「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

「新しい戦前」と言われる時代に、一小児科医として、生きる。78回目の敗戦の日に思う。

2023-08-15 18:28:35 | 戦争と平和

 78回目の敗戦の日、朝のNHKから流れて来た「人類は、戦争から免れることができない」というメッセージから始まりました。

 朝刊には、「新しい戦前」(2023.8.15毎日新聞余禄)、「(今の世相の)ザワザワした感じは、戦前日本が戦争を始めた当時とそっくり」(2023.8.15毎日新聞社説)、「七八年前の終戦の日から、日本はこの「伝言ゲーム」を懸命に続けているのだろう。…最初の言葉は「二度と戦争はごめんだ」だったはずだ。…伝言を正確に受け取りながら、どういうわけか「避けられぬ戦争もある」とねじ曲げてささやく人もいるらしい。」(2023.8.15東京新聞筆洗)、戦争を過去の話としてほおっておけない現状が述べられています。
 私も、気を抜いていると、政治にブレーキが利かなくなり、戦争の方向に日本も向かっていくのではないかと不安を感じます。

 できることは、きちんとデータを読み、動きを読んでいくこと。
 水面下の動きを、見える化していかねば、なかなか動きは読めません。
 おかしいことは、おかしいと言い続けること。
 表現の自由(憲法第21条第1項)は、守り抜くこと。
 そして、財源不足で、大学も大変ですが、学問の自由もまた。学問の自由(憲法第23条)こそ命だと、私は、最後の砦として、守り抜きたいです。
 学問の自由が生きていれば、水面下の動きは、いくら水面下でも察知してくれるはず。
 学問の自由が死んでいれば、御用学者が、容易く世論を誘導していくこととなる。


 世界の人と、地道に、個人的な友人としてのネットワークを広げていくこと。
 国の命令で、友人同士でも銃を向け合う結末もあるのだけど、国同士の戦争と、個人の友情は別問題。小川未明が童話『野ばら』の中で、哀しく描いているのに、この5月にたまたま遭遇しました。https://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/bff6b2b8dd5e685432e88b25e1a9fb28
 今年の広島、長崎両平和宣言にありますように、平和文化を世界中のひとと友人となり、ぜひ、紡いで参りましょう。
 
 
 小児科医として、そして、完全無所属の区議として、一番の環境破壊であり、一番の虐待である戦争が、この国で起きないよう、微力ながら、全力を尽くして参る所存です。
 それぞれが、それぞれの矜持を持って進むのみ。

追記:

●裁判官の矜持 樋口英明氏
「矜持」と思っていたら、偶然、敗戦の日と書いた友人のフェースブックから、裁判官の矜持を発見したので、引用します。
 https://www.facebook.com/nakasuji.jun/posts/pfbid0UXxuDRh9hD3ghmj5NvnuMXgNgfPFkZgF6tf3CYqE8FCzuZo6p5iBLxgSpbgp9STwl
 樋口英明さんの判決文:


●通産官僚の矜持 佐橋滋氏







●日本国憲法

〔集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護〕

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

〔学問の自由〕

第二十三条 学問の自由は、これを保障する。




*****2023.8.15朝日新聞*******
 私も知覧を訪れたとき、感じました。教育もどうか、委縮しないでください。言うべきことは、言って行って下さい。
 また、検閲も、許さないでいきましょう(憲法第21条第2項)。

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15716803.html





********朝日新聞2023.3.30********

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15596217.html

折々のことば:2688 鷲田清一

 

 二人は、敵、味方の間柄になったのです。それがいかにも、不思議なことに思われました。

 (小川未明)

     ◇

 都から遠く離れた国境に両国から派遣された老人と青年。春の朝、一株の野ばらに集まる蜜蜂の羽音で目覚める二人は、いつしか将棋を楽しむ仲に。ある日戦争が始まり、老人に私を殺せと言われた青年は、私の敵はほかにいると言い残して戦地へ赴くも惨敗。兵士は皆殺しだったと伝え聞いた老人は、野ばらも枯れた後、暇(いとま)乞いし、郷里に帰ったという。童話「野ばら」から。


*******全国戦没者追悼式 天皇陛下お言葉(翌日の東京新聞から引用)********



********広島平和宣言 2023.8.6(翌日の東京新聞から引用)********





********長崎平和宣言 2023.8.9(翌日の東京新聞から引用)********

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ゼレンシキー宇大統領の日本の国会での演説全文

2022-03-23 22:10:49 | 戦争と平和
ウクライナのゼレンシキー大統領は23日、日本の国会にて演説を行なった。

ウクライナ大統領府広報室が公開したゼレンシキー大統領の演説のウクルインフォルムによる仮訳は以下のとおり。




親愛なる細田議長、山東議長、岸田首相、日本の国会議員の皆さん!

そして親愛なる日本の人々よ!

 

 

私、ウクライナ大統領にとって、日本の議会の歴史で初めてあなた方に呼びかけられることは、大変な光栄である。

 

 

私たちの首都は、8193キロメートル離れている。平均すれば飛行機で15時間だ。ルートによって異なる。しかし、私たちの自由の感覚の間には、どのような距離があろうか? 私たちの生きることを望む気持ちの間には? 私たちの平和を望む気持ちの間に距離があるだろうか?

 

 

2月24日、私は、その距離を全く目にしなかった。私たちの首都の間には、1ミリの距離すらも。私たちの気持ちの間には1秒の距離もなかったのだ。なぜなら、あなた方が私たちのところにすぐに支援に駆けつけてくれたからだ。私は、そのことにつきあなた方に感謝している。

 

 

ロシアが、ウクライナ全土の平和を破壊した時、私たちはすぐに、世界が本当はどんな姿なのかを目にした。世界が本当に戦争に反対している様子を。世界が本当に自由を支持していることを。世界が本当にグローバルな安全保障を支持していることを。世界が本当に一つ一つの社会の調和ある発展を支持していることを。日本は、アジアにおいて、そのような立場のリーダーとなった。あなた方は、このロシア連邦が始めた残酷な戦争を止めるために、すぐに活動を開始した。あなた方は、ウクライナにおける、つまり欧州における平和達成のためにすぐに活動を開始した。そして、それは本当に重要なことなのだ。地球上の一人一人にとって重要なことなのだ。なぜなら、ウクライナの平和がなければ、世界中の誰一人として、確信を持って未来を見ることができなくなるのだから。

 

 

あなた方一人一人が、チョルノービリ(チェルノブイリ)とは何かを知っているだろう。1986年に大きな爆発の生じたウクライナの原子力発電所だ。放射線が漏洩した。それは、地球上の様々な場所に影響をもたらした。チョルノービル原子力発電所周辺30キロメートル圏は封鎖されている。そこは危険だ。封鎖区域を満たす森には、発電所の爆発被害を除去していた時から、何千トンもの冷やされている使用済み燃料、破片、機材がある。地上に。

 

 

2月24日、その地に、放射性降下物を空気中に巻き上げながら、ロシアの装甲車がやってきた。チョルノービリ発電所は制圧された。力で、武力で。想像して欲しい。事故のあった原子力発電所が制圧されたのだ。破壊された原子炉を覆うシェルターが。稼働中の使用済み燃料保管庫が。ロシアは、この場所を戦争の舞台に変えたのだ。30キロメートル圏の封鎖空間を、ロシアは、私たちの防衛軍に対する新たな攻撃の準備のために利用しているのだ。

 

 

ロシア軍のウクライナ領への侵入後、彼らがチョルノービリの大地にもたらした被害、どの冷却設備が損傷したのか、放射性降下物が地球にどのように拡散したのかを分析するには何年もかかる。

 

 

皆さん!

