「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

川﨑の事件、不安な気持ちは、担任や養護、学校カウンセラーの先生、そして私達小児科医にご相談下さい。/病児保育鋭意実施中。

政教分離の難しいところ、倒壊神社の再建にて。

2016-05-20 20:10:41 | 憲法学

 政教分離があって、憲法学上も、難しい問題です。



*********東京新聞*************

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地方自治体の直面する諸問題に対し、憲法学的視点からの分析:憲法学者木村草太先生

2016-03-03 23:00:00 | 憲法学

 憲法学者である木村草太先生が、地方自治体の直面する諸問題に対し、憲法学的視点から論じておられます。

 たいへん勉強になるサイトです。

 ⇒ https://www.okinawatimes.co.jp/cross/?id=398

 

 

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『石に泳ぐ魚』事件(最高裁判例H14.9.24)尊敬する先生にお会いする前に一読

2015-03-05 21:28:57 | 憲法学
 明日、尊敬する先生にお会いするアポをいただいた。

 お会いする前に、再読。「石に泳ぐ魚」事件、最高裁判例H14.9.24。

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http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/093/076093_hanrei.pdf

主 文 本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人岡田宰,同舟木亮一,同復代理人広津佳子の上告理由及び上告受理申 立て理由第3について

1 本件は,原審控訴人D(以下「D」という。)が執筆し,上告人A1(以下 「上告人A1」という。)が編集兼発行者となって上告人株式会社A2社(以下「 上告人A2社」という。)が発行した雑誌において公表された小説「E」によって 名誉を毀損され,プライバシー及び名誉感情を侵害されたとする被上告人が,D及 び上告人らに対して慰謝料の支払を求めるとともに,D及び上告人A2社に対し, 同小説の出版等の差止めを求めるなどしている事案である。原審が適法に確定した 事実関係の概要は,次のとおりである。

(1) 被上告人は,昭和44年に東京都で生まれた韓国籍の女性であり,同55 年以降韓国に居住してきたが,韓国ソウル市内のF大学を卒業した後の平成5年に 来日し,G大学の大学院に在籍していた。被上告人は,幼少時に血管奇形に属する 静脈性血管腫にり患し,幼少時からの多数回にわたる手術にもかかわらず完治の見 込みはなく,その血管奇形が外ぼうに現れている。また,被上告人の父は,日本国 内の大学の国際政治学の教授であったが,昭和49年に講演先の韓国においてスパ イ容疑で逮捕され,同53年まで投獄された。 Dは,昭和43年生まれの著名な劇作家,小説家であり,平成9年にはH賞を受 賞するなどしている。 被上告人とDは,平成4年8月にDが訪韓した際に知り合い,交友関係を持つよ うになり,Dが日本に帰国した後も手紙等のやり取りをしていた。
-1 -

(2) Dは,「E」と題する小説(以下「本件小説」という。)を執筆し,これ を,上告人A1が編集兼発行者で,上告人A2社が発行する雑誌「I」平成6年9 月号において公表した。本件小説には,被上告人をモデルとする「J」なる人物が 全編にわたって登場する。本件小説中の「J」は,小学校5年生まで日本に居住し ていた日本生まれの韓国籍の女性で,被上告人が卒業した韓国ソウル市内のF大学 を卒業し,被上告人が在籍しているG大学の大学院に在籍して被上告人の専攻と同 一の学科を専攻しており,その顔面に完治の見込みのない腫瘍がある。また,「J」 の父は,日本国内の大学の国際政治学の教授をしていたが,講演先の韓国でスパイ 容疑により逮捕された経歴を持っていることなど,「J」には被上告人と一致する 特徴等が与えられている。一方で,本件小説中において,「J」が高額の寄附を募 る問題のあるかのような団体として記載されている新興宗教に入信したとの虚構の 事実が述べられている。さらに,本件小説中において,「J」の顔面の腫瘍につき ,通常人が嫌う生物や原形を残さない水死体の顔などに例えて描写するなど,異様 なもの,悲劇的なもの,気味の悪いものなどと受け取られるか烈な表現がされてい る。

(3) 被上告人は,上記雑誌において本件小説が公表されたことを知ってこれを 読むまで,Dが被上告人をモデルとした人物が登場する本件小説を執筆していたこ とを知らず,また,本件小説の公表を知った後も,Dに対し,本件小説の公表を承 諾したことはなかった。 被上告人は,本件小説を読み,本件小説に登場する「J」が自分をモデルとして いることを知るとともに,Dを信頼して話した私的な事柄が本件小説中に多く記述 されていること等に激しい憤りを感じ,これにより,自分がこれまでの人生で形成 してきた人格がすべて否定されたような衝撃を覚えた。

(4) 上告人A2社は,本件小説の日本語版の販売等を行う権利を有している。
-2 -

2 以上の事実関係の下で,原審は,次のとおり判断し,D,上告人A2社及び 上告人A1に対して100万円の慰謝料並びにこれに対する遅延損害金の連帯支払 を命じ,また,D及び上告人A2社らに対し,本件小説の出版等の差止めを命じる べきものであるなどとした。

(1) 本件小説中の「J」と被上告人とは容易に同定可能であり,本件小説の公 表により,被上告人の名誉が毀損され,プライバシー及び名誉感情が侵害されたも のと認められる。

(2) 本件小説の公表により,被上告人は精神的苦痛を被ったものと認められ, その賠償額は,1審判決が肯認し,被上告人が不服を申し立てていない金額である 100万円を下回るものではないと認められる。D及び上告人らは,被上告人に対 し,連帯して100万円及びこれに対する遅延損害金の支払義務がある。

(3) 人格的価値を侵害された者は,人格権に基づき,加害者に対し,現に行わ れている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,侵害行為の差 止めを求めることができるものと解するのが相当である。どのような場合に侵害行 為の差止めが認められるかは,侵害行為の対象となった人物の社会的地位や侵害行 為の性質に留意しつつ,予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵 害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべ きである。そして,侵害行為が明らかに予想され,その侵害行為によって被害者が 重大な損失を受けるおそれがあり,かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし 著しく困難になると認められるときは侵害行為の差止めを肯認すべきである。 被上告人は,大学院生にすぎず公的立場にある者ではなく,また,本件小説にお いて問題とされている表現内容は,公共の利害に関する事項でもない。さらに,本 件小説の出版等がされれば,被上告人の精神的苦痛が倍加され,被上告人が平穏な 日常生活や社会生活を送ることが困難となるおそれがある。そして,本件小説を読
-3 -
む者が新たに加わるごとに,被上告人の精神的苦痛が増加し,被上告人の平穏な日 常生活が害される可能性も増大するもので,出版等による公表を差し止める必要性 は極めて大きい。 以上によれば,被上告人のD及び上告人A2社らに対する本件小説の出版等の差 止め請求は肯認されるべきである。

3 【要旨】原審の確定した事実関係によれば,公共の利益に係わらない被上告 人のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む本件小説の公表により公的立場に ない被上告人の名誉,プライバシー,名誉感情が侵害されたものであって,本件小 説の出版等により被上告人に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるという べきである。したがって,人格権としての名誉権等に基づく被上告人の各請求を認 容した判断に違法はなく,この判断が憲法21条1項に違反するものでないことは ,当裁判所の判例(最高裁昭和41年(あ)第2472号同44年6月25日大法 廷判決・刑集23巻7号975頁,最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6 月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁)の趣旨に照らして明らかである。 論旨はいずれも採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道 裁判官 濱田 邦夫)
-4 -
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風俗案内所規制、京都府条例は「合憲」 H27.2.20大阪高裁(中村哲裁判長)

2015-02-20 15:42:03 | 憲法学
 一審違憲、控訴審合憲。

 営業の自由への規制が合憲か、違憲か、理由が異なったところを判決文に当たってみたいところである。

 

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風俗案内所規制、京都府条例は「合憲」 大阪高裁

太田航

2015年2月20日14時59分

 繁華街での風俗店案内所の営業を規制する京都府条例の規定をめぐり、営業の自由を保障する憲法に違反するかが問われた訴訟の控訴審判決が20日、大阪高裁であった。中村哲(さとし)裁判長は違憲と判断した一審・京都地裁判決とは逆に合憲と判断した。

 風俗店について、京都府は風俗営業法の施行条例で公共施設から「70メートル以内」での営業を禁じる一方、風俗店の案内所は同法の規制対象からはずれていた。このため、京都府は2010年11月に「200メートル以内」での営業を禁止する「風俗案内所規制条例」を独自に施行。罰則も盛り込んだ。これに対し、規制対象になって閉店した風俗店案内所の元経営者が提訴していた。

 規制条例について、一審判決は「キャバクラなどの『接待飲食店』と『性風俗店』の案内を区別しておらず、風俗店の禁止範囲より厳しい。規制の明確な根拠が認められない」として違憲と判断。公共施設から70メートル以上離れた場所での風俗店案内所の営業を認めた。(太田航)
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肖像権が守られました。東京地裁H27.1.29長谷川浩二裁判長

2015-01-29 18:31:37 | 憲法学
 肖像権が守られました。東京地裁H27.1.29長谷川浩二裁判長。



********朝日新聞*****************************
http://www.asahi.com/articles/ASH1Y5580H1YUTIL01Z.html

綾瀬はるかさんらの合成写真掲載、週刊実話に賠償命令

2015年1月29日17時23分

 綾瀬はるかさんや前田敦子さんら女性芸能人8人が、「週刊実話」に無断で合成写真を掲載されたとして、発行元の日本ジャーナル出版などに1人あたり1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、東京地裁であった。長谷川浩二裁判長は「限度を超えた侮辱行為で、名誉を傷つけた」として、同社などに1人あたり80万円の支払いを命じた。

 問題になったのは、週刊実話2013年11月21日号。8人を含む女性芸能人25人の写真に裸の胸のイラストを合成する記事を3ページにわたって掲載した。判決は、「肖像を無断で利用して意図的に露骨な性的表現をし、肖像権などを侵害した」と判断した。
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ヘイトスピーチ賠償確定・街宣禁止、人種差別の表現は許されない 最高裁H26.12.9

2014-12-11 15:33:57 | 憲法学
 人種差別の表現は、許されるものではない。

 司法が、人種差別のヘイトスピーチから、国民を守りました。



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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014121102000134.html

ヘイトスピーチ賠償確定 在特会、街宣も禁止



2014年12月11日 朝刊

 「ヘイトスピーチ」と呼ばれる人種差別的な街宣活動で授業を妨害されたとして、朝鮮学校を運営する京都朝鮮学園が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と会員らを訴えた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)は在特会側の上告を棄却する決定をした。約千二百万円の損害賠償と学校周辺での街宣禁止を命じた一、二審判決が確定した。


 決定は九日付で裁判官五人の全員一致の意見。ヘイトスピーチの違法性を認めて高額の賠償や街宣禁止を命じた司法判断を最高裁が支持したことで、今後、同様の訴訟が起こされる可能性がある。


 昨年十月の一審京都地裁判決は、在特会の街宣を「国連の人種差別撤廃条約が禁じる人種差別に当たる」とし、約千二百万円の賠償を命じた。


 今年七月の二審大阪高裁判決は「偏見や差別意識を助長し増幅させる悪質な行為」と指摘し、一審判決を支持した。


 在特会側は「学校側が近くの公園を校庭として不法占拠していることを非難するための正当な政治的主張。違法とするのは憲法が保障する表現の自由に抵触する」と主張していた。


