、業務に関連した犯罪であり、
医師、歯科医師の社会的信用を失墜させる悪質な行為であるため、重い処分とする。


10)文書偽造(虚偽診断書作成、同行使、虚偽有印公文書偽造等)
文書偽造は、医師、歯科医師としての業務に直接関わる事犯ではないが、医師、歯
科医師としての品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付するこ
ととし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。
なお、特に、虚偽の診断書を作成、交付した場合など医師、歯科医師としての立場
を利用した事犯等悪質と認められる事案は、重めの処分とする。


11)税法違反(所得税法違反、法人税法違反、相続税法違反等)
脱税は、医師、歯科医師としての業務に直接関わる事犯ではないが、医師、歯科医
師としての品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付することと
し、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。
また、医療は、非営利原則に基づいて提供されるべきものであることから、医業、
歯科医業に係る脱税は、一般的な倫理はもとより、医師、歯科医師としての職業倫理
を欠くものと認められる。このため、診療収入に係る脱税など医業、歯科医業に係る
事案は、重めの処分とする。


12)診療報酬の不正請求等(診療報酬不正請求、検査拒否(保険医等登録取消))
診療報酬制度は、医療の提供の対価として受ける報酬であり、我が国の医療保険制
度において重要な位置を占めており、これを適正に受領することは、医師、歯科医師
に求められる職業倫理においても遵守しなければならない基本的なものである。
診療報酬不正請求は、非営利原則に基づいて提供されるべき医療について、医師、
歯科医師としての地位を利用し社会保険制度を欺いて私腹を肥やす行為であることか
ら、診療報酬の不正請求等により保険医等の登録の取消処分を受けた医師、歯科医師
については、当該健康保険法に基づく行政処分とは別に医師法又は歯科医師法による
行政処分を行うこととする。
当該不正行為は、医師、歯科医師に求められる職業倫理の基本を軽視し、国民の信
頼を裏切り、国民の財産を不当に取得しようというものであり、我が国の国民皆保険
制度の根本に抵触する重大な不正行為である。したがって、その行政処分の程度は、
診療報酬の不正請求により保険医の取消を受けた事案については、当該不正請求を行
ったという事実に着目し、不正の額の多寡に関わらず、一定の処分とする。ただし、
特に悪質性の高い事案の場合には、それを考慮した処分の程度とする。
また、健康保険法等の検査を拒否して保険医の取消を受けた事案については、検査
拒否という行為が、社会保険制度の下に医療を行う医師、歯科医師に求められる職業
倫理から到底許されるべきでないことから、より重い処分を行うこととする。


以上

コメント

築地市場現在地再整備へ、誤った政策を正すとき。石原都知事辞任

2012-10-27 22:32:52 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
 石原都知事の辞任は、驚きました。

 石原都知事にとっては、築地市場の移転は、どうでもよかったことかもしれません。
 本来の知事であれば、自分がなした一大事業を完成を見届けたいと思うものです。
 それを途中で、それもまさに土壌汚染の問題が噴出している最中に匙を投げ出すのは、無責任のなにものでもないし、それを感じられていないということは、そもそも関心がなかったということでしょう。

 地元中央区、市場関係者は、翻弄されてきました。

 今回の辞任は、移転を賛成する人にも、現在地裁整備に賛成するひとにも、責任あるはずの都知事による大きな裏切りの行為と思います。

 ただ、とても良い転換の契機が訪れました。
 いまこそ、都政を正して下さる政治家を、選んで行きましょう!!

 さて、各紙は、どうとりあげているか、社説を見ておきます。

****朝日新聞(2012/10/26)******
http://www.asahi.com/paper/editorial20121026.html#Edit2
石原新党―国政復帰を言うのなら

 東京都の石原慎太郎知事が、知事の辞職届を出した。

 たちあがれ日本を母体に、近く新党を結成し、次の総選挙で国政復帰をめざすという。

 石原氏は、日本維新の会を率いる橋下徹・大阪市長ともたびたび会い、連携を模索してきた。両党を軸に、民主、自民両党に対抗する第三極の結集をめざすということだろう。

 混迷する政治に風穴をあけたい。そんな石原氏の思いは多としたいところだが、これまでの言動から、危うさを感じないわけにはいかない。

 新党の代表に就く石原氏に、あらためて三つの疑問をただしておきたい。

 第一に、石原氏の持論が、そのまま新党の政策になるのかどうかだ。

 たとえば尖閣諸島の問題だ。

 石原氏はこの春、「東京が尖閣を守る」として購入費の寄付を募った。島は混乱を恐れた政府が買い上げたが、結果として日中関係は悪化し、経済などに深刻な支障が出ている。

 石原氏が、その責任を感じているふうはない。

 きのうの記者会見でも、中国を挑発するように「シナ」と呼び、国政に復帰すれば島に漁船が避難する船だまりや灯台をつくると主張した。

 こうした姿勢は、問題をいっそうこじらせるものだ。新党も同じ方針を掲げるのか。それでどんな日中関係を描くのか。石原氏は明確に語るべきだ。

 さらに石原氏は、核兵器保有や徴兵制導入を主張したこともある。これも新党の政策になるというのか。

 第二に、連携相手とたのむ維新の会との間で、重要政策が大きく食い違うことだ。

 たとえば原発政策である。

 石原氏は会見で、原発維持を強調した。一方、維新の会は「2030年代までに既存の原発全廃をめざす」という総選挙の公約素案をまとめた。

 消費税をめぐっては、たちあがれ日本が増税に積極的なのに対し、維新の会は「消費税の地方税化」を争点に掲げる。

 基本政策がこれだけ違うのに、どう連携できるのか。野合と言われないよう、きちんと説明してもらいたい。

 第三に、知事の任期を2年半残して辞することの意味だ。

 肝いりの2020年のオリンピック招致などを、道半ばで放り出すことになる。無責任ではないか。

 都知事として高い支持率を誇った石原氏だが、政党の党首にふさわしいかどうか、こんどは全国民が見ている。

******東京新聞(2012/10/26)*****
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012102602000114.html
石原新党 政策本位の第三極に

2012年10月26日


 石原慎太郎東京都知事が知事を辞職し、新党を結成して国政復帰を目指す意向を表明した。石原氏の参戦が乱立気味の第三極勢力にどんな影響を及ぼすか。あくまで政策本位の政治行動を望みたい。

 「石原新党」をめぐっては数年来、浮かんでは消え、消えては浮かぶ状態が続いていた。それは民主党と自民党という二大政党に対する「失望感の裏返し」だった、と言ってもいいだろう。

 臨時国会開会は決まったものの、永田町では野田佳彦政権と自民、公明両党が特例公債法案の扱いをめぐって対立し、こう着状態が続いている。国民に高まる「いらいら感」を見極めたタイミングは絶妙といえる。

 三年前の総選挙では、民主党が掲げた「脱官僚・政治主導」「地域主権」の旗に多くの国民が期待を寄せた。だが失敗し、野田首相は公約を裏切って消費税を引き上げる法案を成立させた。

 自民党は安倍晋三総裁の下で政権奪還を目指しているが、本当に党が生まれ変わったのか、国民は半信半疑だ。だから石原氏への期待も一定程度、集まるだろう。

 石原氏は会見で霞が関の役所と官僚に対する不満をあからさまに語った。なぜ政府は発生主義、複式簿記の財務諸表を作らないのか。なぜ厚生労働省は東京都が独自に始めた認証保育所を認可しないのか。なぜ外務省は横田基地の日米共同使用に反対するのか。

 石原氏は都政を預かった十三年間「国の妨害に遭って苦しい思いをした」と吐露した。自民党政権時代に閣僚を務め、さらに都知事の経験も加わって霞が関の岩盤の厚さを痛感したに違いない。

 同じ問題意識は橋下徹大阪市長率いる日本維新の会や渡辺喜美代表のみんなの党、河村たかし名古屋市長の減税日本など第三極勢力に共通している。そこから「第三極の連携がどうなるか」がこれからの大きな焦点になる。

 そこで石原氏にぜひ望みたいのは、連携や協力関係は政策本位であってほしいという点だ。会見で自ら紹介した「米国防総省を刺激しないで」という外務省高官発言にあるように、強硬な外交路線を懸念する声もある。

 消費税の扱い、原発・エネルギー政策、尖閣諸島や竹島、北方領土問題、さらに環太平洋連携協定(TPP)についても、国民は「自分たちの意見を政党に託したい」と願っている。国民に明快な政策の選択肢を示せるかどうかが、石原新党の試金石になる。



*****読売新聞(2012/10/26)******
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20121025-OYT1T01498.htm
石原都知事辞任 国政復帰に何が期待できるか(10月26日付・読売社説)

 東京都の石原慎太郎知事が急きょ記者会見し、辞任を表明した。

 新党を結成し、次期衆院選に出馬するという。新党には、たちあがれ日本に所属する衆参両院議員の5人らが参加する。

 石原氏は、国民の生活が第一の小沢一郎代表との連携は否定し、橋下徹大阪市長の率いる日本維新の会などと連携していく考えを示した。自民、民主両党とは一線を画し、保守勢力の結集による「第3極」を狙っている。

 「最後のご奉公」という石原氏の行動が、与野党の不毛な対立で閉塞感の漂う国政に一石を投じることになるだろうか。

 今回の新党構想について、石原氏は4月、「白紙に戻す」と語っていた。一転して新党結成へ動いたのは、執念を見せていた尖閣諸島の購入問題が国有化で決着したからだと見られている。

 自民党総裁選で長男の石原伸晃前幹事長が敗北したため、自民党と対抗する新党の結成に支障がなくなったとの判断もあろう。

 80歳の石原氏が健康面も気遣いながら、国政で何を実現したいのかは、必ずしも明確ではない。

 石原氏は記者会見で、「硬直した中央官僚の支配する制度を変えなければ駄目だ」と官僚制度の在り方を激しく批判した。持論の憲法改正や沖縄県・尖閣諸島の実効支配の強化策なども力説した。

 国政の現状に対する問題意識には、うなずける点もある。

 ただ、かつて25年余も国会議員を務めた石原氏が、昨年4選を果たした知事を途中で辞め、国政復帰を目指すと言う以上、もっと具体的な政策と、それを実現する戦略を語ってもらいたい。

 たちあがれ日本の平沼代表は「西は橋下、東は石原」の“二枚看板”で風を起こしたいようだが、そう簡単な話ではない。

 橋下氏は、石原氏と一致する政策が多いとしながらも原発・エネルギー政策などで「軸がずれている」との見解を示した。やはり、政策のすりあわせが不可欠だ。

 石原、橋下両氏ら人気の高い首長をトップに据える新党が、国民から一定の期待を集めている。

 これは、「決められない政治」に陥っている既成政党に対する不信や不満が強いことの裏返しでもあろう。民主党内には、石原新党がさらに離党を誘発することに警戒感がある。自民党にも、保守票の分散への懸念があるという。

 石原新党が今後仕掛ける「政界再編」が、果たしてどんな波紋を広げるか見定めたい。

(2012年10月26日01時41分 読売新聞)

*****日経新聞(2012/10/26)*****
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47694520W2A021C1EA1000/
石原新党は何をめざすのか
2012/10/26付

 東京都の石原慎太郎知事が4期目の途中で都知事を辞任し、新党を結成して国政への復帰をめざす考えを明らかにした。次期総選挙に向け、たちあがれ日本を母体に保守勢力を結集し、民主、自民両党に対抗する第三極をつくるのが目標のようだ。

 1999年、都知事に就任した石原氏はトップダウンで政策を推進した。ディーゼル車への排ガス規制、東京外郭環状道路の都内区間の事業化などはその存在なしには実現しなかったと言っていい。裏目に出たのが、早々に経営悪化した新銀行東京の設立だった。

 若年者の高い失業率、災害に弱い都市構造、全国で最低の出生率など東京は様々な課題を抱えている。首都高速道路など社会資本の老朽化への対応も待ったなしだ。尖閣諸島の国有化の火付け役になり、2020年の夏季五輪の誘致活動もこれからが本番である。

 こうした問題を残したまま、新党の結成に動くことには無責任との批判も招くかもしれないが、知事の座をなげうつわけで、党首となって新党を結成に動くこと自体は否定されるべきものでもない。

 問題は、新党が何をするためのものかということだ。どんな政治理念のもとに、どのような政策を実現しようとするのか、という点を明確にする必要がある。

 焦点は、日本維新の会などとの連携による第三極の結集だ。選挙の争点になるとみられるのが(1)原発政策(2)消費税(3)環太平洋経済連携協定(TPP)――の3点だが、経済・財政、安全保障の基本的な方向での一致が必要だろう。

 哲学者のヘーゲルは「国家の大変革は、2度くりかえされるとき、人びとに正しいものとして公認されるようになる」「最初は偶然、2度目は現実」と書いた。マルクスはこのくだりを念頭に置き、歴史は2度現れる、1度目は悲劇、2度目は喜劇、と言い直した。

 石原氏の2度目の国政挑戦が変革につながるのかどうか。悲喜劇にならないためには理念による結合が求められる。



******毎日新聞(2012/10/26)*****
http://mainichi.jp/opinion/news/20121026k0000m070132000c.html
社説:「石原新党」結成へ 「第三極」理念が問われる
毎日新聞 2012年10月26日 01時31分

 突然の表明である。13年にわたり都政にあずかってきた石原慎太郎東京都知事が辞職を表明、自身を党首とする新党を結成し国政進出を図る考えを示した。

 民主、自民両党に対抗する勢力の結集をめぐる動きが活発化することは確実だ。石原氏が前向きとみられる、橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会との連携も焦点となる。いわゆる第三極の結集論議があくまで政策本位で進むかが問われよう。

 いきなりの辞職表明ではあったが、石原氏による新党構想はかねてくすぶっていた。

 25日午後3時からの緊急記者会見で石原氏は新党結成の目的に現憲法の破棄や中央集権の打破を挙げた。自らが仕掛けた尖閣諸島の都による購入問題は結局、政府による国有化という形で決着した。石原氏の長男、伸晃氏が自民党総裁選で敗北したため、親子が党首として戦う展開もなくなった。そんな状況も背中を押す要因となったのかもしれない。

 改憲、対中強硬路線で知られる石原氏率いる新党の参入はとりわけ「安倍自民」にとって無視できぬ競合相手の出現となる可能性もある。だが、都知事としての行動が結果的に対中関係悪化の呼び水となっただけに、新党による国政進出に不安がつきまとうことも否定できない。

 再挑戦している東京五輪招致などの懸案もある。任期を2年以上残して都政を去る以上、納得できる説明がいる。会見では「中央集権の官僚制度のシャッフル」「最後のご奉公」など言葉は躍ったが、政策の輪郭を伝えたとはいいがたい。具体的政策の早急な提示を求めたい。

 今後、改めて注目されるのは「第三極」結集の動向である。石原氏が強調した官僚支配打破などは確かに橋下氏らの主張とも通じる。

 だが、同じ改憲の立場ながら憲法問題で「(現行憲法は)廃棄したらいい」との石原氏の主張に橋下氏は「憲法を勝手に破棄するというのは権力者が絶対に踏み越えてならない一線」とこれまで反論してきた。

 また、次期衆院選の焦点となるエネルギー政策について維新の会は2030年代までに原発ゼロを目指す公約案を検討しているが、石原氏の立場は異なるはずだ。

 政策の方向が共通する新勢力の連携はむしろ自然かもしれない。だが、理念にかかわる部分の食い違いを放置して反既成政党の協力を掲げても政界再編を主導するような勢力たり得るかは疑問である。

