花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「責任をうやむやにする体質ーーー利根川水系での取水制限問題から」

2012年07月14日 13時26分56秒 | ちょっと気になること
去る5月に首都圏では、利根川水系の取水場で国の基準を上回る有害物質ホルムアルデヒドが検出されたということで、埼玉県行田(行田市)、千葉県上花輪(野田市)・北千葉(流山市)・栗山(松戸市)、群馬県東部地域水道浄水場(千代田町)で取水停止となり、千葉県柏市など5市の約35万世帯で断水が発生するなど大騒ぎになりました。 後日、ホルムアルデヒドの発生者は“DOWAハイテック”であり、塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する原因物質“ヘキサメチレンテトラミン(HMT)”を含む産廃処理を産廃処理業者2社に委託していたもので、2社の中の“高崎金属工業”が利根川上流の烏川に未処理の廃液を放出していたことによるものと判明しましたが、なぜか、日を追うごとにマスコミの話題にも上らなくなりました。

6月になって、埼玉県は「HMTが水質汚濁防止法で規制される物質ではないことや、DOWAハイテックは、廃液の全窒素の濃度などは示していることから廃棄物処理法に定める委託基準違反には該当せず、法的責任は問えない。また、高崎金属工業は、DOWAハイテックから委託された処理を行っていることから、廃棄物処理法上の違反には該当しない。」との結論に至り、廃液処理に関する行政指導で一件落着となりました。結局、埼玉県は、DOWAハイテックに、6月7日文書で再発防止を行政指導しただけです。マスコミでも大騒ぎした事件は一体何だったのだろうと思わざるをえません。

確かに、HMTは水質汚濁防止法では規制されておらず、ホルムアルデヒド も人間の健康への影響はほとんどないのかもしれないので、水質汚濁防止法違反にはなりません。産業廃棄物規制法上の手続きも踏んでいたと認定されているので、法的には問題ないのかもしれません。しかし、DOWAハイテック は、2003年にもHMT流出させ、今回同様の浄水場への ホルムアルデヒド 検出問題を起こしています。 

DOWAハイテックのホームページでは、次のようにコメントしています。(抜粋)
『当社は、規制対象である全窒素およびホルムアルデヒドが明示された分析結果および廃液の実サンプルを処理会社側に提供し、委託先から「処理が出来る」という回答を得ている。全窒素を排水基準値(60mg/L)以下に処理する過程で、HMT 等の窒素化合物の濃度も十分に低減されるので、今回の処理委託に当たって提示した情報で、HMT も含めて適切な処理が可能であったと認識している。』
一方、委託先の高崎金属工業は、『HMTが含まれているとは説明を受けていない、知っていれば処理を断った』と話しています。
DOWAハイテックは全窒素の除去過程でHMTも除去されると主張していますが、埼玉県が処理工程を再現したところ、HMTは4割程度しか分解されなかったと報じられています。

産廃処理を委託する場合、通常は産廃に含まれる物質の成分を記載した書面を交付します。 通常、HMTを調達する際に、メーカー(又は販売業者)から“Material Safety Data Sheet(MSDS)”が添付されます。DOWAハイテック のように様々な化学物質使用する企業であれば、MSDSを保管しているのは当然のことで、DOWAハイテック は2003年のケースもを教訓にすれば、産廃処理業者にこのMSDSのコピーを渡すべきでした。

埼玉県はDOWAハイテックの意見を是としたわけですが、次のことを感じています。

1、DOWAハイテックの責任
 DOWAハイテック は、“企 業の社会的な責任(CSR)” を掲げています。  ホームページでDOWA側には瑕疵が全くないことを説明していますが、2003年には今 回と全く同様のHMTの混入による浄水場でのホルムアルデヒド 検出事件を引き起こ しているのですから、HMTを含む廃液の処理については、手順が出来上がっていなけ ればなりませんが、分析結果にHMTを明記しなかったことは、不備と言わざるをえま せん。今回の事件でDOWAハイテック幹部が、水道水の断水などで多くの国民、自治 体に迷惑をかけたことに対して、謝罪なりの会見を開いたのでしょうか。 法的には  問題ないとしても、社会的な存在である企業経営上の責任は大きいのです。社内規範で ある“C SR”を果たしておらず、経営者、関係者は社会的な責任を負うことは勿  論、、企業内の規範違反として責任を追及されるべきです。 さらに、親会社である  DOWAホールディングス のグループ 指導が問われる問題でもあると思います。

2、埼玉県、千葉県、群馬県役人の職務怠慢
(1)埼玉県役人の不作為
 埼玉県は2003年の浄水場でのホルムアルデヒト検出事件後、DOWAハイテックにどの ような指導を行ったのか。さらに、水質汚濁防止法の改正を働きかけてきたのか。今回 2003年と全く同様の事件が発生したわけですので、埼玉県の不作為の責任は誠に重いの です。また、DOWAハイテックのHMTへの取り組みをどこまで追求したのでしょう  か。