 

 

私たちの国土には、4つの原子力発電所が稼働している! 15個の原子炉だ。それら全てが脅威にさらされている。ロシア軍はすでに、欧州最大のザポリッジャ原子力発電所を戦車で砲撃した。戦闘行為の結果、何百もの産業生産施設が被害を受けており、その多くが特別に危険な場所だ。攻撃は、ガス・石炭パイプラインや炭鉱にも脅威をもたらしている。

 

 

先日、ロシア軍は、ウクライナのスーミ州の化学製造所も攻撃した。そこでアンモニアが流出した。私たちは、化学兵器の攻撃の可能性があるとの警告を受けている。特に、シリアで使われたことのあるサリンによるものだ。

 

 

世界の政治家たちの議論の主要なテーマの一つは、もしロシアが核兵器を使った場合、どう対応するかという話になった。世界における全ての人、全ての国のあらゆる確信が、完全に破壊された。

 

 

私たちの軍人は、すでに28日間、ウクライナを英雄的に守っている。28日間、世界で最大の規模を持つ国から、全面的な侵攻を受けている。しかし、その国は能力面では最大ではない。さらに、影響力も最大ではない。そして、倫理面では最小である。

 

 

ロシアは、ウクライナの平和な町に対して、ミサイルを1000発以上放ち、数えられない数の空爆を行った。ロシア軍は、何十もの私たちの町を破壊した。いくつかは完全に燃やし尽くしてしまった。ロシアの占領の被害を受けている多くの町や村では、人々は殺された親族、友人、隣人を尊厳を持って埋葬することもできていない。破壊された建物の中庭や、道路の横や、単にそれが可能だという場所に、埋葬せざるを得なくなっているのだ…。

 

 

何千の人が殺された。その内、121名が子供だ。

 

 

約900万人のウクライナ国民が、ロシア軍から身を守るために、仕方なく家を、自分のふるさとを去っている。私たちの「北方領土」「東方領土」「南方領土」が空っぽとなっている。人々がその死の脅威から逃げているからだ。

 

 

ロシアは、私たちの海へのアクセスすら封鎖した。普通の貿易手段をだ。そうすることで、他の潜在的な世界の侵略者に対して、航海を封鎖することで、自由な民に圧力をかけられることを示したのだ。

 

 

皆さん!

 

 

ウクライナとパートナー国と私たちの反戦連合は現在、世界の安全が最終的に破壊されてしまわないようにするための、保証を与えることができる。世界に人々の自由のための支えが存在し続けるための保証だ。人々と社会における多様性を保存するための支えだ。国境を守るための。私たちや、私たちの子供、私たちの孫のために、今後も平和が存在し続けるという確信のための。

 

 

あなた方は、国際機構が機能していないことを目にしているだろう。国連や安保理すらもだ。彼らは何ができるのだろうか? 彼らは、改革が必要である。正直さの注入が必要だ。効果的になるために。議論するだけでなく、本当に問題を解決し、本当に影響力を行使できるようになるために。

 

 

ロシアの対ウクライナ戦争によって、世界は不安定化した。世界は、多くの新しい危機の入り口に立っている。明日がどうなるか、誰が今確実に理解しているだろうか?

 

 

世界市場の大荒れは、食料輸入に依存する全ての国に問題をもたらしている。環境面と食料面の挑戦は、過去に例のない水準だ。重要なことは、現在、戦争を起こすことで強力な罰が生じ、戦争は始めるべきではない、平和を破壊すべきでないということを、地球上の全ての侵略者、明らかな侵略者にも潜在的侵略者にも、確信させられるかどうかにある。責任ある国家が平和保護のために団結することは、完全に論理的で正しいことである。

 

 

私は、あなた方の国がこのような歴史的瞬間に原則的な立場を取ったこと、そしてウクライナへの真の支援を与えてくれていることに感謝している。あなた方は、平和を回復するために、アジアで最初に、ロシアへの真に強力な圧力をかけ始め、対露制裁を支持した。私は、あなた方に、制裁を続けるよう呼びかける。

 

 

そして、状況を安定させ、ロシアに平和を探させ、私たちの国、ウクライナへの残酷な侵攻の津波を止めさせるべく、あなたのパートナーであるアジアの国々の努力をまとめるよう呼びかける。ロシアへの禁輸が必要だ。ロシア軍にお金が行かないように、ロシア市場から企業を去らせねばならない。私たちの国、ロシア軍を止める私たちの防衛者、私たちの戦士への更なる支援が必要だ。そして、ウクライナの復興についても、もう今考え始めなければいけない。ロシアによって破壊された町々や、ロシアによって荒らされた領土に生活を取り戻すために。

 

 

人々は、これまで暮らしていた場所に戻らなければならない。彼らが育った場所に。彼らが、そこが自分の家だと感じる場所に。自分の小さなふるさとに。私は、あなた方はこの感覚を理解していると確信している。自分のふるさとへ戻らなければ、という気持ちを。

 

 

私たちは、新たな安全保障を作らねばならない。平和にとっての脅威が生じる度に、予防的に毎回強固に機能するように。

 

 

現存の国際機構を基盤にそれが可能だろうか? このような戦争の後では、絶対無理だ。新しい機構を創設しなければならない。新しい保証を。あらゆる侵略に対して予防的かつ強力に機能する保証だ。日本のリーダーシップは、その創設において不可欠となるかもしれない。ウクライナにとって、世界にとっての。私は、あなたにそれを提案する。

 

 

世界がもう一度、明日がどういう日となるかについて確信を抱けるように。明日が訪れることへの確信、明日が安定し、平和なものとなることへの確信だ。私たちにとって、将来の世代にとっての明日への確信である。

 

 

皆さん!

日本の人々よ!

 

 

私たちは、あなた方と一緒なら、多くのことを行うことができる。想像するよりもずっと多くのことをだ。

 

 

私は、あなた方にどれだけ急速な成長の歴史があったかを知っている。あなた方が調和を築き、それを守ることにどれだけ長けているかを知っている。あなた方が、どれだけ原則を守り、生活を大切にしているか、環境を守っているかについても。それらの根っこは、あなた方の文化にある。ウクライナ人が心から愛しているあなた方の文化だ。私は、単に上辺だけでこのように話しているのではない。本当にそうなのだ。

 

 

2019年、ちょうど1年半前、私がウクライナ大統領になると、私の妻オレーナは視力の不自由な子供のためのプロジェクトに参加した。そのプロジェクトは、オーディオブックを作るプロジェクトだ。彼女は、日本の昔話を読んだ。ウクライナ語でだ。なぜなら、その昔話は、私たちにも子供たちにもわかりやすかったからだ(編集注:「桃太郎」と「二ひきのかえる」)。そのことは私たちのウクライナの人々のあなた方の築き上げた物への大きな関心の海における、たった一滴に過ぎない。

 

 

価値の面で、私たちとあなたたちは似ている。私たちの国の間にどんなに大きな距離があろうとも。いや、その距離は実は存在していない。なぜなら、私たちの間には、心の中に同じようにぬくもりがあるからだ。共通の努力のおかげ、ロシアに対するさらに強い圧力のおかげで、私たちは平和へ辿り着ける。そして、私たちの国を再建することができる。国際機関を改革することができる。

 

 

私は、その時も、今と同じように、日本が私たちと一緒にいてくれていることを確信している。この決定的な時の、私たち全員のための、反戦連合の中にて。

 

 

ジャークユ! ありがとうございます!

 

 

ウクライナに栄光あれ! 日本に栄光あれ!

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そもそも、なぜ、ウクライナなのか

2022-02-26 10:29:10 | 戦争と平和

日本政府の最大限の努力をお願い致します。

●武力行使を即座にやめ、話し合いによる解決をする仲介をすること

●ウクライナ情勢に関連した難民の受け入れや保護

●医療支援の人員派遣及び食料など物資支援

*NHKのウクライナ情勢報道
➨ https://www3.nhk.or.jp/news/word/0002039.html


*ウクライナについての解説、ツイッターより
➨ https://twitter.com/WildG_Jeff/status/1496726790488072196

*なぜ、ウクライナなのか 朝日新聞2022.2.26






 

*国際社会小児科学小児保健学会のJeffrey Goldhagenからのメッセージ

ウクライナで何が起こっているのかを目の当たりにして、心が重くなります。政治がどうであれ、負わされたトラウマが子どもたちを最も傷つけるであろうことを、私たちは知っています。 それは、身体だけでなくこころにもおよび、これからの人生に深く影を落とします。今回のウクライナでの出来事は、子どもたちが再び武力紛争の犠牲者となっている場所として新たな大陸(ヨーロッパ)を加えました。
私たちは、この瞬間に対処することを余儀なくされる私たちの仲間とその家族を想います。 新型コロナウイルス感染症であろうと紛争であろうと、このような時には状況に関係なく、子どもたちの健康とよりよき日々のために関わってきている仲間であり友人であることを、世界中の社会小児科医と共に誇りに思いたいです。
連帯の思いを込めてー 私たちはこの紛争とその他のすべての子どもたちの生活に大きな影響を与えている状況下で、平和を呼びかけます。 私たちが何ものであるのか、私たちの仕事がいかに重要であるのか、そのことを示すべき時です。
暖かな思いと敬意を込めて
ジェフ(国際社会小児科学小児保健学会会長)