 石原氏の辞職に伴い、東京都知事選も実施される。首都のかじ取り役を選ぶこれも重要な場となる。新勢力以上に問われるのは既成政党の力量である。


*****産経新聞(2012/10/26)*****
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121026/stt12102603200005-n1.htm
石原新党 新憲法への流れ歓迎する 首相は年内解散を決断せよ
2012.10.26 03:20 (1/2ページ)[主張]

 石原慎太郎東京都知事が知事を辞職し、新党を結成した上で国政に転じる意向を表明した。

 石原氏は占領下に制定された現行憲法を「解決しなければならない主要矛盾」と指摘し、新しい憲法を作るべきだと訴えた。官僚制の打破とともに、憲法改正を次期総選挙の最大の争点に据えて戦う意思を強調した。

 現在の政治の閉塞(へいそく)状況を転換しようとする石原氏の行動を高く評価したい。氏が投じる一石は、新たな政治状況をダイナミックに創出する意味を持ち、憲法改正を求める保守勢力を結集する重要な核となり得るからだ。

 ≪権利義務の均衡を欠く≫

 野田佳彦首相も「私は新憲法制定論者」と自著で語っていた。石原新党を機に、国家的課題の解決に向けて、衆院の年内解散・総選挙を速やかに決断するときだ。

 石原氏は現行憲法の矛盾点として、国民の意識に絶対平和という共同幻想を植え付け、権利と義務のバランスを失した「権利偏重」の規定が「日本人に我欲を培い、利己的にした」と指摘した。

 今年5月3日の憲法記念日までに、自民党は自衛隊を「国防軍」とし、石原氏と行動をともにする「たちあがれ日本」は「自衛軍」とするなど、それぞれの憲法改正案を公表した。「みんなの党」も「自衛権の在り方」を明確化するとしている。

 橋下徹大阪市長率いる「日本維新の会」も憲法改正を必要とする首相公選制などを打ち出した。にもかかわらず、民主党は平成17年に国民的議論の素材となる「憲法提言」を策定して以降、新たな憲法案を出していない。

 これらの問題提起を野田政権も真剣に受け止め、早急に具体的な改正案をまとめる必要がある。

最近の中国による海軍力の誇示や尖閣奪取を狙う度重なる領海侵犯、北朝鮮の核・ミサイル実験などをみれば、「平和を愛する諸国民の公正と信義」をうたう現行憲法がもはや通用しないことは、誰の目にも明らかだ。

 石原氏は、激しい時代の変化にも対応できる官僚システム作りの必要性も強調した。中央官僚は「継続性にこだわり、重要課題を先送りしてきたため」、いまだに尖閣諸島に大きな灯台や漁船が避難する船だまりもできていない事実を挙げ、この問題では自民党と協力する考えも示した。

 自民党の安倍晋三総裁は尖閣に公務員を配置する方針を打ち出している。野田政権は尖閣を国有化した以外は中国に配慮し、何もしていない。尖閣をいかに守るかの具体策を行動で示すべきだ。

 石原都政は足かけ14年に及ぶ。3期12年間に行われた都立高学区制全廃や国旗・国歌の指導徹底、道徳教育の充実などの教育改革は高い評価を得た。4期目の今年は「尖閣諸島を都が購入する」と発表し、尖閣国有化という重要な国策の決定につながった。

 ≪残された課題引き継げ≫

 だが、4期目は大規模災害やテロなどの緊急事態の際、都民の安全や首都機能をいかに守るかの危機管理・防災対策など難題が山積していた。東京五輪再招致の課題もある。

 辞任はこれらを途中で投げ出したと受け取られかねない。石原氏はこうした批判に応え、残された課題の引き継ぎもおろそかにしてはなるまい。

 石原氏が橋下氏との「連携、連帯」を強調しつつ新党結成を打ち出したことは、政界流動化の加速につながる可能性が高い。

 離党者が相次ぐ民主党は、衆院の単独過半数(239人)割れまで6人に迫り、国民新党(3人)との統一会派によって危機をしのごうとしている。だが、既に衆院議員の残り任期が10カ月余となった中で、野田政権は懸案を解決できず、国民の支持を失った。

 与党から石原新党への参加者が相次ぐ可能性も否定できない。過半数割れで内閣不信任決議案が可決され、首相が解散か総辞職を迫られる事態も想定される。

 離党者を防ぎ、政権基盤維持のための党内融和人事に走った結果が、田中慶秋前法相の辞任を招いた。「年内解散」を明示しないために自民、公明両党との協力関係も構築できていない。

 「内向き」の政権運営を続けるのではなく、新憲法作りを軸とする国のありようを競い、国民の信を問う姿勢こそ国政の閉塞状態を打破する上で不可欠である。



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築地市場移転再考の契機がやってきました。現在地再整備の実現を!石原知事:辞職表明

2012-10-26 13:03:07 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
 いよいよ、その時がきたように感じています。

 石原都知事の発言から始まった、築地市場移転の政策。
 転換の契機がやってきました。

 現在地での再整備を、実現しましょう!

******毎日新聞(2012/10/26)*****
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20121026ddlk13010188000c.html

石原知事:辞職表明 「唐突」に驚きと戸惑い /東京

毎日新聞 2012年10月26日 地方版


 25日に突然、辞職を表明して辞表を提出した石原慎太郎知事(80)。都内の関係者らは一様に驚きや戸惑いを隠さなかった。

 ◇五輪招致、全力継続−−議連や商議所

 石原知事は旗振り役として東京五輪の招致に取り組んできた。江東区は、20年の開催を目指し11月12日に招致応援イベントを開くが、区などとともにイベントを主催する区議会2020オリンピック招致議員連盟の星野博副会長は「招致できれば16の競技が行われる計画。区として盛り上がっており、辞職が影響することはない」と話した。

 招致活動に力を入れる東京商工会議所で五輪招致を担当する杉崎友則課長は「16年と20年の大会招致に強いリーダーシップを発揮された方なので少なからず辞職の影響があるかもしれないが、引き続き全力で取り組んでいく」と述べた。【山崎征克】

 ◇築地移転再考の契機−−住民訴訟弁護団

 築地市場(中央区)の移転は石原知事が先頭に立って推進してきたが、移転先の豊洲(江東区)は土壌汚染が判明し、移転を巡って、反対する仲卸業者らが都を相手取り複数の訴訟を起こしている。

 豊洲の土地購入費が不当に高いとして返還を求める住民訴訟などの弁護団事務局長を務める大城聡弁護士(38)は「移転は石原知事の強い個性で強引に進められてきた。汚染除去工事は始まっているが、移転自体の認可は農林水産省に申請すらしていない。今も新たな汚染が発覚し続けている中、次の知事選は都民が移転問題を考え直す契機になる」と期待を込めた。【稲田佳代】

 ◇名門高校復活改革、日比谷高OB称賛

 石原知事の都政改革の一つに「名門都立高校」の復活がある。60年代から導入された高校間格差の是正や受験競争緩和策で結果的に各校が特色を失って難関大学への進学も減ったため、都は日比谷高などを「進学指導重点校」に指定。実績ある教員を公募制で集め、進学指導研修を行うなど優遇した。

 元大蔵事務次官で同高同窓会長、保田博・資本市場振興財団理事長は「公立高校も切磋琢磨(せっさたくま)していくという改革は英断だった。母校は低迷した時代もあっただろうが、最近の卒業式で見る生徒や先生の表情は生き生きしている」と、石原知事の功績としてたたえた。【井崎憲】

 ◇「最後まで住民実態に無理解」

 ●横田基地訴訟関係者
19日の定例記者会見で米軍横田基地の騒音訴訟の動きを「エゴ」などと批判した石原知事に対し、23日に発言の撤回を求めた訴訟準備会代表、大野芳一さん(73)は「会見の発言ぶりからは想像できず、あまりに唐突」と驚いた。大野さんは「最後まで周辺住民の実態を理解してもらえなかった」とし、国政復帰について「一議員では何もできないだろうが、後継の知事と共に(軍民共用化への)政策変更を迫れば国の方針が揺らぐ可能性もある」と危惧した。

 ●がれき反対市民団体

 東京や埼玉など1都3県の市民らでつくる団体「ストップ!放射能汚染がれき首都圏ネットワーク」の共同代表、高瀬幸子さん(57)は「自分の都合で都政を放り出した無責任な人が国政に出る資格はない」と批判。震災がれき処理に寄せられた苦情に知事が「黙れと言えばいいんだ」と発言したことに触れ「命や環境、子供のことを真剣に考えていたと思えない。弱者やマイノリティーへの配慮や思いやりも見えなかった」と話した。【平林由梨】

 ◇上野観光連盟「パンダ見に来て」

 パンダの来日で来場者数が息を吹き返した上野動物園(台東区)。恩恵を受ける上野エリアの商店主でつくる上野観光連盟事務総長の茅野雅弘さん(52)は「観光にとって石原都政はプラスだった。『パンダも中国も嫌い』と言いつつも、最後は上野という地域の存亡にかかわる公の事業と理解して招致をやり遂げてくれた。一度くらいパンダを見に来てくれてもよかったけどね」と笑う。

 「都の行政は現場感覚がなくて都庁の高層階に座って観光を論じていた。それでも国政よりはまだまし。石原知事は外交面では現場に行くことを大事にしていたので、国政にその感覚を持ち込んで頑張ってほしい」とエールを送った。【稲田佳代】

 ◇各区長コメント

 ◇都議選まで続投かと/「辞め時」計ってた

 ◇課題あり無責任/来るべき時が来た

 中央区の矢田美英区長は「来年7月の都議選までされるのかと推測していたので驚いている。築地市場の移転後の町づくりについては2月に合意しており、影響はないと思う」と述べた。また、石原知事が新党結成の理由で国のシステム上の問題を指摘したことについて「知事が言われることはよく分かる。簡略化すべきことはしないと世界に追いつかない」と理解を示した。

足立区の近藤弥生区長は「あまりに唐突。都政の課題はまだまだある。任期途中のこのタイミング、今日という突然の辞職発表は、一都民としても無責任であると思わざるを得ません」などとコメント。

 台東区の吉住弘区長は「来るべき時が来たと思いました」とコメントした。

 世田谷区の保坂展人区長は「石原知事の最近の言動は、辞め時を計っているように見えた。今後の都政に残された課題はとても大きいと思う」とのコメントを出した。【平井桂月、稲田佳代】

〔都内版〕
コメント

環境基本法を読む。三つの基本理念と国及び私たちの責務。

2012-10-25 23:00:00 | 地球環境問題
 環境基本法を引き続き読んで行きます。

 今までに、一条、二条と進んできました(下記)。

 三条、四条、五条は、基本理念です。

****以下、条文*****
 
(環境の恵沢の享受と継承等)
第三条  環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。

(環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等)
第四条  環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。

(国際的協調による地球環境保全の積極的推進)
第五条  地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること及び我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、地球環境保全は、我が国の能力を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。

*****条文ひとまず終わり******


 条文を分解して、読んでみます。


(環境の恵沢の享受と継承等)
第三条

環境の保全は、

【理念】:環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること

及び

【現実問題】:生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていること

にかんがみ、


現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受する

とともに

人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように

適切に行われなければならない。



(環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等)
第四条  

環境の保全は、

社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減すること

その他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになること


によって、

健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、


環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、

及び

科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、


行われなければならない。



(国際的協調による地球環境保全の積極的推進)
第五条  

地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること

及び

我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていること(資源を海外に依存)

にかんがみ、

地球環境保全は、

我が国の能力を生かして、(応分の負担)

及び

国際社会において我が国の占める地位に応じて、

国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。




 以上、三つの基本理念を頭に入れて、次に、国、地方公共団体、事業者、国民の責務が書かれています。



(国の責務)
第六条  国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)
第七条  地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(事業者の責務)
第八条  事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2  事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。
3  前二項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。
4  前三項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

(国民の責務)
第九条  国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2  前項に定めるもののほか、国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。



 以上



******いままでのブログ記事 一条、二条について*****
 環境基本法、第二条、定義。

 「環境への負荷」「地球環境保全」「公害」「地球環境保全」とは。
 どのように読むか。

 立法者の意思を類推して読みます。




 なお、大事な点として、本年9月に環境省の外局として原子力規制委員会http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/0620seiritsu/houritsu.pdfができました。

 文言に明らかには書かれていませんが、条文の意味することに、放射性物質の汚染に関することも含まれると頭に入れて、読む必要があります。

 環境基本法(放射性物質による大気の汚染等の防止)
第十三条  放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置については、原子力基本法 (昭和三十年法律第百八十六号)その他の関係法律で定めるところによる。
 今までは、わざわざ、環境から「放射性物質」を除いていましたが、この環境基本法13条は過去の条文になります。すなわち、削除になります。





(定義)
第二条  この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

2  この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。



3  この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第十六条第一項を除き、以下同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。



 それぞれの条文を分解してみます。

<1項>

この法律において「環境への負荷」とは、

人の活動により環境に加えられる影響であって、

環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。



<2項>


この法律において「地球環境保全」とは、

人の活動による

【空のこととして】地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、

【海のこととして】海洋の汚染、

【陸のこととして】野生生物の種の減少

【陸海空を含んだ大集合】その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態

に係る環境の保全であって、

人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。



<3項>

この法律において「公害」とは、 


環境の保全上の支障のうち、

事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる


1)【空】大気の汚染、

2)【海】水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第十六条第一項を除き、以下同じ。)、

3)【陸】土壌の汚染、

4)【陸】騒音、

5)【陸】振動、

6)【陸】地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)

及び

7)【陸】悪臭によって、


A)人の健康

又は

B)生活環境
(人の生活に密接な関係のある財産
並びに
人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)

に係る

被害が生ずることをいう。



******ブログ2012-10-10 23:00:00第1条目的********

環境基本法を読む。

 その関連法体系は、こちらで示されています。

http://www.logistics.or.jp/green/map.html




環境基本法
(平成五年十一月十九日法律第九十一号)

 第一章 総則(第一条―第十三条)
 第二章 環境の保全に関する基本的施策
  第一節 施策の策定等に係る指針(第十四条)
  第二節 環境基本計画(第十五条)
  第三節 環境基準(第十六条)
  第四節 特定地域における公害の防止(第十七条・第十八条)
  第五節 国が講ずる環境の保全のための施策等(第十九条―第三十一条)
  第六節 地球環境保全等に関する国際協力等(第三十二条―第三十五条)
  第七節 地方公共団体の施策(第三十六条)
  第八節 費用負担等(第三十七条―第四十条の二)
 第三章 環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関等
  第一節 環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関(第四十一条―第四十四条)
  第二節 公害対策会議(第四十五条・第四十六条)
 附則


 さて、その第一条

 第一章 総則

(目的)
第一条  この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。


 この条文をどう読むか。

 環境法の授業で、学びました。


************************

この法律は、

A【規定内容(手段)】
�環境の保全について、
基本理念を定め、
並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、
�環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、

B【中間目的、直接目的】
環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、


C【最終目的】
もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに
人類の福祉に貢献することを

目的とする。

*************************


 言われてみると、目次も、そのような順でならんでいるのがわかります。
コメント

現実によく直面する問題、「政教分離原則」をいかに判断していくか。

2012-10-24 23:00:00 | シチズンシップ教育

 以下、今年の司法試験の憲法学の論文問題です。
 二時間で書く問題です。

 政教分離のものすごく悩ましい問題が出されていますが、おそらく行政に携わる方々は、この政教分離でこの司法試験問題に類する課題にに日々直面していることと推察します。

 

