心の色を探して

自分探しの日々 つまづいたり、奮起したり。
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夜中の話

2022年01月07日 | 母のこと
普段は見逃しているものが、状況が変わると、その存在を意識することがある。
影もそうだ。
日中、何度もそこを通っているのに(階段近く)目を当てることが少ない。たまに埃を払うために近づくのだけど、一日で必ず目に留めるといった類いのものではない。
だけど、夜中に母がトイレに入る音に気づいたとき、そっと階段下の物音に耳を傾け、寒いなと思いながら母がトイレから出てくるのを待っているときなど、それは目に入る。

階段廊下の天井二箇所に備え付けれた小さな照明は、建築士がしっかりと計算しつくしたと感じられる小さな存在で、夜中の空間を暖かなものにしている。照明のありがたさをしみじみ味わうひとときでもある。
トイレの戸が開く音がして、母が出てくる姿を見つける。そばに行って声をかける。
「お、お前も入るのか?」
首を横に振って、トイレの戸を母の後ろから閉める。前に足を出した母の腰を両手で支え、歩くのに不安がないようにする。
ベッドに入る前に白湯を飲む母を待ち、ベッドに腰掛けた母に下着の着替えを促す。
「汗かいているんじゃないの?」
「大丈夫だ」
パジャマの上から背中を触ってみる。じんわり湿った感じがして、
「やっぱり取り替えた方がいいよ、汗かいてるから」
「そうか?」
着替えを手伝い、さっぱりしたところで横になることを勧める。最後の布団をかけてやると、
「悪いな、お前、寝れなくなるんじゃないか?」
「大丈夫、また寝るから」
それを聞くと、少し安心した顔をして目をつぶる。

階段廊下の本棚の上が小さな灯りに照らされている。
昼間は見えなかったガラスの下に文様がはっきりと映っている。あぁ、これってこういうデザインに見えるんだ・・・

夜中には、日中知らなかったことが少しだけあるようだ。
トイレに何度も起きる母だけど、そのうちの全部を見ているわけじゃない。そのうちの少しだけのお手伝い。それができると、わたしの中でちょっと嬉しい気分が湧いてくる。
ただ、手伝ったあとに再び眠れるかどうかということは別の話だ(笑)



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