 

 

 

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「『だまされていた』といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう」映画監督伊丹万作氏

2021-12-08 09:17:21 | 戦争と平和

 「『だまされていた』といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう」映画監督伊丹万作氏。

 今から過去を思うのであれば、米英との圧倒的経済力の差があるから、消極的和平論を唱えた調査結果があったのだから、それにしたがっておけばよかったのに、なぜ、従えなかったのかというだろう。

 なんとか、見出した平和であるが、今も、少しづつだけど、失いつつあるような気がする。

 国とは、なんだろう。
 国といいながら、国には正体がない。悪に、正体がないように。
 しかし、正体に似た存在はある。
 つかまえようとした途端、影のように消える存在が。

 おかしいことはおかしいと言い、抗いつづけたいものだ。

 

********朝日新聞2021.12.08*****

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タリバンのアフガン制圧:大国の「物語」に乗るな 藤原辰史氏より。

2021-08-26 12:42:06 | 戦争と平和

 アフガニスタンの情勢、気になるところです。

 現場、現地が、本当はどうであるのか、その目線を忘れてはならないと思っています。

 藤原辰史氏が、本日2021.8.26、毎日新聞に論説を書かれています。

 中村哲氏の国会答弁も引用された論説のため、その答弁も引用します。

**************************
 中村哲氏 国会での参考人としてのご発言(第170回国会 参議院 外交防衛委員会 第4号 平成20年(2008年11月5日):
 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/117013950X00420081105/2

○参考人(中村哲君) 中村です。
 ペシャワール会現地代表として発言を許していただきたいと思います。
 私は、実はおとといまでジャララバード北部にあります干ばつ地帯の作業現場で土木作業をやっておりました。なぜそうなのか。今日の議題と一見関係ないようですけれども、実はアフガニスタンを襲っているのは、最も脅威なのは大干ばつでありまして、今年の冬、生きて冬を越せる人がどれぐらいいるのか。恐らく数十万人は生きて冬を越せないだろうという状況の中で、私たちは、一人でも二人でも命を救おうということで力を尽くしております。そのために用水路の建設、これは冬が勝負のしどころでありまして、何とか完成しようということで力を尽くしておるわけであります。
 繰り返しますけれども、アフガニスタンにとって現在最も脅威なのは、みんなが食べていけないということであります。
 イギリスの著名な団体の発表によりますと、恐らく五百万人の人々がまともに食べられない、飢餓状態にあるというのがアフガニスタンの現実でありまして、このみんなが食べていけない状態、そのためにみんな仕方なく悪いことに手を出す、あるいは傭兵となって軍隊に参加するという悪循環が生まれておりまして、今日審議される事柄と決して無縁どころか、一つの大きな要因を成しておるのではないかというのが私たちの認識であります。
 例えば、穀物の自給率は半分以下、小麦の価格はこの一年で三倍から四倍に高騰しておりまして、普通の人々はもう生きていけない。私たちの職場でも職員百五十名の給与を過去五回にわたって上げましたけれども、それでも食えない状態と。一般の人々にとっては戦争どころではないというのが思いであろうかというふうに私たちは考えております。
 衣食足って礼節を知るといいますけれども、まずみんなが食えることが大切だということで、私たちはこのことを、水それから食物の自給こそアフガニスタンの生命を握る問題だということで、過去、ペシャワール会は干ばつ対策に全力取り組んできました。私たちは医療団体ではありますけれども、医療をしていてこれは非常にむなしい。水と清潔な飲料水と十分な食べ物さえあれば恐らく八割、九割の人は命を落とさずに済んだという苦い体験から、医療団体でありながら干ばつ対策に取り組んでおります。
 その結果、現在、ジャララバード北部、具体的にはニングラハル州北部全域に展開いたしまして、五年前から用水路の建設に着手いたしまして、現在二十キロメートルを完成しつつあります。その結果、それまで荒廃していた砂漠化地帯で十数万人の人々が帰ってきて生活できるようになる。更にこれが二十数キロ完成いたしますと約五千ヘクタールから六千ヘクタールの新たな開墾地が生まれまして、二十万人、三十万人以上の食料自給が可能になるということで、地域住民と一体になって仕事を進めておるところであります。
 それだけではなくて、こういった人海戦術を使った、現在五百名以上の作業員が私たちと仕事をしておりますけれども、当然雇用が発生する。それを聞き付けて、パキスタンに逃れておった干ばつ避難民が戻ってくる、あるいは国内避難民が戻ってくるということで、仕事をしている間は日当で何とか食い、それから水が来れば、これは自分たちの土地ですから、自給自足の国なんですね、アフガニスタンは八割以上が農民の国でありまして、彼らは水さえあれば、所得こそ少ないですけれども、農産物さえあれば決して貧しい国ではない。彼らの要求というのはそう高くない。家族がまず一緒にふるさとにおれて十分な食べ物があること、それ以上の望みを持つ人は私は少ないと思います。
 そういうことでありまして、私たちは、まずは水、それも清潔な飲料水。これは、具体的には千五百本の井戸を私たちは掘ってきましたけれども、この事業も継続されております。さらに、農業生産力、農業自給率を高めるということに力を尽くしております。
 さらに、今アフガニスタンの問題がいろいろ言われておりますけれども、この干ばつに加えまして、アフガニスタンをむしばんでおるのが暴力主義であります。これはアフガン人の暴力であることもありますし、外国軍による暴力のこともある。これがアフガンの治安の悪化の背景を成しておりまして、私どもはこれに対しても心を痛めておる次第であります。
 今、盛んに報道されておりますけれども、アフガニスタンは現在治安が悪くなる一方でありまして、しかもその治安悪化が隣接するパキスタンの北西辺境州まで巻き込んで膨大な数の人々が死んでおるということは皆さん御存じだと思います。
 先ほど冒頭に述べました干ばつとともに、いわゆる対テロ戦争という名前で行われる外国軍の空爆、これが治安悪化に非常な拍車を掛けておるということは、私は是非伝える義務があるかと思います。
 一口にいろんな反政府運動だとか武装組織だと言いますけれども、アフガン土着の反抗勢力を見渡してみますと、基本的にアフガンの伝統文化に根差した保守的な国粋主義運動の色彩が非常に濃い。切っても切っても血がにじむように出てくる。決してある特定の、旧タリバーン政権の指令一つで動いておるわけではない。いろんな諸党派が乱立しまして、それぞれに外国軍と抵抗している状態。それから、かつてなく欧米諸国に対する憎悪が民衆の間に拡大しているというのが、私たちは水路現場で一般の農民たちと接しておりまして感じる実感であるということは伝えておきたいと思います。
 もちろん、いろんな反抗勢力の中には、私たちの伊藤君、職員の一人であった伊藤君が犠牲になったように、とんでもない無頼漢もいますけれども、各地域でばらばらにそういった自発的な抵抗運動が行われておる。それだけ根が深いわけでありまして、恐らく二千万人のパシュトゥン民族農民を抹殺しない限り戦争は終わらないだろうというのが、これは私ではなくて、地元の人々、これは地元のカルザイ政権も含めた人々たちの意見でありまして、しかも、武装勢力といっても、アフガン農村について日本で知っている人は少ないと思われますけれども、兵農未分化、すなわち侍と百姓が未分化な社会でありまして、すべてのアフガンの農村は武装勢力と言えないことはない。その中で混乱状態が何を引き起こすかというのは御想像に任せたいと思います。
 しかも、アフガン農村では復讐というのは絶対のおきてであります。ちょうど赤穂浪士のようなものなんですね。私たちはニュースの上で、アメリカ兵が今年は何名殺された、カナダ兵が何名殺されたということはニュースになりますけれども、その背後には、一人の外国兵の死亡に対して、何でもない普通の人が死ぬアフガン人の犠牲というのはその百倍と考えていい。すなわち、外国人の戦死あるいは犠牲者の百倍の人々が、日々、自爆要員、いわゆるテロリストとして拡大再生産されていく状態にあるということは是非伝えるべきだと私は思います。
 アフガニスタンとパキスタンの国境地帯もこの悲劇が及んでおりまして、現在、抵抗勢力が何か危ないとパキスタン側に逃れるということで、パキスタン側、アフガニスタン側両側から挟み打ちのようにして軍事作戦が行われておるようでありますけれども、これがまた今度は、うそのような話で、パキスタン国境地帯からアフガン側に流れてくるパキスタン難民というのが発生する。こういった事情の中で、私が二十五年いる中では現在最もアフガニスタンは治安が悪くなっておる状態だと言うことができると思います。
 さらに、対日感情につきましても、これは少しずつ陰りが見えてきておるということは私は是非伝えておく必要があると。かつて広島、長崎というのは現地では有名でありまして、アフガン人の知識人のほとんどは、アフガニスタンの独立と日本の独立が同じ日だというふうに信じている人が多いくらい親日的なんですね。ところが、最近に至りまして、米国の軍事活動に協力しているということがだんだん知れ渡ってくるにつれて、私たちも身辺に危険を感じるようになりました。
 やはり、あの最も親しいと思っていた日本が同胞を殺すのかと思えばこれは面白くないわけでありまして、これは日々日本に対する感情は悪くなっているということははっきり言ってもいいんじゃないかと思います。かつては、我々、外国人、欧米人と間違えられないために日の丸を付けておれば、まず山の中のどこに行っても安全だった。ところが、今その日の丸を消さざるを得ないという状況に立ち入っているというのが現実であります。
 私の舌足らずの点は後ほど質問の中でるるお答えしたいと思いますけれども、現在、日本の中でいろんな議論がされておりますけれども、よく私たち、私たちといいますか、日本で当然のように議論のベースになっておる国際社会という言葉、これに私は率直に現地から疑問を呈さざるを得ない。国際社会という実態は何なのか。少なくともアフガンの民衆は国際社会の中には入っていないということは、一連の議論の中から私が率直に、先ほど忌憚のない意見をということでしたので忌憚なく申し上げますと、国際社会の実態というのは、少なくともアフガニスタン、パキスタンの民衆はその中には入っていないということは言えると思います。私たちは、国際社会、国際協力、国際貢献と言うときに、何をもって国際と言うのかという土俵からして十分な審議を尽くさなくちゃいけないのではないかというふうに思います。
 話が長くなりますけれども、やはりこれは、国際というのは、国や国家が、国家、民族、宗教を超えて、人々が互いに理解し合って命を尊重すること、これが平和の基礎であろうと現地にいて分かるわけですね。今、日本はその分かれ目にある。これが最後になりますけれども、いかにより良い世界、より安全で平和な日本を自分たちの子孫に残すか。我々は十年、二十年かすると死ぬ、あるいはぼけてこの世からいなくなってくる。この日本の子孫たちにどういう世界を残すのか、私たちは岐路にあると思います。
 このアフガン問題というのは確かに局地的な国際紛争かもしれませんけれども、これを目先の政治的な道具にしたり、あるいは目先の経済的な利益という観点から見るのでなくて、実際にこれからの日本の岐路を決定する重要な問題だとして先生たちの十分な討議をお願いいたしまして、舌足らずではありますが、私の意見とさせていただきます。
 どうも御清聴ありがとうございました。

