花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「オリンパス事件と企業統治」

2012年01月31日 17時19分55秒 | ちょっと気になること
巨額の損失隠し事件で、オリンパスは、旧・現19名の経営陣(取締役)と旧・現5名の監査役に対して損害賠償請求を提訴しましたが、旧・現監査法人2社に対しては提訴を見送りました。法的に問題が無いという理由ですが、来る3月決算を間近に控えていることも理由ではないかとの指摘もなされています。

【経営陣(取締役)に対して】
旧・現取締役19名に対して、オリンパスは連帯債務として総額36億1千万円を限度とする損害賠償請求を、1月8日に東京地裁に提訴しました。「損失隠しを知らず関与しなくても、巨額買収を承認するなどした経営陣には責任を広く追及しており、企業統治のあり方が改めて問われそうだ。 技術系の取締役にすぎず、損失隠しの実態を知る立場になかった、高山社長をはじめ、取締役会での決議に賛同した取締役は、決議内容を知っていたか否かとを問わずに、結果責任を問われる」としています。

【監査役に対して】
オリンパスが旧・現監査役の5名に対して1月17日に最大10億円の損害負賠償請求を提訴しました。元経理部長で損失隠しを知りながら黙認していた元監査役には5億円、不正に使われた国内外4社の買収を見過ごした社外監査役ら4人には連帯して5億円を請求。

【監査法人に対して】
「損失隠しを発見できなかったり、多額ののれん代計上を認めたりしたが、注意義務違反があったとはいえない」として損害賠償請求を見送っています。


日本企業の統治能力のありかたが問われているとの報道がマスメディアでされていますし、法務省では経営陣へのお目付け役である監査役(会)の権限を強化することも検討されているようです。即ち、“監査法人の選任・報酬決定の権限を監査役(会)に与える”ことに加えて、“社外取締役の選任を義務づける” などの会社法改正も検討されているようです。

日本の企業では「CSR(企業の社会的責任)」、「内部統制」、「コンプライアンス(法令順守)」の考え方が導入されて、欧米流の経営方式を追求してきました。実務的には、「業務のマニュアル化」を行い、「意思決定のプロセスを透明化」し、「監査役権限の強化」や「内部監査体制の整備」、「内部通報制度や社外通報制度の導入」などを行ってきました。 また、「金融商品取引法」も改正され、財務における内部統制(見える化等)も実施されてきました。

 それでも、企業不祥事は後を絶ちません。内部通報に関して、オリンパスでは今回の巨額損失隠しとは別問題で、内部通報した社員を不当に異動させたり、パワーハラスメントを受けたということで社員から訴えられています。内部通報制度や社外通報制度は通報者が判明しても差別しないのが前提になっているのが普通だと思われます。オリンパス自身が制度を踏みにじったか、制度に不備があったか、それとも???

企業統治の制度面で見れば、オリンパスのケースでは、監査法人が国内ベンチャー3社の高額買収(06~08年)と、英医療機器メーカー買収(08年)に際しての高額手数料を問題視したものの、最終的には決算を「適正」としていること、 さらに「オリンパスが損失隠しを行っている」との情報を得て、実行役とされる常勤監査役(当時総務・財務部長)らを追及し、金融商品取引法に基づく金融庁への報告の可能性も示唆したものの、結局、確証を得られず、第三者委員会(弁護士や公認会計士で組織)が買収は妥当との判断をしたこともあり、2009年3月期決算を「適正」とします。

経営陣のお目付け役たる元監査役が飛ばしの元実施責任者だったために、結果としてみれば、会社法が期待する監査役の機能が全く働かなかったことは大きな課題であり、社外の専門家による第三者委員会の調査も不十分でした。 監査法人の機能強化も検討されるべき課題ですが、取締役会や監査役会で「適正」と判断されている事項については、監査法人が「疑念」だけでどこまで立ち入った追求できるか、難しいところがあります。

ただ、疑惑に外国の銀行が関係する場合に、現地調査をせずに外銀の発行する残高証明書だけで判断したのは、問われるべきことなのではないかと思います。外銀への立ち入り調査が極めて困難なことは素人でも容易に想像できますが、監査法人は国際的なネットワークを持っているので、外銀のある国の監査法人に調査を委託するとか、なにか方法はなかったのでしょうか。