過去の政教分離関連の記載

憲法学回答:政教分離 地震被害で倒壊した神社再建のため町による再建資金貸出(審査基準有)は許されるか

政教分離原則「砂川市神社土地利用提供行為違憲訴訟」藤田宙靖裁判官補足意見 最高裁H22.1.20

政教分離原則 憲法20条3項により禁止される国の宗教的活動とは。津地鎮祭事件最高裁判例S52.7.13

 



 


******以下、法務省ホームページより******

論文式試験問題集[公法系科目第1問]


[公法系科目]
〔第1問〕(配点:100)

 A寺は,人口約1000人のB村にある寺である。伝承によると,A寺は,江戸時代に,庄屋を務めていた村一番の長者によって創建された。その後,A寺は,C宗の末寺となった。現在では,A寺はB村にある唯一の寺であり,B村の全世帯約300世帯のうち約200世帯がA寺の檀家である。A寺の檀家でない村民の多くも,初詣,節分会,釈迦の誕生日を祝う灌仏会かんぶつえ(花祭り)等の A寺の行事に参加しており,A寺は村民の交流の場ともなっている。また,A寺は,悩み事など心 理的ストレスを抱えている村民の相談も受け付けており,檀家でない村民も相談に訪れている。

 A寺の本堂は,江戸時代の一般的な寺院の建築様式で建てられており,そこには観音菩薩像が祀 られている。本堂では,礼拝供養といった宗教儀式ばかりでなく,上記のような村民の相談も行わ れている。本堂の裏手には,広い墓地がある。B村には数基のお墓があるだけの小さな墓地を持つ 集落もあるが,大きな墓地はA寺の墓地だけである。

 かつては一般に,寺院が所有する墓地に墓石を建立することができるのは,当該寺院の宗旨・宗 派の信徒のみであった。しかし,最近は,宗旨・宗派を一切問わない寺院墓地もある。A寺も,近 時,墓地のパンフレットに「宗旨・宗派は問わない」と記載していた。村民Dの家は,先祖代々, C宗の信徒ではない。Dは,両親が死亡した際に,A寺のこのパンフレットを見て,両親の遺骨を A寺の墓地に埋蔵し,墓石を建立したいと思い,住職にその旨を申し出た。「宗旨・宗派は問わない」 ということは,住職の説明によれば,C宗の規則で,他の宗旨・宗派の信者からの希望があった場 合,当該希望者がC宗の典礼方式で埋葬又は埋蔵を行うことに同意した場合にこれを認めるという ことであった(墓地等管理者の埋蔵等の応諾義務に関する法規制については,【参考資料】を参照。)。 しかし,Dは,この条件を受け入れることができなかったので,A寺の墓地には墓石を建立しなか った。

 山間にあるB村の主要産業は林業であり,多くの村民が村にある民間企業の製材工場やその関連 会社で働いている。20**年に,A寺に隣接する家屋での失火を原因とする火災(なお,失火者 に故意や重過失はなかった。)が発生したが,その折の強風のために広い範囲にわたって家屋等が延焼した。A寺では,観音菩薩像は持ち出せたものの,この火災により本堂及び住職の住居である庫裏(くり)が全焼した。炎でなめ尽くされたA寺の墓地では,木立,物置小屋,各区画にある水場の手桶やひ しゃく,各墓石に供えられた花,そして卒塔婆等が全て焼失してしまった。A寺の墓地は,消火後 も,荒涼とした光景を呈している。また,B村の村立小学校も,上記製材工場やその関連会社の建 物も全焼した。もっとも,幸いなことに,この火事で亡くなった人は一人もいなかった。

 A寺は,創建以来,自然災害等によって被害を受けることが全くなかったので,火災保険には入 っていなかった。A寺の再建には,土地全体の整地費用も含めて億単位の資金が必要である。通常, 寺院の建物を修理するなどの場合には,檀家に寄付を募る。しかし,檀家の人たちの多くが勤めて いた製材工場やその関連会社の建物も全焼してしまったため,各檀家も生計を立てることが厳しく なっている。それゆえ,檀家からの寄付によるA寺の建物等の再建は,困難であった。

 この年,B村村長は,全焼した村立小学校の再建を主たる目的とした補正予算を議会に提出した。 その予算項目には,A寺への再建助成も挙げられていた。補正予算審議の際に,村長は,「A寺は, 長い歴史を有するばかりでなく,村の唯一のお寺である。A寺は,宗旨・宗派を越えて村民に親し まれ,村民の心のよりどころでもあり,村の交流の場ともなっている。A寺は,村にとっても,村 民にとっても必要不可欠な,言わば公共的な存在である。できる限り速やかに再建できるよう,A 寺には特別に助成を行いたい。その助成には,多くの村民がお墓を建立しているA寺の墓地の整備 も含まれる。墓地は,亡くなった人の遺骨を埋蔵し,故人を弔うためばかりでなく,先祖の供養と いう人倫の大本といえる行為の場である。それゆえ,速やかにA寺の墓地の整備を行う必要がある。」 と説明した。

 A寺への助成の内訳は,墓地の整備を含めた土地全体の整地の助成として2500万円(必要な 費用の2分の1に相当する額),本堂再建の助成として4000万円(必要な費用の4分の1に相当 する額),そして庫裏再建の助成として1000万円(必要な費用の2分の1に相当する額)となっ ている。補正予算は,村議会で議決された。その後,B村村長はA寺への助成の執行を終了した。

〔設問1〕
Dは,今回のB村によるA寺への助成は憲法に違反するのではないかと思い,あなたが在籍す る法律事務所に相談に来た。
あなたがその相談を受けた弁護士である場合,どのような訴訟を提起するか(なお,当該訴訟 を提起するために法律上求められている手続は尽くした上でのこととする。)。そして,その訴訟 において,あなたが訴訟代理人として行う憲法上の主張を述べなさい。

〔設問2〕
設問1における憲法上の主張に関するあなた自身の見解を,被告側の反論を想定しつつ,述べ なさい。

【参考資料】墓地,埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)(抄録)
第1条 この法律は,墓地,納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が,国民の宗教的感情に適合し,且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から,支障なく行われることを目的とする。

第13条 墓地,納骨堂又は火葬場の管理者は,埋葬,埋蔵,収蔵又は火葬の求めを受けたときは,正当の理由がなければこれを拒んではならない。

以上

********************


 参考になる考え方として、砂川市「空知太(そらちぶと)神社」無償提供違憲判決における行政学 藤田宙靖裁判官補足意見があります。

********最高裁ホームページより********
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100120164304.pdf



裁判官藤田宙靖の補足意見は,次のとおりである。

 私は,多数意見に賛成するが,本件利用提供行為が政教分離原則に違反すると考えられることにつき,以下若干の補足をしておくこととしたい。

1 国又は公共団体が宗教に関係する何らかの活動(不作為をも含む。)をする 場合に,それが日本国憲法の定める政教分離原則に違反しないかどうかを判断する に際しての審査基準として,過去の当審判例が採用してきたのは,いわゆる目的効 果基準であって,本件においてもこの事実を無視するわけには行かない。ただ,こ の基準の採用の是非及びその適用の仕方については,当審の従来の判例に反対する 見解も学説中にはかなり根強く存在し,また,過去の当審判決においても一度なら ず反対意見が述べられてきたところでもあるから,このことを踏まえた上で,現在 の時点でこの問題をどう考えるかについては,改めて慎重な検討をしておかなけれ ばならない。

 この基準を採用することへの批判としては,周知のように,当審においてこの基 準が最初に採用された「津地鎮祭訴訟判決」(最高裁昭和46年(行ツ)第69号 同52年7月13日大法廷判決・民集31巻4号533頁)における5裁判官の反 対意見と並び,「愛媛玉串料訴訟判決」(最高裁平成4年(行ツ)第156号同9 年4月2日大法廷判決・民集51巻4号1673頁)における高橋,尾崎両裁判官 の意見がある。とりわけ,尾崎意見における指摘,すなわち,日本国憲法の政教分 離規定の趣旨につき津地鎮祭訴訟判決において多数意見が出発点とした「憲法は,信教の自由を無条件に保障し,更にその保障を一層確実なものとするため,政教分 離規定を設けたものであり,これを設けるに当たっては,国家と宗教との完全な分 離を理想とし,国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとしたものであ る」という考え方を前提とすれば,「国家と宗教との完全分離を原則とし,完全分 離が不可能であり,かつ,分離に固執すると不合理な結果を招く場合に限って,例 外的に国家と宗教とのかかわり合いが憲法上許容されるとすべきもの」と考えられ る,という指摘については,私もまた,これが本来筋の通った理論的帰結であると 考える。これに対して,これまでの当審判例の多数意見が採用してきた上記の目的 効果基準によれば,憲法上の政教分離原則は「国家が宗教とのかかわり合いを持つ ことを全く許さないとするものではなく,宗教とのかかわり合いをもたらす行為の 目的及び効果に鑑み,そのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし 相当とされる限度を超える場合に(初めて)これを許さないとするもの」であると いうことになるが(括弧内は藤田による補足),このように,いわば原則と例外を 逆転させたかにも見える結論を導くについて,従来の多数意見は必ずしも充分な説 明をしておらず,そこには論理の飛躍がある,という上記の尾崎意見の指摘には, 首肯できるものがあるように思われる。

 ただ,目的効果基準の採用に対するこのような反対意見にあっても,国家と宗教 の完全な分離に対する例外が許容されること自体が全く否定されるものではないの であり,また,これらの見解において例外が認められる「完全分離が不可能であ り,かつ分離に固執すると不合理な結果を招く場合」に当たるか否かを検討するに 際して,目的・効果についての考慮を全くせずして最終的判断を下せるともいい切 れないように思われるのであって,問題は結局のところ,「そのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超える」か否かの判断に 際しての「国家の宗教的中立性」の評価に関する基本的姿勢ないし出発点の如何に 懸ることになるともいうことができよう。このように考えるならば,仮に,理論的 には上記意見に理由があると考えるとしても,本件において,敢えて目的効果基準 の採用それ自体に対しこれを全面的に否定するまでの必要は無いものと考える。但 し,ここにいう目的効果基準の具体的な内容あるいはその適用の在り方について は,慎重な配慮が必要なのであって,当該事案の内容を十分比較検討することな く,過去における当審判例上の文言を金科玉条として引用し,機械的に結論を導く ようなことをしてはならない。こういった見地から,本件において注意しなければ ならないのは,例えば以下のような点である。

2 本件において合憲性が問われているのは,多数意見にも述べられているよう に,取り立てて宗教外の意義を持つものではない純粋の神道施設につき,地方公共 団体が公有地を単純にその敷地として提供しているという事実である。私の見ると ころ,過去の当審判例上,目的効果基準が機能せしめられてきたのは,問題となる 行為等においていわば「宗教性」と「世俗性」とが同居しておりその優劣が微妙で あるときに,そのどちらを重視するかの決定に際してであって(例えば,津地鎮祭 訴訟,箕面忠魂碑訴訟等は,少なくとも多数意見の判断によれば,正にこのような ケースであった。),明確に宗教性のみを持った行為につき,更に,それが如何な る目的をもって行われたかが問われる場面においてではなかったということができ る(例えば,公的な立場で寺社に参拝あるいは寄進をしながら,それは,専ら国家 公安・国民の安全を願う目的によるものであって,当該宗教を特に優遇しようとい う趣旨からではないから,憲法にいう「宗教的活動」ではない,というような弁明を行うことは,上記目的効果基準の下においても到底許されるものとはいえない。 例えば愛媛玉串料訴訟判決は,このことを示すものであるともいえよう。)。

 本件の場合,原審判決及び多数意見が指摘するとおり,本件における神社施設 は,これといった文化財や史跡等としての世俗的意義を有するものではなく,一義 的に宗教施設(神道施設)であって,そこで行われる行事もまた宗教的な行事であ ることは明らかである(五穀豊穣等を祈るというのは,正に神事の目的それ自体で あって,これをもって「世俗的目的」とすることは,すなわち「神道は宗教に非 ず」というに等しい。)。従って,本件利用提供行為が専ら特定の純粋な宗教施設 及び行事(要するに「神社」)を利する結果をもたらしていること自体は,これを 否定することができないのであって,地鎮祭における起工式(津地鎮祭訴訟),忠 魂碑の移設のための代替地貸与並びに慰霊祭への出席行為(箕面忠魂碑訴訟),さ らには地蔵像の移設のための市有地提供行為等(大阪地蔵像訴訟)とは,状況が明 らかに異なるといわなければならない(これらのケースにおいては,少なくとも多 数説は,地鎮祭,忠魂碑,地蔵像等の純粋な宗教性を否定し,何らかの意味での世 俗性を認めることから,それぞれ合憲判断をしたものである。)。その意味におい ては,本件における憲法問題は,本来,目的効果基準の適用の可否が問われる以前 の問題であるというべきである。

3 もっとも,原審認定事実等によれば,本件神社は,それ自体としては明らか に純粋な神道施設であると認められるものの,他方において,その外観,日々の宗 教的活動の態様等からして,さほど宗教施設としての存在感の大きいものであるわ けではなく,それゆえにこそ,市においてもまた,さして憲法上の疑義を抱くこと もなく本件利用提供行為を続けてきたのであるし,また,被上告人らが問題提起をするまでは,他の市民の間において殊更にその違憲性が問題視されることも無かっ た,というのが実態であったようにもうかがわれる。従って,仮にこの点を重視す るならば,少なくとも,本件利用提供行為が,直ちに他の宗教あるいはその信者ら に対する圧迫ないし脅威となるとまではいえず(現に,例えば,本件氏子集団の役 員らはいずれも仏教徒であることが認定されている。),これをもって敢えて憲法 違反を問うまでのことはないのではないかという疑問も抱かれ得るところであろ う。そして,全国において少なからず存在すると考えられる公有地上の神社施設に つき,かなりの数のものは,正にこれと類似した状況にあるのではないか,とも推 測されるのである。このように,本件における固有の問題は,一義的に特定の宗教 のための施設であれば(すなわち問題とすべき「世俗性」が認められない以上)地 域におけるその存在感がさして大きなものではない(あるいはむしろ希薄ですらあ る)ような場合であっても,そのような施設に対して行われる地方公共団体の土地 利用提供行為をもって,当然に憲法89条違反といい得るか,という点にあるとい うべきであろう。

 ところで,上記のような状況は,その教義上排他性の比較的希薄な伝統的神道の 特色及び宗教意識の比較的薄い国民性等によってもたらされている面が強いように 思われるが,いうまでもなく,政教分離の問題は,対象となる宗教の教義の内容如 何とは明確に区別されるべき問題であるし,また,ある宗教を信じあるいは受容し ている国民の数ないし割合が多いか否かが政教分離の問題と結び付けられるべきも のではないことも,明らかであるといわなければならない。憲法89条が,過去の 我が国における国家神道下で他宗教が弾圧された現実の体験に鑑み,個々人の信教 の自由の保障を全うするため政教分離を制度的に(制度として)保障したとされる
 
 趣旨及び経緯を考えるとき,同条の定める政教分離原則に違反するか否かの問題 は,必ずしも,問題とされている行為によって個々人の信教の自由が現実に侵害さ れているか否かの事実によってのみ判断されるべきものではないのであって,多数 意見が本件利用提供行為につき「一般人の目から見て,市が特定の宗教に対して特 別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ないものである」 と述べるのは,このような意味において正当というべきである。

