ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

平成二十八年度 松竹大歌舞伎 「當年祝春駒」「仮名手本忠臣蔵・祇園一力茶屋の場」 @岐阜市民会館

2016年09月24日 | 歌舞伎・文楽

歌舞伎「松竹大歌舞伎」(9月21日 岐阜市民会館 大ホール)

台風が心配されたが、直撃はなく、無事開催された(そもそも中止ってあるのか?)恒例の松竹大歌舞伎巡業岐阜市公演。あいにく台風一過とはならず、小雨のそぼ降る中、会場へ。この日は午後休みをもらって昼の部の観劇。岐阜市は昔から芸事に縁が深いはずだが、1日2回公演を差し引いたとしても、前回に引き続き客入りが良くなく、この日も6~7割の入り(夜も多くなかったそうだ)でちょっと寂しい。今、話題の成駒屋(橋之助)でも出ていれば…(笑)。

今回は上手11列目と悪くない席。まずは「當年祝春駒」。いわゆる曽我物で、若い廣太郎と廣松が兄弟で舞う。まだまだ若い二人なので、流れるような所作という訳にはいかないが、貫禄ある父と、顔立ちの美しい高麗蔵(こまぞう)の間で初々しい踊り。物語を基にしているので、もう少し長い舞踊だと思っていたが、意外にあっさりと終演。

今回は中村芝雀が五代目中村雀右衛門を襲名する披露公演。松本幸四郎をはじめ、主な共演者と共に舞台に勢揃いして口上。一人ひとりがひと言づつ挨拶。歌舞伎役者の系図は全然頭に入らないが、こういう段になると誰の従兄弟だの、甥だのっていうのが明らかになって(すぐ忘れてしまうが)血の濃さがあらわになって特殊な世界だという事を再認識する。ま、橋之助の件だって全く驚かないし(そもそも歌舞伎役者ってそういう浮いた話が無い人が居ないので)、現在のモラルに照らし合わせても意味がない。自分はああいう特殊な世界が存在したっていいじゃないかって思うんだけれど…(そうはいかないか)。

幕間を挟んで、メインの「仮名手本忠臣蔵」七段目。そもそも忠臣蔵で自分達が知る武士の名前は歌舞伎の舞台では時代設定を変えたり、ぼかしてあるので、いきなりこの段から見ると人間関係が分かりづらいが、その辺りはしっかり予習しておいたので問題なし。一度たっぷりと通しで見てみたいなァ。大星由良之助(=大石内蔵助)を演じる幸四郎は何度か見ているが、役柄なのか、当人の意思なのか、最近の口跡(言葉遣い、話しぶり)はある種の抑揚が特徴。ちょっと過ぎるような気もするのだが…(→ド素人が偉そうな事を…)。襲名披露した雀右衛門はしゅっとした美人の顔立ちではないが、所作は色気たっぷり。おかるの兄役の梅玉は、時々聞き取りづらくなる口跡が気になった。舞台はこれも短く1時間程。口上があったこともあるが、全体的に少し物足りない内容。ま、長さではないし、襲名巡業だから仕方がないかもしれないが、もう少したっぷりと観たいなァ(と他の客も言っていました)。

この日、ある意味メインのおかる(雀右衛門)が台詞無しで悲しい心情を表す重要な場面で、無情にも携帯電話が「ピロピロピロ…」。くどいほど何度も注意があっても、相変わらず守れない馬鹿者が居るのは情けない(しかも年輩者だから始末に負えない)。

 

  一、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)

工藤祐経  大谷友右衛門
曽我五郎  大谷廣太郎
曽我十郎  大谷廣松
大磯の虎  市川高麗蔵

二、五代目中村雀右衛門襲名披露 口上(こうじょう)

芝雀改め雀右衛門

三、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)

七段目 祇園一力茶屋の場

大星由良之助  松本幸四郎
遊女おかる     芝雀改め中村雀右衛門
鷺坂伴内        松本高麗五郎
斧九太夫        松本錦吾
寺岡平右衛門  中村梅玉

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