なお、企業統治という側面では、東京電力では福島第一原子力発電所の事故を巡り、「東電の監査役は新旧経営陣に対する損害賠償訴訟を提起しないことを決め、提訴を促していた一部の株主側に1月13日付けで通知した。これを受け、株主側は早ければ今月末にも新旧経営陣数十人を相手取り、約5兆5045億円を東電に賠償するよう求める株主代表訴訟を東京地裁に起こす。」(毎日新聞:1月17日)と報道されています。

我が国の企業でも外国資本との合弁が増え、外国株主から派遣される役員や社員が増えています。私の勤務している会社も数年前に欧米系の外資との合弁になりました。代表取締役、執行役員、一般社員合わせて外国人(欧米人)が10名弱います。 まず、会議が変わりました。日本人だけであれば、短時間でスムーズに終了している会議が多いのですが、外国人社員は様々な質問・発言をします。 取締役会では株主代表として出席する取締役の発言は厳しいものがあります。 特に、利益確保への認識は日本人とは比較にならないくらい強いと感じます。 利益を計上して配当を得ることに執着します。 日本人経営者の様な、将来への投資に備えて内部留保を厚くすると言う発想は少ないようです。 

日本人同士は横社会の世界で職制上の上司と部下の関係も緩やかですが、外国人は縦社会の論理で動きます。横のつながりの認識は薄いようです。即ち、部下には厳しく報告を要求し、指示を出します。 この縦社会の関係は、本国の親会社と本人との間でも貫徹しているようです。 このような縦社会故に、業務を徹底してマニュアル化し、個人や組織単位の役割が明確にされており、監査部門などの組織としてのチェック機能が働いているので、日本の様な企業不祥事は起こりにくいのかもしれません。

会社法や金融商品取引法の一部改正で一定の改善はなされるでしょうが、転職があたりまえで自己の利益のために仕事をしている外国人に比べ、 「会社のためによかれと思ってした」などどいう発想が抜けきらない日本人の精神風土の中では、なかなかむつかしい課題です。 


(毎日新聞:1月18日)

『オリンパスは17日、損失隠し問題で会社に損害を与えたとして、歴代監査役5人に対して最大10億円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。外部弁護士による「監査役等責任調査委員会」が16日、「歴代監査役5人が会社に84億円の損害を与えた」との報告書をまとめたことを受けた措置で、三つの外部委員会を設けて調べてきた経営陣などの責任追及には一定のめどがついた。高山修一社長ら現旧取締役19人が最大約36億円の賠償を求められたのに続き、経営を監視する立場の監査役までもが提訴される異例の事態となり、改めてオリンパスの企業統治のずさんさが浮き彫りになった。また、今回の問題は日本の企業統治のあり方自体を問い直すものになりそうだ。

オリンパスが提訴したのは、元経理部長で損失隠しを知りながら黙認していた太田稔元監査役と、不正に使われた国内外4社の買収を見過ごした島田誠社外監査役ら4人。監査役等責任調査委員会が、太田元監査役が約37億円、他の4人が計約47億円の損害を会社に与えたと認定したことを受け、太田元監査役に5億円、他の4人には連帯で計5億円を請求した。請求額は支払い能力などを考慮して決めた。

今回の調査では、09年3月期まで会計監査を担当したあずさ監査法人と10年3月期から担当している新日本監査法人の責任をどう認定するかが注目された。損失隠しの事実関係を調査した第三者委員会は昨年12月にまとめた調査報告書で、両監査法人の一定の責任について言及したが、今回の調査報告書は「法的な責任があるとは認められない」と結論づけた。

第三者委の報告書によると、あずさは問題発覚前、企業買収資金が高すぎる点などを指摘したが、菊川剛前会長ら経営陣は受け入れず、監査役会も「問題ない」と結論づけたため、最終的には決算を適正と判断した。第三者委は、あずさが適正意見を出した経緯について「問題なしとはしない」と指摘。新日本監査法人についても、あずさからの引き継ぎが不十分だったと問題視した。

一方、今回の報告書は監査法人について「関係者に不注意や軽率な点は見受けられる」と指摘したものの、「(不正の)首謀者が巧妙に違法行為を隠蔽(いんぺい)していた」ことなどを理由に「直ちに注意義務に違反したとは言えない」と認定した。結果的に監査役と監査法人で責任についての判断が分かれた点について、「監査法人の責任を問えば大詰めを迎える12年3月期の決算の策定作業に影響が出かねないことを考慮したためではないか」(公認会計士)との見方もある。