********毎日新聞2021.8.26*****



****藤原帰一氏 朝日2021.8.18*****

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集まる、観る、讃える。オリンピックのありかたを再検討するべきとき。ポスト・コロナの時代の五輪。

2021-08-05 09:51:25 | 戦争と平和

 コロナが、私たちの生活や考え方を変えようとしています。(しかし、もしかして、コロナが終わるの何もなかったかのように、もとの生活に戻ることも、一方で、危惧しています。)

 まちづくりが、ポスト・コロナで大きく転換すべきもの。

 そして、まさに、今、展開中の東京2020大会を観ながら、オリンピックのありかたも、ポスト・コロナの形を、議論していくべきとき。

 選手を入れて、そして、哲学者、歴史家、文学者を入れて、開かれた議論をし、オリンピックの原点に立ち返った改革をぜひ。


*******朝日新聞2021.08.05*******




 

 

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逮捕された周庭さん「保釈手続き進む」と投稿 周さんが日本人に伝えたいこと 逮捕前インタビュー2020.8.11

2020-08-13 20:06:18 | 戦争と平和

⇒ https://news.yahoo.co.jp/byline/horijun/20200811-00192813/

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20200701 「香港返還24年目、一国二制度の終焉」記者会見~国家安全法導入に対する国際的連帯の必要性~

2020-07-02 10:02:10 | 戦争と平和

⇒ https://www.youtube.com/watch?v=02GcfgKzQL4

【香港の夜明け・日本ジャーナリスト協会】

香港の夜明けメンバー 

出席議員: 山尾志桜里衆議院議員  中谷元衆議院議員

テーマ 内容:
1.国家安全法の導入によりデモシストなどの団体が解散~今後香港に起こりうること、日本に影響が与えるか 条文の内容とは? 香港にこれから起こる事態 我々はどう対応していくべきか

2.今後在日香港人の行動 在日香港人の団結 国際連帯を引き起こす

3.香港人のメッセージ 3~4人程度

4.Q&A

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日米地位協定の抜本的見直し、全国知事会が両政府に提言。重く受け止めるべきとき

2018-12-08 23:00:00 | 戦争と平和

●米軍基地負担に関する提言
http://www.nga.gr.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/2/20180814-05beigunnkichiteigenn300727.pdf
全国知事会においては、沖縄県をはじめとする在日米軍基地に係る基地負
担の状況を、基地等の所在の有無にかかわらず広く理解し、都道府県の共通
理解を深めることを目的として、平成28年11月に「米軍基地負担に関す
る研究会」を設置し、これまで6回にわたり開催してきました。
研究会では、日米安全保障体制と日本を取り巻く課題、米軍基地負担の現
状と負担軽減及び日米地位協定をテーマに、資料に基づき意見交換を行うと
ともに、有識者からのヒアリングを行うなど、共通理解を深めてきました。
その結果、
① 日米安全保障体制は、国民の生命・財産や領土・領海等を守るために
重要であるが、米軍基地の存在が、航空機騒音、米軍人等による事件・
事故、環境問題等により、基地周辺住民の安全安心を脅かし、基地所在
自治体に過大な負担を強いている側面がある。
② 基地周辺以外においても艦載機やヘリコプターによる飛行訓練等が
実施されており、騒音被害や事故に対する住民の不安もあり、訓練ルー
トや訓練が行われる時期・内容などについて、関係の自治体への事前説
明・通告が求められている。
③ 全国的に米軍基地の整理・縮小・返還が進んでいるものの、沖縄県に
おける米軍専用施設の基地面積割合は全国の7割を占め、依然として
極めて高い。
④ 日米地位協定は、締結以来一度も改定されておらず、補足協定等によ
り運用改善が図られているものの、国内法の適用や自治体の基地立入権
がないなど、我が国にとって、依然として十分とは言えない現況である。
⑤ 沖縄県の例では、県経済に占める基地関連収入は復帰時に比べ大幅に
低下し、返還後の跡地利用に伴う経済効果は基地経済を大きく上回るも
のとなっており、経済効果の面からも、更なる基地の返還等が求められ
ている。
といった、現状や改善すべき課題を確認することができました。
米軍基地は、防衛に関する事項であることは十分認識しつつも、各自治体
住民の生活に直結する重要な問題であることから、何よりも国民の理解が必
要であり、国におかれては、国民の生命・財産や領土・領海等を守る立場か
らも、以下の事項について、一層積極的に取り組まれることを提言します。



1 米軍機による低空飛行訓練等については、国の責任で騒音測定器を増や
すなど必要な実態調査を行うとともに、訓練ルートや訓練が行われる時期
について速やかな事前情報提供を必ず行い、関係自治体や地域住民の不安
を払拭した上で実施されるよう、十分な配慮を行うこと
2 日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則
として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ
円滑な立入の保障などを明記すること
3 米軍人等による事件・事故に対し、具体的かつ実効的な防止策を提示
し、継続的に取組みを進めること
また、飛行場周辺における航空機騒音規制措置については、周辺住民
の実質的な負担軽減が図られるための運用を行うとともに、同措置の実
施に伴う効果について検証を行うこと
4 施設ごとに必要性や使用状況等を点検した上で、基地の整理・縮小・返
還を積極的に促進すること