4 なお,本件において違憲性が問われているのは,直接には,市が公有地上に ある本件神社施設を撤去しないという不作為についてである(当初市が神社施設の 存する本件土地を取得したこと自体が違憲であるというならば,その行為自体が無 効であって,そもそも本件土地は公有地とは認められないということにもなりかね ないが,被上告人(原告)らはこのような主張をするものではない。)。この場 合,その不作為を直ちに解消することが期待し得ないような特別の事情(例えば, 施設の撤去自体が他方で信教の自由に極めて重大な打撃を与える結果となることが 見込まれるとか,敷地の民有化に向け可能な限りの努力をしてきたものの,歴史的 経緯等種々の原因から未だ成功していない等々の事情が考えられようか。)がある 場合に,現に公有地上に神社施設が存在するという事実が残っていること自体をも って直ちに違憲というべきか否かは,なお検討の余地がある問題であるといえなく はなかろう。しかし,本件において,上告人(被告)はこのような特別の事情の存 在については一切主張・立証するところがなく,むしろ,そういった事情の存在の 有無を問うまでもなく本件利用提供行為は合憲であるとの前提に立っていることは 明らかであるから,この点については,原審の釈明義務違反を問うまでもなく,多 数意見のように,本件利用提供行為が憲法89条に違反すると判断されるのもやむを得ないところといわなければならない。

以上

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『予防接種制度の見直しについて(第二次提言)』H24.5.23厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会

2012-10-23 23:00:00 | 小児医療

 予防接種のあり方は、子ども達の健康を守るうえで最も重要な政策のひとつです。

 国の検討の進み具合をみるため、『予防接種制度の見直しについて(第二次提言)』平成24年5月23日を読みます。

 提言の概要図は、以下。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002b6r0-att/2r9852000002b6sh.pdf



****厚労省ホームページより*****
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002b6r0-att/2r9852000002b6wl.pdf



予防接種制度の見直しについて(第二次提言)

平成24年5月23日
厚生科学審議会
感染症分科会
予防接種部会


はじめに
○ 平成22年2月19日の「予防接種制度の見直しについて(第一次提言)」以降、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会で実施してきた議論、23年7月25日の「これまでの主な議論の中間的な状況の整理等について」、同年9月29日に厚生労働省から示された「予防接種制度の見直しの方向性について」等を踏まえ、予防接種制度の見直しに向けた第二次提言を以下の通り取りまとめた。
○ 今後、新たなワクチンを予防接種法の対象とし、定期接種として実施するために必要な財源の確保や、接種費用の負担のあり方等に関して、市町村等関係者と十分に調整しつつ検討を進め、予防接種法の改正法案を早期に国会に提出することを期待する。


1.予防接種制度の見直しの目的
○ 予防接種は、感染症対策として最も基本的かつ効果的な対策の一つであり、国民の生命と健康を守る重要な手段である。
特に、子どもの予防接種については、次代を担う子どもたちを感染症から守り、健やかな育ちを支える役割を果たすものである。
○ 我が国では、副反応の問題などを背景に予防接種行政に対して
慎重な対応が求められてきた経緯から、世界保健機関が勧告しているワクチンが予防接種法の対象となっておらず、先進諸国と比べて公的に接種するワクチンの種類が少ない、いわゆるワクチン・ギャップの状態が生じている。
これに対応するため、ワクチンの安全性・有効性や費用対効果なども考慮しつつ、必要なワクチンについては定期接種として位置づける。
○ 予防接種施策の専門性や一貫性・継続性が確保されにくいという課題に対応するため、平成21年12月に設置した厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の取組を発展的に引き継ぎ、予防接種施策を中長期的な観点から総合的かつ恒常的に評価・検討する仕組みの導入が必要である。
また、予防接種は、国民全般を対象に一定の公的関与により実施する一方、避けることのできない一定の副反応のリスクを伴うことを踏まえ、幅広い国民の理解を得ながら透明性・客観性のある制度とするとともに、その適正な実施を確保することが重要である。

2.予防接種の総合的な推進を図るための計画(仮称)
○ 予防接種施策の推進に当たって、その一貫性や継続性が確保されるためには、国民、国、地方自治体、医療機関、ワクチンの研究機関・製造販売業者・卸売販売業者などの関係者が、予防接種施策全般についての中長期的なビジョンを共有し、各々の役割を認識しつつ、連携・協力していくことが必要である。
○ そのため、予防接種に関する評価・検討組織における国民的な議論を経た上で、予防接種の総合的な推進を図るための計画(仮称)を策定することが適当である。
また、予防接種を取り巻く状況の変化や施策の効果に関する評価などを踏まえ、5年に1度を目途に計画の見直しを行うものとする。
○ その内容については、
・ 予防接種施策の基本的な方向
・ 関係者の役割分担
・ 予防接種施策の推進に係る目標
・ 予防接種の適正な実施のための方策
・ 予防接種の有効性及び安全性の向上
などが考えられる。


3.予防接種法の対象となる疾病・ワクチンの追加
○ 平成23年3月11日のワクチン評価に関する小委員会報告書の通り、医学的・科学的観点からは、7ワクチン(子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌、水痘、おたふくかぜ、成人用肺炎球菌、B型肝炎)について、広く接種を促進していくことが望ましい。
○ ただし、新たなワクチンを予防接種法の対象とし、定期接種として実施するためには、その前提として、関係者の連携と協力によるワクチン接種の円滑な導入と安全かつ安定的なワクチン供給・実施体制の確保や、継続的な接種に要する財源の確保が必要である。
○ 7ワクチンのうち、子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌の3ワクチンについては、平成22年10月6日の予防接種部会意見書を受けて、当面の対応として子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金事業を全ての市町村で実施しており、23年度4次補正予算に基づき24年度末まで事業を継続できるようになっているが、25年度以降も円滑な接種を行えるようにする必要がある。
○ ロタウイルスワクチンについては、平成23年7月1日及び24年1月18日に2種類のワクチンが薬事法の製造販売承認を受けたことを踏まえ、24年内を目途に、専門家による医学的・科学的観点からの評価を行っているところである。
○ この他の疾病・ワクチンについても、当該疾病の流行やワクチンの開発・生産の状況などを踏まえ、今後、評価・検討組織で評価を行う。



4.予防接種法上の疾病区分
○ 疾病やワクチン効果の特性に応じて、集団予防に重点を置く1類疾病と個人予防に重点を置く2類疾病に分類し、接種を受ける努力義務や接種勧奨という公的関与に差を設け、健康被害救済等に関しきめ細かく対応することには一定の合理性があり、また、平成13年の予防接種法改正時に高齢者を対象とするインフルエンザワクチンを定期接種に位置づける際に2類疾病を導入した経緯などを踏まえ、疾病区分に係る2類型を維持することが適当である。
ただし、疾病区分の考え方は国民には分かりにくいという課題もあるため、国民への分かりやすい情報提供に努めることが必要である。
○ 疾病区分の要件及び7疾病を予防接種法の対象に位置づけることとした場合の分類案は、以下の通りとする。
・ 1類疾病
要件①:集団予防を図る目的で予防接種を行う疾病【Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、おたふくかぜ】
要件②:致命率が高いこと、又は感染し長期間経過後に重篤 になる可能性が高い疾病になることによる、重大な社会的損失の防止を図る目的で予防接種を行う疾病【ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎】
・ 2類疾病:個人予防目的に比重を置いて、個人の発病・重症化防止及びその積み重ねとしての集団予防を図る目的で予防接種を行う疾病【成人の肺炎球菌感染症】
○ 新たな感染症の発生、新たなワクチンの開発、予防接種の安全性や有効性に関する知見の集積、予防接種を実施する体制の整備など、予防接種を取り巻く環境の変化に応じ、今後は評価・検討組織による総合的・恒常的な評価・検討に基づき、機動的に対象疾病を見直すため、2類疾病についても1類疾病と同様に、政令で対象疾病を追加できるようにすることが適当である。
○ 「1類・2類疾病」という疾病区分の名称について、感染症法の「1~5類感染症」と混同しやすいとの医療現場等からの指摘を踏まえ、実用性や法令上の用例を勘案し、例えば、「A類・B類疾病」と変更することを検討する。


5.接種費用の負担のあり方
○ 予防接種法の定期接種は市町村の支弁により実施されている自治事務であり、地域住民の健康対策の一環として長年にわたる市町村の尽力で安定的に運営されている。
また、経済的理由により接種費用を負担することができない場合を除き、接種時に実費を徴収できるとされているが、その一方でほとんどの市町村においては、実費の徴収を行わず、公費で負担している。
○ 一方、定期接種化を検討している3ワクチン(子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌)については、平成22年度から公費負担対象者が9割相当となるよう必要な経費を公費負担する仕組みを国として導入することにより、接種の促進を図っている。
○ 接種費用の負担のあり方については、以上のような事情にも留意し、市町村等関係者と十分に調整しつつ検討するべきである。
○ 予防接種に公的保険を適用することについては、医療保険制度の目的に関わる重要な変更となるだけでなく、がん検診や乳幼児健診など他の地域保健の事業との関係の整理や、医療保険財政が極めて厳しい状況にあるなどの課題があり、国民的な議論が必要である。
○ 国は、予防接種の意義と効果について、医療経済的な分析を含め国民に分かりやすく周知し、費用負担への理解の促進に努める。


6.ワクチン価格等の接種費用
○ 我が国の現下の厳しい財政状況を踏まえ、今後新たなワクチンを予防接種法の対象とし、定期接種として実施するに当たっては、適正な実施の確保を前提に、より一層効率性の観点が重要となる。
○ 新たなワクチンの追加に向けた評価を行う際には、評価・検討組織は、医療経済の観点からの費用対効果分析を行う。
○ 予防接種施策の実施に当たっては、国は、ワクチン価格等の実態や、他の先進諸国において公的に接種されるワクチンとの接種費用の差などを勘案しつつ、予防接種施策の効率的な実施のために必要な措置を講ずる。
地方自治体は、委託契約価格の地域差などを勘案しつつ、市町村によるワクチンの入札・一括購入方式等の先進的な事例も参考に、予防接種事業の効率的な実施に努める。
○ なお、現状では、卸売販売業者から医療機関への実販売価格や市町村と医療機関との委託契約価格などの実態を十分に把握できていないため、地方自治体、医療機関、卸売販売業者等の関係者の協力を得て、ワクチン価格等の接種費用の実態調査を行う必要がある。
その際、薬価基準改正の基礎資料を得ることを目的とした医薬品価格調査と併せて実施するなど、調査対象者の負担軽減に留意する。
○ 接種費用のうち問診料等については、診療報酬点数を参考にしていることが多い。今後、委託契約価格の実態について地方自治体への調査を実施するなど、適切な問診料等の水準のあり方について検討する。


7.予防接種に関する評価・検討組織
○ 予防接種施策全般について、中長期的な課題設定の下、科学的な知見に基づき、総合的・恒常的に評価・検討を行い、厚生労働大臣に提言する機能を有する評価・検討組織を設置する。
○ 評価・検討組織の構成については、小児科医、感染症専門家、疫学専門家等の医療関係の専門家、地方自治体、経済学者、法律家、メディアなどを委員とし、発言及び提案はできるが議決には加われない参考人として、政府関係機関代表、学会、ワクチンの製造販売業者や卸売販売業者、被接種者の立場を代表する方などが常時参加し、国民的な議論を行う場とする。さらに、委員・参考人以外から発言を求めることについても、適切な方法を検討する。
○ 評価・検討組織の運営については、定期性・継続性を確保する観点から、委員の任期に関して中長期的な継続性を担保するとともに、年2~4回程度の開催を前提に、計画的な議題・日程設定を行う。また、委員の選任に係る公募枠の導入など、公開性・透明性を一層高めるための方策を検討する。
評価・検討組織の運営方法等の詳細については、評価・検討組織で審議し決定する。
○ 評価・検討組織は、予防接種行政のうち予防接種事業、研究開発振興、生産・流通の分野を担当する。他方、ワクチンの治験・承認審査及び市販後の安全対策・監視指導は薬事・食品衛生審議会が、予防接種による健康被害救済に係る認定は疾病・障害認定審査会が、それぞれこれまで通り担当する。
○ 評価・検討組織の具体的な審議事項としては、
・ 予防接種の総合的な推進を図るための計画(仮称)
・ 予防接種法の対象疾病・ワクチン、接種対象者、接種スケジュール、接種の実施方法
・ 副反応報告等に基づく有効性・安全性の再評価
・ 予防接種の意義やリスク等について、国民、報道機関、医療関係の専門家等に対する一元的な情報提供
・ 予防接種の実施状況や健康被害救済制度のあり方の評価を含む、予防接種の適正な実施の確保
などが考えられる。なお、新たな疾病・ワクチンのみならず、既に予防接種法の対象となっている疾病・ワクチンについても、当該疾病の流行状況などを踏まえ、定期接種として実施する必要性について恒常的に検証を行う必要がある。
○ 評価・検討組織の位置づけについては、現在の厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会を発展的に充実させるとともに、予防接種部会の下に設置されているワクチン評価に関する小委員会等、予防接種部会とは独立して設置されているワクチン産業ビジョン推進委員会、予防接種後副反応報告・健康状況調査検討会等を統合する。
また、評価・検討組織での科学的な知見に基づく審議を支えるため、厚生労働省健康局が医薬食品局及び国立感染症研究所の協力・連携の下、評価・検討組織の事務局を務めるとともに、当該事務局体制の充実・強化を図る。評価・検討組織は、関係行政機関に必要な情報の提供を求めることができることとする。
○ 評価・検討組織に常設又は臨時の専門委員会を設置する。専門委員会は、重要な議案について専門的見地から評価・検討組織における決議案をとりまとめるが、専門委員会が検討を行い厚生労働大臣に提言することも可能とする。専門委員会の委員の任期に関しても中長期的な継続性を担保する。
専門委員会の具体的な検討事項、委員構成、運営方法等の詳細については、今後検討する。


8.関係者の役割分担
○ 予防接種施策の適正な実施のための関係者の役割分担については、以下のようなものが考えられるが、今後、評価・検討組織における議論を経た上で、予防接種の総合的な推進を図るための計画(仮称)で定める。
○ 国は、ワクチンの安全性・有効性・費用対効果等を踏まえた予防接種の対象疾病及び対象者の決定、ワクチンの承認審査、ワクチンの研究開発の促進と安定供給の確保、副反応報告の収集・評価、健康被害の救済、感染症サーベイランス、迅速な情報収集と分かりやすい情報提供、接種率の向上に向けた取組、その他予防接種制度の適正な運営の確保等を担う。
○ 都道府県は、予防接種に関わる医療関係者等の研修、緊急時におけるワクチンの円滑な供給の確保や連絡調整、健康被害の救済、予防接種の安全性・有効性の向上を図るための調査への協力等を担う。
○ 市町村は、接種の実施主体として、適正かつ効率的な予防接種の実施の確保、健康被害の救済、予防接種の安全性・有効性の向上を図るための調査への協力、住民への情報提供等を担う。
○ 医療関係者は、ワクチンの適正な接種、ワクチンの安全性・有効性等に関する被接種者への情報提供、入念な予診、迅速な副反応報告等の予防接種の安全性・有効性の向上を図るための調査への協力など、適切な予防接種の実施を担う。
○ ワクチンの製造販売・卸売販売業者は、安全かつ有効なワクチンの研究開発及び安定的な供給、副反応情報の収集・報告等を担う。


