ミャンマーのティンセイン政権が民主化への確かな歩みを進めています。 8月20日には、各新聞で「50年に亘って実施されてきた事前検閲制度が8月20日付けで完全に廃止された」と報じています。.「昨年、スポーツや芸能、娯楽、健康、科学などの専門紙や雑誌への検閲を廃止しており、今回は、残っているニュースや政治、宗教に関する検閲も廃止」するものだそうです。
ミャンマーでティンセイン政権が発足し、民主化を実施し始めましたが、当初国際各国は冷ややかな目で見ていました。欧米諸国は勿論、わが日本でも、“ミャンマーは軍事政権の国名なので、ビルマという国名“ を使うと言うTV等で公言している専門家も多数いました。 なんとバカな専門家と思っていました。
アウンサンスーチーさんが釈放され、国会議員に当選して、ヨーロッパ諸国を訪問する段階でやっと、西欧諸国はミャンマーの民主化を本物と認め出しました。 西欧諸国にとっては自分たちの価値観とは違うものは認めたくないという本音がはしなくもあらわれていました。 アジア諸国は欧米の価値観ではなく、伝統的な自己の価値観で進んでいけばよいのです。 この意味では、ティンセイン大統領は実に賢明で、着実にミャンマー流の改革を進めています。 著名なアウンサンス−チーさんの政治手腕は未知ですが、英国への留学経験(オックスフォード大学)とイギリス人の亡夫の影響もあるのか、その言動から欧米に近い価値観を持っているように感じられます。 やはり、ティンセイン大統領に期待するところ大です。
くしくも、同じ20日付けで、アジア開発銀行(ADB)が、ミャンマーの経済発展見通しを発表しました。ミャンマーへの力強い援軍があらわれたようです。
『ミャンマーは、中国とインドをつなぐ地理上の重要性、豊富な天然資源と労働力があり、改革への持続的な取り組みを進めれば、同国はアジアの次の輝く存在になり得る。ミャンマーが取り組むべき経済改革を進めれば、同国は今後年率7〜8%の高い経済成長を続け、1人当たりGDP(国内総生産)が、2011年時点の856ドルから、2030年までに2000〜3000ドル(16万〜24万円)に達する中所得国になる。』(時事通信:8月20日)
ところで、先日NHK・TVで、第二次大戦中に日本軍が建設した『泰緬鉄道(1943年10月開通) 』の中で、廃線になったままの「タンビューザヤット(ミャンマー側)〜ナムトックサイヨークノ〈タイ側〉279.3km」を整備改修することで、ミャンマーのティンセイン大統領とタイのインラック首相とが合意したと報じられました。 この鉄道が完成すればタイのバンコクからミャンマーのヤンゴンまでの鉄道が繋がり、タイ・ミャンマー間の物流が飛躍的に改善され、両国の発展に大きく寄与することが期待されます。
この計画については、日本のODA案件として取り上げ、日本が資金面・技術面での支援を申し出るべきと思います。
一企業人として見るならば、日本からミャンマーへは、マラッカ海峡経由、又は、インドネシア南側のインド洋経由でないと物資の輸送ができないのがネックになっています。 もし、泰緬鉄道が全面復旧すれば、タイからの陸路での物流ルートが出来ることになり、タイに進出している多くの日本企業のミャンマーでの事業展開を容易にすることになります。 さらに、中国集中リスクの回避策として製造拠点の分散化にもなりますし、ミャンマーへの中国への影響力を弱めることにもなります。
<泰緬鉄道>
・ノンプラドック(タイ・バンコクの西80km)〜タンビューザヤ(ミャンマー)間、414.9kmを結ぶ。 途中カンチャナブリに「戦場にかける橋」がある。
・戦後すぐ連合軍により、ミャンマー側の全線と、タイ側のナムトク〜三仏峠間(Three pagoda pass)が撤去され廃線となった。
・タイ側では2回/日、バンコク・トンブリーからナムトックまで列車が通っている。
(2012年8月28日 花熟里)