 一、二審判決によると、在特会の会員ら八人は二〇〇九~一〇年に三回、当時京都市南区にあった朝鮮学校近くで「朝鮮人を保健所で処分しろ」「スパイの子ども」などと拡声器で連呼。その様子を撮影した動画をネットで公開した。


 在特会は、在日コリアンの特別永住資格などを「特権」とみなし、排斥を掲げる団体。ホームページによると会員は約一万五千人。


 最高裁決定を受けて、学校法人「京都朝鮮学園」の柴松枝(シソンジ)理事は「胸のつかえが取れた。日本の司法が私たちの子どもを保護の対象としてくれたことはうれしい」と話した。在特会の八木康洋会長は「最高裁が政治的表現の自由に向き合わなかったことは残念」とコメントした。

◆「未来つなぐ」保護者ら喜び


 最高裁決定を受け、京都朝鮮学園に通う生徒の保護者らが十日、京都市内で記者会見し「日本の司法が私たちの民族教育を保障し守ってくれた」と喜んだ。


 街宣があった当時、長女(15)が小学五年だったという母親の朴貞任(パクチョンイン)さん(46)は「当時はどうすれば子どもを守れるのか頭が真っ白だった。今は決定が未来につなげられると実感が湧いている」と声を震わせた。
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選挙犯罪処刑者の選挙権等停止事件(最高裁大法廷判決S30.2.9)

2014-11-10 23:00:00 | 憲法学
 公選法252条違反の選挙犯罪者は、一定期間公職の選挙に関与することから排除するのは相当で、それは条理に反する差別待遇でも、不当に参政権を奪うものでもない旨判事しています。


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http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/754/054754_hanrei.pdf

         主    文
     本件上告を棄却する。

         理    由

 弁護人池田克の上告趣意第一点について。

 公職選挙法の規定によれば、一般犯罪の処刑者と、いわゆる選挙犯罪(同法二五
二条一項、二項所定の罪)の処刑者との間において、選挙権被選挙権停止の処遇に
ついて、所論のような差違のあることは論旨主張のとおりである。論旨は、同法が
ひとしく犯罪の処刑者について、国民主権につながる重大な基本的人権の行使に関
して、右のごとく差別して待遇することは、憲法一四条及び四四条の趣旨に反し、
不当に国民の参政権を奪い、憲法の保障する基本的人権をおかすものである。よつ
て原判決が本件に適用した公職選挙法二五二条一項及び三項の規定は、ともに憲法
に違反するものであると主張する。
 しかしながら、同法二五二条所定の選挙犯罪は、いずれも選挙の公正を害する犯
罪であつて、かかる犯罪の処刑者は、すなわち現に選挙の公正を害したものとして、
選挙に関与せしめるに不適当なものとみとめるべきであるから、これを一定の期間、
公職の選挙に関与することから排除するのは相当であつて、他の一般犯罪の処刑者
が選挙権被選挙権を停止されるとは、おのずから別個の事由にもとずくものである。
されば選挙犯罪の処刑者について、一般犯罪の処刑者に比し、特に、厳に選挙権被
選挙権停止の処遇を規定しても、これをもつて所論のように条理に反する差別待遇
というべきではないのである。(殊に、同条三項は、犯罪の態容その他情状によつ
ては、第一項停止に関する規定を適用せず、またはその停止期間を短縮する等、具
体的案件について、裁判によつてその処遇を緩和するの途をも開いているのであつ
て、一概に一般犯罪処刑者に比して、甚しく苛酷の待遇と論難することはあたらな
い。)
- 1 -
 国民主権を宣言する憲法の下において、公職の選挙権が国民の最も重要な基本的
権利の一であることは所論のとおりであるが、それだけに選挙の公正はあくまでも
厳粛に保持されなければならないのであつて、一旦この公正を阻害し、選挙に関与
せしめることが不適当とみとめられるものは、しばらく、被選挙権、選挙権の行使
から遠ざけて選挙の公正を確保すると共に、本人の反省を促すことは相当であるか
らこれを以て不当に国民の参政権を奪うものというべきではない。
 されば、所論公職選挙法の規定は憲法に違反するとの論旨は採用することはでき
ない。
 同論旨第二点は量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。
また記録を精査しても、本件において、同四一一条を適用すべきものとはみとめら
れない。
 よつて同四〇八条により主文のとおり判決する。

 この判決は上告趣意第一点に対する裁判官井上登、同真野毅、同斎藤悠輔、同岩
松三郎及び同入江俊郎の意見を除くほか全裁判官の一致した意見によるものである。
 上告趣意第一点に対する裁判官井上登、同真野毅及び同岩松三郎の意見は、次の
とおりである。
 公職選挙法二五二条一項、三項の規定が憲法一四条、同四四条但書に違反するも
のでない(論旨第一点に対する判示参照)とする多数意見の見解そのものには敢え
て反対するものではない。しかし公職選挙法二五二条一項の規定はその明文上明ら
かなように同条項所定の公職選挙法違反の罪を犯した者が同条項所定の刑に処せら
れたということを法律事実として、その者が同条項所定の期間公職選挙法に規定す
る選挙権及び被選挙権を有しないという法律効果の発生することを定めているに過
ぎない。すなわち右の選挙権及び被選挙権停止の効果は前示法律事実の存すること
によつて法律上当然に発生するところなのであつて、右刑を言渡す判決において本
- 2 -
条項を適用しその旨を宣告することによつて裁判の効力として発生せしめられるも
のではないのである。尤も同条三項には「裁判所は情状に因り刑の言渡と同時に第
一項に規定する者に対し同項の五年間又は刑の執行猶予中の期間選挙権及び被選挙
権を有しない旨の規定を適用せず若しくはその期間を短縮する旨を宣告……するこ
とができる」と規定されているので、漫然とそれを通読すれば、恰も裁判所は右刑
の言渡と同時に常に必らず第一項の規定をその判決において適用すべきか否かを判
断しなければならないものの如く考えられるかも知れない。しかし、その法意は第
一項の規定の適用により法律上当然発生すべき法律効果を単に排除し得べきことを
定めたものに過ぎないものであつて、裁判所が右刑の言渡をなす判決において先ず
自ら第一項を適用してこれによつて同項所定の法律効果を発生せしむべきか否かを
判断しなければならないことを規定したものではないのである。この事は右第一項
と第三項との規定を対比しても容易に了解し得るばかりでなく、第三項には前示の
如く、「……適用せず」とあるのに引続いて「若しくはその期間を短縮する旨を宣
告……することができる」と併規されているのであつて、これによつて第一項の規
定の適用により当然発生すべき法律効果たる所定の期間を改めて短縮し得ることを
明確にしていることに徴して明らかであり、(この場合判決においてまず第一項の
規定を適用して一応五年間選挙権及び被選挙権を停止することとした上で、更に第
三項を適用して改めてその期間を短縮し得ることを規定したものでないことは勿論
である。)同条第二項の規定が所定の法律事実の存することによつて、判決による
宣告を待つまでもなく、法律上当然に第一項所定の五年の期間が十年となることを
定めていることによつても明白であろう。これを要するに公職選挙法二五二条一項
の規定は同条項所定の公職選挙法違反事件において裁判所が判決で適用すべき法文
ではなく、選挙の実施に当り当該処刑者が選挙権及び被選挙権を有するか否かを決
するに際してその適用が考慮さるべきものに外ならない。されば、仮りに右条項が
- 3 -
所論の理由により違憲であり、無効であるとしても選挙の実施に際し同条項該当者
として選挙権及び被選挙権を有しないものとして措置された場合にその行政処分に
対しこれを云為するは格別、同条項の適用そのものが全然問題とならない本件公職
選挙法違反事件において、しかも同条項を現に適用してもいない原判決に対して、
同条項の違憲を云為して法令違反ありというのは的なきに矢を射るの類に外ならな
い。この点に関する所論は上告適法の理由に当らないといわなければならない。
 また同条三項の規定は同条一項所定の選挙法違反事件において同条項所定の刑を
言渡す裁判所がこれを放置すれば同条項所定の法律効果が法律上当然に発生するか
ら、情状を斟酌してその緩和措置を講じ得べきことを定めたものであり、現に原判
決においても右第三項の規定を適用して被告人等に対して第一項所定の期間を二年
に短縮する旨を宣告している。すなわち被告人等は原審が右第三項の規定を適用し
て前示の措置に出でなかつたとすれば、同条第一項の規定により法律上当然に裁判
確定の日から五年間選挙権及び被選挙権を有しないものとせらるべかりしところを、
原審が右第三項の規定を適用したことによつて三年の停止期間を免除せられたので
あつて、これによつて被告人等は利益を受けこそすれ何等の不利益をも被つてはい
ないのである。それ故右第三項の規定が違憲であり同条項を適用した原判決を違法
と主張する所論は結局被告人等の為めに不利益に原判決の変更を求めるに帰し、上
告適法の理由とならない。
 されば論旨第一点はすべて上告適法の理由に該当しないのであつて、その理由の
有無に関して審判することを要しないものといわなければならない。
 上告趣意第一点に対する裁判官斎藤悠輔、同入江俊郎の意見は、次のとおりであ
る。
 本論旨が上告適法の理由とならないことは、井上、真野、岩松各裁判官の意見の
とおりである。仮りに上告理由となるものとしても、論旨は、選挙権、被選挙権が
- 4 -
国民主権につながる重大な基本権であり、憲法上法律を以てしても侵されない普遍、
永久且つ固有の人権であることを前提としている。なるほど、日本国憲法前文にお
いて、主権が国民に存することを宣言し、また、同法一五条一項、三項において、
公務員を選定することは、国民固有の権利であり、公務員の選挙については、成年
者による普通選挙を保障する旨規定している。従つて、選挙権については、国民主
権につながる重大な基本権であるといえようが、被選挙権は、権利ではなく、権利
能力であり、国民全体の奉仕者である公務員となり得べき資格である。
 そして、同法四四条本文は、両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれ
を定めると規定し、両議院の議員の選挙権、被選挙権については、わが憲法上他の
諸外国と異り、すべて法律の規定するところに委ねている。されば、両権は、わが
憲法上法律を以てしても侵されない普遍、永久且つ固有の人権であるとすることは
できない。むしろ、わが憲法上法律は、選挙権、被選挙権並びにその欠格条件等に
つき憲法一四条、一五条三項、四四条但書の制限に反しない限り、時宜に応じ自由
且つ合理的に規定し得べきものと解さなければならない。それ故、所論前提は是認
できない。その他公職選挙法二五二条の規定(選挙犯罪に因る処刑者に対する選挙
権及び被選挙権の停止)が憲法一四条、四四条但書に違反しないことについては、
多数説に賛同する。

  昭和三〇年二月九日

     最高裁判所大法廷

         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
- 5 -
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
- 6 -
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国会が法律を作らなかったことについて国家賠償責任が認められた重要判例。在外日本人選挙権訴訟

2014-11-09 23:00:00 | 憲法学
 国会が法律を作らなかったことについて国家賠償責任が認められた重要判例です。


 平成13(行ツ)82  在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件
平成17年9月14日  最高裁判所大法廷  判決  その他  東京高等裁判所