9.副反応報告制度、健康被害救済制度
○ 予防接種施策の適正な推進を図るためには、副反応報告を幅広く求め、専門家による調査・評価を行った上で、必要に応じて迅速かつ適切な措置を講じることや、国民や報道機関への積極的な情報提供が重要である。
○ このため、予防接種法の対象となる予防接種に係る副反応報告を医療機関に義務づけるとともに、現在の子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金事業等での対応を踏まえ、予防接種法上の副反応報告と薬事法上の副作用等報告の報告ルートを厚生労働省宛てに一元化し、医療機関の報告事務を簡素化することが適当である。
また、厚生労働省は副反応報告に係る情報を速やかに当該予防接種の実施主体である地方自治体に対して提供する。
○ 副反応報告の個別事例について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の業務目的や人員体制等を踏まえた上で、PMDAが情報整理・調査を行う。その際、国立感染症研究所は必要に応じて協力・連携する。
また、医療機関や被接種者及びその保護者等の関係者は、当該調査に協力するよう努めるものとする。
○ PMDAによる情報整理・調査に基づき、評価・検討組織が薬事・食品衛生審議会と連携して、副反応報告に係る評価を行った上で、国が必要に応じて接種の一時見合わせ等の措置を講ずる。
また、評価結果の集計・公表については、年3回程度とするなど、発信の強化を図る。
○ 予防接種による副反応を正しく評価するためには、医療機関による報告とともに、一般から寄せられる副反応に係る情報も重要であり、さらに予防接種法の対象外のワクチンによる副反応に係る情報を含め、できるだけ幅広く情報収集に努める。
また、副反応が出なかった場合も含む抽出調査である予防接種後健康状況調査については、引き続き実施する。
○ 健康被害救済制度については、健康被害救済に係る審査を迅速に行い、必要な救済給付を円滑に実施することが重要であり、引き続き疾病・障害認定審査会において、評価・検討組織とは独立して客観的・中立的な立場から審査を実施するなど、現行通り実施する。


10.接種方法、接種記録、情報提供
○ 接種の際、医師が接種後の副反応等について適切に説明するとともに、入念な予診が確実に実施されるよう、予防接種の接種方法は個別接種を基本とする。
一方、緊急時の臨時接種のあり方については、集団接種の方法やワクチンの供給のあり方も含め、引き続き新型インフルエンザ対策ガイドライン等の見直しと併せて検討を進める。
○ 接種記録については、未接種者の把握による接種勧奨を通じた接種率の向上等を図るため、予防接種台帳のデータ管理の普及や活用のあり方について、個人情報保護の観点や社会保障・税番号制度の導入に向けた状況も考慮しつつ、さらに検討する。
○ 被接種者の接種を促すためには、国民が自らの健康確保に努めることを端緒に、母子健康手帳への記載の励行、乳幼児健診や就学時健診における確認や勧奨の徹底などを図る。
母子健康手帳については、予防接種関連の記載項目を整理・充実して、保護者及び被接種者が予防接種に関する情報を一元的かつ長期的に管理できるようにする。
また、教育行政との連携については、接種対象年齢に応じて、学校現場等での接種対象者本人への普及啓発が重要である。特に子宮頸がん予防ワクチンは、がん教育と一体的な情報提供について、現在の麻しん対策に加えて文部科学省との一層の連携を図る。
○ 国民一人ひとりが予防接種についての正しい知識を持ち、その理解の上で接種の判断を自ら行う必要があり、予防接種法の対象外のワクチンも含めた推奨接種スケジュールのほか、予防接種の意義やリスクに関する分かりやすい情報提供が重要である。
評価・検討組織の意見を反映させた形で情報発信を行い、国民、報道機関、医療関係の専門家等がそれぞれ必要とする情報に容易にアクセスできるよう、ホームページの内容の充実や利便性の向上を図る。
○ 予防接種は、その効果の反面、不可避的に何らかの副反応が生じる可能性があることから、接種を行う医師が特に基礎疾患を有する者などへの慎重な予診を行うとともに、被接種者やその保護者に対し予防接種の効果や副反応について丁寧に説明することが重要である。そのため、接種を行う医師等の医療関係者に対する教育や研修を適切に実施する。
また、健康状態や体質から特に注意を要する者の適正な接種の機会を確保するため、都道府県に設置されている予防接種センター機能を有する医療機関の拡充を図る。


11.感染症サーベイランス
○ 予防接種施策の適正な推進を図るためには、評価・検討組織において、予防接種が有効であったか、新たに導入すべきワクチンはあるか等を随時評価することが重要であり、国立感染症研究所の機能強化を図るとともに、感染症サーベイランスを通して感染症に係る患者、病原体、免疫獲得状況等の情報を一定の方法で継続して収集・解析することが必要である。
○ 感染症サーベイランスのうち感染症法に基づく患者発生サーベイランスについては、今後、新たなワクチンの導入等に応じて、サーベイランスに係る疾病や指定届出医療機関(定点)の設定を見直す。
○ 感染症サーベイランスのうち免疫獲得状況等を把握する感染症流行予測調査については、新たなワクチンの導入等に応じて見直し、その適正な実施に不可欠な地方自治体、医療機関等の協力を一層得るとともに、実際に検査・分析を担当する地方衛生研究所の機能強化について、さらに検討する。
○ 予防接種台帳のデータ管理の普及や活用のあり方についての検討と併せて、予防接種の接種者数及び接種率を必要に応じて迅速に把握する仕組みの構築を推進する。


12.ワクチンの研究開発の促進と生産基盤の確保
○ ワクチンの研究開発の促進と生産基盤の確保については、ワクチン産業ビジョン推進委員会で検討が行われてきたが、今後は、評価・検討組織の審議事項の一つとして位置づけ、予防接種施策に関する総合的視点からの検討を行う。
必要とされるワクチンの追加・見直しに関して、国として研究開発に係る優先順位や方向性等を提言することにより、研究者やワクチン製造販売業者による研究開発等の推進につなげる。
○ ワクチン製造販売業者等の研究開発力の強化を図り、国際競争力のあるワクチン生産基盤を確保する必要がある。
新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業等を推進し、より安全かつ有効で効率的なワクチンの開発を進め、国産ワクチンの供給力の強化を図るとともに、海外への事業展開や他のワクチンの製造など、開発・生産体制の強化につなげる。
○ 今後、公的な接種を行うワクチンの種類の増加が見込まれる中で、被接種者の負担軽減、接種率の向上、接種費用の軽減等を図ることが重要であり、例えば、安全性に十分配慮しつつ、社会のニーズに合わせた混合ワクチンや経鼻ワクチンなど利便性の高いワクチンの研究開発を進める。

以上

コメント

「目的の必要性と手段の相当性」の考え方、会社法の判例から。

2012-10-22 23:00:00 | シチズンシップ教育
 法律を学ぶ中で日頃感じることとして、日常何気なく使ってきた考え方を法律学という枠で見直しているということ。

 そのような日常何気なく使ってきた考え方のひとつが、「必要性と相当性」という考え方。いわば、「目的の必要性と手段の相当性」。(日常何気なく使ってきた考え方の他の例としては、「手続き面と実体面」「形式的と実質的」「公法と私法」「客観と主観」などがあります。)

 何気なく、物事を判断するとき、よくつかっていませんか?
 逆に、物事の必要性を考えるあまり、その相当性を欠く手段を甘受しているなど、「必要性と相当性」を同時に“セット”で判断すべきであるのに、判断し忘れてはならないとも思います。

 法律学では、憲法でよく出会うのですが、今回、たまたま会社法でも、その考え方に則った判決(正確にはこの場合は、「決定」)を知りました。


 買収者Xが、その関連会社を通じてY会社の全株式を対象に公開買付けを開始したのに対抗して、防衛策としてY会社が「差別的行使条件付き新株予約権の無償割当て」を行いました。

 Xは、Y社を、「株主平等の原則違反(会社法109条1項)」として無償割当て差止めの仮処分を求めて訴えた事案。


****会社法109条******
(株主の平等)
第百九条  株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
2  前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
3  前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。
***************


 実際の「必要性と相当性」の考え方を、決定文で見てみますと、


*****決定文一部抜粋*****

イ 株主平等の原則は,個々の株主の利益を保護するため,会社に対し,株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱うことを義務付けるものであるが,個々の株主の利益は,一般的には,会社の存立,発展なしには考えられないものであるから,

【必要性の要件】特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の存立,発展が阻害されるおそれが生ずるなど,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には,


【相当性の要件】その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても,当該取扱いが衡平の理念に反し,相当性を欠くものでない限り,


これを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。


そして,特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,最終的には,会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきものであるところ,株主総会の手続が適正を欠くものであったとか,判断の前提とされた事実が実際には存在しなかったり,虚偽であったなど,判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り,当該判断が尊重されるべきである。


*****************




******最高裁ホームページより****
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=35027&hanreiKbn=02

決定文全文:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070927142919.pdf

事件番号

 平成19(許)30



事件名

 株主総会決議禁止等仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件



裁判年月日

 平成19年08月07日



法廷名

 最高裁判所第二小法廷



裁判種別

 決定



結果

 棄却



判例集等巻・号・頁

 第61巻5号2215頁




原審裁判所名

 東京高等裁判所



原審事件番号

 平成19(ラ)917



原審裁判年月日

 平成19年07月09日




判示事項

1 株主平等の原則の趣旨は株主に対して新株予約権の無償割当てをする場合に及ぶか
2 株主に対する差別的取扱いが株主平等の原則の趣旨に反しない場合
3 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるか否かについての審理判断の方法
4 株式会社が特定の株主による株式の公開買付けに対抗して当該株主の持株比率を低下させるためにする新株予約権の無償割当てが,株主平等の原則の趣旨に反せず,会社法247条1号所定の「法令又は定款に違反する場合」に該当しないとされた事例
5 株式会社が特定の株主による株式の公開買付けに対抗して当該株主の持株比率を低下させるためにする新株予約権の無償割当てが,会社法247条2号所定の「著しく不公正な方法により行われる場合」に該当しないとされた事例




裁判要旨

 1 会社法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は,株主に対して新株予約権の無償割当てをする場合にも及ぶ。
2 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるような場合に,その防止のために上記特定の株主を差別的に取り扱うことは,衡平の理念に反し,相当性を欠くものでない限り,会社法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨に反しない。
3 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,株主総会における株主自身の判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り,当該判断が尊重されるべきである。
4 株式会社Yが株主であるXによる経営支配権取得のための株式の公開買付けに対抗して新株予約権の無償割当てを行うに当たり,新株予約権の内容につき,X及びその関係者以外の株主は割り当てられた新株予約権を行使することなどによって株式の交付を受けることができるが,X及びその関係者は割り当てられた新株予約権を行使することができず,Yは金員を交付することによって上記新株予約権を取得することができる旨の差別的な条件及び条項が定められていた場合において,次の(1)~(3)などの判示の事情の下では,上記新株予約権の無償割当ては,会社法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨に反せず,同法247条1号所定の「法令又は定款に違反する場合」に該当しない。
  (1) 上記新株予約権の無償割当てを行うことは,株主総会においてX及びその関係者以外のほとんどの株主の賛成を得て可決されたものであり,これらの株主は,Xによる経営支配権の取得が企業価値をき損し,株主の共同の利益を害することになると判断したものといえる。
  (2) 上記総会の手続に適正を欠く点があったとはいえず,また,上記判断はX及びその関係者において経営支配権取得後の経営方針を明示せず,投下資本の回収方針についても明らかにしなかったことなどによるものであるとうかがわれ,当該判断にその正当性を失わせるような重大な瑕疵はない。
  (3) 上記新株予約権の無償割当ては,X及びその関係者も意見を述べる機会のあった上記総会における議論を経てX及びその関係者以外のほとんどの株主が是認したものである上,YがX及びその関係者に割り当てられた新株予約権を取得するに当たり交付する金員は当該新株予約権の価値に見合うものであって,衡平の理念に反し,相当性を欠くものではない。
5 株式会社Yが株主であるXによる経営支配権取得のための株式の公開買付けに対抗して新株予約権の無償割当てを行うに当たり,新株予約権の内容につき,X及びその関係者以外の株主は割り当てられた新株予約権を行使することなどによって株式の交付を受けることができるが,X及びその関係者は割り当てられた新株予約権を行使することができず,Yは金員を交付することによって上記新株予約権を取得することができる旨の差別的な条件及び条項が定められていた場合において,次の(1)~(3)などの判示の事情の下では,上記新株予約権の無償割当ては,経営支配権を取得しようとする行為に対する対応策として事前に定められ,示されていなかったことなどを考慮しても,会社法247条2号所定の「著しく不公正な方法により行われる場合」に該当しない。
  (1) 上記新株予約権の無償割当ては,株主平等の原則の趣旨に反するものではない。
  (2) 上記新株予約権の無償割当ては,Xによる経営支配権の取得の可能性が現に生じたために株主総会において企業価値のき損を防ぎ,株主の共同の利益の侵害を防ぐためには多額の支出をしても採用する必要があると判断されて行われたもので,緊急の事態に対処するための措置である。また,X及びその関係者には,割り当てられた新株予約権の価値に見合う対価が支払われる。
  (3) 上記新株予約権の無償割当ては,専ら経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するために行われるものではない。