ただ、金融庁と日本公認会計士協会は、あずさ、新日本の両監査法人の公認会計士らから聞き取り調査を続けている。結果は2月以降になりそうだが、仮に「相当の注意を怠った」との結果が出た場合、金融庁による課徴金などの行政処分や協会の業務停止などの懲戒処分が下される可能性がある。

オリンパスの損失隠しや大王製紙前会長による巨額借り入れ事件で、海外投資家が日本の企業統治のあり方に向ける目は厳しくなっており、企業の不正を防ぐ監査制度改革を求める声が強まりそうだ。 政府や民主、自民両党などは、制度改正の検討に入り、法制審議会(法相の諮問機関)は昨年12月、社外取締役選任を義務づけることなどを柱とする会社法改正の中間試案をまとめた。企業の開示情報拡大などを盛り込んだ金融商品取引法改正も検討されている。日本公認会計士協会も15日、会計士が不正経理を発見した場合、監査役に書面で報告するなど対応策をまとめた。 ただし、社外取締役の選任義務化は、経営の自由度を縛られたくない経済界から反対の声があり、試案の通りに会社法が改正されるかは見通せない。

また、現在の監査制度では、監査法人が不正と思われる事項を指摘しても、企業から「経営判断の一つで不正行為ではない」と反論されて提訴されたり、契約を打ちきられる可能性がある。今回公表された調査報告書でも「監査法人が企業側に責任追及されるリスクを負ってまで違法行為を発見する義務はない」と指摘しており、監査法人による監査も限界があるのが実情だ。

 千葉商科大会計専門職大学院客員講師の柴山政行公認会計士は「現行制度では、権限上の問題や顧客企業との関係から、よほどの場合でなければ監査法人が決算に適正意見を出さないのは難しい」と指摘。「会計士が不正経理を発見した場合、金融庁や会計士協会など外部機関と相談、協議できる体制作りが必要だ」と話している。』


(2012年1月31日 花熟里)
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【 政治家と官僚の無責任に呆れる 】

2012年01月27日 15時47分55秒 | ちょっと気になること

東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故関連の様々な実態が国民の前に明らかにされてくるようになりました。 東京電力と国(各省庁、原子力安全の保安院、他)の無責任体質にあきれるばかりです。ごく最近の4件の事例を見ても“放射線から国民の生命を守る”、“政府の政策・方針に関する文書は国民共有の財産である”、という意識が全く欠けているのです。政治家や官僚は「公僕である」という意識はもはや我が国の政治家や官僚からは消え失せてしまったのでしょうか。


1、福島県の放射線に汚染された砕石場の砕石

マスコミで連日話題になっている福島県二本松市の新築マンションでの砕石の放射線の汚染に関連して、1月21日のNHKニュースによると、福島県は砕石を含む建設用資材の放射線の汚染を懸念して、昨年5月に国に対して砕石場を含む建設用資材の安全基準を示すように文書で要望していたが、現在まで国は何の対応もとらなかったことが放送されました。国は稲わらの汚染のとき、“全く想定していなかった”といっていましたが、今回の砕石汚染についても同様の発言がなされています。昨年5月にはすでに福島県が砕石の放射線による汚染可能性を指摘しているのですから、国は嘘を言っていることになります。 

新聞では、やっと1月24日になって読売新聞が行政のあきれる場かりの対応を報じました。この記事によると、『福島県は、昨年5月26日、政府の原子力災害現地対策本部に対して、コンクリートや土砂、木材など公共工事につかう23種類の建築資材について取扱基準を示すよう文書で要請した。要請は内閣府に伝わったが、担当者は『そのころは警戒区域からの避難が進み、物を運び出す人はいなかった以上、すぐに基準を作る必要性は低いと考えた』と振り返る。」

また、同記事では、昨年12月27日に、二本松市での新築マンションで高い放射線量は明らかになった際に、市が同日夜には文部科学省に連絡するも、返事が来たのは1月5日、環境省からだった。と報じています。なんとも、他人事の対応です。国の不作為により国民を健康不安に陥れた責任を大臣と官僚はどのように受け止めているのでしょうか。

新聞等マスコミでは、もっぱら砕石がどこで使用されたかなどに報道の主力を注いでいます。これも重要なことですが、国民の生命を守ると言う意識を欠いている政治家と官僚の責任を徹底的に追及すべきです。 