平成30年7月27日
全 国 知 事 会

●「全国知事会 米軍基地負担に関する研究会」について
http://www.nga.gr.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/2/20180725-25-2shiryou.pdf

●日米地位協定の抜本的見直し、全国知事会が両政府に提言
https://digital.asahi.com/articles/ASL8G4D3WL8GUTIL014.html
古城博隆2018年8月14日18時14分

 全国知事会は14日、日米地位協定の抜本的な見直しを日米両政府に提言した。8日に亡くなった翁長雄志・沖縄県知事の「基地問題は一都道府県の問題ではない」との訴えを受け、2年近くかけて提言にまとめ、7月の全国知事会議で全会一致で初めて採択した。

沖縄はいま
 提言は、航空法や環境法令など国内法の適用や、事件・事故時の基地への立ち入りなどを日米地位協定に明記するよう要請。米軍の訓練ルート・時期に関する情報を事前提供すること、基地の使用状況などを点検して縮小・返還を促すことも求めている。

 この日は同会長の上田清司・埼玉県知事らが外務、防衛両省と在日米大使館を訪問。上田知事は報道陣に「基地のない県も含めて共通の認識を持った」と述べた。同行した謝花(じゃはな)喜一郎・沖縄県副知事は「全国知事会としての提言は憲政史上初。画期的で心強い。沖縄県の思いもすべて入っているので、政府は取り組みをお願いしたい」と話した。

 米軍基地を抱える15都道府県でつくる渉外知事会は、沖縄県で米兵による少女暴行事件が起きた1995年以降、日米地位協定改定を求め続けている。日米両政府は補足協定などで運用を見直しているものの、60年の締結以来、一度も改定されていない。(古城博隆)

●(社説)地位協定改定 知事会提言受け止めよ
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13645534.html

2018年8月22日05時00分

 在日米軍にさまざまな特権を認める日米地位協定について、全国知事会が日米両政府に抜本的な見直しを提言した。

 米軍基地のない府県を含む47知事の「総意」は極めて重い。日本政府は正面から受け止め、米国政府に対し、必要な改定を提起すべきだ。

 地位協定の見直しは、過重な米軍基地負担に苦しむ沖縄県が長年にわたって求めてきた。しかし、日米両政府は運用の改善やテーマを絞った補足協定の締結にとどめ、協定自体に手をつけようとはしてこなかった。

 知事会は、今月急逝した翁長雄志(おながたけし)・沖縄県知事の「基地問題は一都道府県の問題ではない」という訴えを受け、一昨年に研究会を設置した。沖縄の実情に加え、やはり米軍基地を抱えるドイツ、イタリアの調査も踏まえ、2年近くかけてまとめたのが今回の提言だ。

 米軍基地は全国30都道府県にあり、専用施設に限っても、沖縄のほか、青森、神奈川、東京など13都道府県に及ぶ。基地のない地域でも、米軍機による飛行訓練などが実施されており、多くの国民にとって決してひとごととはいえない。

 提言は、航空法や環境法令などの国内法を米軍にも原則適用することや、事件・事故時の自治体職員の立ち入りなどを地位協定に明記するよう要請した。米軍機の低空飛行訓練については、時期やルートを事前に情報提供するよう求めている。

 知事会が日米安保体制の重要性を認めながらも、このような具体的な提言をまとめた背景には、住民の生活に責任を持つ首長としての切実な思いがあるのだろう。

 ドイツ、イタリアで現地調査を行った沖縄県の報告によると、両国では米軍機の事故を機に、協定の改定や新協定の締結を実現し、自国の法律を米軍にも適用している。騒音軽減委員会や地域委員会といった、地元自治体の意見を米軍に伝える仕組みも整備されている。

 原則として国内法が適用されず、地域住民の声も届かない日本との違いは大きい。

 これは日本の主権にかかわる問題である。日米安保条約に基づいて基地を提供する義務があるとしても、過度な優遇に目をつぶるわけにはいかない。何より地域住民の理解がなければ、安定的な基地の運用などおぼつかないはずだ。

 地位協定については、与党公明党も今月、改定を含む具体的な見直しを政府に申し入れた。9月の自民党総裁選でも、大いに議論してほしい。

●協定本文の英訳対照全文(PDF)https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/fulltext.pdf

●日本弁護士連合会からの提言 2014年10月 https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/nichibeichiikyoutei_201410.pdf

<以下、外務省資料より>
********************************************

問3:日米地位協定は日本にとって不利になっているというのは本当ですか。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/qa02.html
(答)
 日米地位協定は、日本と極東の平和と安全の維持に寄与する目的で日本に駐留する米軍が円滑に活動できるよう、米軍による日本における施設・区域の使用と日本における米軍の地位について規定したものであり、米国との関係で日本にとって不利か有利かという問題ではありません。
 時々、他国が米国と結んでいる地位協定と日米地位協定を比較して日米地位協定は不利だと主張されている方もいらっしゃいますが、比較に当たっては、条文の文言だけを比較するのではなく、各々の地位協定の実際の運用のあり方等も考慮する必要があり、そもそも一概に論ずることが適当ではありません。とはいえ、例えば、米軍人が刑事事件の被疑者になった場合に身柄がどの時点で受入れ国側へ引き渡されるかという問題については、日米地位協定に基づく運用が、他のどの地位協定よりも早い時点での引き渡しとなっています(問9参照)。このような点からもわかることですが、日米地位協定が他の地位協定に比べて不利になっているということはありません。


問9:米軍人が日本で犯罪を犯してもアメリカが日本にその米軍人の身柄を渡さないというのは不公平ではないですか。日本側に身柄がなければ、米軍人はアメリカに逃げ帰ったりできるのではないですか。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/qa09.html
(答)
 まず、日本で米軍人及び軍属(以下「米軍人等」という。)が公務外で罪を犯した場合であって、日本の警察が現行犯逮捕等を行ったときには、それら被疑者の身柄は、米側ではなく、日本側が確保し続けます。
 被疑者が米軍人等の場合で、身柄が米側にある場合には、日米地位協定に基づき、日本側で公訴が提起されるまで、米側が拘禁を行うこととされています。しかし、被疑者の身柄が米側にある場合も、日本の捜査当局は、個別の事案について必要と認める場合は、米軍当局に対して、例えば被疑者を拘禁施設に収容して逃走防止を図るよう要請することもあり、米軍当局は、このような日本側当局の要請も含め事件の内容その他の具体的事情を考慮して、その責任と判断において必要な措置を講じています。(なお、例えば平成4年に沖縄市で発生した強盗致傷事件や平成5年に沖縄市で発生した強姦致傷事件では、被疑者が米国へ逃亡するということがありましたが、いずれもその後米国内で被疑者の身柄が拘束され、米国により在沖縄米軍当局に身柄を移された後に処分が行われています。)

 日米地位協定が身柄の引渡しの時点について特別の規定を置いているのは、被疑者が米軍人等であって、身柄が米側にある場合に限られていますが、これらの被疑者の身柄引渡しの時点についての他の地位協定の規定を見てみると、NATO地位協定が日米地位協定と同様に起訴時としているのに対し、ボン補足協定(ドイツに駐留する米軍等のための地位協定)では原則として判決の執行時としており、また、米韓地位協定では12種の凶悪犯罪について起訴時としているものの、その他の犯罪については判決の執行時としています。

 このように、日米地位協定の規定は、他の地位協定の規定と比べても、NATO地位協定と並んで受入国にとっていちばん有利なものとなっていますが、更に、1995年の日米合同委員会合意により、殺人、強姦などの凶悪な犯罪で日本政府が重大な関心を有するものについては、起訴前の引渡しを行う途が開かれています。

(参考)これまでに1995年の日米合同委員会合意に基づき起訴前の拘禁移転を要請した事件
(日付は事件発生日)
平成8年7月16日 長崎県で発生した強盗殺人未遂事件(起訴前身柄引渡し)
平成13年6月29日 沖縄県で発生した婦女暴行事件(起訴前身柄引渡し)
平成14年11月2日 沖縄県で発生した婦女暴行未遂、器物損壊事件(起訴前身柄引渡し拒否)
平成15年5月25日 沖縄県で発生した婦女暴行致傷事件(起訴前身柄引渡し)
平成18年1月3日 神奈川県で発生した強盗殺人事件(起訴前身柄引渡し)
平成20年3月19日 神奈川県で発生した強盗殺人事件(起訴前身柄引渡し)
********************************************
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/rem_keiji_01.html
日米地位協定第17条5(c)
及び、刑事裁判手続に係る日米合同委員会合意
日米地位協定第17条5(c)
 日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする。

(英文)

(c) The custody of an accused member of the United States armed forces or the civilian component over whom Japan is to exercise jurisdiction shall, if he is in the hands of the United States, remain with the United States until he is charged by Japan.