参照法条

 (1~5につき)会社法109条1項 (4につき)会社法247条1号 (5につき)会社法247条2号


決定文全文

   主   文

 本件抗告を棄却する。
 抗告費用は抗告人の負担とする。

       理   由

 抗告代理人赤上博人ほかの抗告理由について
 1 本件は,相手方の株主である抗告人が,相手方に対し,相手方のする株主に対する新株予約権の無償割当ては,株主平等の原則に反し,著しく不公正な方法によるものであるから,会社法(以下「法」という。)247条1号及び2号に該当すると主張して,これを仮に差し止めることを求める事案である。
 2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
 (1)相手方は,ソースその他調味料の製造及び販売等を主たる事業とする株式会社であり,その発行する株式を株式会社東京証券取引所市場第二部に上場している。平成19年6月8日(以下,月日のみ記載するときは,すべて平成19年である。)時点における相手方の発行可能株式総数は7813万1000株,発行済株式総数は1901万8565株である。
 (2)抗告人は,日本企業への投資を目的とする投資ファンドであり,5月18日時点において,関連法人と併せ,相手方の発行済株式総数の約10.25%を保有している。また,A(以下「A」という。)は,アメリカ合衆国デラウェア州法に基づき,抗告人のために株式等の買付けを行うことを目的として設立された有限責任会社であり,抗告人がそのすべての持分を有している。
 (3)Aは,5月18日,相手方の発行済株式のすべてを取得することを目的として,相手方の株式の公開買付け(以下「本件公開買付け」という。)を行う旨の公告をし,公開買付開始届出書を関東財務局長に提出した。当初,本件公開買付けの買付期間は同日から6月28日まで,買付価格は1株1584円とされていたが,6月15日,買付期間は8月10日までに変更され,買付価格も1株1700円に引き上げられた。なお,上記の当初の買付価格は,相手方株式の本件公開買付け開始前の複数の期間における各平均市場価格に抗告人において適切と考える約12.82%から約18.56%までのプレミアムを加算したものとなっている。
 (4)相手方は,5月25日,Aに対する質問事項を記載した意見表明報告書を関東財務局長に提出し,これを受けて,Aは,6月1日,対質問回答報告書(以下「本件回答報告書」という。)を同財務局長に提出した。
 (5)本件回答報告書には,①抗告人は日本において会社を経営したことはなく,現在その予定もないこと,②抗告人が現在のところ相手方を自ら経営するつもりはないこと,③相手方の企業価値を向上させることができる提案等を,どのようにして経営陣に提供できるかということについて想定しているものはないこと,④抗告人は相手方の支配権を取得した場合における事業計画や経営計画を現在のところ有していないこと,⑤相手方の日常的な業務を自ら運営する意図を有していないため,相手方の行う製造販売事業に係る質問について回答する必要はないことなどが記載され,投下資本の回収方針については具体的な記載がなかった。
 このため,相手方取締役会は,6月7日,本件公開買付けは,相手方の企業価値をき損し,相手方の利益ひいては株主の共同の利益を害するものと判断し,本件公開買付けに反対することを決議した。また,相手方取締役会は,同日,本件公開買付けに対する対応策として,①一定の新株予約権無償割当てに関する事項を株主総会の特別決議事項とすること等を内容とする定款変更議案(以下「本件定款変更議案」という。)及び②これが可決されることを条件として,新株予約権無償割当てを行うことを内容とする議案(以下「本件議案」という。)を,6月24日に開催予定の定時株主総会(以下「本件総会」という。)に付議することを決定した。本件定款変更議案のうち,新株予約権無償割当てに関する部分の概要は,「相手方は,その企業価値及び株主の共同の利益の確保・向上のためにされる,新株予約権者のうち一定の者はその行使又は取得に当たり他の新株予約権者とは異なる取扱いを受ける旨の条件を付した新株予約権無償割当てに関する事項については,取締役会の決議によるほか,株主総会の決議又は株主総会の決議による委任に基づく取締役会の決議により決定する。この株主総会の決議は特別決議をもって行う。」というものである。
 (6)本件総会において,抗告人は,本件公開買付けに対する対応策の内容,その実施に要する費用の総額,当該対応策が実施された場合における課税上の負担の有無,本件公開買付けが撤回された後に新たな株式の公開買付けが行われる場合の相手方の対応等について質問するにとどまった。そして,本件定款変更議案及び本件議案は,いずれも出席した株主の議決権の約88.7%,議決権総数の約83.4%の賛成により可決された。なお,本件総会において可決された新株予約権の無償割当て(以下,当該新株予約権を「本件新株予約権」といい,その無償割当てを「本件新株予約権無償割当て」という。)の概要は,次のとおりである。
 ア 新株予約権無償割当ての方法により,基準日である7月10日の最終の株主名簿及び実質株主名簿に記載又は記録された株主に対し,その有する相手方株式1株につき3個の割合で本件新株予約権を割り当てる。
 イ 本件新株予約権無償割当てが効力を生ずる日は,7月11日とする。
 ウ 本件新株予約権1個の行使により相手方が交付する普通株式の数(割当株式数)は,1株とする。
 エ 本件新株予約権の行使により相手方が普通株式を交付する場合における払込金額は,株式1株当たり1円とする。
 オ 本件新株予約権の行使可能期間は,9月1日から同月30日までとする。
 カ 抗告人及びAを含む抗告人の関係者(以下,併せて「抗告人関係者」という。)は,非適格者として本件新株予約権を行使することができない(以下「本件行使条件」という。)。
 キ 相手方は,その取締役会が定める日(行使可能期間の初日より前の日)をもって,抗告人関係者の有するものを除く本件新株予約権を取得し,その対価として,本件新株予約権1個につき当該取得日時点における割当株式数の普通株式を交付することができる。相手方は,その取締役会が定める日(行使可能期間の初日より前の日)をもって,抗告人関係者の有する本件新株予約権を取得し,その対価として,本件新株予約権1個につき396円を交付することができる(以下,これらの条項を「本件取得条項」という。)。なお,上記金額は,本件公開買付けにおける当初の買付価格の4分の1に相当するものである。
 ク 譲渡による本件新株予約権の取得については,相手方取締役会の承認を要する。
 (7)相手方取締役会は,6月24日,本件議案の可決を受けて,本件新株予約権無償割当ての要項を決議するとともに,税務当局に対する確認の結果,株主に対する課税上の問題から,非適格者である抗告人関係者から本件取得条項に基づき本件新株予約権の取得を行うことができないと判断される場合であっても,抗告人関係者の有する本件新株予約権の全部を,相手方として抗告人関係者に何らの負担・義務を課すことなく1個につき396円の支払と引換えに譲り受ける旨決議した(以下,この決議を「本件支払決議」という。)。
 3(1)抗告人は,本件総会に先立つ6月13日,本件新株予約権無償割当てには,法247条の規定が適用又は類推適用されるところ,これは株主平等の原則に反して法令及び定款(以下「法令等」という。)に違反し,かつ,著しく不公正な方法によるものであるなどと主張して,原々審に対し,本件新株予約権無償割当ての差止めを求める仮処分命令の申立て(以下「本件仮処分命令の申立て」という。)をした。
 (2)原々審は,6月28日,株主に対して新株予約権の無償割当てをする場合においても,当該無償割当てが株主の地位に実質的変動を及ぼすときには,法247条の規定が類推適用され,株主平等の原則の趣旨が及ぶとした上で,本件新株予約権無償割当ては,株主平等の原則の趣旨に反して法令等に違反するものではなく,著しく不公正な方法によるものともいえないとして,本件仮処分命令の申立てを却下する旨の決定をした。
 (3)抗告人は,原審に抗告したが,原審は,7月9日,本件新株予約権無償割当てが相手方の企業価値のき損を防止するために必要かつ相当で合理的なものであり,また,抗告人関係者がいわゆる濫用的買収者であることを考慮すると,これは株主平等の原則に反して法令等に違反するものではなく,著しく不公正な方法によるものともいえないとして,抗告を棄却した。
 4 本件抗告の理由は,原決定が,本件新株予約権無償割当ては株主平等の原則に反して法令等に違反するものではないとし,著しく不公正な方法によるものともいえないとしたことを論難するものである。
 (1)株主平等の原則に反するとの主張について
 ア 法109条1項は,株式会社(以下「会社」という。)は株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければならないとして,株主平等の原則を定めている。
 新株予約権無償割当てが新株予約権者の差別的な取扱いを内容とするものであっても,これは株式の内容等に直接関係するものではないから,直ちに株主平等の原則に反するということはできない。しかし,株主は,株主としての資格に基づいて新株予約権の割当てを受けるところ,法278条2項は,株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法についての定めは,株主の有する株式の数に応じて新株予約権を割り当てることを内容とするものでなければならないと規定するなど,株主に割り当てる新株予約権の内容が同一であることを前提としているものと解されるのであって,法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は,新株予約権無償割当ての場合についても及ぶというべきである。
 そして,本件新株予約権無償割当ては,割り当てられる新株予約権の内容につき,抗告人関係者とそれ以外の株主との間で前記のような差別的な行使条件及び取得条項が定められているため,抗告人関係者以外の株主が新株予約権を全部行使した場合,又は,相手方が本件取得条項に基づき抗告人関係者以外の株主の新株予約権を全部取得し,その対価として株式が交付された場合には,抗告人関係者は,その持株比率が大幅に低下するという不利益を受けることとなる。
 イ 株主平等の原則は,個々の株主の利益を保護するため,会社に対し,株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱うことを義務付けるものであるが,個々の株主の利益は,一般的には,会社の存立,発展なしには考えられないものであるから,特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の存立,発展が阻害されるおそれが生ずるなど,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には,その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても,当該取扱いが衡平の理念に反し,相当性を欠くものでない限り,これを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。そして,特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,最終的には,会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきものであるところ,株主総会の手続が適正を欠くものであったとか,判断の前提とされた事実が実際には存在しなかったり,虚偽であったなど,判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り,当該判断が尊重されるべきである。
 ウ 本件総会において,本件議案は,議決権総数の約83.4%の賛成を得て可決されたのであるから,抗告人関係者以外のほとんどの既存株主が,抗告人による経営支配権の取得が相手方の企業価値をき損し,相手方の利益ひいては株主の共同の利益を害することになると判断したものということができる。そして,本件総会の手続に適正を欠く点があったとはいえず,また,上記判断は,抗告人関係者において,発行済株式のすべてを取得することを目的としているにもかかわらず,相手方の経営を行う予定はないとして経営支配権取得後の経営方針を明示せず,投下資本の回収方針についても明らかにしなかったことなどによるものであることがうかがわれるのであるから,当該判断に,その正当性を失わせるような重大な瑕疵は認められない。
 エ そこで,抗告人による経営支配権の取得が相手方の企業価値をき損し,相手方の利益ひいては株主の共同の利益を害することになるという本件総会における株主の判断を前提にして,本件新株予約権無償割当てが衡平の理念に反し,相当性を欠くものであるか否かを検討する。
 抗告人関係者は,本件新株予約権に本件行使条件及び本件取得条項が付されていることにより,当該予約権を行使することも,取得の対価として株式の交付を受けることもできず,その持株比率が大幅に低下することにはなる。しかし,本件新株予約権無償割当ては,抗告人関係者も意見を述べる機会のあった本件総会における議論を経て,抗告人関係者以外のほとんどの既存株主が,抗告人による経営支配権の取得に伴う相手方の企業価値のき損を防ぐために必要な措置として是認したものである。さらに,抗告人関係者は,本件取得条項に基づき抗告人関係者の有する本件新株予約権の取得が実行されることにより,その対価として金員の交付を受けることができ,また,これが実行されない場合においても,相手方取締役会の本件支払決議によれば,抗告人関係者は,その有する本件新株予約権の譲渡を相手方に申し入れることにより,対価として金員の支払を受けられることになるところ,上記対価は,抗告人関係者が自ら決定した本件公開買付けの買付価格に基づき算定されたもので,本件新株予約権の価値に見合うものということができる。これらの事実にかんがみると,抗告人関係者が受ける上記の影響を考慮しても,本件新株予約権無償割当てが,衡平の理念に反し,相当性を欠くものとは認められない。なお,相手方が本件取得条項に基づき抗告人関係者の有する本件新株予約権を取得する場合に,相手方は抗告人関係者に対して多額の金員を交付することになり,それ自体,相手方の企業価値をき損し,株主の共同の利益を害するおそれのあるものということもできないわけではないが,上記のとおり,抗告人関係者以外のほとんどの既存株主は,抗告人による経営支配権の取得に伴う相手方の企業価値のき損を防ぐためには,上記金員の交付もやむを得ないと判断したものといえ,この判断も尊重されるべきである。
 オ したがって,抗告人関係者が原審のいう濫用的買収者に当たるといえるか否かにかかわらず,これまで説示した理由により,本件新株予約権無償割当ては,株主平等の原則の趣旨に反するものではなく,法令等に違反しないというべきである。
 (2)著しく不公正な方法によるものとの主張について
 本件新株予約権無償割当てが,株主平等の原則から見て著しく不公正な方法によるものといえないことは,これまで説示したことから明らかである。また,相手方が,経営支配権を取得しようとする行為に対し,本件のような対応策を採用することをあらかじめ定めていなかった点や当該対応策を採用した目的の点から見ても,これを著しく不公正な方法によるものということはできない。その理由は,次のとおりである。
 すなわち,本件新株予約権無償割当ては,本件公開買付けに対応するために,相手方の定款を変更して急きょ行われたもので,経営支配権を取得しようとする行為に対する対応策の内容等が事前に定められ,それが示されていたわけではない。確かに,会社の経営支配権の取得を目的とする買収が行われる場合に備えて,対応策を講ずるか否か,講ずるとしてどのような対応策を採用するかについては,そのような事態が生ずるより前の段階で,あらかじめ定めておくことが,株主,投資家,買収をしようとする者等の関係者の予見可能性を高めることになり,現にそのような定めをする事例が増加していることがうかがわれる。しかし,事前の定めがされていないからといって,そのことだけで,経営支配権の取得を目的とする買収が開始された時点において対応策を講ずることが許容されないものではない。本件新株予約権無償割当ては,突然本件公開買付けが実行され,抗告人による相手方の経営支配権の取得の可能性が現に生じたため,株主総会において相手方の企業価値のき損を防ぎ,相手方の利益ひいては株主の共同の利益の侵害を防ぐためには多額の支出をしてもこれを採用する必要があると判断されて行われたものであり,緊急の事態に対処するための措置であること,前記のとおり,抗告人関係者に割り当てられた本件新株予約権に対してはその価値に見合う対価が支払われることも考慮すれば,対応策が事前に定められ,それが示されていなかったからといって,本件新株予約権無償割当てを著しく不公正な方法によるものということはできない。
 また,株主に割り当てられる新株予約権の内容に差別のある新株予約権無償割当てが,会社の企業価値ひいては株主の共同の利益を維持するためではなく,専ら経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するためのものである場合には,その新株予約権無償割当ては原則として著しく不公正な方法によるものと解すべきであるが,本件新株予約権無償割当てが,そのような場合に該当しないことも,これまで説示したところにより明らかである。
 (3)したがって,本件新株予約権無償割当てを,株主平等の原則の趣旨に反して法令等に違反するものということはできず,また,著しく不公正な方法によるものということもできない。
 5 以上のとおりであるから,論旨は理由がなく,本件仮処分命令の申立てを却下すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 今井 功 裁判官 津野 修 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀)

 




 
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法と科学のハンドブック「不確実な科学的状況での法的意思決定」

2012-10-21 23:00:00 | シチズンシップ教育
 まちづくり関連のMLで紹介されていた文献です。


 法と科学のハンドブック「不確実な科学的状況での法的意思決定」

 ネットでみることができます。

 築地市場移転問題でも、科学と法の関係をどうとらえるべきか、考えつつ取り組んでいるところです。
 正直言って、科学的根拠に対し、法が冷淡だと思われることも多々ありました。
 
 参考にさせていただきます。
 

*************************************
http://www.law-science.org/items/handbook.pdf

法と科学のハンドブック (ver.20120816)


(独)科学技術振興機構
社会技術研究開発センター
委託研究プロジェクト
「不確実な科学的状況での法的意思決定」

i
ごあいさつ

本ハンドブックは(独)科学技術振興機構(JST)社会技術研究
開発センター(RISTEX)の研究プロジェクト「不確実な科学的
状況での法的意思決定」の成果物の一つです。

本ハンドブックを執筆するにあたり、プロジェクトのメンバー
間で「科学裁判」で法律家と科学者が協力し合うためにはどうす
ればよいか、いろいろと考えてきました。そして、まず必要なの
は、おたがいが普段からやっている「営み」がどういうものかを
まず知ることであるという認識に至りました。

キーワードは「不確実性」です。法律家も科学者も、自分たち
のやっている営みについては「不確実」な部分がたくさんあるこ
とを身にしみて理解しているものの、相手がやっていることにつ
いてはなぜか必要以上に「確実」なものだと思ってしまいがちの
ようです。まずはそのような過剰な期待を取り除いて、もう少し
肩の力を抜いて接することが大切でしょう。そうするときっと、
水と油のように思われていた「法と科学」も、実際は共通点のほ
うが意外と多い、ということがわかるのではないかと思います。
本ハンドブックはそういった相互理解と対話のための第一歩を提
供することを目的としています。

本ハンドブックは「科学裁判」に初めて接する法律家・科学者
を主なターゲットにしています。科学裁判を理解するための最初
の一歩となることを目指すものですから、文字通りの入門書です。
法的なものの考え方、そして科学的なものの考え方、そしてそれ
ぞれの制度や現実の営みなどを「不確実性」をキーワードに、で
きるだけ体系的に、つながりが見えるように書いています。です
から、科学裁判に触れた経験のある方にも、知識の整理に役立て
ていただけるかもしれません。また、ここで扱われている科学技
術問題はあらゆる人が巻き込まれる可能性のあるものですから、
広く一般の方々にも読んでいただきたいと考え、学術書ではなく
ハンドブックの形にしました。そのために内容上の厳密さは多少
犠牲にし、わかりやすさを最優先させています。本文で強調して
いる「科学の不確実性」および「法の不確実性」と同様に、この
ii
ハンドブックの内容自体にも不確実性が漂っております。いわゆ
る「確定版」としてではなく、「作動中の研究」によるハンドブッ
クとして読んでいただきたいと思います。

また、本ハンドブックはこのプロジェクトの全員一致の見解と
して集大成したわけでもありません。実際のところは、さまざま
な論点について現在でも烈しい議論が続いています。この意味で
も流動的で不確定な「作動中の研究」によるハンドブックです。
本ハンドブックは本プロジェクトの公式サイト
(http://www.law-science.org/) にもP D F として公開し
てあります。ご関心を持ってくださりそうな方々に広くご紹介し
ていただければ幸いです。また、同サイトには「異論・反論」と
してプロジェクトメンバーのさまざまに異なる意見も掲載してい
ます。本プロジェクトでの議論状況の一端を示すものであるとと
もに、本ハンドブックのより重層的なご理解に資するものである
と考えております。いわば、前述の「法と科学の不確実性」のメ
タ次元での一例ともなっています。

本ハンドブックは現在のヴァージョンを最終版とするもので
はありません。今後、読者のみなさまのご意見を取り入れ、よ
り「使える」ハンドブックに改訂していきます。その成果は公
式サイトなどで順次、公開される予定です。これから先、このハ
ンドブックを叩き台に、法と科学の問題を多くの方に議論して
いただくことを願っております。そして忌憚のないコメントや
反対意見をぜひ、お聞かせください。ご意見・ご感想はメール
でLS-handbook-cont@liberty.cc.kyushu-u.ac.jp にお送り
いただければ幸いです。なお、今後の改訂にあたってご意見を
ご紹介させていただく場合には、匿名処理させていただきます。

二〇一二年八月

(独)科学技術振興機構
社会技術研究開発センター
委託研究プロジェクト
「不確実な科学的状況での法的意思決定」
iii

目次
第1章何が問題か― 被害発生が明らかでない科学技術を裁判所でどう取り扱うか
1
1・1 ブラックホールに地球が飲み込まれる
!?