***********************最高裁ホームページ******************************************

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/338/052338_hanrei.pdf


         主    文

1 原判決を次のとおり変更する。
第1審判決を次のとおり変更する。
(1) 本件各確認請求に係る訴えのうち,違法確認請求に係る各訴えをいずれも却
下する。
(2) 別紙当事者目録1記載の上告人らが,次回の衆議院議員の総選挙における小
選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙に
おいて,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる
地位にあることを確認する。
(3) 被上告人は,上告人らに対し,各金5000円及びこれに対する平成8年1
0月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4) 上告人らのその余の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟の総費用は,これを5分し,その1を上告人らの,その余を被上告人の各
負担とする。

         理    由

 上告代理人喜田村洋一ほかの上告理由及び上告受理申立て理由について
 第1 事案の概要等
 1 本件は,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日
本国民(以下「在外国民」という。)に国政選挙における選挙権行使の全部又は一
部を認めないことの適否等が争われている事案である(以下,在外国民に国政選挙
における選挙権の行使を認める制度を「在外選挙制度」という。)。
 2 在外国民の選挙権の行使に関する制度の概要
 (1) 在外国民の選挙権の行使については,平成10年法律第47号によって公
職選挙法が一部改正され(以下,この改正を「本件改正」という。),在外選挙制
- 1 -
度が創設された。しかし,その対象となる選挙について,当分の間は,衆議院比例
代表選出議員の選挙及び参議院比例代表選出議員の選挙に限ることとされた(本件
改正後の公職選挙法附則8項)。本件改正前及び本件改正後の在外国民の選挙権の
行使に関する制度の概要は,それぞれ以下のとおりである。
 (2) 本件改正前の制度の概要
 本件改正前の公職選挙法42条1項,2項は,選挙人名簿に登録されていない者
及び選挙人名簿に登録されることができない者は投票をすることができないものと
定めていた。そして,選挙人名簿への登録は,当該市町村の区域内に住所を有する
年齢満20年以上の日本国民で,その者に係る当該市町村の住民票が作成された日
から引き続き3か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者について行
うこととされているところ(同法21条1項,住民基本台帳法15条1項),在外
国民は,我が国のいずれの市町村においても住民基本台帳に記録されないため,選
挙人名簿には登録されなかった。その結果,在外国民は,衆議院議員の選挙又は参
議院議員の選挙において投票をすることができなかった。
 (3) 本件改正後の制度の概要
 本件改正により,新たに在外選挙人名簿が調製されることとなり(公職選挙法第
4章の2参照),「選挙人名簿に登録されていない者は,投票をすることができな
い。」と定めていた本件改正前の公職選挙法42条1項本文は,「選挙人名簿又は
在外選挙人名簿に登録されていない者は,投票をすることができない。」と改めら
れた。本件改正によって在外選挙制度の対象となる選挙は,衆議院議員の選挙及び
参議院議員の選挙であるが,当分の間は,衆議院比例代表選出議員の選挙及び参議
院比例代表選出議員の選挙に限ることとされたため,その間は,衆議院小選挙区選
出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙はその対象とならない(本件改正後
の公職選挙法附則8項)。
- 2 -
 3 本件において,在外国民である別紙当事者目録1記載の上告人らは,被上告
人に対し,在外国民であることを理由として選挙権の行使の機会を保障しないこと
は,憲法14条1項,15条1項及び3項,43条並びに44条並びに市民的及び
政治的権利に関する国際規約(昭和54年条約第7号)25条に違反すると主張し
て,主位的に,①本件改正前の公職選挙法は,同上告人らに衆議院議員の選挙及び
参議院議員の選挙における選挙権の行使を認めていない点において,違法(上記の
憲法の規定及び条約違反)であることの確認,並びに②本件改正後の公職選挙法は
,同上告人らに衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙に
おける選挙権の行使を認めていない点において,違法(上記の憲法の規定及び条約
違反)であることの確認を求めるとともに,予備的に,③同上告人らが衆議院小選
挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙において選挙権を行使する権
利を有することの確認を請求している。
 また,別紙当事者目録1記載の上告人ら及び平成8年10月20日当時は在外国
民であったがその後帰国した同目録2記載の上告人らは,被上告人に対し,立法府
である国会が在外国民が国政選挙において選挙権を行使することができるように公
職選挙法を改正することを怠ったために,上告人らは同日に実施された衆議院議員
の総選挙(以下「本件選挙」という。)において投票をすることができず損害を被
ったと主張して,1人当たり5万円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払
を請求している。
 4 原判決は,本件の各確認請求に係る訴えはいずれも法律上の争訟に当たらず
不適法であるとして却下すべきものとし,また,本件の国家賠償請求はいずれも棄
却すべきものとした。所論は,要するに,在外国民の国政選挙における選挙権の行
使を制限する公職選挙法の規定は,憲法14条,15条1項及び3項,22条2項
,43条,44条等に違反すると主張するとともに,確認の訴えをいずれも不適法
- 3 -
とし,国家賠償請求を認めなかった原判決の違法をいうものである。
 第2 在外国民の選挙権の行使を制限することの憲法適合性について
 1 国民の代表者である議員を選挙によって選定する国民の権利は,国民の国政
への参加の機会を保障する基本的権利として,議会制民主主義の根幹を成すもので
あり,民主国家においては,一定の年齢に達した国民のすべてに平等に与えられる
べきものである。
 憲法は,前文及び1条において,主権が国民に存することを宣言し,国民は正当
に選挙された国会における代表者を通じて行動すると定めるとともに,43条1項
において,国会の両議院は全国民を代表する選挙された議員でこれを組織すると定
め,15条1項において,公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有
の権利であると定めて,国民に対し,主権者として,両議院の議員の選挙において
投票をすることによって国の政治に参加することができる権利を保障している。そ
して,憲法は,同条3項において,公務員の選挙については,成年者による普通選
挙を保障すると定め,さらに,44条ただし書において,両議院の議員の選挙人の
資格については,人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産又は収入によ
って差別してはならないと定めている。以上によれば,憲法は,国民主権の原理に
基づき,両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加する
ことができる権利を国民に対して固有の権利として保障しており,その趣旨を確た
るものとするため,国民に対して投票をする機会を平等に保障しているものと解す
るのが相当である。
 憲法の以上の趣旨にかんがみれば,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選
挙権について一定の制限をすることは別として,国民の選挙権又はその行使を制限
することは原則として許されず,国民の選挙権又はその行使を制限するためには,
そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないと
- 4 -
いうべきである。そして,そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保し
つつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる
場合でない限り,上記のやむを得ない事由があるとはいえず,このような事由なし
に国民の選挙権の行使を制限することは,憲法15条1項及び3項,43条1項並
びに44条ただし書に違反するといわざるを得ない。また,このことは,国が国民
の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執らないという不作為によって国
民が選挙権を行使することができない場合についても,同様である。
 在外国民は,選挙人名簿の登録について国内に居住する国民と同様の被登録資格
を有しないために,そのままでは選挙権を行使することができないが,憲法によっ
て選挙権を保障されていることに変わりはなく,国には,選挙の公正の確保に留意
しつつ,その行使を現実的に可能にするために所要の措置を執るべき責務があるの
であって,選挙の公正を確保しつつそのような措置を執ることが事実上不能ないし
著しく困難であると認められる場合に限り,当該措置を執らないことについて上記
のやむを得ない事由があるというべきである。
 2 本件改正前の公職選挙法の憲法適合性について
 前記第1の2(2)のとおり,本件改正前の公職選挙法の下においては,在外国民
は,選挙人名簿に登録されず,その結果,投票をすることができないものとされて
いた。これは,在外国民が実際に投票をすることを可能にするためには,我が国の
在外公館の人的,物的態勢を整えるなどの所要の措置を執る必要があったが,その
実現には克服しなければならない障害が少なくなかったためであると考えられる。
 記録によれば,内閣は,昭和59年4月27日,「我が国の国際関係の緊密化に
伴い,国外に居住する国民が増加しつつあることにかんがみ,これらの者について
選挙権行使の機会を保障する必要がある」として,衆議院議員の選挙及び参議院議
員の選挙全般についての在外選挙制度の創設を内容とする「公職選挙法の一部を改
- 5 -
正する法律案」を第101回国会に提出したが,同法律案は,その後第105回国
会まで継続審査とされていたものの実質的な審議は行われず,同61年6月2日に
衆議院が解散されたことにより廃案となったこと,その後,本件選挙が実施された
平成8年10月20日までに,在外国民の選挙権の行使を可能にするための法律改
正はされなかったことが明らかである。世界各地に散在する多数の在外国民に選挙
権の行使を認めるに当たり,公正な選挙の実施や候補者に関する情報の適正な伝達
等に関して解決されるべき問題があったとしても,既に昭和59年の時点で,選挙
の執行について責任を負う内閣がその解決が可能であることを前提に上記の法律案
を国会に提出していることを考慮すると,同法律案が廃案となった後,国会が,1
0年以上の長きにわたって在外選挙制度を何ら創設しないまま放置し,本件選挙に
おいて在外国民が投票をすることを認めなかったことについては,やむを得ない事
由があったとは到底いうことができない。そうすると,【要旨1】本件改正前の公
職選挙法が,本件選挙当時,在外国民であった上告人らの投票を全く認めていなか
ったことは,憲法15条1項及び3項,43条1項並びに44条ただし書に違反す
るものであったというべきである。

 3 本件改正後の公職選挙法の憲法適合性について
 本件改正は,在外国民に国政選挙で投票をすることを認める在外選挙制度を設け
たものの,当分の間,衆議院比例代表選出議員の選挙及び参議院比例代表選出議員
の選挙についてだけ投票をすることを認め,衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参
議院選挙区選出議員の選挙については投票をすることを認めないというものである。
この点に関しては,投票日前に選挙公報を在外国民に届けるのは実際上困難であり
,在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達するのが困難であるという状況
の下で,候補者の氏名を自書させて投票をさせる必要のある衆議院小選挙区選出議
員の選挙又は参議院選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票をすることを認
- 6 -
めることには検討を要する問題があるという見解もないではなかったことなどを考
慮すると,初めて在外選挙制度を設けるに当たり,まず問題の比較的少ない比例代
表選出議員の選挙についてだけ在外国民の投票を認めることとしたことが,全く理
由のないものであったとまでいうことはできない。しかしながら,本件改正後に在
外選挙が繰り返し実施されてきていること,通信手段が地球規模で目覚ましい発達
を遂げていることなどによれば,在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達
することが著しく困難であるとはいえなくなったものというべきである。また,参
議院比例代表選出議員の選挙制度を非拘束名簿式に改めることなどを内容とする公
職選挙法の一部を改正する法律(平成12年法律第118号)が平成12年11月
1日に公布され,同月21日に施行されているが,この改正後は,参議院比例代表
選出議員の選挙の投票については,公職選挙法86条の3第1項の参議院名簿登載
者の氏名を自書することが原則とされ,既に平成13年及び同16年に,在外国民
についてもこの制度に基づく選挙権の行使がされていることなども併せて考えると
,【要旨2】遅くとも,本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は
参議院議員の通常選挙の時点においては,衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議
院選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票をすることを認めないことについ
て,やむを得ない事由があるということはできず,公職選挙法附則8項の規定のう
ち,在外選挙制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に
限定する部分は,憲法15条1項及び3項,43条1項並びに44条ただし書に違
反するものといわざるを得ない。