刑事裁判手続に係る日米合同委員会合意(平成7年10月)

 合衆国は、殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払う。合衆国は、日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合について同国が合同委員会において提示することがある特別の見解を十分に考慮する。

 日本国は、同国が一にいう特定の場合に重大な関心を有するときは、拘禁の移転についての要請を合同委員会において提起する。
(英文)

The United States will give sympathetic consideration to any request for the transfer of custody prior to indictment of the accused which may be made by Japan in specific cases of heinous crimes of murder or rape. The United States will take full account of any special views Japan may put forward in the Joint Committee as to other specific cases it believes should be considered.
Japan will submit requests for the transfer of custody to the Joint Committee when it has a material interest in such case.

*******************************************
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/rem_03.html
刑事裁判手続に関する運用の改善
 日米地位協定に基づく刑事裁判手続については,これまで次のとおりの運用の改善が行われています。

1.米軍人及び軍属の起訴前の拘禁の移転
(1)日本側が裁判権を行使すべき米軍人及び軍属(以下「米軍人等」という。)については(例えば,公務外で罪を犯した米軍人等),被疑者である米軍人等の身柄を米側が確保した場合には,日米地位協定上,日本側が被疑者を起訴する時まで,米側が被疑者を引き続き拘禁することとされています(第17条5(c))。(注)
(注)派遣国(米側)が被疑者の身柄を確保している場合には接受国による起訴の時点まで引き続き派遣国(米側)が被疑者を拘禁するという考え方は,NATO地位協定も採っています。ドイツもNATO地位協定の締結国ですが,ドイツにおけるNATO諸国軍の地位についての詳細規定を定めているボン補足協定では,派遣国は判決の確定まで被疑者を拘禁できることになっています(同協定には,ドイツによる移転要請に派遣国は好意的考慮を払うとの規定もありますが,そもそもドイツは,同協定に従い,ほとんど全ての米軍人による事件につき第一次裁判権を放棄しています。)。また,米国が韓国と締結している米韓地位協定では,派遣国(米側)は,12種類の凶悪な犯罪の場合は韓国側による起訴時,それ以外の犯罪については判決確定後まで,被疑者を拘禁できることになっています。このように,日米地位協定の規定は,NATO地位協定と並んで受け入れ国にとって最も有利なものとなっています。
 
(2)1995年に沖縄県で発生した少女暴行事件を受けて,米軍人等の身柄の引渡しに関して日米間で協議した結果,同年,殺人及び強姦について,起訴よりも前の段階で米側から身柄の引渡しがなされる途が開かれました(刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意)。その後,6件の事件について,1995年の日米合同委員会合意に基づく起訴前の身柄引渡しの要請が行われ,そのうち,5件について起訴前の身柄引渡が実現しています(2002年11月に沖縄県で発生した婦女暴行未遂・器物損壊事件の被疑者の起訴前の身柄引渡しの要請については,米側は,日本側の説明を真摯に検討したものの,要請には応じられないとの回答でした。この被疑者の身柄は,起訴後に日本側に引き渡されました。)(日米地位協定Q&A問9)。
(3)また,2004年4月,日米合同委員会において,日米間の捜査協力の強化等に関する日米合同委員会合意(仮訳(PDF) ・英語版(PDF) )が作成されました。この日米合同委員会合意により,1995年の日米合同委員会合意に基づく起訴前の身柄引渡しの対象となる事件について,米軍当局が速やかに捜査を行うことができるようにするため,その事件について捜査権限を有する米軍司令部の代表者が日本側当局による被疑者の取調べに同席することが認められることとなりました。
2.軍属に対する裁判権の行使
(1)米軍人及び軍属による公務中の犯罪については,日米地位協定上,米側が第一次裁判権を有しています(第17条3(a))。このうち,軍属の公務中の犯罪について,日米地位協定の適切な実施という観点から,日米間で協議を行った結果,2011年11月,日米合同委員会において,軍属に対する裁判権の行使に関する運用についての新たな枠組みに合意しました(日米地位協定における軍属に対する裁判権の行使に関する運用についての新たな枠組みの合意)。
(2)この枠組みは,軍属の公務中の犯罪について,事案により,日米いずれかの裁判によって適切に対応することを主眼とするものです。具体的には,米側が,事案に応じ,米国において刑事裁判にかけることができる手続を整備するとともに,米側が刑事裁判にかけない場合には,被害者が亡くなった事案などについて,日本側が裁判権を行使することについて米側に同意を要請することができ,これに対して米側が好意的考慮を払うとする手続を整備しました。
(3)この枠組みが最初に適用された2011年1月の沖縄市における交通死亡事故については,日本側が裁判権を行使することについて米側に要請したところ,米側の同意が得られました。
3.「公務」の範囲に関する日米合同委員会合意の改正
(1)1956年の「公務」の範囲に関する日米合同委員会合意は,米軍人等による通勤は公務としつつも,飲酒した上での自動車運転による通勤は公務ではないとする一方で,公の催事での飲酒後の自動車運転による通勤は,公務として取り扱われ得る余地を残していました。
(2)公の催事での飲酒後の自動車運転による通勤が公務として取り扱われ得る余地があるという部分は,現在の社会通念には適合しないため,米側との間でこの日米合同委員会合意の見直しのための協議を行いました。その結果,2011年12月,日米合同委員会において,1956年の日米合同委員会合意を改正し,公の催事での飲酒の場合も含め,飲酒後の自動車運転による通勤は,いかなる場合であっても公務として取り扱わないこととすることで合意しました(日米地位協定の刑事裁判権に関する規定における「公務」の範囲に関する日米合同委員会合意の改正)。
(3)実際には,米軍人等が飲酒運転をして通勤した場合,公の催事での飲酒であったときを含め,公務として取り扱われた事例はこれまで一例もないことを米側から確認していましたが,この日米合同委員会合意の改正によって,公の催事での飲酒の場合も含め,飲酒後の自動車運転による通勤は,いかなる場合であっても公務として取り扱わない,すなわち日本側が第一次裁判権を有することが正式な形で確保されました。
4.刑事裁判等の処分結果の相互通報制度に関する新たな枠組み
(1)日米地位協定の下では,これまで,米軍人・軍属等によって日本国又は日本国民に対して行われた疑いのある犯罪に係る事件について,米側が第一次裁判権を行使した場合の処分結果については,裁判の最終結果のみが日本側に通報される仕組みとなっており,各審級の裁判結果や裁判によらずに科せられた懲戒処分については,通報の対象となっていませんでした。また,日本政府が通報を受けた処分結果について,日本政府が被害者や御家族に開示するための枠組みがありませんでした。
(2)このため,これらを可能とするよう日米間で協議を行った結果,日米合同委員会において,新たな枠組みが合意されました。
これにより,米側から日本側に対し,第一次裁判権を行使した全ての事件(我が国又は日本国民に対して行われた疑いのある犯罪に係る事件に限る。)について,あらゆる裁判の結果のほか,裁判によらない懲戒処分の結果や処分を行わないとの決定も通報されることになります。また,日本側がこれらの通報を受けたときは,裁判の結果のほか,米側による懲戒処分の事実について公表することができます。さらに,被害者又はその家族に対して,処分が行われなかった場合はその事実を開示することができるほか,米側の懲戒処分の内容について,被処分者の同意が得られた範囲内で,開示することが可能となります。