1
(1) CERN 問題を裁判所は扱えるのか?
2
(2) ハンドブックの目的― 「不確実な科学裁判」とのクールな付き合い方へ

1・2 「現代型裁判」としての科学裁判
3
(1) 法と科学の関わり方
3
(2) 法と科学の新局面
4
(3) 司法が直面する課題
4
(4) 刑事と民事
5
(5) 民事裁判はどう使われるか
5
(6) 結局はカネですか? ― 民事裁判のさまざまな利用法
5
(7) 問題提起としての裁判
6
(8) 現代型裁判のさまざまな特徴
6
1・3 ハンドブックの構成
7
iv

第2章科学とは何か
8
2・1 科学とは何か...............................................................................................................................................
8
(1) なぜ科学が必要なのか? ..........................................................................................................................
8
(2) 科学の二つの側面......................................................................................................................................
9
(3) 科学的予測とは.........................................................................................................................................
10
(4) 宗教との違い............................................................................................................................................
12
(5) 技術との関係............................................................................................................................................
12
(6) 科学と科学者............................................................................................................................................
13
2・2 科学の営み..................................................................................................................................................
14
(1) 科学を知るには.........................................................................................................................................
14
(2) 科学者の仕事場.........................................................................................................................................
15
(3) 科学者の仕事風景......................................................................................................................................
19
コラム:科学はいかなる意味で客観的か...........................................................................................................
21
2・3 科学にできること、できないこと....................................................................................................................
25
(1) 科学や科学者に期待されていること..............................................................................................................
25
(2) 科学者の科学観、一般人の科学観.................................................................................................................
25
(3) 場合分けの繰り返しと試行錯誤....................................................................................................................
25
(4) 「学説」の相場感覚...................................................................................................................................
26
(5) 「発信力」を決めるもの.............................................................................................................................
27

(6) リスクの「評価」とは
28
(7) リスクを「管理」するために.......................................................................................................................
30
v
(8) 「科学的な正しさ」だけでなく....................................................................................................................
31
コラム:ある地球科学研究者が体験した東北地方太平洋沖地震.............................................................................
32
2・4 科学者の訓練...............................................................................................................................................
33
(1) 法律家の持つ科学者のイメージ....................................................................................................................
33
(2) マートンと科学者の精神.............................................................................................................................
33
(3) 納得できなくても前には進める? ..............................................................................................................
34
(4) 科学は一本道ではない................................................................................................................................
35
(5) 多くの科学者の意見を聞こう.......................................................................................................................
35
2・5 読書リスト:第2章をより深く理解するために..................................................................................................
36
コラム:社会科学の女王と自然科学の帝王? ..................................................................................................
38
第3章裁判とは何か― 期待しすぎてはいけない?
40
3・1 本章の狙い..................................................................................................................................................
40
(1) 科学技術と法............................................................................................................................................
41
(2) 法律だけではわからない? .......................................................................................................................
41
(3) 法の非決定性............................................................................................................................................
43
3・2 裁判に関わる人々の心理................................................................................................................................
44
(1) 裁判を起こす人たちの期待..........................................................................................................................
44
(2) 裁判を起こされた人たちの受け止め方...........................................................................................................
44
3・3 裁判の仕組み...............................................................................................................................................
45
(1) 裁判の入り口............................................................................................................................................
45
vi
(2) 裁判の登場人物たち...................................................................................................................................
48
(3) 裁判の「勝ち負け」ははっきりしない...........................................................................................................
51
コラム:何なんでしょうか、裁判って? ........................................................................................................
51
3・4 たかが裁判、されど裁判― どこまで期待してよいのか........................................................................................
52
(1) 気持ちの問題............................................................................................................................................
53
(2) 裁判と真実...............................................................................................................................................
53
(3) 裁判の「当たり外れ」................................................................................................................................
54
3・5 裁判とクールに付き合う................................................................................................................................
54
コラム:日本人の弁護士イメージ....................................................................................................................
56
3・6 読書リスト:裁判を中心とした法学入門...........................................................................................................
57
第4章科学者からみた科学裁判
58
4・1 科学者が法廷に呼ばれるとき..........................................................................................................................
58
(1) どういう立場で呼ばれるか..........................................................................................................................
58
(2) 科学者が法廷に呼ばれたら..........................................................................................................................
59
(3) 法的判断のための「線引き」とは.................................................................................................................
59
4・2 科学者の行動規範、法廷の圧力.......................................................................................................................
60
(1) 科学だけで決められない問題での「線引き」..................................................................................................
60
(2) 法廷での圧力― 社会的判断への重圧.............................................................................................................
60
4・3 科学者証人への尋問......................................................................................................................................
61
(1) 反対尋問のゴールデンルール.......................................................................................................................
61
vii
(2) 誘導尋問のゴールデンルール.......................................................................................................................
61
コラム:専門家証人と弁護士..........................................................................................................................
63
4・4 望ましい制度設計のために.............................................................................................................................
66
(1) 科学的知見の再構築の必要性と危険性...........................................................................................................
66
(2) コンカレント・エヴィデンス.......................................................................................................................
67
4・5 科学はどういった意味で「不確実」か..............................................................................................................
68
(1) 科学的知識の不確実性の分類.......................................................................................................................
68
(2) どこが確実で、どこが不確実か....................................................................................................................
69
4・6 まとめ........................................................................................................................................................
71
第5章法律家からみた科学裁判
73
5・1 科学と社会― なぜ「科学裁判」か...................................................................................................................
73
5・2 法律家にとっての「科学の不確実性」..............................................................................................................
74
(1) 「真偽不明」と不確実性は異なる.................................................................................................................
74
(2) 「確率」という不確実性? .......................................................................................................................
74
(3) 「不完全性」という不確実性.......................................................................................................................
75
5・3 裁判における科学的不確実性の分類.................................................................................................................
77
(1) 既発生型..................................................................................................................................................
77
(2) 将来予測型...............................................................................................................................................
78
(3) 「科学の不確実性」と「法の不確実性」........................................................................................................
79
(4) 科学裁判に未来はあるのか? ....................................................................................................................
79
viii
コラム:タバコ関連訴訟................................................................................................................................
80
コラム:科学裁判としての医療過誤訴訟...........................................................................................................
82
第6章法と科学の協働に向けて
85
6・1 「紛争」を前提に考える................................................................................................................................
85
(1) 日常の隅々にある科学技術紛争....................................................................................................................
85
6・2 法律家と科学者の相互理解に向けて.................................................................................................................
87
(1) 簡単には変わらない制度や営み....................................................................................................................
87
(2) 協力し合うのは生身の人間同士....................................................................................................................
88
6・3 生身の法律家と科学者...................................................................................................................................
88
(1) 科学者の生態............................................................................................................................................
88
(2) 科学者の社会リテラシー.............................................................................................................................
89
(3) 法律家の生態............................................................................................................................................
90
(4) 結局は「言葉の問題」? ............................................................................................................................
90
6・4 協働障害の克服のために................................................................................................................................
91
(1) 両者が相手に望むリテラシー.......................................................................................................................
91
(2) 前提としての不確実性................................................................................................................................
92
(3) 異なった専門家が出会う場として.................................................................................................................
93
プロジェクト参加者
95
執筆者一覧(執筆順)
96
1
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民主主義の前提とは?

2012-10-20 23:00:00 | シチズンシップ教育
 日本国憲法は、民主主義原理を採用しています。

 では、民主主義の前提とは?


 当然のことですが、行政法宇賀克也先生も書かれていました。

「民主主義は、知名度、政治資金、後援会組織等の大小にかかわらず、志のある者が容易に立候補することができ、候補者により多様な選択肢が提示され、候補者間で活発な政策論争が行われ、国民が選挙を通じて、政策選択を行うという制度が、実質的に機能することを前提としている。」 (『地方自治法概説 第4版』有斐閣229ページ)


 この前提に少しでも近づけるように、あきらめてはなりません。
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環境基本法を読む。定義第二条「環境への負荷」「地球環境保全」「公害」とは。

2012-10-19 23:00:00 | 地球環境問題

 環境基本法、第二条、定義。

 「環境への負荷」「地球環境保全」「公害」「地球環境保全」とは。
 どのように読むか。

 立法者の意思を類推して読みます。




 なお、大事な点として、本年9月に環境省の外局として原子力規制委員会http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/0620seiritsu/houritsu.pdfができました。

 文言に明らかには書かれていませんが、条文の意味することに、放射性物質の汚染に関することも含まれると頭に入れて、読む必要があります。

 環境基本法(放射性物質による大気の汚染等の防止)
第十三条  放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置については、原子力基本法 (昭和三十年法律第百八十六号)その他の関係法律で定めるところによる。
 今までは、わざわざ、環境から「放射性物質」を除いていましたが、この環境基本法13条は過去の条文になります。すなわち、削除になります。





(定義)
第二条  この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

2  この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。



3  この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第十六条第一項を除き、以下同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。



 それぞれの条文を分解してみます。

<1項>

この法律において「環境への負荷」とは、

人の活動により環境に加えられる影響であって、

環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。



<2項>


この法律において「地球環境保全」とは、

人の活動による

【空のこととして】地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、

【海のこととして】海洋の汚染、

【陸のこととして】野生生物の種の減少

【陸海空を含んだ大集合】その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態

に係る環境の保全であって、

人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。



<3項>

この法律において「公害」とは、 


環境の保全上の支障のうち、

事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる


1)【空】大気の汚染、

2)【海】水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第十六条第一項を除き、以下同じ。)、

3)【陸】土壌の汚染、

4)【陸】騒音、

5)【陸】振動、

6)【陸】地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)

及び

7)【陸】悪臭によって、


A)人の健康

又は

B)生活環境
(人の生活に密接な関係のある財産
並びに
人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)

に係る

被害が生ずることをいう。



******ブログ2012-10-10 23:00:00第1条目的********

環境基本法を読む。

 その関連法体系は、こちらで示されています。

http://www.logistics.or.jp/green/map.html




環境基本法
(平成五年十一月十九日法律第九十一号)

 第一章 総則(第一条―第十三条)
 第二章 環境の保全に関する基本的施策
  第一節 施策の策定等に係る指針(第十四条)
  第二節 環境基本計画(第十五条)
  第三節 環境基準(第十六条)
  第四節 特定地域における公害の防止(第十七条・第十八条)
  第五節 国が講ずる環境の保全のための施策等(第十九条―第三十一条)
  第六節 地球環境保全等に関する国際協力等(第三十二条―第三十五条)
  第七節 地方公共団体の施策(第三十六条)
  第八節 費用負担等(第三十七条―第四十条の二)
 第三章 環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関等
  第一節 環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関(第四十一条―第四十四条)
  第二節 公害対策会議(第四十五条・第四十六条)
 附則


 さて、その第一条

 第一章 総則

(目的)
第一条  この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。


 この条文をどう読むか。

 環境法の授業で、学びました。


************************

この法律は、

A【規定内容(手段)】
①環境の保全について、
基本理念を定め、
並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、
②環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、

B【中間目的、直接目的】
環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、


C【最終目的】
もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに
人類の福祉に貢献することを

目的とする。

*************************


 言われてみると、目次も、そのような順でならんでいるのがわかります。

コメント

ぜひ、パブコメを!〆切11/5 障害を理由とする差別を禁止する法制に関する意見募集について

2012-10-18 10:26:58 | 医療

 以下、重要な事項に関するパブリックコメント募集です。

 

***********内閣府ホームページより*****
http://www8.cao.go.jp/shougai/sabekin_iken.html



障害を理由とする差別を禁止する法制に関する意見募集について

内閣府障害者施策担当

1.意見募集の目的障害を理由とする差別の禁止に関する法制については、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)において、「平成25年常会への法案提出を目指す」とされたことを受け、平成22年11月より障がい者制度改革推進会議(本年7月からは障害者政策委員会)の下に置かれた差別禁止部会において有識者等に御議論をいただき、本年9月、「『障害を理由とする差別の禁止に関する法制』についての差別禁止部会の意見」(以下「部会意見」という。)が取りまとめられました。今後、部会意見に示された考え方を尊重しつつ、更に幅広い国民の皆様の御意見を踏まえて法案化作業を進めるため、障害を理由とする差別を禁止する法制に関して、国民の皆様からの御意見を募集いたします。2.募集する意見障害を理由とする差別を禁止する法制について

※意見募集に当たっての参考資料
■「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見(るびなし)(PDF形式:429KB)
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/pdf/bukai_iken1-1.pdf



■「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見(るびなし)【概要】(PDF形式:390KB)
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/pdf/bukai_iken_gaiyo.pdf





3.意見募集期間平成24年10月5日(金)から平成24年11月5日(月)まで4.意見提出要領御意見は、郵送、FAXまたは送信用フォームでお送り下さい。御意見には、氏名または団体名(団体の場合は担当者名も記入)、性別、職業、住所、電話番号を御記入下さい。これらは、必要に応じて、御意見のより具体的な内容を確認させていただく場合などのために記入をお願いするものです。


※ 個別の回答はいたしません。

※ いただいた御意見は、個人情報を除き公表する場合がありますので、あらかじめ御承知おき下さい。

※ 御意見は日本語でお願いいたします。
5.意見提出先内閣府障害者施策担当 あて
[インターネット上の意見募集フォーム] 送信用フォームはこちら (締切日必着)
[郵送] 〒100-8970 東京都千代田区霞が関3-1-1 中央合同庁舎4号館 (締切日当日消印有効)
[FAX] 03-3581-1495 (締切日必着)6.注意事項◦提出いただく意見は、日本語に限ります。
◦御意見を提出する場合は、以下のとおり記載をお願いします。(様式任意)
■タイトル:障害を理由とする差別を禁止する法制に関する意見
■氏名(法人の場合は、法人名及び連絡担当者名)
■意見(理由も含め1,000文字以内)
■年齢
■性別
■所属等

◦郵送の場合、封筒表面に「障害を理由とする差別を禁止する法制に関する意見」と朱書きしてください。
◦ 御意見に対し、個別の回答は行いません。
◦御意見については、提出者の氏名や住所等、個人を特定できる情報を除き、公表させていただく場合がありますので、あらかじめ御了承ください。
◦個人情報の保護については、適正な管理を行うとともに、他の用途には使用しません。