 第3 確認の訴えについて
 1 本件の主位的確認請求に係る訴えのうち,本件改正前の公職選挙法が別紙当
事者目録1記載の上告人らに衆議院議員の選挙及び参議院議員の選挙における選挙
権の行使を認めていない点において違法であることの確認を求める訴えは,過去の
- 7 -
法律関係の確認を求めるものであり,この確認を求めることが現に存する法律上の
紛争の直接かつ抜本的な解決のために適切かつ必要な場合であるとはいえないから
,確認の利益が認められず,不適法である。
 2 また,本件の主位的確認請求に係る訴えのうち,本件改正後の公職選挙法が
別紙当事者目録1記載の上告人らに衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙
区選出議員の選挙における選挙権の行使を認めていない点において違法であること
の確認を求める訴えについては,他により適切な訴えによってその目的を達成する
ことができる場合には,確認の利益を欠き不適法であるというべきところ,本件に
おいては,後記3のとおり,予備的確認請求に係る訴えの方がより適切な訴えであ
るということができるから,上記の主位的確認請求に係る訴えは不適法であるとい
わざるを得ない。
 3 本件の予備的確認請求に係る訴えは,公法上の当事者訴訟のうち公法上の法
律関係に関する確認の訴えと解することができるところ,その内容をみると,公職
選挙法附則8項につき所要の改正がされないと,在外国民である別紙当事者目録1
記載の上告人らが,今後直近に実施されることになる衆議院議員の総選挙における
小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙
において投票をすることができず,選挙権を行使する権利を侵害されることになる
ので,そのような事態になることを防止するために,同上告人らが,同項が違憲無
効であるとして,当該各選挙につき選挙権を行使する権利を有することの確認をあ
らかじめ求める訴えであると解することができる。
 選挙権は,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず
,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない
性質のものであるから,その権利の重要性にかんがみると,具体的な選挙につき選
挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこれを有することの確認を求め
- 8 -
る訴えについては,それが有効適切な手段であると認められる限り,確認の利益を
肯定すべきものである。そして,本件の予備的確認請求に係る訴えは,公法上の法
律関係に関する確認の訴えとして,上記の内容に照らし,確認の利益を肯定するこ
とができるものに当たるというべきである。なお,この訴えが法律上の争訟に当た
ることは論をまたない。
 そうすると,【要旨3】本件の予備的確認請求に係る訴えについては,引き続き
在外国民である同上告人らが,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議
員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外
選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあるこ
との確認を請求する趣旨のものとして適法な訴えということができる。

 4 そこで,本件の予備的確認請求の当否について検討するに,前記のとおり,
公職選挙法附則8項の規定のうち,在外選挙制度の対象となる選挙を当分の間両議
院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は,憲法15条1項及び3項,43条
1項並びに44条ただし書に違反するもので無効であって,【要旨4】別紙当事者
目録1記載の上告人らは,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の
選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙
人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあるという
べきであるから,本件の予備的確認請求は理由があり,更に弁論をするまでもなく
,これを認容すべきものである。
 第4 国家賠償請求について
 国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の
国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに
,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。したが
って,国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは,
- 9 -
国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違
背したかどうかの問題であって,当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題と
は区別されるべきであり,仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反
するものであるとしても,そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに
違法の評価を受けるものではない。しかしながら,【要旨5】立法の内容又は立法
不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白
な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立
法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が
正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国会議員の立
法行為又は立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受け
るものというべきである。最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月2
1日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁は,以上と異なる趣旨をいうもの
ではない。
 在外国民であった上告人らも国政選挙において投票をする機会を与えられること
を憲法上保障されていたのであり,この権利行使の機会を確保するためには,在外
選挙制度を設けるなどの立法措置を執ることが必要不可欠であったにもかかわらず
,前記事実関係によれば,昭和59年に在外国民の投票を可能にするための法律案
が閣議決定されて国会に提出されたものの,同法律案が廃案となった後本件選挙の
実施に至るまで10年以上の長きにわたって何らの立法措置も執られなかったので
あるから,このような著しい不作為は上記の例外的な場合に当たり,このような場
合においては,過失の存在を否定することはできない。このような立法不作為の結
果,上告人らは本件選挙において投票をすることができず,これによる精神的苦痛
を被ったものというべきである。したがって,本件においては,上記の違法な立法
不作為を理由とする国家賠償請求はこれを認容すべきである。
- 10 -
 そこで,上告人らの被った精神的損害の程度について検討すると,本件訴訟にお
いて在外国民の選挙権の行使を制限することが違憲であると判断され,それによっ
て,本件選挙において投票をすることができなかったことによって上告人らが被っ
た精神的損害は相当程度回復されるものと考えられることなどの事情を総合勘案す
ると,損害賠償として各人に対し慰謝料5000円の支払を命ずるのが相当である。
そうであるとすれば,本件を原審に差し戻して改めて個々の上告人の損害額につい
て審理させる必要はなく,当審において上記金額の賠償を命ずることができるもの
というべきである。【要旨6】そこで,上告人らの本件請求中,損害賠償を求める
部分は,上告人らに対し各5000円及びこれに対する平成8年10月21日から
支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容
し,その余は棄却することとする。