2、原子炉監視システム(ERSS)の非常用電源未接続問題

福島第一原子力発電所で、原子炉のデータを国の原子炉監視システム(ERSS)に送信する装置の非常用電源が、事故の4カ月前に行った工事で取り外されたまま放置されていたことが、1月18日に明らかになりました。

産経新聞(1月19日)記事では、『 非常用電源が外れたままとなっていたのはメディアコンバーター(MC)と呼ばれる機器で、原子炉の温度や周辺の放射線量などを監視する「ERSS」と呼ばれるシステムにデータを送信する装置の一部。MCが非常用電源の「無停電電源装置」に接続されておらず、地震により外部電源を喪失した昨年3月11日午後2時47分ごろにデータの送信が停止した。平成22年11月に行われた設備更新工事で、MCからの電源ケーブルを作業員が誤って別の機器に接続。東電は同月、ミスに気づき、ケーブルを非常用電源につなぎ直そうとしたが、ケーブルの長さが足りず断念。未接続のまま放置したという。

東京電力は設置に当たり国(原子力安全保安院)と事前の打ち合わせを行った。予定された場所では無くて、誤って別の場所になされたためにケーブルが不足したので、保安院には報告したが、具体的な対応を取らずに、3月11日を迎えてしまった、と東京電力は公表しました。

これに対して、保安院(現場管理は原子力安全基盤機構)は、早期に接続するようにとの指示をした、ケーブルが未接続の状態であるとは全く認識していなかった、と反論しています。』

東京電力、国ともに、責任のなすりつけを行っており、まことに見苦しい限りです。 両者とも、ERSSが原子炉の正確なデータをリアルタイムで最終的には国民に提供するシステムだとことを忘れています。 この認識があれば、東京電力は一刻も早くシステムを稼働させるべく非常用電源に接続していたでしょうし、国は接続の指示を出したままでなく、現場確認を行うべきでした。

原子力安全・保安院のホームページによると、各原子力発電所近くに複数の保安院職員が駐在しています。 当然、福島第一原子力発電所の近くにも複数の保安院職員が常駐し、頻繁に保安巡視を実施していたと思われますので、何時でも接続を現場確認できたハズです。 そのまま放置しておいたのは、任務を果たしていなかったことになります。 国は東京電力の責任を追及するのではなく、まず、自らの不作為の責任を自覚すべきです。 原子力発電所を所有する東京電力は当然として、国も原子力発電所での放射線管理をしっかり行うことが、放射線からの汚染・被曝から国民を守ると事に繋がるという意識が全く欠けています。



3、放射性物質の拡散を予測するシステム“SPEEDI”のデータ公表問題

原発事故直後の昨年3月14日には政府は外務省を通じてSPEEDIのデータを米軍に提供したが、福島県民を含め一般国民には3月23日に公表しました。原発事故当時から、放射性物質の拡散を予測するSPPDIのデータを活用しなかったために、国民を被曝させてしまったのではないかと指摘されていましたが、やはりその通りだったことになります。

文部科学省の渡邉局次長の国会での発言、「(事故対応を)米軍に支援してもらうためだった。公表という認識ではなかった。(住民ら国内への公表は)原子力災害対策本部で検討しており遅くなった」(東京新聞:1月17日)は国が国民のことなど念頭になかったことを示しています。

SPEEDIのデータについては、内閣府原子力安全委員会は、『1月18日、原発事故で住民の避難判断をする際、放射性物質拡散予測システム「SPEEDI」は、信頼性が低いため使わず、実測した放射線量などをもとに判断する』としていますが、米軍には実際にデータを提供しているのですから、おかしな話です。どのようなシステムでも、よりよいものに改善していけばよいだけのことです。



4、原子力災害関連の議事録未作成の問題

福島第一原子力発電所事故の関連する政府の原子力災害対策本部会議(菅総理が本部長)など政府の10の重要会議で議事録が作成されていなかった問題もマスメディアをにぎわしています。これについては、昨年5月に政府原子力災害対策本部の議事録がないことが明るみに出たときに、本ブログでも国民への背信行為であると指摘しました(2011年5月26日付けのブログ記事)。

当時、枝野官房長官が、議事録未作成はきちんと作成させると国民に約束したのですが、結局、現在までなんの改善もされなかったのです。枝野さんは野田内閣で原子力を所管する経済産業大臣ですが、「事務局である原子力安全・保安院に議事録作成を指示した」と反省の言葉も無く、他人ごとのようにぬけぬけと発言しています。 

