花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「未婚成人女性の卵子凍結保存に反対する」

2013年09月08日 12時15分20秒 | ちょっと気になること
日本生殖医学会が卵子凍結のガイドラインを発表しました。今後、一般国民から意見を募集し、正式に決定するのだそうです。 従来は、卵子の凍結は不妊や、治療で卵巣機能が失われる恐れのあるがん患者の女性に対して行われている(読売:2013年9月4日)。  要するに、医療行為の一環として卵子凍結が行われてきました。  しかし、今回のガイドラインでは、健康な40歳未満の未婚の女性に対しても認めるというものです。 TVなどのインタビューではほとんどの女性が歓迎しています。晩婚化など女性の結婚に対する意識の変化、一部では働く女性がいまや“貴重な戦力”になってきていること、などがガイドラインの理由に挙げられています。

過去、真に優れた女性は子供を生み育てることと、仕事を両立させて来たと思います。社会的な制度がほとんど整備されていない中での苦労は大変だったと思います。それだけに、仕事と出産・育児を立派に両立させたという重みがあります。たとえば、理論物理学者の米沢富美子博士の「私の履歴書」(日経新聞)を読むと、27歳で長女、28歳で次女、33歳で三女を出産されています。 日本物理学会会長(女性として初)にも就任、国際的にも著名な我が国を代表する物理学者の一人なのです。個人の並外れた能力と努力があったからこそ出来たと思われますが、卵子凍結保存に関心を寄せる多くの若い女性はに、米沢博士の履歴書を是非読んでいただきたいと思います。

最近の一般女性の安易な仕事優先は一体何でしょうか。男女共同参画とかジェンダーフリーなどというわけの判らない考え方を教え込まれ、“尊い生命”と“誰にでも出来る仕事”を天秤にかけて、仕事を優先しています。 かつて、日本の会社では「寿退職」という制度がありました。結婚退職する女子社員に福利厚生制度で退職金を増額し、皆で心から退職を祝いました。 結果として、数年で若い一般職の女子社員が退職していくので、新卒女子社員が毎年入社し、社内結婚も相応に多かったと思います。 然し、女性差別の典型として、寿退職制度がヤリダマに上げられ、いつの間にか姿を消し、時を同じくして、女性社員の勤続年数が長くなり、一般職の新入女子社員の採用も極めて少なくなりました。 企業の福利厚生制度としての「寿退職」の意義を再考してみることが必要です。

子供を生み、育てるということは、ヒト(動物)が子孫を残すという最も神聖で最も大事なことなのです。 当然、肉体的な制約―肉体年齢、が生じます。医療行為として特例で許可されるならば納得が行きますが、最近報じられた未婚の健康な女性に卵子冷凍保存を認めるというガイドラインには大きな疑問を覚えます。

<山上憶良:万葉集>
『瓜食(は)めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ 
いづくより 来りしものぞ 眼交(まなかひ)に もとなかかりて 
安眠(やすい)し寝(な)さぬ』

反歌
『銀(しろがね)も 金(くがね)も玉も 何せむに まされる宝 子にしかめやも』

今、日本で実現しなければならないことは、保育所・幼稚園の増設は勿論ですが、余人を持って替えがたい業務などを行っている研究者やキャリアを積み重ねることが必要とされる職業についている人(たとえば、医師、看護師、他)に対しては、業務を継続しながら子育てが出来るような社会的な支援システムを作ること(たとえば、自宅勤務など勤務態様の多様化と身分保証や経済的支援など)、また、大多数の一般の女性に対しては、出産・育児への経済面での支援を手厚くすること、子育てが終了したときに、再就職(職場復帰も含めて)への支援制度をつくること、 など、多様な支援が必要だと思います。

 
「働く女性と卵活:医療部次長 吉田 清久」(読売新聞:9月4日)

紺活、妊活には驚かなかったが、卵活という言葉があると聞いて仰天した。  若い未婚の女性が将来の不妊リスクに備えて卵子を採取、冷凍保存することをいう。その後、相手に恵まれて、人工授精、出産という段取りだ。  卵子の凍結は不妊や、治療で卵巣機能が失われる恐れのあるがん患者の女性に対して行われている。 それが若くて健康な独身女性にまで広がろうとしているわけだ。 凍結を請け負う会社の説明会は盛況という。木になる費用は、カウンセリングから、採卵、1年間の保管費用までで約100万円。2年目以降、保管料が卵子1個当たり年約1万円する。結構かかるものだ。 卵活の背景には凍結が進んだことや、晩婚化が進む中で、「卵子の老化」がメディアで盛んに取り上げられたことがある。 ただ、「率直に卵割を受け入れられない」との声が聞こえてくる。生命倫理や男女のあり方に大きな影響を与えるからだ。  男性に伍してバリバリ働く女性にとっては「朗報だ」という意見も。知り合いの女性医師は「研修医を追えて専門分野でキャリアを積んで行こうとするときと出産適齢期は重なる。でも女性として仕事に自信が持てるようになったら生みたい。それを「卵子凍結はかなえてくれる」と話す。 1986年に男女雇用機会均等法が施行されて四半世紀。卵活は女性の働き方のあり方を問いかけているような気がする。 日本生殖医学会が卵子凍結の生殖医療についてのガイドラインを8月末にまとめたが、医療だけの問題ではない。


「卵子凍結 独身女性も容認 生殖医学会方針 」(産経新聞8月24日)

不妊治療や病気などで行われている卵子凍結について、産婦人科医ら生殖医療の専門家からなる「日本生殖医学会」(理事長・吉村泰典慶応大学医学部産婦人科教授)は23日、健康な独身女性にも認めるとの方針を決めた。将来の妊娠に備え、若いうちに卵子を凍結して保存したいという動きが独身女性の間で広がっており、学会として指針を定め、無秩序に広がるのを防ぐのが狙い。
関係者によると、学会の見解は卵子凍結をする年齢を「40歳以上は推奨できない」としたほか、45歳以上の女性には、凍結した卵子で不妊治療を行うことは推奨できないとした。今後、一般の意見を募集し、正式に決定する。 日本には卵子凍結や体外受精などを規制する法律はないが、指針などでルールが決められている。 日本産科婦人科学会などの指針では、不妊治療中の既婚女性や、がんなどの治療で卵子に影響が出る恐れがある女性に限って卵子凍結が認められてきた。
しかし、晩婚化により年齢が上がると妊娠が難しくなる「卵子の老化」が知られるようになり、健康な独身女性の間で、若いうちに卵子を採取する動きが広がっている。 将来、凍結していた卵子を使って体外受精などの不妊治療に使うためだが、必ずしも妊娠、出産が可能になるわけではない。また、高齢でも若い卵子があれば安全に出産できるとの誤った認識が広がる恐れがある。 卵子凍結は一般的に、採取に数十万円、保存に毎年数万円かかるとされているが、高額な費用を請求されるなどのトラブルも不安視されている。 学会はこうした問題が広がらないようにするため、卵子凍結に関する一定のルールをまとめることで一致。指針に法的拘束力はないが、不妊治療を行う国内の医療機関に周知する方針だ。


〔2013年9月8日 花熟里〕
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