 第5 結論
 以上のとおりであるから,本件の主位的確認請求に係る各訴えをいずれも却下す
べきものとした原審の判断は正当として是認することができるが,予備的確認請求
に係る訴えを却下すべきものとし,国家賠償請求を棄却すべきものとした原審の判
断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。そして,以上に説
示したところによれば,本件につき更に弁論をするまでもなく,上告人らの予備的
確認請求は理由があるから認容すべきであり,国家賠償請求は上告人らに対し各5
000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し
,その余は棄却すべきである。論旨は上記の限度で理由があり,条約違反の論旨に
ついて判断するまでもなく,原判決を主文第1項のとおり変更すべきである。
 よって,裁判官横尾和子,同上田豊三の反対意見,判示第4についての裁判官泉
徳治の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。な
お,裁判官福田博の補足意見がある。
- 11 -
 裁判官福田博の補足意見は,次のとおりである。
 私は,法廷意見に賛成するものであるが,法廷意見に関して,在外国民の選挙権
の剥奪又は制限に対する国家賠償について,消極的な見解を述べる反対意見が表明
されたこと(泉裁判官)と,在外国民の選挙権の剥奪又は制限は基本的に国会の裁
量に係る部分があり,現行の制度はいまだ違憲の問題を生じていないとする反対意
見が表明されたこと(横尾裁判官及び上田裁判官)にかんがみ,若干の考えを述べ
ておくこととしたい。
 1 選挙権の剥奪又は制限と国家賠償について
 在外国民の選挙権が剥奪され,又は制限されている場合に,それが違憲であるこ
とが明らかであるとしても,国家賠償を認めることは適当でないという泉裁判官の
意見は,一面においてもっともな内容を含んでおり,共感を覚えるところも多い。
特に,代表民主制を基本とする民主主義国家においては,国民の選挙権は国民主権
の中で最も中核を成す権利であり,いやしくも国が賠償金さえ払えば,国会及び国
会議員は国民の選挙権を剥奪又は制限し続けることができるといった誤解を抱くと
いったような事態になることは絶対に回避すべきであるという私の考えからすれば
,選挙権の剥奪又は制限は本来的には金銭賠償になじまない点があることには同感
である。
 しかし,そのような感想にもかかわらず,私が法廷意見に賛成するのは主として
次の2点にある。
 第1は,在外国民の選挙権の剥奪又は制限が憲法に違反するという判決で被益す
るのは,現在も国外に居住し,又は滞在する人々であり,選挙後帰国してしまった
人々に対しては,心情的満足感を除けば,金銭賠償しか救済の途がないという事実
である。上告人の中には,このような人が現に存在するのであり,やはりそのよう
な人々のことも考えて金銭賠償による救済を行わざるを得ない。
- 12 -
 第2は,-この点は第1の点と等しく,又はより重要であるが-国会又は国会議
員が作為又は不作為により国民の選挙権の行使を妨げたことについて支払われる賠
償金は,結局のところ,国民の税金から支払われるという事実である。代表民主制
の根幹を成す選挙権の行使が国会又は国会議員の行為によって妨げられると,その
償いに国民の税金が使われるということを国民に広く知らしめる点で,賠償金の支
払は,額の多寡にかかわらず,大きな意味を持つというべきである。
 2 在外国民の選挙権の剥奪又は制限は憲法に違反せず,国会の裁量の範囲に収
まっているという考えには全く賛同できない。
 現代の民主主義国家は,そのほとんどが代表民主制を国家の統治システムの基本
とするもので,一定年齢に達した国民が平等かつ自由かつ定時に(解散により行わ
れる選挙を含む。以下同じ。)選挙権を行使できることを前提とし,そのような選
挙によって選ばれた議員で構成される議会が国権の最高機関となり,行政,司法と
あいまって,三権分立の下に国の統治システムを形成する。我が国も憲法の規定に
よれば,そのような代表民主制国家の一つであるはずであり,代表民主制の中核で
ある立法府は,平等,自由,定時の選挙によって初めて正当性を持つ組織となる。
民主主義国家が目指す基本的人権の尊重にあっても,このような三権分立の下で,
国会は,国権の最高機関として重要な役割を果たすことになる。
 国会は,平等,自由,定時のいずれの側面においても,国民の選挙権を剥奪し制
限する裁量をほとんど有していない。国民の選挙権の剥奪又は制限は,国権の最高
機関性はもとより,国会及び国会議員の存在自体の正当性の根拠を失わしめるので
ある。国民主権は,我が国憲法の基本理念であり,我が国が代表民主主義体制の国
であることを忘れてはならない。
 在外国民が本国の政治や国の在り方によってその安寧に大きく影響を受けること
は,経験的にも随所で証明されている。
- 13 -
 代表民主主義体制の国であるはずの我が国が,住所が国外にあるという理由で,
一般的な形で国民の選挙権を制限できるという考えは,もう止めにした方が良いと
いうのが私の感想である。
 裁判官横尾和子,同上田豊三の反対意見は,次のとおりである。
 私たちは,本件上告をいずれも棄却すべきであると考えるが,その理由は次のと
おりである。
 1 憲法は,その前文において,「日本国民は,正当に選挙された国会における
代表者を通じて行動し,・・・ここに主権が国民に存することを宣言し,この憲法
を確定する。そもそも国政は,国民の厳粛な信託によるものであつて,その権威は
国民に由来し,その権力は国民の代表者がこれを行使し,その福利は国民がこれを
享受する。」として,国民主権主義を宣言している。
 これを受けて,「公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利
である。」(憲法15条1項),「公務員の選挙については,成年者による普通選
挙を保障する。」(同条3項)と規定し,公務員の選挙権が国民固有の権利である
ことを明確にしている。
 一方,国会が衆議院及び参議院の両議院から構成されること(憲法42条),両
議院は全国民を代表する選挙された議員で組織されること(憲法43条1項)を規
定するとともに,両議院の議員の定数,議員及びその選挙人の資格,選挙区,投票
の方法その他選挙に関する事項は,これを法律で定めるべきものとし(憲法43条
2項,44条,47条),両議院の議員の各選挙制度の仕組みについての具体的な
決定を原則として国会の裁量にゆだねているのである。もっとも,議員及び選挙人
の資格を法律で定めるに当たっては,人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育
,財産又は収入によって差別してはならないことを明らかにしている(憲法44条
ただし書)。
- 14 -
 そして,国会が両議院の議員の各選挙制度の仕組みを具体的に決定するに当たっ
ては,選挙人である国民の自由に表明する意思により選挙が混乱なく,公明かつ適
正に行われるよう,すなわち公正,公平な選挙が混乱なく実現されるために必要と
される事項を考慮しなければならないのである。我が国の主権の及ばない国や地域
(そこには様々な国や地域が存在する。)に居住していて,我が国内の市町村の区
域内に住所を有していない国民(在外国民。在外国民にも二重国籍者や海外永住者
などいろいろな種類の人たちがいる。)も,国民である限り選挙権を有しているこ
とはいうまでもないが,そのような在外国民が選挙権を行使する,すなわち投票を
するに当たっては,国内に居住する国民の場合に比べて,様々な社会的,技術的な
制約が伴うので,在外国民にどのような投票制度を用意すれば選挙の公正さ,公平
さを確保し,混乱のない選挙を実現することができるのかということも国会におい
て正当に考慮しなければならない事項であり,国会の裁量判断にゆだねられている
と解すべきである。 
 換言すれば,両議院の議員の各選挙制度をどのような仕組みのものとするのか,
すなわち,選挙区として全国区制,中選挙区制,小選挙区制,比例代表制のうちい
ずれによるのかあるいはいずれかの組合せによるのか,組合せによるとしてどのよ
うな方法によるのか,各選挙区の内容や区域・区割りはどうするのか,議員の総定
数や選挙区への定数配分をどうするのか,選挙人名簿制度はどのようなものにする
のか,投票方式はどうするのか,候補者の政見等を選挙人へ周知させることも含め
て選挙運動をどのようなものとするのかなどなど,選挙人の自由な意思が公明かつ
適正に選挙に反映され,混乱のない公正,公平な選挙が実現されるよう,選挙制度
の仕組みに関する様々な事柄を選択し,決定することは国会に課せられた責務であ
る。そして,そのような選挙制度の仕組みとの関連において,また,様々な社会的
,技術的な制約が伴う中にあって,我が国の主権の及ばない国や地域に居住してい
- 15 -
る在外国民に対し,どのような投票制度を用意すれば選挙の公正さ,公平さを確保
し,混乱のない選挙を実現することができるのかということも,国会において判断
し,選択し,決定すべき事柄であり,国会の裁量判断にゆだねられた事項である(
この点,我が国の主権の及ぶ我が国内に居住している国民の選挙権の行使を制限す
る場合とは趣を異にするといわなければならない。我が国内に居住している国民の
選挙権又はその行使を制限することは,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の
選挙権について一定の制限をすることは別として,原則として許されず,国民の選
挙権又はその行使を制限するためには,そのような制限をすることがやむを得ない
と認められる事由がなければならず,そのような制限をすることなしには選挙の公
正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると
認められる場合でない限り,上記のやむを得ない事由があるとはいえず,このよう
な事由なしに国民の選挙権の行使を制限することは,憲法に違反するといわざるを
得ない,とする多数意見に同調するものである。)。
 2 両議院の議員の各選挙制度の仕組みについては,公職選挙法がこれを定めて
いる。従来,選挙人名簿に登録されていない者及び登録されることができない者は
投票することができないとされ,選挙人名簿への登録は,当該市町村の区域内に住
所を有する年齢満20年以上の国民で,その者に係る当該市町村の住民票が作成さ
れた日から引き続き3か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者につ
いて行うこととされており,在外国民は,我が国のいずれの市町村においても住民
基本台帳に記録されないため,両議院議員の選挙においてその選挙権を行使する,
すなわち投票をすることができなかった。
 平成6年の公職選挙法の一部改正により,それまで長年にわたり中選挙区制の下
で行われていた衆議院議員の選挙についても,小選挙区比例代表並立制が採用され
ることになった。そして,平成10年法律第47号による公職選挙法の一部改正に
- 16 -
より,新たに在外選挙人名簿の制度が創設され,在外国民に在外選挙人名簿に登録
される途を開き,これに登録されている者は,両議院議員の選挙において投票する
ことができるようになった。もっとも,上記改正後の公職選挙法附則8項において
,当分の間は,両議院の比例代表選出議員の選挙に限ることとされたため,衆議院
小選挙区選出議員及び参議院選挙区選出議員の選挙はその対象とならないこととさ
れている。このように両議院の比例代表選出議員の選挙に限って在外国民に投票の
機会を認めたことの理由につき,12日ないし17日という限られた選挙運動期間
中に在外国民へ候補者個人に関する情報を伝達することが極めて困難であること等
を勘案したものであると説明されている。
 3 上記のとおり,我が国においては,従来,在外国民には両議院議員の選挙に
関し投票の機会が与えられていなかったところ,平成10年の改正により,両議院
の比例代表選出議員の選挙について投票の機会を与えることにし,衆議院小選挙区
選出議員及び参議院選挙区選出議員の選挙については,在外国民への候補者個人に
関する情報を伝達することが極めて困難であること等を勘案して,当分の間,投票
の機会を与えないこととしたというのである。
 国会のこれらの選択は,選挙制度の仕組みとの関連において在外国民にどのよう
な投票制度を用意すれば選挙の公正さ,公平さを確保し,混乱のない選挙を実現す
ることができるのかという,国会において正当に考慮することのできる事項を考慮
した上での選択ということができ,正確な候補者情報の伝達,選挙人の自由意思に
よる投票環境の確保,不正の防止等に関し様々な社会的,技術的な制約の伴う中で
それなりの合理性を持ち,国会に与えられた裁量判断を濫用ないし逸脱するもので
はなく,平成10年に至って新たに在外選挙人名簿の制度を創設し,それまではこ
のような制度を設けていなかったことをも含めて,いまだ上告人らの主張する憲法
の各規定や条約に違反するものではなく,違憲とはいえないと解するのが相当であ
- 17 -
る。
 4 私たちは,本件の主位的確認請求に係る訴えは不適法であり,予備的確認請
求に係る訴えは適法であるとする多数意見に同調するものであるが,公職選挙法附
則8項の規定のうち在外選挙制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選
出議員の選挙に限定している部分も違憲とはいえないと解するので,本件の予備的
確認請求は理由がなく,これを棄却すべきものと考える。本件の予備的確認請求に
係る訴えを却下すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明ら
かな法令の違反があることになるが,本件の予備的確認請求を求めている上告人ら
からの上告事件である本件においては,いわゆる不利益変更禁止の原則により,こ
の部分に係る本件上告を棄却すべきである。
 また,在外選挙制度を設けなかったことなどの立法上の不作為が違憲であること
を理由とする国家賠償請求については,そのような不作為は違憲ではないと解する
ので,理由がなく,その請求を棄却すべきであるところ,原審はこれと結論を同じ
くするものであるから,この部分に関する本件上告も棄却すべきである。
 判示第4についての裁判官泉徳治の反対意見は,次のとおりである。
 私は,多数意見のうち,国家賠償請求の認容に係る部分に反対し,それ以外の部
分に賛同するものである。
多数意見は,公職選挙法が,本件選挙当時,在外国民の投票を認めていなかったこ
とにより,上告人らが本件選挙において選挙権を行使することができなかったこと
による精神的苦痛を慰謝するため,国は国家賠償法に基づき上告人らに各5000
円の慰謝料を支払うべきであるという。しかし,私は,上告人らの上記精神的苦痛
は国家賠償法による金銭賠償になじまないので,本件選挙当時の公職選挙法の合憲・
違憲について判断するまでもなく,上告人らの国家賠償請求は理由がないものとし
- 18 -
て棄却すべきであると考える。
 国民が,憲法で保障された基本的権利である選挙権の行使に関し,正当な理由な
く差別的取扱いを受けている場合には,民主的な政治過程の正常な運営を維持する
ために積極的役割を果たすべき裁判所としては,国民に対しできるだけ広く是正・
回復のための途を開き,その救済を図らなければならない。
 本件国家賠償請求は,金銭賠償を得ることを本来の目的とするものではなく,公
職選挙法が在外国民の選挙権の行使を妨げていることの違憲性を,判決理由の中で
認定することを求めることにより,間接的に立法措置を促し,行使を妨げられてい
る選挙権の回復を目指しているものである。上告人らは,国家賠償請求訴訟以外の
方法では訴えの適法性を否定されるおそれがあるとの思惑から,選挙権回復の方法
としては迂遠な国家賠償請求を,あえて付加したものと考えられる。
 一般論としては,憲法で保障された基本的権利の行使が立法作用によって妨げら
れている場合に,国家賠償請求訴訟によって,間接的に立法作用の適憲的な是正を
図るという途も,より適切な権利回復のための方法が他にない場合に備えて残して
おくべきであると考える。また,当該権利の性質及び当該権利侵害の態様により,
特定の範囲の国民に特別の損害が生じているというような場合には,国家賠償請求
訴訟が権利回復の方法としてより適切であるといえよう。
 しかしながら,本件で問題とされている選挙権の行使に関していえば,選挙権が
基本的人権の一つである参政権の行使という意味において個人的権利であることは
疑いないものの,両議院の議員という国家の機関を選定する公務に集団的に参加す
るという公務的性格も有しており,純粋な個人的権利とは異なった側面を持ってい
る。しかも,立法の不備により本件選挙で投票をすることができなかった上告人ら
の精神的苦痛は,数十万人に及ぶ在外国民に共通のものであり,個別性の薄いもの
である。したがって,上告人らの精神的苦痛は,金銭で評価することが困難であり
- 19 -
,金銭賠償になじまないものといわざるを得ない。英米には,憲法で保障された権
利が侵害された場合に,実際の損害がなくても名目的損害(nominal damages)の
賠償を認める制度があるが,我が国の国家賠償法は名目的損害賠償の制度を採用し
ていないから,上告人らに生じた実際の損害を認定する必要があるところ,それが
困難なのである。
 そして,上告人らの上記精神的苦痛に対し金銭賠償をすべきものとすれば,議員
定数の配分の不均衡により投票価値において差別を受けている過小代表区の選挙人
にもなにがしかの金銭賠償をすべきことになるが,その精神的苦痛を金銭で評価す
るのが困難である上に,賠償の対象となる選挙人が膨大な数に上り,賠償の対象と
なる選挙人と,賠償の財源である税の負担者とが,かなりの部分で重なり合うこと
に照らすと,上記のような精神的苦痛はそもそも金銭賠償になじまず,国家賠償法
が賠償の対象として想定するところではないといわざるを得ない。金銭賠償による
救済は,国民に違和感を与え,その支持を得ることができないであろう。 
 当裁判所は,投票価値の不平等是正については,つとに,公職選挙法204条の
選挙の効力に関する訴訟で救済するという途を開き,本件で求められている在外国
民に対する選挙権行使の保障についても,今回,上告人らの提起した予備的確認請
求訴訟で取り上げることになった。このような裁判による救済の途が開かれている
限り,あえて金銭賠償を認容する必要もない。
 前記のとおり,選挙権の行使に関しての立法の不備による差別的取扱いの是正に
ついて,裁判所は積極的に取り組むべきであるが,その是正について金銭賠償をも
って臨むとすれば,賠償対象の広範さ故に納税者の負担が過大となるおそれが生じ
,そのことが裁判所の自由な判断に影響を与えるおそれもないとはいえない。裁判
所としては,このような財政問題に関する懸念から解放されて,選挙権行使の不平
等是正に対し果敢に取り組む方が賢明であると考える。
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(裁判長裁判官 町田 顯 裁判官 福田 博 裁判官 濱田邦夫 裁判官 横尾
和子 裁判官 上田豊三 裁判官 滝井繁男 裁判官 藤田宙靖 裁判官 甲斐中
辰夫 裁判官 泉 徳治 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴 裁判官 今井 
功 裁判官 中川了滋 裁判官 堀籠幸男)
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他団体の妨害行為によって、拡声器による騒音規制違反で起訴された人を、憲法学的に救う方法