**********目次部分のみ抜粋**********************
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/pdf/bukai_iken1-1.pdf



「障害を理由とする差別の禁⽌に関する法制」
についての差別禁⽌部会の意⾒
平成24年9⽉14⽇
障害者政策委員会差別禁⽌部会
.
章⽴
はじめに1
第1章総則8
第1 節理念・⽬的………………………………………………………… 8
第2 節国等の責務……………………………………………………… 10
第3 節障害に基づく差別……………………………………………… 14
第2章各則29
第1 節公共的施設・交通機関……………………………………………29
第2 節情報・コミュニケーション…………………………………… 34
第3 節商品・役務・不動産…………………………………………… 38
第4 節医療……………………………………………………………… 43
第5 節教育……………………………………………………………… 47
第6 節雇⽤……………………………………………………………… 53
第7 節国家資格等……………………………………………………… 58
第8 節家族形成………………………………………………………… 63
第9 節政治参加(選挙等) …………………………………………… 68
第10節司法⼿続………………………………………………………… 72
第3章紛争解決の仕組み77
資料86

(⽬次)
⽬次
はじめに1
第1、推進会議と当部会における検討の経緯1
1、障がい者制度改⾰推進会議1
2、障害者制度改⾰の推進のための基本的な⽅向について(閣議決定) 1
3、差別禁⽌部会における審議1
第2、障害分野における差別禁⽌法の世界的広がり2
1、リハ法第504条からADAへ2
2、世界的な広がり2
3、アジアへの広がり3
第3、⽇本における⽴法事実の存在3
1、条例制定と差別に当たると思われる事例3
2、取組の必要性4
第4、障害に基づく差別の禁⽌に関する法制はなぜ必要か5
1、理解と交流5
2、差別事案の存在と国⺠意識5
3、物差しの共有5
第5、新法の制定に向けて6
1、共⽣社会の実現6
2、課題と想い6
第1章総則8
第1節理念・⽬的………………………………………………………………8
第1、理念8
1、差別の解消に向けた取組の重要性8
2、相⼿⽅を⼀⽅的に⾮難し制裁を加えようとするものではないこと8
3、差別の解消がこれからの社会により活⼒を与えるものであること8
第2、⽬的8
1、⾏為規範(⼈々が⾏動する際の判断基準)の提⽰8
2、差別からの法的保護9
3、国等の責務9
4、共⽣社会の実現9
第2節国等の責務………………………………………………………………10
第1、国の基本的責務10
1、差別防⽌に向けた調査、啓発等の取組10
2、ガイドラインの作成等10
3、円滑な解決の仕組みの運⽤と状況報告10
(⽬次)
4、関係機関の連携の確保11
5、研修及び⼈材育成11
第2、国の基本的責務に関して特に留意を要する領域11
1、障害⼥性11
2、障害に関連して⾏われるハラスメント12
3、⽋格条項12
第3、地⽅公共団体の責務12
第4、国⺠の責務13
第3節障害に基づく差別……………………………………………………14
第1、障害の定義14
1、議論の背景14
2、本法における障害の定義に求められるもの14
3、障害の限界事例に関する議論15
第2、禁⽌されるべき差別の形態15
1、障害者権利条約とその実施15
2、あらゆる形態の差別16
第3、直接差別、間接差別、関連差別の内容16
1、直接差別17
2、間接差別17
3、関連差別18
第4、直接差別、間接差別、関連差別の関係についての検討18
1、間接差別と関連差別の関係19
2、直接差別と関連差別の関係19
3、障害に基づく差別の禁⽌20
第5、不均等待遇(障害⼜は障害に関連した事由を理由とする差別) 20
1、関連する事由20
2、関連する事由の多様性20
3、異なる取扱い21
4、過去の障害等21
5、主観的要素21
6、正当化事由22
7、不均等待遇が禁⽌される対象範囲22
8、積極的差別是正措置等23
第6、合理的配慮の不提供23
1、障害者権利条約における定義23
2、合理的配慮が求められる根拠24
3、合理的配慮が求められる対象範囲25
4、合理的配慮の内容26
5、ガイドラインの設定26


(⽬次)
6、正当化事由27
7、合理的配慮の実現に向けたプロセス27
8、事前的改善措置との関係28
第2章各則29
第1節公共的施設・交通機関………………………………………………29
第1、はじめに29
第2、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲29
1、差別が禁⽌されるべき事項や場⾯29
2、対象物と差別をしてはならないとされる相⼿⽅の範囲31
3、国のバリアフリー施策との関係31
第3、この分野で禁⽌が求められる不均等待遇32
1、不均等待遇の禁⽌32
2、不均等待遇を正当化する事由32
第4、この分野で求められる合理的配慮とその不提供33
第2節情報・コミュニケーション…………………………………………34
第1、はじめに34
第2、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲34
1、差別が禁⽌されるべき事項や場⾯34
2、差別をしてはならないとされる相⼿⽅の範囲35
第3、この分野で禁⽌が求められる障害に基づく差別36
1、上記のA(⼀般公衆への情報提供)の場合36
2、上記のB(少数を対象とするが不特定の者への情報提供)の場合37
3、上記の2)(特定の者への情報提供)の場合37
4、上記の3)(⼀般公衆との意思の疎通)の場合37
第4、その他の留意事項37
第3節商品・役務・不動産…………………………………………………38
第1、はじめに38
第2、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲38
1、差別が禁⽌されるべき事項や場⾯38
2、差別をしてはならないとされる相⼿⽅の範囲39
第3、この分野で禁⽌が求められる不均等待遇39
1、不均等待遇の禁⽌39
2、不均等待遇を正当化する事由40
第4、この分野で求められる合理的配慮とその不提供40
1、合理的配慮とその不提供の禁⽌40
2、この分野で求められる合理的配慮の内容40
3、合理的配慮の不提供を正当化する事由41
(⽬次)
第5、その他の留意事項41
第4節医療………………………………………………………………………43
第1、はじめに43
第2、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲43
1、差別が禁⽌されるべき事項や場⾯43
2、差別をしてはならないとされる相⼿⽅の範囲43
第3、この分野で禁⽌が求められる不均等待遇44
1、不均等待遇の禁⽌44
2、不均等待遇を正当化する事由44
第4、この分野で求められる合理的配慮とその不提供45
1、合理的配慮とその不提供の禁⽌45
2、この分野で求められる合理的配慮の内容45
3、合理的配慮の不提供を正当化する事由45
第5、その他の留意事項45
1、精神医療46
2、関連領域46
3、プライバシー46
第5節教育………………………………………………………………………47
第1、はじめに47
1、教育における差別の禁⽌47
2、⼀般教育制度からの排除等の禁⽌47
第2、分離・排除から統合教育へ、そしてインクルーシブ教育47
1、統合教育47
2、ユネスコ「サラマンカ宣⾔」48
3、インクルーシブ教育48
4、⽇本における原則分離の教育48
第3、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲49
1、差別が禁⽌されるべき事項や場⾯49
2、差別をしてはならないとされる相⼿⽅の範囲49
第4、この分野で禁⽌が求められる不均等待遇49
1、不均等待遇の禁⽌50
2、不均等待遇を正当化する事由50
第5、この分野で求められる合理的配慮とその不提供50
1、合理的配慮とその不提供の禁⽌50
2、この分野で求められる合理的配慮の内容50
3、合理的配慮の不提供を正当化する事由51
第6、その他の留意事項52
1、合理的配慮の実現のプロセス52
(⽬次)
2、内部的紛争解決の仕組み52
3、⾼校進学52
4、通学⽀援52
第6節雇⽤………………………………………………………………………53
第1、はじめに53
第2、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲53
1、差別が禁⽌されるべき事項や場⾯53
2、差別をしてはならないとされる相⼿⽅の範囲53
3、福祉的就労54
第3、この分野で禁⽌が求められる不均等待遇54
1、不均等待遇の禁⽌54
2、不均等待遇と労働能⼒54
3、不均等待遇を正当化する事由55
第4、この分野で求められる合理的配慮とその不提供55
1、合理的配慮とその不提供の禁⽌55
2、事業主の合理的配慮義務についての公的⽀援と過度の負担55
3、合理的配慮とガイドライン56
第5、その他の留意事項56
1、合理的配慮の実現に向けた事業所内部における仕組み56
2、紛争解決56
3、通勤⽀援等57
4、公務員57
第7節国家資格等………………………………………………………………58
第1、はじめに58
第2、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲58
1、差別が禁⽌されるべき事項や場⾯58
2、差別をしてはならないとされる相⼿⽅の範囲58
第3、この分野で禁⽌が求められる不均等待遇58
1、不均等待遇の禁⽌58
2、⽋格条項59
3、不均等待遇を正当化する事由59
第4、この分野で求められる合理的配慮とその不提供60
1、合理的配慮とその不提供の禁⽌60
2、この分野で求められる合理的配慮の内容60
3、この分野で求められる合理的配慮の具体例60
4、合理的配慮の不提供を正当化する事由61
第5、その他の留意事項61
1、国家資格等の取得に関わる養成、教習、研修等61
(⽬次)
2、⼊学試験、就職試験、その他の試験61
3、不動産の利⽤、選挙権の⾏使、議会の傍聴等62
4、⺠間資格62
第8節家族形成…………………………………………………………………63
第1、はじめに63
第2、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲63
1、差別が禁⽌されるべき事項や場⾯63
2、差別をしてはならないとされる相⼿⽅の範囲65
第3、この分野で禁⽌が求められる不均等待遇66
1、不均等待遇の禁⽌66
2、不均等待遇を正当化する事由66
第4、この分野で求められる合理的配慮とその不提供67
1、合理的配慮とその不提供の禁⽌67
2、合理的配慮の不提供を正当化する事由67
第9節政治参加(選挙等) …………………………………………………68
第1、はじめに68
第2、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲68
1、差別が禁⽌されるべき事項や場⾯68
2、差別をしてはならないとされる団体や個⼈の範囲68
第3、この分野で禁⽌が求められる不均等待遇68
第4、この分野で求められる合理的配慮とその不提供69
1、合理的配慮が求められる場⾯と具体例69
2、合理的配慮の不提供を正当化する事由70
第5、その他の留意事項70
1、政治参加70
2、政⾒放送等における⼿話通訳・字幕の提供70
3、介助体制71
4、政治活動における情報提供71
第10節司法⼿続………………………………………………………………72
第1、はじめに72
第2、⼿続上の配慮72
第3、この分野において差別の禁⽌が求められる対象範囲72
1、対象となる⼿続72
2、差別をしてはならないとされる相⼿⽅の範囲73
3、法的保護の対象73
第4、この分野で禁⽌が求められる障害に基づく差別73
第5、合理的配慮が求められる事項や場⾯73
(⽬次)
1、刑事⼿続(捜査段階) 73
2、刑事⼿続(公判段階) 74
3、刑事⼿続(判決) 75
4、受刑⼜は⾝柄拘束中の処遇75
5、⺠事⼿続、その他75
6、合理的配慮の具体例76
7、合理的配慮の不提供を正当化する事由76
第6、関係者への障害特性等に関する研修等76
第3章紛争解決の仕組み77
第1、紛争解決の仕組みの必要性77
第2、⾃主的な解決の仕組みと促進77
第3、想定される紛争事案77
1、相⼿⽅と事案の性格77
2、紛争の態様78
第4、第三者が関与する解決の仕組み79
1、紛争解決の仕組みに求められる機能79
2、紛争解決に当たる組織の在り⽅80
第5、他の紛争解決の仕組みとの関係82
第6、司法判断83
1、裁判規範性83
2、法的効⼒83
3、私⼈間効⼒と差別禁⽌法の位置付け84
4、本法施⾏後の検証84
第7、制度的な解決84
資料86
障がい者制度改⾰推進会議差別禁⽌部会の開催について86
差別禁⽌部会の設置について86
障がい者制度改⾰推進会議差別禁⽌部会構成員等名簿87
障害者政策委員会差別禁⽌部会委員名簿88
差別禁⽌部会の検討経緯89

以上、

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難病対策法制化、厚生労働省「難病対策委員会」の議論に期待 今年8月法制化も含めた中間報告発表

2012-10-18 10:18:38 | 国政レベルでなすべきこと
 下記記事にありますが、「難病は5000〜7000疾患あるとされるが、国が継続的に調査研究しているのは130疾患(患者約750万人余)で、そのうち、医療費助成が受けられるのは国が「特定疾患」と指定する56疾患(同約70万人)のみ」という状況を打開するため、「厚生労働省の「難病対策委員会」は昨夏から抜本改革の議論を始め、今年8月、法制化も含めた「中間報告」を発表した。委員長の金澤一郎・国際医療福祉大大学院長は「現行制度は大きな矛盾と不公平をはらんでいる」とし、医療費助成の対象を広げる方針を打ち出した。」とのこと。

 厚生労働省の「難病対策委員会」の議論に期待。


*****毎日新聞(2012/10/17)******
http://mainichi.jp/opinion/news/20121017k0000m070148000c.html

記者の目:難病対策法制化=蒔田備憲

毎日新聞 2012年10月17日 00時44分


 法律の裏付けがなかった難病対策の法制化準備が進んでいる。私は昨年6月から週1回、本紙佐賀面の連載「難病カルテ 患者たちのいま」を担当し、法制化の動きに注目してきた。今の国の難病対策は医療費助成対象が一部の疾患に限定され、他の疾患には支援策がないという矛盾を抱えている。法制定による改善への期待は大きい。しかし、政府の議論を見ていると、現制度と同様、対象を疾患で区切る考えは不変で対策の不平等さはなくならないのではとの懸念を抱く。政府は発想を転換し、患者の立場にたった別の仕組みを考えるべきだ。

 難病は5000〜7000疾患あるとされるが、国が継続的に調査研究しているのは130疾患(患者約750万人余)で、そのうち、医療費助成が受けられるのは国が「特定疾患」と指定する56疾患(同約70万人)のみだ。

◇重い医療費負担特定疾患と格差

 特定疾患の場合、医療費の自己負担は外来なら最大で月額1万1550円、入院でも2万3100円で済む。しかし、指定に外れた多くの病気の患者は、ほとんど支援を受けられない。

 私が取材で出会った佐賀県唐津市の女性(47)は、5年前に「再発性多発軟骨炎」を発症したが、特定疾患でないため支援対象外だ。全身の関節に痛みが広がったが、周囲に訴えても「誰でも痛いところはある」と理解を得られない。全国に約240人しかいない希少疾患で、当初は病名さえ分からなかった。現在、女性は膠原(こうげん)病の診療科に通っており、月額3万円以上の医療費がかかる。膠原病には「全身性エリテマトーデス」など特定疾患に指定された病気もある。薬や治療内容もほぼ同じなのに、病名だけで負担額に大きな差が出てしまう。女性は「あまりに不公平で……。病名だけで差別せず、症状の実態を見てほしい」と語った。

 特定疾患は学識者による「特定疾患対策懇談会」で決定されるが「希少性」や「原因不明」など条件を満たしていても未指定の疾患が多い。女性の訴えに対し「筋の通った説明ができない」(難病対策に関わる医師)のが現状だ。

 そんな中、厚生労働省の「難病対策委員会」は昨夏から抜本改革の議論を始め、今年8月、法制化も含めた「中間報告」を発表した。委員長の金澤一郎・国際医療福祉大大学院長は「現行制度は大きな矛盾と不公平をはらんでいる」とし、医療費助成の対象を広げる方針を打ち出した。
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