菅内閣の官房長官として、政府広報を一手に引き受け、連日、弁護士出身らしい冷静な口ぶりに、危機時における広報の見本だとして一部の人々から喝采をあび、「将来の総理候補」とまで評価をされましたが、裏では、放射性物質の拡散情報を国民に隠蔽することにより(米軍には情報を提供していたのです)、福島県民始め国民に不要な被曝をさせた責任者であり、さらに、『内閣の意思決定プロセスの記録』で『公文書』でもある議事録を作成していなかったという大失態の責任者が、いま又、原子力を所管する大臣として君臨しているとは、民主党政権は国民をどこまで裏切り続けるのでしょうか。

政府は民間企業には意思決定プロセスの透明化を指導し、議事録の作成を義務付けています。政府機関の企業への立ち入りのときには、様々な記録の提出を求められます。もし提出できなければ、なんらかの措置を課せられます。
民間には厳しく、自己(政治家・官僚)には大甘な人々に、わが国のカジとりを任せてよいのでしょうか。



(2011年5月26日のブログ記事)

「政府が原発事故対応のメモを作成していないのは国民に対する背信行為だ」

http://blog.goo.ne.jp/kira2bapak/e/28db8741d71a08fead01d23fc3fb2d1b


(2012年1月27日 花熟里)


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【元厚生労働省局長 村木厚子さんのコメントに思う】

2012年01月26日 17時17分21秒 | ちょっと気になること
『障害者団体向け割引郵便制度を悪用した郵便不正事件で、自称障害者団体「凛(りん)の会」に偽の証明書を発行したとして、有印公文書偽造・同行使などの罪に問われた厚生労働省元係長、上村(かみむら)勉被告(42)=休職中=の判決公判が23日、大阪地裁で開かれ、中川博之裁判長は懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。(産経新聞:1月24日)

上村勉の上司だった元厚生労働省の村木厚子さんには既に無罪判決が出ています。今回の上村被告への判決後、村木厚子さんのコメントが新聞に出ていました。
『(自分の無罪確定)は「厳粛に受け止めている。管理、監督に不行き届きがあったと責任を感じている」とのコメントを出した。』

このコメントの通り「管理者としての責任を感じている」のならば、村木さんはどのような行動をとるのでしょうか? また、厚生労働省は当時課長だった村木さんの管理者としての責任を追及しているのでしょうか。 いやしくも、直属の部下が村木(課長)さんの「課長公印」を無断で使用していたのです。村木さんの「責任を感じている」との発言で済まされえるものではありません。

本ブログ(2010年9月23日「厚生労働省 村木厚子元局長の局長級への復職に疑問」) でも書きましたが、民間企業であれば、部下が刑事事件で起訴され有罪になれば、上司は管理・監督責任が問われ、当然、閑職への異動や降格など左遷人事が行われると思います。官庁においては公印の管理・公文書の管理は特に厳格にされなければなりません。 この意味で、村木さんの課長(当時)としての責任を厳しく問わなければなりませんが、村木さんは、無罪判決を受けて内閣府で局長級に復職しています。 官僚の世界では、「監督不行き届き」として、管理者の資質を問うことはないのでしょうか。


(2010年9月23日のブログ記事)
http://blog.goo.ne.jp/kira2bapak/e/f76d5914b11c4eabf2fcc444bcd48b06



(2012年1月26日 花熟里)

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【ソシンロウバイ(素心蝋梅)の黄色い花】(2)

2012年01月23日 17時03分36秒 | 自然
民家のあちらこちらの庭先に、ソシンロウバイ(素心蝋梅)の蝋細工のような黄色い花が咲いています。12月の葉のついている時期の花の様子をアップしましたが、1月も下旬になり葉がすっかり散って、花だけになりましたので花が大変映えます。

















(2012年1月23日 ☆きらきら星☆)
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「日本の企業倫理」

2012年01月20日 18時02分10秒 | ちょっと気になること
イーストマン・コダック社が1月19日にニューヨークの連邦地方裁判所に連邦破産法(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したと報道されています。コダック社は1880年創業ですから130年の歴史を持つ写真フィルムで世界を席巻した巨大企業です。破産の理由は、“フィルム事業で成功しすぎたために、デジタルカメラの普及など市場への変化への対応が遅れたこと”とされています。