2014-10-18 23:00:00 | 憲法学
 以下、教室事例。

 一人であれば、85dB以下で、規制の範囲内であったのに、他団体の妨害行為にあって、騒音規制違反となった。

〇弁護人の主張

 条例は、実質的には、表現内容規制であり、厳格な審査基準を用いて、法令違憲である。
 
 たとえ、条例は合憲でも、Pへの適用は、Pの表現の自由を侵害し、適用違憲である。

〇検察の主張

 条例は、あくまで、表現内容中立規制であり、立法裁量が広く認められる分野である。合理的関連性の基準を用い、法令合憲である。

 条例のいう合わせて85dBとなっている以上、Pは条例違反であり、起訴には理由がある。


〇自分の主張

 条例は、実質的に表現内容規制であり、より制限的でない方法がある場合、違法とするLRAの基準で判断すべきであり、法令違憲である。

 たとえ、条例は合憲でも、Pを規制することでPの被る表現の自由の侵害(①Pの属性、②Pの表現の内容、③表現した場所と時間、④表現の態様、⑤動機)と、Pを規制することで得られる利益(①守られる利益、②時間、③場所)とを比較考量し、本件では、Pの表現の自由の侵害が、得られる利益より大きいため、適用違憲である。

 




**********教室事例**************************

問題 次の文を読んで問1~問3に答えなさい。

 京都府は、政治団体等による街頭演説、街宣車による演説の音量が大きく、官庁街、住宅街等で、業務や日常生活に著しい影響を与えているという状況を考慮して、「拡声機による暴騒音の規制に関する条例」(以下「本件条例」という。)を制定している。

 政治団体A(以下「A団体」という。)は、若者を中心とした団体であり、韓国に対する日本の歴史認識が不十分であり、日本は韓国民に対して、十分な謝罪と賠償を行うべきであるという点を主として主張し、全国で演説活動及びビラ等の配布を行い、インターネット上のHPにおいて、自己の主張を掲げている団体である。また、A団体は、国会に議席を有する特定の政党の影響を受けない団体である。A団体の代表Pが、他の構成員と共に京都市のJR京都駅前でマイクを使った街頭演説を30分程、行っていたところ(演説はPのみが行った)、右翼系の政治団体B(以下「B団体」という。)の街宣車数台が同駅前の近接する地点に集結し、Pによる演説にあわせるように、大音量でA団体方向に向かって、演説を開始した。B団体の演説によれば、A団体の主張は、日本をダメにするものであり、左翼に洗脳された若者たちの虚言であるという。そして、B団体はA団体に対して論争を挑み、この場で、市民にどちらが正当な主張をしているのかを判断してもらいたいと、駅前の市民に訴えた。

 これに対して、Pは、自己の主張に対して対抗心をむき出しにしたB団体の演説は、迷惑だと思ったが、これ以上、大きな音を立てて反論することは、好ましくないとして、従来の音量のままで演説活動を続けた。なお、これまで、A団体は、他の暴騒音条例(通常85デシベル規制がある)を制定している都道府県で演説活動を行ってきたが、これらの条例に反したとして、警告を受けたり処罰をされたりしたことはなく、拡声器の点検も常に行い、10メートル離れた地点から、85デシベル以下にすることを常に心がけてきた。

 しかしながら、PとB団体の演説をあわせると、著しい騒音となり、JR京都駅前は、騒然となったことから、通報を受けた警察官は、本件条例に指定された方法で、騒音を測定したところ、85デシベルを超えていた。ただし、PとB団体のどちらか一方が85デシベルを超えていたかどうかは確認出来なかったことから、警察官は、本件条例6条1項に基づき、PとB団体に対し、拡声機による暴騒音の発生を防止するために必要な措置をとるべきことを勧告した。これ対してPは、これまで自分たちが85デシベルを超えたことがないことを説明したところ、警察官はこの状況ではPの主張を確認できないとして、あくまでも、演説をやめるようにと勧告した。しかしながら、Pは、自分たちに落ち度がないのに、不当な勧告に従うことはできないとして、演説を継続したところ、警察官は、暴騒音を防止するために、本件条例6条2項に基づいて、演説場所の移動を命じた。Pは、この命令に従わなかったために、本件条例6条2項に違反するとして、起訴された。

問1 あなたが被告Pの弁護人であるとすれば、本件刑事裁判において、どのような憲法上の主張をしますか。なお、法人としてのA団体の権利に言及する必要はない。

問2 被告Pの主張に対して、検察官は、どのように反論するかを簡潔に述べなさい。

問3 問1と問2で示された憲法上の論点について、自己の見解を述べなさい。



関連条文 【拡声機による暴騒音の規制に関する条例(京都府)】
(目的)第1条 この条例は、拡声機を使用して生じさせる著しい騒音が、府民の日常生活を脅かすとともに通常の政治活動その他の活動に重大な支障を及ぼしていることにかんがみ、このような騒音を生じる拡声機の使用について必要な規制を行うことにより、地域の平穏を保持し、もって公共の福祉の確保に資することを目的とする。

(適用上の注意)第2条 この条例の適用に当たっては、集会、結社及び表現の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。

(適用除外)第3条 この条例の規定は、次に掲げる拡声機の使用については、適用しない。
(1) 公職選挙法(昭和25年法律第100号)の定めるところにより選挙運動又は選挙における政治活動のためにする拡声機の使用
(2) 国又は地方公共団体の業務を行うためにする拡声機の使用
以下略

(拡声機による暴騒音の禁止)第4条 何人も、拡声機を使用して、別表の左欄に掲げる拡声機の使用の区分に応じ、それぞれ同表の右欄に定める測定地点において測定したものとした場合における音量が85デシベルを超えることとなる音(以下「拡声機による暴騒音」という。)を生じさせてはならない。

(停止命令)第5条 警察官は、前条の規定に違反する行為(以下「違反行為」という。)が行われているときは、当該違反行為をしている者に対し、当該違反行為を停止することを命じることができる。
2 警察署長は、前項の規定による命令を受けた者が更に反復して違反行為をしたときは、その者に対し、24時間を超えない範囲内で時間を定め、かつ、区域を指定して、拡声機の使用を停止することを命じることができる。

(勧告及び移動命令)第6条 警察官は、2人以上の者が同時に近接した場所でそれぞれ拡声機を使用している場合であって、これらの拡声機により生じている音が拡声機による暴騒音となっており、かつ、それぞれの拡声機の使用が第4条の規定に違反しているかどうかが明らかでないときは、これらの者に対し、拡声機による暴騒音の発生を防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
2 警察官は、前項の規定による勧告を受けた者がその場所にとどまり、かつ、引き続き拡声機による暴騒音を生じさせているときは、これらの者に対し、当該拡声機による暴騒音の発生を防止するために、その場所から移動することを命じることができる。

(立入調査)第7条 警察官は、前2条の規定の施行に必要な限度において、拡声機が所在する場所に立ち入り、拡声機その他必要な物件を調査し、又は関係者に質問することができる。
2 前項の規定により立入調査を行う警察官は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(罰則)第9条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
(1) 第5条第1項又は第6条第2項の規定による警察官の命令に違反した者
(2) 第5条第2項の規定による警察署長の命令に違反した者
2 第7条第1項の規定による警察官の立入り又は調査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、10万円以下の罰金に処する。


別表(第4条関係) 【拡声機の使用の区分と測定方法】
1 権原に基づき使用する土地の区域内における拡声機の使用においては、当該拡声機が所在している土地の区域外であり、かつ、当該拡声機から10メートル以上離れた地点から測定する。
2 権原に基づき使用する土地の区域内における拡声機の使用以外の使用においては、当該拡声機から10メートル以上離れた地点から測定する。

備考
1 音量の測定は、計量法(平成4年法律第51号)第71条の条件に合格した騒音計を用いて行うものとする。この場合において、使用する騒音計の周波数補正回路はA特性の周波数補正回路を、動特性は速い動特性を用いるものとする。
2 音量の大きさは、騒音計の指示値の最大値によるものとする。


参考資料1 音量の参考例
120デシベル 飛行機エンジンの近く
110デシベル 自動車の警笛(前方2m)、リベット打ち
100デシベル 電車が通るときのガード下
90デシベル 大声による独唱、騒々しい工場の中
85デシベル 大きな声・電話の騒音・大型トラックのモーター音・電車線路まで50m
80デシベル 地下鉄の車内、電車の中
70デシベル 電話のベル・騒々しい街頭、騒々しい事務所の中
60デシベル 静かな乗用車、普通の会話
50デシベル 静かな事務所

参考資料2 本件条例改正時における反対意見
以下は、「京都府拡声機規制条例の改悪に反対する」というタイトルの市民運動(沖縄・辺野古への新基地建設に反対し、普天間基地の撤去を求める京都行動)のブログである。