*******************************************
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page24_000150.html

日米地位協定に基づく刑事裁判等の処分結果の相互通報制度に関する新たな枠組みの合意
平成25年10月8日


1 日米地位協定の下では,これまで,米軍人・軍属等によって日本国又は日本国民に対して行われた疑いのある犯罪に係る事件について,米側が第一次裁判権を行使した場合の処分結果については,裁判の最終結果のみが日本側に通報される仕組み(PDF)となっており,各審級の裁判結果や裁判によらずに科せられた懲戒処分については,通報の対象となっていませんでした(注1)。また,日本政府が通報を受けた処分結果について,日本政府が被害者や御家族に開示するための枠組みがありませんでした。
 このため,これらを可能とするよう,日米間で協議を行ってきました。

 (注1)懲戒処分については,地方検察庁が照会した事件について非公式に通報を受けていた。

2 この結果,今般,日米合同委員会で新たな枠組みが合意されました。この枠組みの概要は次のとおりです。

(1)
米側(日本側)は,相手国側に対し,第一次裁判権を行使した全ての事件(相手国又はその国民に対して行われた疑いのある犯罪に係る事件に限る。)について,あらゆる裁判の結果のほか,米側については裁判によらない懲戒処分の結果についても,一月ごとに通報する。処分を行わないとの決定も,通報の対象に含まれる。
(2)
米側(日本側)は,相手国側に対し,第二次裁判権を行使した全ての事件の裁判の結果(注2)を一月ごとに通報する。
(注2)裁判結果については,これまでは裁判の最終結果のみが通報の対象となっていたが,新しい枠組みの下では,各審級の裁判結果が通報の対象となる。
(3)
日本側(米側)がこれらの通報を受けたときは,裁判の結果(注3)のほか,米側による懲戒処分の事実について公表することができる。
 また,被害者又はその家族に対して,(ア)処分が行われなかった場合はその事実を開示することができるほか,(イ)米側の懲戒処分の内容について,被処分者の同意が得られた範囲内で,開示することができる。
(注3)一部,被処分者の氏名の公表については,米側の同意が必要となる場合がある。
3 この新しい枠組みは,2014年1月1日以降に行われた疑いのある犯罪に適用されます。

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国際政治のリアリズム:平和はもろく、一瞬で崩れる。人間は間違いをおかしやすい。

2017-12-19 11:43:27 | 戦争と平和
 三浦俊章氏は、「20世紀の戦争とジャーナリズム」の授業で伝えようとする論点を三つあげられています。

 ①多くの戦争が、相互の恐怖心や相手の意図の読み違いから偶発的に始まっていること。

 ②戦争という異常な環境の中で、人間の判断力が麻痺し、一般市民の虐殺が繰り返されたこと。

 ③戦争の最初の犠牲者は「真実」であること。指導者は不都合な事実を隠そうとし、メディアもナショナリズムにあおられ、いったん始まった戦争について批判的に考えることはきわめて難しい。

 
 自分も正月の課題本は、『1941』です。
 戦争の過ちを繰り返さぬこと、私たちの絶対の宿命です。
 「平和はもろく、一瞬で崩れる。人間は間違いをおかしやすい。」国際政治のリアリズムが、そうであろうとも。
 


************朝日新聞*************************
http://digital.asahi.com/articles/DA3S13279669.html

(記者有論)戦争と人間 リアリズム、歴史から学べ 三浦俊章

2017年12月19日05時00分



 都内の大学で、20世紀の戦争とジャーナリズムについての講義を始めて3年になる。第1次世界大戦から、今世紀初頭のイラク戦争までを扱う。なぜ戦争が起きたのか、メディアはどう伝えたか、がテーマだ。

 毎年、最初にこういう話をする。

 「20世紀後半は、まれな繁栄と安定の時代でしたが、今また不安定な世界になりつつあります。戦争の歴史を学ぶことは、みなさんにとって不可欠の教養なのです」

 年を追うに従い、開講の辞がより現実味を増してきた。学生の関心も高い。授業では、三つのことを伝えようと試みている。

 ひとつは、多くの戦争が、相互の恐怖心や相手の意図の読み違いから偶発的に始まっていること。

 次に、戦争という異常な環境の中で、人間の判断力が麻痺(まひ)し、一般市民の虐殺が繰り返されたこと。

 そして、戦争の最初の犠牲者は「真実」であること。指導者は不都合な事実を隠そうとし、メディアもナショナリズムにあおられ、いったん始まった戦争について批判的に考えることはきわめて難しい。

 学生たちは、「受験勉強の知識だけで、戦争の実態は知らなかった」「人間はこれほど残酷になれるものなのか」と感想を述べる。だが、これは若者に限ったことではない。

 戦争についてのリアルな知識が社会から急速に失われている。たとえば私自身は父から戦場の体験を、母からは空襲の話を聞いた。しかし、戦争経験者が世を去り、軍事力行使が、あたかもゲームの一手のように語られる危うい時代になった。

 トランプ米大統領は、北朝鮮への武力攻撃の可能性をちらつかせた。首脳会談後、安倍晋三首相は「圧力を最大限まで高めていくことで完全一致した」と語った。開戦が現実的選択であるかのように伝えるメディアもある。

 だが、「圧力」だけで外交が伴わなければ、予期せぬことが発生し、事態が制御不能になるかもしれない。過去の戦争は、武力行使が限定的なものにとどまる保証はないことを示している。そのとき、政治家は冷静に判断できるだろうか。民主主義は機能するだろうか。

 多くの歴史家が指摘するように、1962年のキューバ危機から学ぶべきだろう。ソ連のミサイル配備に対抗して、米国は海上封鎖を実施した。米軍幹部は核戦争も視野に入れて、武力侵攻を進言したのだが、ケネディ大統領が交渉による解決を図り、危機はぎりぎりで回避された。実は、あるソ連の潜水艦では、艦長が開戦したと勘違いし、核魚雷を発射する寸前までいっていた。

 平和はもろく、一瞬で崩れる。人間は間違いをおかしやすい。国際政治のリアリズムとは、本来そのような認識に基づくべきものである。

 (みうらとしあき 編集委員)
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2017年、最も心に残るスピーチ。ノーベル平和賞授賞式、サーロー節子さん講演(全文)

2017-12-12 23:00:00 | 戦争と平和
 2017年、最も心に残るスピーチです。

 そして、その述べられていることの実現を、日本も含め世界中の政治家がなすことが求められています。


******朝日新聞20171212*****
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13268845.html

サーロー節子さん講演 ICAN・フィン事務局長講演 平和賞授賞式

2017年12月12日05時00分


 ■平和賞授賞式、サーロー節子さん講演(全文)

 皆さま、この賞をベアトリスとともに、ICAN運動にかかわる類いまれなる全ての人たちを代表して受け取ることは、大変な光栄です。皆さん一人一人が、核兵器の時代を終わらせることは可能であるし、私たちはそれを成し遂げるのだという大いなる希望を与えてくれます。

 私は、広島と長崎の原爆投下から生き延びた被爆者の一人としてお話をします。私たち被爆者は、70年以上にわたり、核兵器の完全廃絶のために努力をしてきました。

 私たちは、世界中でこの恐ろしい兵器の生産と実験のために被害を受けてきた人々と連帯しています。長く忘れられてきた、ムルロア、インエケル、セミパラチンスク、マラリンガ、ビキニなどの人々と。その土地と海を放射線により汚染され、その体を実験に供され、その文化を永遠に混乱させられた人々と。

 私たちは、被害者であることに甘んじていられません。私たちは、世界が大爆発して終わることも、緩慢に毒に侵されていくことも受け入れません。私たちは、大国と呼ばれる国々が私たちを核の夕暮れからさらに核の深夜へと無謀にも導いていこうとする中で、恐れの中でただ無為に座していることを拒みます。私たちは立ち上がったのです。私たちは、私たちが生きる物語を語り始めました。核兵器と人類は共存できない、と。

 今日、私は皆さんに、この会場において、広島と長崎で非業の死を遂げた全ての人々の存在を感じていただきたいと思います。皆さんに、私たちの上に、そして私たちのまわりに、25万人の魂の大きな固まりを感じ取っていただきたいと思います。その一人ひとりには名前がありました。一人ひとりが、誰かに愛されていました。彼らの死を無駄にしてはなりません。


