花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「イスラム社会に思う」

2012年07月26日 17時44分34秒 | インドネシア
25日の朝日新聞の「特派員メモ」に、断食月(ラマダン)入りしたことがレポートされていました。この記事を読んで、インドネシア駐在時代に体験したり見聞きした断食月の様子が脳裏に浮かんできます。

インドネシアのイスラム教は基本的には「スンニ派」で、2つの大きな信徒団体(ナフダトゥール・ウラマ(NU)、 ムハマディア)がありますが、ある年、所属する団体により断食が始まる日にちが異なると言う事態がありました。即ち、“改革派のムハマディア”は、暦の計算に基づいて予め断食等の日にちは決められているので、暦通り実施しますが、、“伝統的な思想を重んじるNU” では、暦の断食に実際に入るか否かは、宗教学者が月や星の動きを観測して都度決定するのです。 このために、ある年に、ムハマディア所属の信徒は暦に従って断食に入ったものの、NUの信徒は、学者の決定に従って1日遅れで断食に入りました。

私の勤務する会社でも従業員で断食に入る人と、そうでない人が出てきました。しかし、彼らは、所属する団体が違うからと、実にあっけらかんとしたものでした。 お互いの違いを認め合っているのです。 このあたりは同じイスラムといっても、アラビア諸国とは大分違うようです。

断食の間は日本人社員は神経を使います。 何しろ、イスラム教徒は、日の出から日の入りまでの間は、飲まず食わずですので。  いつもなら、我々日本人社員には、イスラム教徒の社員が毎朝お茶を淹れるてくれるのですが、断食になってお茶を断ると、断食は小さい時から行っており、慣れているので、心配しないでほしいと言って、いつも通りお茶を淹れてきてくれました。 

イスラム教徒の人事マネージャーにお茶の辞退を話すと、全く同じ返事が返ってきます。 即ち、自分たちはイスラム教徒として、自分の意思で断食を行っているのであり、イスラム教徒以外の人を拘束することはしないので、いつも通りにしてほしい。 それでも、飲まず食わずの人からお茶を淹れてもらうのは気が引け、お茶を別室に持って行って目につかないようにして飲んでいました。
昼食も我々日本人社員とインドネシアア人のキリスト教徒の社員などは、断食している社員の目に触れないように会議室で静かに食べていました。 イスラム教徒でも妊娠していたり、生理中の女性は食事していました。

日本人のこうした配慮は、日本人社会全体で行われているようでしたが、全く配慮しない会社(我が国に近い)もありました。  宗教での対応に限らず人事制度等でやはり国民性があらわれるようです。  日本人はやはり「やさしい」のです。

イスラム教徒のことでは、ロンドンオリンピックの開催時期が断食月と重なるので、一部では開催時期を配慮すべきだったとの声もありましたが、断食月にイスラム教徒全員が断食を行う必要はありません。 先ほどあげたように、妊娠中や生理中の女性は断食を行わなくてもよいのです。また、 旅行中、病気の時などでも断食は免除されます。
オリンピックに出席するには旅行しなければならないイスラム教徒がほとんどでしょうから、抵抗はないものと思われます。 勿論、断食をしなかった日数は、後日、その日数分だけ断食をしなけらばならないように決められています。 



朝日新聞(2012年7月25日)

〈特派員メモ〉「ジャカルタ 断食明けの一体感」
『今年もラマダン(断食月)がやってきた。ジャカルタ支局で非イスラム教徒は私だけなので、5人いる地元スタッフにつきあって昼食を抜いている。水は見えないように飲んでいるが、せめて心意気だけでもというわけである。
この時期、楽しいのは「ブカ・プアサ」と呼ぶ、夕方の断食明けだ。ジャカルタでは午後6時前だが、取材などで外出していないときは、1時間くらい前に菓子を買い出しに行く。テーブルに並べると部屋中に甘い香りが漂い、すきっ腹にしみてくる。
今年は断食初日が週末と重なったので、支局で初の断食明けは月曜だった。スタッフは3日目なので割と平気そうに見えたが、こちらとしては好きに飲み食いした週末の後なので、ひときわつらい。午後4時ごろに「もう少し朝食をしっかりとっておけば」と悔やんだが、もう遅い。
テレビで日没の礼拝を呼びかけるアザーンが流れ、断食が終わった。「やった!」とスタッフたち。やっぱり、空腹だったのだ。茶を飲んで菓子を食べ、おしゃべりに花を咲かせた。この一体感が、つらい断食を乗り切れる原動力かもしれない。(郷富佐子)』


(2012年7月26日  花熟里)

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