 07年10月、京都府警は、「『拡声機による暴騒音の規制に関する条例の一部を改正する条例(案)』の概要」を発表し、現行の拡声機による暴騒音の規制に関する条例について「1.換算測定方法の導入」、「2.拡声機使用停止命令規定の新設」、「3.複数の者による拡声機の同時使用に対する移動命令規定の新設」、以上3点の改悪を行うことを公表し、パブリックコメント手続きを開始した。
 私たち京都行動は、このパブコメ手続きに対し、条例改悪に反対であり撤回されるべきだとの意見を送った。私たちは特に「3.複数の者による拡声機の同時使用に対する移動命令規定の新設」を問題視し、これがなされてしまうと、いわれのない移動命令が私たちになされてしまうことを危惧する旨の意見を提出した。現行の条例では、2人以上の者が同時に近接した場所でそれぞれ拡声機を使用した結果、10m離れた地点から測定し85デシベルを超える音が発生しているときに、警察官が当該使用者に対して音の発生を防止するための必要な措置をとることを勧告できるとしている。改悪案においてはかかる勧告に従わず引き続き複数の拡声機が使用され85デシベルを超える音が発生していたら、当該使用者に対して警察官はその場からの移動を命じることができ、従わない場合には6ヵ月以下の懲役又は20万円以下の罰金を科しうるとするものとしている。
 府警は、要人の会談など国賓の来洛時において、抗議する団体の街宣車の隊列などを例にあげ、規制強化の必要性を説いている。しかしながら、歩きながら拡声機などを使用して訴えを行ないながら進む一般のデモ行進の隊列や、拡声機を用いて街頭宣伝をおこなう人々に対し、妨害団体の街宣車が大音量で近づいて来て威圧行為を仕掛けてくることは多々あることだ。このような場合でも、とにかくその場で85デシベル以上の音がでていたら私たちに対しても刑事罰を持ってして移動命令が下されてしまう。これを悪用してわざと爆音を発して近づいていき、意に添わない街頭宣伝などを警察に移動命令をださせることによって妨害することも可能になってしまう。私たちは毎週定例で拡声機を使用して街頭宣伝を行なっている。この先もそうしていくつもりであり、私たちに対する移動命令など到底容認できず、国家権力による民衆運動への不当介入であると考える。
 京都府下では私たちの知りうる限り、民主勢力に向けて警察が測定器を使用したとの事例を耳にしたことはないが、他府県においては自衛隊への抗議行動や労働争議の現場などで警察が測定器を使用していたり、福岡のフリーター労働運動家たちの主催した06年のデモに対して警察が測定器を向けていた等の話しは聞いている。国家や資本の意に添わない活動を弾圧するための道具としても使われている現状を見ると、そもそも現行条例の存在にも危惧を抱かざるを得ない。日弁連も1992/9/18付けの会長声明において、当時の東京都拡声機規制条例案の上程にあたり、85デシベルの基準が厳しすぎる点や、一部の常軌を逸した拡声機使用については「刑法の脅迫罪、強要罪、名誉毀損、侮辱罪、軽犯罪法の静寂妨害罪、道路交通法など」の現行法規によってまずは対応が講じられるべきとの点を指摘し批判をしている。
以下略

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昭和女子大学事件が、もし、お茶の水女子大学で起きていたら判決は変わっただろうか?

2014-10-04 23:00:00 | 憲法学
 私立の昭和女子大学事件(最高裁昭和49年7月19日)が、もし、国公立のお茶の水女子大学で起きていたら判決は変わっただろうか?

 部分社会論にも、関連する。


 私立大学において、学則に反して政治活動を行った学生を退学させることの当否について、考えなさい。

回答:

 在学関係設定の目的と関連し、かつ、その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲において、伝統ないし校風と教育方針を学則などにおいて具体化し、実践することが当然認められるべきである。学生の政治的活動を学内外を問わず全く自由に放任するときは、学生が学業をおろそかにし、或いは、学内における教育及び研究の環境を乱し、本人及び他の学生に対する教育目的の達成や研究の遂行を損なう等大学の設置目的の実現を妨げるおそれがあるから、大学当局がこれらの政治活動に対してなんらかの規制を加えること自体は十分に合理性を首肯しうるとところであるとともに、私立大学のなかでも学生の勉学専念を特に重視しあるいは比較的保守的な校風を有する大学が、教育方針にもとづき、学生の政治的行動について届出制あるいは許可制をとることとしても、その規制自体不合理なものと断定することはできない。

 退学処分は、学生の身分を剥奪する重大な措置であることにかんがみ、当該学生に改善の見込みがなく、学外に排除することが教育上やむをえないと認められる場合に限って行うことが出来るものであり、特に慎重な配慮を要することはもちろんであるが、退学処分の選択も、それぞれの学校の方針に基づく学校当局の具体的かつ専門的・自律的判断に委ねざるをえないのであって、補導の面等においてかけるところがあったとしても、諸般の事情を総合的に観察して、その退学処分の選択が社会通念上合理性を認めることができないようなものでない限り、同処分は、懲戒権者の裁量権の範囲内にあるものとして、その効力を否定することはできない。

 事実関係から、学生に、私立大学の教育方針に従った改善を期待しえず教育目的を達成する見込みが失われたとした大学の判断が社会通念上合理性を欠くものでない限り、その退学処分は、懲戒権者に認められた裁量権の範囲内にあるものとして、是認できるものと考える。

以上




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組織内部の紛争は、裁判所に頼らず組織内部で決めてもらうこと(部分社会論)の問題点

2014-10-03 23:00:00 | 憲法学
 組織内部の紛争は、裁判所に頼らず組織内部で決めてもらうこと(部分社会論)には、問題点もあります。

 だからこそ、

①団体からの除名処分のような「重大な事項」

②一般市民法秩序と直接関係する事項

③一般市民として有する権利の規制

④団体内部の不利益措置の手続の審査

 に関しては、たとえ組織内部の紛争でも、裁判所が介入することができせつであると考えられています。




 大学内部の紛争に対して、「部分社会」論によって司法審査を控えることには、どのような問題があるか。
 富山大学事件(最高裁昭和52年3月15日)を参考に書きます。

回答:

1、大学内部の紛争に対して、富山大学事件の判例が述べる「部分社会」論について

 大学は、国公立であると私立であるとを問わず、学生の教育と学術の研究を目的とする教育研究施設であり、その設置目的を達成するために必要な諸事項については、法令に格別の規定がない場合でも、学則等により規定し、実施することができる自律的、包括的な権能を有し、一般社会とは異なる特殊な部分社会を形成している。

 一般市民社会と直接関係を有しない内部的な問題は、司法審査の対象から除かれるべきものと考えられる。


2、司法審査を控えることの問題点

 ①「部分社会」といっても多様であり、司法審査が及ぶかどうかはそれぞれの団体ごとに考えなければならないにもかかわらず、部分社会論として一括して論じることは問題である。⇒個々の具体的な状況における人権救済がおろそかになる可能性がある。

 ②団体の自律性の尊重という理由だけで、団体内部の法的紛争に対する裁判所の審査が排除されることは問題である。⇒公平中立な裁判がなされない場合、人権救済がおろそかになる可能性がある。

 ③部分社会論によって司法審査が否定されると、結局、団体構成員に対する団体の不利益措置が、裁判的統制を受けないままに是認されることになり問題である。⇒手続的保障が不十分で、人権救済がおろそかになる可能性がある。




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未決拘留者の新聞閲読の制限などの人権制限は、どのような場合・理由から是認されるのか?

2014-10-02 23:00:00 | 憲法学
 監獄内における在監者の新聞閲読の制限などの人権制限は、どのような場合にどのような理由から是認されるのだろうか。

 部分社会論に関連する問題です。

 よど号ハイジャック事件新聞記事抹消事件(最高裁昭和58年6月22日)の判例を参考にします。

 当時の「監獄法」は、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」に変わっています。
(平成十七年五月二十五日法律第五十号)



回答:

1、許される理由について

 ①逃亡及び罪証隠滅の防止という勾留の目的があるため

 ②監獄内の規律及び秩序の維持する目的があるため。

 それら二つの目的があることが許される理由である。

2、許される場合とは

 上記二つの目的達成のために真に必要と認められる場合に許される。

 すなわち、新聞閲読を許すことにより、監獄内の規律及び秩序が害される一般的・抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、①被拘禁者の性向、行状、②監獄内の管理、保安の状況、③当該新聞紙、図書の内容その他の具体的事情のもとにおいて、その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生じる相当程度の蓋然性があると認められる場合に許される。

 なお、相当程度の蓋然性の判断は、個々の具体的状況をもとにした監獄長の裁量による。




****************************************

<現行の法律の関連する部分>

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(平成十七年五月二十五日法律第五十号)

 第八節 書籍等の閲覧



(自弁の書籍等の閲覧)

第六十九条  被収容者が自弁の書籍等を閲覧することは、この節及び第十二節の規定による場合のほか、これを禁止し、又は制限してはならない。



第七十条  刑事施設の長は、被収容者が自弁の書籍等を閲覧することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、その閲覧を禁止することができる。
一  刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき。

二  被収容者が受刑者である場合において、その矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがあるとき。

三  被収容者が未決拘禁者である場合において、罪証の隠滅の結果を生ずるおそれがあるとき。

2  前項の規定により閲覧を禁止すべき事由の有無を確認するため自弁の書籍等の翻訳が必要であるときは、法務省令で定めるところにより、被収容者にその費用を負担させることができる。この場合において、被収容者が負担すべき費用を負担しないときは、その閲覧を禁止する。



(新聞紙に関する制限)

第七十一条  刑事施設の長は、法務省令で定めるところにより、被収容者が取得することができる新聞紙の範囲及び取得方法について、刑事施設の管理運営上必要な制限をすることができる。



(時事の報道に接する機会の付与等)

第七十二条  刑事施設の長は、被収容者に対し、日刊新聞紙の備付け、報道番組の放送その他の方法により、できる限り、主要な時事の報道に接する機会を与えるように努めなければならない。

2  刑事施設の長は、第三十九条第二項の規定による援助の措置として、刑事施設に書籍等を備え付けるものとする。この場合において、備え付けた書籍等の閲覧の方法は、刑事施設の長が定める。

*******************************************
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民間対個人の紛争解決において、国を規律する憲法をルールとして直接に適用できるのか。

2014-09-19 23:00:00 | 憲法学
 民間対個人の紛争解決において、国を規律する憲法をルールとして直接に適用(直接適用説)できるのか。

 
 例)

 直接適用:民間団体がなした個人の差別的対応は、憲法14条に反し違憲違法である。

 間接適用:民間団体がなした個人の差別的対応は、憲法14条に反し公序良俗に反するから、違法である(民法90条)。



 最高裁が判事するところは、学説上の直接適用説と間接適用説のいずれに属するか。

 学生時代の運動歴を理由に新入社員の本採用を拒否したことが、憲法19条、14条に反するとして争われた三菱樹脂事件(最高裁大法廷昭和48年12月12日)において、最高裁のとる立場(間接適用説)が述べられています。


回答:

  「憲法の各規定は・・もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。このことは、基本的人権なる観念の成立および発展の歴史的沿革に徴し、かつ、憲法における基本権規定の形式、内容にかんがみても明らかである。」

  「私的支配関係においては・・・立法措置によってその是正を図ることが可能であるし、また、場合によっては、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な適用によって・・・適切な調整を図る方途も存するのである。」


〇憲法の人権規定の私人間効力に関する諸学説

(1)不適用説
   憲法の人権保障は、私人間の問題とはおよそ無関係

(2)間接適用説(通説・三菱樹脂事件判例)
   民法の公序良俗規定(90条)を通じて間接的に適用

(3)直接適用説
  甲説:自然法上の原理を含む人権+自由民主主義的民主政治の要件と認められる人権
  乙説:制度的保障+原則的規範
  丙説:基本権の革新的領域+侵害者が社会的権力の場合の類推適用
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「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」の憲法学的実践、形式的平等と相対的平等、実質的平等

2014-08-14 18:37:07 | 憲法学


 憲法14条を考える準備として、知識の整理をします。




(かつてのブログ http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/43a9d028c76ebb79604435665c5ba078  )
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「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」

 憲法では、ご存知のように、第14条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
○2  華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
○3  栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
 と謳われているところです。

 平等の考え方を整理します。


 自然的事実としての不平等が世の中には存在しています。

 能力や資質の差、環境の差、人格の差などです。

 もし、形式的平等のルール(A=B=C=D=E=F=G・・・・)を適用すると、能力のある人、資質のある人、そして、能力や資質をのばすための環境が整備されているひとが、高い成績をあげることができ、結果に大きな差が生じてしまいます。
 行きつく先は、格差社会です。