 ■あきらめるな、光に向かってはって行け

 米国が最初の核兵器を私の暮らす広島の街に落としたとき、私は13歳でした。私はその朝のことを覚えています。8時15分、私は目をくらます青白い閃光(せんこう)を見ました。私は、宙に浮く感じがしたのを覚えています。

 静寂と暗闇の中で意識が戻ったとき、私は、自分が壊れた建物の下で身動きがとれなくなっていることに気がつきました。私は死に直面していることがわかりました。私の同級生たちが「お母さん、助けて。神様、助けてください」と、かすれる声で叫んでいるのが聞こえ始めました。

 そのとき突然、私の左肩を触る手があることに気がつきました。その人は「あきらめるな! (がれきを)押し続けろ! 蹴り続けろ! あなたを助けてあげるから。あの隙間から光が入ってくるのが見えるだろう? そこに向かって、なるべく早く、はって行きなさい」と言うのです。私がそこからはい出てみると、崩壊した建物は燃えていました。その建物の中にいた私の同級生のほとんどは、生きたまま焼き殺されていきました。私の周囲全体にはひどい、想像を超えた廃虚がありました。

 幽霊のような姿の人たちが、足を引きずりながら行列をなして歩いていきました。恐ろしいまでに傷ついた人々は、血を流し、やけどを負い、黒こげになり、膨れあがっていました。体の一部を失った人たち。肉や皮が体から垂れ下がっている人たち。飛び出た眼球を手に持っている人たち。おなかが裂けて開き、腸が飛び出て垂れ下がっている人たち。人体の焼ける悪臭が、そこら中に蔓延(まんえん)していました。

 このように、一発の爆弾で私が愛した街は完全に破壊されました。住民のほとんどは一般市民でしたが、彼らは燃えて灰と化し、蒸発し、黒こげの炭となりました。その中には、私の家族や、351人の同級生もいました。

 その後、数週間、数カ月、数年にわたり、何千人もの人たちが、放射線の遅発的な影響によって、次々と不可解な形で亡くなっていきました。今日なお、放射線は被爆者たちの命を奪っています。

 広島について思い出すとき、私の頭に最初に浮かぶのは4歳のおい、英治です。彼の小さな体は、何者か判別もできない溶けた肉の塊に変わってしまいました。彼はかすれた声で水を求め続けていましたが、息を引き取り、苦しみから解放されました。

 私にとって彼は、世界で今まさに核兵器によって脅されているすべての罪のない子どもたちを代表しています。毎日、毎秒、核兵器は、私たちの愛するすべての人を、私たちの親しむすべての物を、危機にさらしています。私たちは、この異常さをこれ以上、許していてはなりません。


 ■世界に懇願します。核禁止条約に参加を

 私たち被爆者は、苦しみと、生き残るための、そして灰の中から生き返るための真の闘いを通じて、この世に終わりをもたらす核兵器について世界に警告しなければならないと確信しました。くり返し、私たちは証言をしてきました。

 それにもかかわらず、広島と長崎の残虐行為を戦争犯罪と認めない人たちがいます。彼らは、これは「正義の戦争」を終わらせた「よい爆弾」だったというプロパガンダを受け入れています。この神話こそが、今日まで続く悲惨な核軍備競争を導いているのです。

 9カ国は、都市全体を燃やし尽くし、地球上の生命を破壊し、この美しい世界を将来世代が暮らしていけないものにすると脅し続けています。核兵器の開発は、国家の偉大さが高まることを表すものではなく、国家が暗黒のふちへと堕落することを表しています。核兵器は必要悪ではなく、絶対悪です。

 今年7月7日、世界の圧倒的多数の国々が核兵器禁止条約を投票により採択したとき、私は喜びで感極まりました。かつて人類の最悪のときを目の当たりにした私は、この日、人類の最良のときを目の当たりにしました。私たち被爆者は、72年にわたり、核兵器の禁止を待ち望んできました。これを、核兵器の終わりの始まりにしようではありませんか。

 責任ある指導者であるなら、必ずや、この条約に署名するでしょう。そして歴史は、これを拒む者たちを厳しく裁くでしょう。彼らの抽象的な理論は、それが実は大量虐殺に他ならないという現実をもはや隠し通すことができません。「核抑止」なるものは、軍縮を抑止するものでしかないことはもはや明らかです。私たちはもはや、恐怖のキノコ雲の下で生きることはしないのです。

 核武装国の政府の皆さんに、そして、「核の傘」なるものの下で共犯者となっている国々の政府の皆さんに申し上げたい。私たちの証言を聞き、私たちの警告を心に留めなさい。そして、あなたたちの行動こそ重要であることを知りなさい。あなたたちは皆、人類を危機にさらしている暴力システムに欠かせない一部分なのです。私たちは皆、悪の凡庸さに気づかなければなりません。

 世界のすべての国の大統領や首相たちに懇願します。核兵器禁止条約に参加し、核による絶滅の脅威を永遠に除去してください。

 私は13歳の少女だったときに、くすぶるがれきの中に捕らえられながら、前に進み続け、光に向かって動き続けました。そして生き残りました。今、私たちの光は核兵器禁止条約です。この会場にいるすべての皆さんと、これを聞いている世界中のすべての皆さんに対して、広島の廃虚の中で私が聞いた言葉をくり返したいと思います。「あきらめるな! (がれきを)押し続けろ! 動き続けろ! 光が見えるだろう? そこに向かってはって行け」

 今夜、私たちがオスロの街をたいまつをともして行進するにあたり、核の恐怖の闇夜からお互いを救い出しましょう。どのような障害に直面しようとも、私たちは動き続け、前に進み続け、この光を分かち合い続けます。この光は、この一つの尊い世界が生き続けるための私たちの情熱であり、誓いなのです。

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宝島社の警鐘に、敬意を表します。1/5各紙見開き広告「忘却は、罪である。」

2017-01-05 08:58:50 | 戦争と平和

 未来志向で考えて行くことは大事であるとしても、過去を忘れての未来はありえません。

 今の風潮は、過去を忘れ去ったかのような感を、私も受けていました。

 宝島社。1/5各紙(私の確認できた限りでは、朝日、毎日、日経、読売、産經)見開き広告「忘却は、罪である。」

 言論が、政府の誤った方向性を、きちんと正してくださろうとすることに、敬意を表します。



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PKO部隊の日報破棄、日本国は、海外で命をはっておられる隊員を本気で守る気概があるのか?

2016-12-24 13:38:04 | 戦争と平和

 日報は、医師で言う「カルテ」、保育園児で言う園児の一日の「記録票」ほどに大事なもののはず。

 

 隊員の一日一日の貴重な活動が書かれた日報から、読み取れる多くの情報があると思います。
 破棄してよいわけがありません。

 日本国は、海外で命をはっておられる隊員を本気で守る気概があるのか、問いたくなります。

 基本的なこともできなくて、大きな驚きと共に、とても、残念です。

**************東京新聞*******

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016122401001128.html
【社会】


南スーダン陸自部隊の日報が廃棄 PKO記録、事後検証困難
 
2016年12月24日 11時31分

 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊部隊が作成した、日々の活動状況を記録した日報が廃棄されていたことが24日、防衛省への取材で分かった。7月に現地で大規模衝突が発生した際の記録もなく、事後検証が困難になる恐れがある。

 同省幹部によると、南スーダンPKOは現在11次隊が活動しているが、過去の派遣隊すべての日報が残っていないという。PKO関連文書の保存期間基準は3年間と内規で定められているが、「随時発生し、短期に目的を終えるもの」などは廃棄できる。

 防衛省統合幕僚監部の担当者は「上官には報告しており、使用目的を終えた」と説明。

(共同)



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長崎平和宣言 田上富久長崎市長H28.8.9自分の目と耳と心で感じることの大切さ

2016-08-09 23:00:01 | 戦争と平和

 





























































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現政権による悪意の沖縄いじめ、防衛省学校エアコン補助一部廃止。子どもを犠牲にする卑怯な手口。

2016-07-27 23:00:01 | 戦争と平和

 現政権による悪意の沖縄いじめ。それも、子ども達への仕打ちです。

 子ども達まで、犠牲にしないでいただきたいと思います。

 卑怯な手口に、残念な思いを持つとともに、真の政権交代をして、正していかねばならないところです。


***************東京新聞、北陸中日新聞******************

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