(2)千葉県役人の役人根性と水道水管理のお粗末
 千葉県には、17日に埼玉県からの庄和浄水場(埼玉県春日部市)、行田浄水場(埼玉県 行田市)でのホルムアルデヒド検出の情報提供があったものの、千葉県は速やかに、野 田市へ連絡せず、結局、野田市では、18日 午後に同市の上花輪浄水場で基準値超が 検出されるまで取水が続きました。  千葉県は「どのような情報でも早く連絡をする よう改善する」としていますが、役人の縦割り組織にはあきれてしまいます。飲料水の 管理は広域で行うものであり、情報は常に共有されなければなりません。 千葉県は今 回の関係者にどのような対応を取るのでしょうか。単なる「注意」処分? それとも、 全く何も無しか。

(3)群馬県役人の危機意識欠如
 群馬県は、17日午前11時ごろには、下流の埼玉県から汚染情報を得ていたにもかか わらず、水道事業管理する企業局トップの企業管理者や水道課長ら30人余が、同日午 後6時~9時ごろに前橋市内の施設で宴会を開いていたと報道されています。ホルムア ルデヒドが検出された東部地域水道浄水場(千代田町)の担当者も出席していました。 県民の生命に直結した飲料水の管理の重要さを認識しているのでしょうか。たまたま 、実害がなかったからよいものの、なんらかの害が発生したら、一体この役人はどのよ うに言い訳するのでしょうか。彼らに対して、群馬県はどのような対応を取るのでしょ うか。こちらも、「注意」処分? それも無しでしょうか。 


<事件の経過概要>
・5月10日:
 DOWAハイテック(埼玉県本庄市)がHMT濃度37%の廃液計約150トンの処理 を2社に委託廃液の処理を産廃業者2社に委託。
  ・60t:「高崎金属工業」(群馬県高崎市)が中和処理後排水を利根川支流の烏川へ      放流。
  ・90t:別の業者が中和処理し、その後廃液を他の産業廃棄物処分業者が焼却処理。      (河川への流出の可能性はない)
・5月18日:
 埼玉、千葉県は、高崎市の利根川支流の烏(からす)川で有害物質ホルムアルデヒドが 国の水質基準(0.08mg/ℓ)を超えたり数値が上昇したりしたため、利根川や支流の江戸 川から取水している浄水場計3カ所で取水や給水を停止。
・5月19日:
 千葉、群馬県の浄水場計2カ所でも新たに取水を停止。
・5月19日:
 埼玉県が DOWAハイテック に立ち入り調査
・5月25日:
 埼玉県はDOWAハイテックに対して、産業廃棄物処理法に基づく報告聴取を行うと発 表。提出期限は30日。
・5月25日:
 高崎市は処理を請け負った高崎金属工業に対し、同法に基づく調査を始めた。委託契約 書などについて29日までの報告を求め、立ち入り調査も随時行う方針だ。高崎市と県 は、埼玉県の調査に同席する形で、19、21の両日にもこの業者に立ち入り調査して いる。
・6月07日:
 埼玉県は、「DOWAハイテック」の行為には要件が整わず法的責任の追及は断念。
 廃液処理に関する行政指導を行うにとどまった。


<DOWA ハイテック株式会社ホームページ:2012 年5 月29 日>
当社が外部処理を委託した廃液に関して関東の浄水場で国の基準を超える有害物質が検出された問題で、当社が産業廃棄物処理会社に処分を委託した廃液が、適切に処理されないまま利根川水系に放流された可能性が高いという旨の報道に関し、現状をご報告します。

当社は、埼玉県北部環境管理事務所より5 月25 日付けで「廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく報告の徴収について」の通知を受け、外部処理を委託した廃棄物に関わる諸手続等について、本日報告資料を提出いたしました。
この資料の中で当社は、処理会社側へ廃液分析値および廃液の実サンプルを提示し、処理会社から「処理が出来る」旨の回答を得た上で契約締結などの手続きを踏み、適切に外部委託したことを報告しています。

具体的にはまず、当社は廃液の外部処理委託を検討するに当たって、規制対象である全窒素およびホルムアルデヒドが明示された分析結果および廃液の実サンプルを処理会社側に提供しています。その後当社は処理会社側とやりとりを行った上で、「処理が出来る」という回答を得ています。なお、ヘキサメチレンテトラミン(以下、HMT)は、規制対象である全窒素を構成する多数の窒素化合物のうちの1 つです。全窒素を排水基準値(60mg/L)以下に処理する過程で、HMT 等の窒素化合物の濃度も、十分に低減されます。これらのことから、当社が今回の処理委託に当たって提示した情報で、HMT も含めて適切な処理が可能であったと認識しております。

さらに、当社は委託した廃液の処理中に処理会社の現地確認を行い、処理会社の工程が全窒素およびホルムアルデヒドを処理可能な酸化分解および生物処理を含んでおり、HMT 等の窒素化合物も処理可能であると認識しました。また、処理会社からは「問題なく処理されている」という説明を受けました。

上述の通り当社は、今回の外部処理委託にあたって適切な手続きを踏んでいたものと認識しているところであり、今後も関係行政機関の調査に協力してまいります。


(2012年7月15日  花熟里)
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