 今の世の中では、基本は形式的平等のルールです。
 入試、選挙権、運賃、消費税、法律が等しく適用されること、誰でもどんな職業にもつけるということなど。

 形式的平等のルールの長所は、分かりやすい、「公平」らしく見えるという点にあります。
 ただ、背後にある不平等を隠しており、格差を無視しています。

 行きつく先には、例えば、富裕層と貧困層の間の格差が広がり、貧困層が拡大し、貧困層から脱出困難な社会ができあがることにつながります。


 そこで、どうすればよいか。

 実質的平等のルールの採用です。
 簡単に言えば、下駄を履かせ、機会を実質的に平等にすることです。

 累進課税を想像すればわかりやすいですが、同じレベルの収入のひとにかかる税率は同じですが、高い収入のひとにかかる税率は、高い税率を課しています。

 実質的平等の極端な例は、結果まで平等にすることです。(結果の平等)

 この場合の短所は、「モラル・ハザード」が生じることです。
 がんばっても、がんばらなくても結果は同じですので、がんばる意欲がそがれる状態になります。

 例外のない平等を「絶対的平等」というのであれば、このような平等は、「相対的平等」すなわち「等しいものは等しく、等しくないものは等しくなく扱うべし」といいます。
 そして、このことが、平等原則となっています。

 
 再度、整理しますと、

 形式的平等、ペアの概念として、機会の平等そして絶対的平等があります。

 それに対して、実質的平等、相対的平等が言われ、実質的平等を突き詰め過ぎると結果の平等となります。


 日本国憲法のもと、場面場面で、形式的平等と相対的平等、一部実質的平等が保障されています。
 

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外国人の人権;参政権(国と地方)、公務就任、生活保護、出入国、政治活動・マクリーン事件

2014-08-10 11:24:30 | 憲法学

 憲法10条で、日本国民の要件は定められていました。

 外国人の人権は、どう考えれば良いのか。

 考え方を整理しておきます。


 芦部『憲法』 「第五章 基本的人権の原理 四 人権の享有主体」に関連しています。

(かつてブログ記載 http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/c6c8ab026320954741ae74e86071f473
****人権の享有主体 3 外国人*********


Q君
 外国人は、どのように定義されますか?

A先生
 以下に大別されます。

1)一般外国人~短期滞在者など(観光その他で日本に在住している。27種のビザあり)
       難民と永住者を除く外国人のことである。
2)難民~難民条約1条の定義に当てはまる人
3)永住者(永住外国人)~一般永住者と特別永住者
特別永住者とは、在日外国人の方の中でも、終戦前から日本に居住している朝鮮半島、台湾出身の方でサンフランシスコ平和条約(1952年)の発効によって日本国籍を失った後も引き続き日本に在留している外国人の方とその子孫の方々のことをいう。特別永住者は、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」ではなく「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」によって定義されている。
4)不法滞在者(パスポートなしで入国またはビザ切れで滞在している者)ももちろん外国人のカテゴリーの一つである。


Q君
 憲法では、外国人には人権の保障は、どのように規定されていますか?


A先生
 外国人の人権も保障されると肯定説が通説です。

 否定説は、「第3章 国民の権利及び義務」という文言にこだわってなされます。


Q君 
 外国人の人権が保障されるその根拠は何ですか?


A先生
 以下の根拠が考えられます。
1)人権の普遍性・前国家性・前憲法性からは、人である以上外国人にも当然認められることになる。
2)人権の国際化(人権思想の進展にともない、人権を国内法的に保障するだけではなく、国際法的にも保障しようという傾向が強まっていること)。
3)憲法98条が謳う国際主義。

第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。


Q君
 すべての人権が保障されるのですか。


A先生
そうではありません。保障されない人権もあります。



Q君
 ある人権が外国人に保障されるかどうかを決定する基準は何ですか。


A先生
 文言説、性質説があって、基準が決定されます。

 文言説は、憲法の記載で、「何人」と規定されているときは、外国人にも保障され、「国民」と規定されているときは、国民のみに保障されるとします。

 性質説(通説・判例)は、権利の性質にしたがって、外国人に保障されるかどうかが決定されるとします。

 判例もマクリーン事件(�-1-2)で「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。」と判示しています。


Q君
 文言説の問題点は、なにですか。

A先生
 22条2項の国籍離脱の自由について、「何人」もとしている点の説明が困難になります。

 外国人が日本国憲法の下で、日本国政府や裁判所に対して、国籍離脱の自由を主張する事は意味がありません。

 23条のように、何人もとも、国民とも書いていない条文もあります。

第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2  何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第二十三条  学問の自由は、これを保障する。




Q君
 国レベルの参政権は認められますか?


A先生
 国民主権の原理から認められません。(通説・判例)

 ヒッグス・アラン事件(判例集�-3-2)の「事実」における、主張�及び�に注目してください。
  �国民は、国籍保持者だけではなく、社会の構成員として日本の政治社会における政治決定に従わざるを得ないものを指す。
  �原告は永住許可を得ている者であり、納税義務も負担している以上、帰化している者と同様に扱わないのは差別である。

Q君
 納税義務の負担は、外国人の人権を保障することの根拠となりうりますか。

A先生
 なりうると考え方と、なりえないという考え方ができます。

 なりうる(積極説)。近代憲法は、イギリスのマグナカルタからアメリカの独立宣言においても、「納税者」の権利の政治的権利を確保するという意味があったことから、ここの沿革を重視すると、外国人であって、かつ日本に生活の根拠を置いている以上は、納税義務を果たしていることは、外国人に人権(参政権)を保障することの根拠となりうる。

 なりえない(消極説)。税金は、ある社会に生活していることで発生するコストに対して、応分の負担を支払うものであり、そのことが参政権を保障することの理由にはならない。さらに、納税負担を根拠とすると、生活保護を受けている者や貧困のために納税負担にたえられない者の参政権を否定することになり、これは、戦前の制限選挙と同じ根拠づけになってしまう。


Q君
 では、地方レベルの参政権は認められますか?
 判例は、外国人に対する地方レベルの参政権の付与について、どう判断しているのですか?

A先生
 以下の論理に立っています。

  1)15条1項は外国人に適用されない。
  2)93条2項の「住民」は日本国民である。
  3)外国人に対する地方レベルの参政権付与は憲法上禁止されていない。
    (付与しなくても違憲ではないし、付与しなければならないものでもない)
    もっぱら立法政策の問題である。

  その理由は、次の通りです。
  「住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」


Q君
 判例上、外国人が就任できない公務は存在するのですか。存在するとすればその理由は何ですか?


A先生
地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とする者である、「公権力行使等地方公務員」は、外国人が就任できない。と判例ではされています。(外国人管理職選考受験拒否事件上告審判決 判例集�-3-4)

その理由
1)公権力行使等地方公務員の職務の遂行は,住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものであることから、国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものである(憲法1条,15条1項参照)。
2)このことから、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきである。
3)また、我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。

Q君
 この判決の論理の問題点は何ですか?


A先生
 公権力行使等公務員の範囲が無限定であることです。
 外国人に能力の発揮の場を与え、幸福追求の可能性を保障するためには、公権力行使の等公務員の範囲を狭くすべきであり、実際、判例の言うところの「統治のあり方」に影響を与える業務は、警察・検察・国税・入管等の権力業務に限られるのではないかと考えられます。


Q君
 外国人は生活保護を受けられますか?


A先生
 実務上は、生活保護の認定をしています。

 適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住、定住等の在留資格を有する外国人については、国際道義上、人道上の観点から、予算措置として、生活保護法を準用しています。

 すなわち、
1)出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の在留資格を有する者(永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等)
2)日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の特別永住者(在日韓国人、在日朝鮮人、在日台湾人)
3)入管法上の認定難民
が生活保護法の準用の対象となります。

 したがって、これら以外の者は対象とならない。
 不法滞在者は生活保護の対象となりません。これは、ある種のジレンマであります。


Q君
 外国人に入国の自由は認められない理由は何ですか。


A先生
国家が国際法上、自己の安全と福祉に危害を及ぼす恐れのある外国人の入国を拒否するのは、当該国家の主権に属し、自由に裁量することができるとされています。(国際協調主義・普遍性の例外。)


Q君
 不法入国者には、日本人と同じ刑事手続が保障されないか。

A先生
 保障されます。


Q君
 外国人に在留の権利を認めていますか。

A先生
入国の自由がない以上、在留の権利も認められないとされています。(判例)



Q君
 外国人の出国の自由を認めていますか?

A先生
 認めています。(判例)



Q君
 外国人の政治活動の自由は大きな制限を受けるとしているが、その根拠は何ですか?

A先生
 外国人の表現の自由は原則として保障されています。

 ただし、国政レベルの参政権が否定されているので、日本国民よりも大きな制約を受けるとされています。

 大きな制約としては日本の政治に直接介入する政治結社の組織、政府打倒運動は禁止されます。
 また、マクリーン事件判決は、ある種の政治活動が、在留資格更新のための消極的要因となることを認めています。

 上記には、以下の反論がなされるところです。

 反論 
 1)表現の自由の自己統治・思想の自由市場という側面からすると、政府転覆等の反政府活動以外は、外国人に自由な言論を許し、言論を活発にして、真理に到達するための道を確保すべきではないか。
 2)実際に、外国人しかできない批判もあるはずであり、デモクラシーの運営にとって、マイナスになる。  
 3)この論理からすると、地方レベルの参政権は否定されていないのであるから、地方レベルの批判はできることになるが、地方レベルの政治批判と国レベルの政治批判の境界があいまいなものもある。
 4)以上のとおり、マクリーン判決は、表現活動を萎縮させ、政治活動が実質的に全面否認になる可能性を秘めている。


Q君
 マクリーン事件(判例集�-1-2)を読んで、要旨を三点にまとめるとすると。


A先生
1)外国人には、入国の自由もない以上、在留する権利もない。
2)法務大臣の在留許可の更新は、自由裁量行為であり、その判断が事実の基礎を欠くか、事実の評価がまったく合理性を欠く場合以外は、違法とはならない。
3)外国人にも権利の性質上許される限り、人権が保障され、表現の自由も政治的意思決定に影響を与えるもの以外は認められるが、当該表現活動が合憲・合法のものであっても、当不当の面から、法務大臣は、それを理由として在留許可を与えないことができる。
 判決は、「消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない」としています。


以上

******小坂メモ****
積み残し課題
○18テキストP97L1~2「在留期間の更新を入国の場合とほぼ同視し、広い裁量権を認めている点に問題がある」とはどういう意味か。☆
P94~95にあるように、正規の手続で入国した外国人には、在留資格をみだりに奪われないことを保障されていることから、入国の自由のように、広い裁量にすることは不当(場合によっては違法)である、ということ。

○19テキストP97L2~3「法人の政治的行為の自由と比べ権衡を失する」とはどう意味か。☆
 八幡製鉄事件では、大企業の政治献金が容易に是認されているが、社会への影響力という点では、大企業の方が極めて大きいという意味。ただし、私見では、影響力の大きい外国人もいることから、この点は、もう少し議論が必要ではないかと思われる。

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