日本経済新聞に「日本流 企業存続の条件」という記事が掲載されています。近江商人の「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」の精神と当主を強制的に罷免する「押し込め隠居」の制度)、さらに、江戸時代に“商業活動に哲学を与えた”石田梅岩の思想(石門心学)を紹介し、老舗企業が厳しい倫理を定める家訓などで身を律して来たことが永続の主因であること、また、日本企業が必死に取り組んでいるCSR(企業の社会的責任)の源流が石門心学にあると示しています。

世界的に見て、日本には長寿企業が非常に多く、その理由を日本古来の経営方針に求めるものが見られます。長寿企業の最古は、西暦578年創業の大阪の「金剛組」で寺社建築を専門としています。飛鳥時代の第30代敏達天皇の時代の創業であり、1430年超もの歴史があります。なお、1月10日の新聞各紙では、2面~3面を通した「高島屋」の企業広告が掲載されています。1月10日は高島屋の181周年記念日だそうです。


金剛組のサイトから引用。
【江戸時代、第32代当主の金剛八郎喜定は<職家心得の事>でこう記しています。こ
・「お寺お宮の仕事を一生懸命やれ」
・「大酒はつつしめ」
・「身分にすぎたことをするな」
・「人のためになることをせよ」など
 この家訓が苦難にあって、初心に帰ることの大切さを教え、金剛組の進むべき方向を示 したのです。】


“本業である寺社建築を大事にしろ、身の丈にあった経営をしろ”と戒めています。なお、正式な家訓は次のようです。

1.儒教・仏教・神明の三教の考えを、よく考え、心得よ
2.読書・そろばんの稽古をせよ
3。世間の人々と交際しても決して出すぎるな
4.大酒は慎め
5.身分以上の華美な服装はするな
6.人を敬い、穏やかな言葉遣いをせよ。但ししゃべりすぎるな
7.目下の人には深い情けをかけ、穏やかな言葉で召し使え
8.何事も他人と争うな


加護野忠男神戸大学大学院経営学研究科教授によると、「世界中で100年以上の歴史を持つ長寿企業がどのように経営されているのかが調査され、その成果が『リビングカンパニー』(日経BP社)として出版されている。それによると長寿企業には次の4つの共通点がある。

・第1:多くの長寿企業は環境の変化に対して敏感である。
   <日本の長寿企業は時代の変化に対して敏感であるが、変化への対応に際して、
    自社の基軸を大切にしている。>

・第2:長寿企業には強い結束力があり、企業組織全体の健康状態を大切にする経営
    者に経営をゆだねている。
   <長寿企業の多くでは、企業の経営権を一人の男子に継承させるという慣行を持
    っている。また、人を内部で厳しく鍛え、時には内外のライバルと競わせなが
    ら厳しく育てている。>

・第3:長寿企業は、連邦型の経営を行って現場の人々の判断を大切にしている。
   <杜氏集団の様な現場の自立的仕事集団を尊重するという意味での連邦的経営が
    行われていた。>

・第4:長寿企業は、資金調達に関して保守的で質素倹約を旨としている。
   <長寿企業は、法制度としての株式会社の制度を採用しているが、上場による資
    金調達はしていない。>   」


かつて日本企業の良さと言われてきた家族的な風土や長期的な視点に立った人材の育成などは、もはや過去の遺物扱いとなっています。確かに、家族的な風土ゆえに、企業不祥事の内部告発が出来ない、権限と責任が明確になっていない等の弊害が指摘されています。

日本人には、『郷に入っては郷に従え』という精神が根付いています。 近江商人の三方よしの中の「世間よし」に通じる精神だと思います。 海外に進出した場合に、日本企業は地域への貢献などを通じて、その地に必死になって溶け込もうと努力します。日本以外の国の企業がこのような努力をする例は少ないのではないでしょうか。 また、日本人会を通じてボランティア活動を積極的に行うのも特筆すべきことではないでしょうか。また、「世間よし」は、今各企業が取り組んでいる“CSR(企業の社会的責任)”の考え方そのものではないでしょうか。

近年、日本の企業は欧米流の考え方を取り入れて、様々なことを実施してきました。 しかし、経営の中心になる考え方は日本伝統の精神にあったのであり、欧米流の経営手法はこの精神を実践する手段の一つに過ぎないのです。


(2012年1月20日 花熟里)


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