今作っている本、と言ってもいくつかあるのであれですが、その中の一つに都留民子先生と唐鎌直義先生の対談本があります。
お二人はどちらかというと今の日本の社会保障研究者の中ではメインストリームには属されていません。
言いたいことをズバズバとまさに正鵠を射た発言をされますから、そういう主流派?の先生たちからは疎んじられているそうです。
でも、私は今こそ、これからの日本の社会保障のためにはお二人の発言に耳を傾けないといけなんだと思っています。
そんな都留先生と唐鎌先生のまあ、言わば「ぶっちゃけ対談」的なものですが、えっ、先生、そこまで言っていんですかああああ?というようなことも含めて、日本の社会保障と運動について「本当のこと」をおしゃべりしていただきました。
うーん、読みたい、読みたい・・・と思いません?
そんなことを思いながら、都留先生の『失業しても幸せでいられる国』について、5年前に書いた以下のブログを読みなおしてみました。
以下、再録~『失業しても幸せでいられる国』(都留民子著)のこと
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この書名を見た人なら誰だって、日本もそんな国であったらいいなあときっと思うでしょう。この本はそんな人にぜひ読んでほしいのです。
この10年間、日本社会は「自己責任」という考え方が、すべての物差しの基本になってきたように思います。もちろんこの考えは支配者側から押しつけられたものですが、特にそれは社会保障の分野で顕著に広がり、医療や教育はもちろん、国民の暮らしの中にまでその考えが持ち込まれてきて、その結果、実に悲惨というべき事柄が私たちの身近なところで起こっています。
しかしここにきてようやくというか、まだまだ一部ですがこの思潮に対する反省も生まれてきつつあります。昨年秋の政権交代もその表れと捉えることができると思いますが、しかしまだまだ、果たしてこのままでいくと日本の行く末はどうなるのか、という思いが強くなるばかりの毎日です。
そんな時に出会った1冊の本がありました。『誰もが幸せになる1日3時間しか働かない国』(マガジンハウス、2008年)です。昨秋、大阪社保協学校で記念講演をされた都留民子先生に薦められて読みました。具体的にどこかの現存する国のことを書いているのではないのですが、衝撃を受ける内容でした。これだ!と思いました。日本のこれからに必要な未来社会イメージはこれではないかと。ではどのようにすればこのような国が実現可能になるのか? それを考えるためのヒントがどこかにないかと思い、フランスの社会保障に詳しい都留先生にインタビューをお願いしました。フランスは日本同様に高度経済社会の国であり、社会保障制度がとても充実している国だったからです。
都留先生の専門は社会保障論で、フランスや日本の失業問題などの研究です。毎年秋には、フランスに1カ月余り滞在され友人たちとバカンスを共に過ごされます。その話しっぷりが実に明快で爽やか、時に鋭い発言には目を覚まされることが多く、この本もそうした先生の語り口を読者のみなさんに楽しんでもらえることができるように編集しました。
では、フランス社会とはどんな社会なのでしょうか。1週間の労働時間は35時間/パン屋さんは土日月はお休み/定年後に働く人はいません/失業者もバカンスに行きます/出生率向上は子育てが無料だから…。そして先生は語ります。
「社会保障っていうのは『働かなくても食べられる権利』です。高齢、病気、子どもにしても、働けない人に働かなくいてもいいよ、失業したら働かなくてもいいよと言えるのが社会保障です」
どうでしょう、この発言! 実に刺激的です。そして先生は続けます。
「でもね、私の話はなかなか理解してもらえないんですよ。労働組合でバリバリやっている人たちには、こういう『失業の権利』というのは受け入れられないんでしょうか?」
とにかく働けることが第1、失業なんてとんでもないこと。失業者=決して自分はなりたくない存在、というよな考え方が支配的な今の日本では、想像すらつかない発想の転換を誘うとても刺激的な内容の本です。
そして今、この『失業の権利』が保障されているフランスの労働者たちの闘いは巨大です。この秋、年金制度改悪に抗議するストライキは国民の70%が支持し全土に広がり、その中には学校閉鎖を行って労働者に連帯する大勢の高校生たちの姿もあります。そして若者たちは叫びます。「単位よりも未来を!」
大規模なストライキがなくなって久しい日本ですが、フランスはなぜ、このような社会を作ることができたのか? そんな質問にも都留先生は答えてくれています。ぜひお読みください。