ーデビルズ・ダブル -ある影武者の物語ーTHE DEVIL'S DOUBLE
2011年 ベルギー
リー・タマホリ監督 ドミニク・クーパー(ウダイ・フセイン/ラティフ・ヤヒア)リュディヴィーヌ・サニエ(サラブ)ラード・ラウィ(ムネム)フィリップ・クァスト(サダム・フセイン)
【解説】
イラクの独裁者サダム・フセインの息子、ウダイの影武者だったラティフ・ヤヒアの自伝を映画化した衝撃作。ウダイに顔が似ていることから無理やり影武者に仕立てられ、人生を狂わされた男の絶望と怒りを描き、サンダンスやベルリンなど世界各国の映画祭で絶賛された。監督は、『007/ダイ・アナザー・デイ』のリー・タマホリ。狂気にとらわれたウダイと家族を愛するラティフという、正反対の2人を一人二役で演じ切った『マンマ・ミーア!』のドミニク・クーパーの熱演が光る。
【あらすじ】
家族思いの青年ラティフ(ドミニク・クーパー)は、ある日サダム・フセイン大統領の息子ウダイ(ドミニク・クーパー)に呼び出され、影武者になるよう命じられる。同級生だった高校時代から2人は似ていると評判で、一度は断るラティフだったが、家族の命と引き換えに強制的に影武者を引き受けることに。理不尽な運命に必死で耐えるラティフは、いつしかウダイの情婦サラブ(リュディヴィーヌ・サニエ)と心を通わせていく。(シネマトゥデイ)
【感想】
こういう映画は苦手なので、敬遠しようかと思っていたのですが、映画の友達が何人か「面白かった」という評価だったので、私にも大丈夫かなと思いながら、鑑賞しました。
ウダイとその影武者を演じているのはドミニク・クーパー。
「マンマ・ミーア」では、軽い男の子に見えたけど、すごいうまい。
彼のうまさに尽きる作品でした。
ラティフ(ドミニク・クーパー)とイラクのフセイン大統領の長男ウダイ(ドミニク・クーパー)は、学生時代の同級生だった。
そのころから、二人は似ていると評判で、ウダイは戦場からラティフを連れて来させ、自分の影武者になることを強要する。
断ると、拷問したり、それでもうんと言わないと見ると、家族に危害を加えると脅かした。
そういう非道をやりかねない独裁者の息子。
ラティフは引き受けるしか道がなかった。
☆ネタバレ
そこから描かれるウダイの非道の数々。
もともとの粗暴な性格に加え、独裁者である父への恐怖、マザコン、薬中毒など、精神が正常とは思えません。
オリンピックに出ていたような名選手にまで与えられる拷問。
それをビデオに撮ってみながら楽しむ。
女性も思うがまま。
女学生であろうと、花嫁であろうとおかまいなし。
人の命も惜しいとは思わない。
薬もやり放題。
激情に任せて、父のお気に入りの部下まで殺してしまった。
父に「生まれたときに殺しておけば良かった」とまで言わしめる男。
伝説の悪い王様のような、信じられない悪行の数々。
側近たちも、彼の異常さに気づいているが見てみぬ振りーどころか、手を貸している。
イラクのクウェート侵攻が始まり、国連軍の攻撃が始まると、ウダイの身代わりに最前線へ自軍を鼓舞するために送られた。
そこは生死の境の悲惨な戦場だった。
ラティフは腹を決めてウダイの元を去る。
それには、父の覚悟もあった。
自分が犠牲になってでも、ラティフを救いたいと。
ウダイの情婦サラブ(リュディヴィーヌ・サニエ)もラティフの逃亡に付いてきた。
でも、隠れていても情報が漏れている。
サラブを疑ったラティフは、サラブと別れ、ウダイの暗殺に乗り出す。
暗殺は未遂に終わったが、ラティフは国外脱出に成功した。
私が恐れていた怖いシーンは、ほんの触り程度で流れていくので、助かりました。
でも、なんといってもドミニク・クーパーの演じ分けが素晴らしかったです。
ウダイの狂気と、ラティフの正常。
際立って素晴らしかったです。
恐ろしいのはこれが実話ということ。
ラティフが無事で今も存命中と言うことが救われます。
この映画の宣伝のために来日もされたとか。
よかった!!
劇中にある、オリッピックの選手の拷問も事実で、ウィキペディアによれば、52人もの選手が彼の拷問によって命を落としたとか。
ドーハの悲劇と呼ばれている1993年のFIFAワールドカップのアジア地区予選では、負けると選手たちには全員むち打ちの刑が待っていたと言うことです。
日本が負けたのは、人道的救済になったんですね。
でも、こんなウダイでも2000年の国民議会の選挙でトップ当選したそうですから、何も知らされていない国民というのは悲惨です。
フセイン一族が去っても、イラクの平和はまだ遠いようなので、国の運営というのはつくづく難しいのだなあと思いました。
日本も、この平和に安住する事なく、この平和を守る努力を怠りなく続けなければなりません。
平和は、世代を超えての不断の努力なしには得られないし、一度手放したら、取り戻すためにはどれだけの人の血と涙が必要か、ということを肝に銘じなくては!!
本当のところは、どうなんでしょうね。
拷問とかあるシビアな映画って、ほんと苦手なんです。
でも、ちらりと映るだけだって、きついものがありました。
本当にあったんだと思うからね。
独裁者やウダイが去っても、平和にならないイラクのことを考えても、暗くなるわ。
ラティフさんは、本当によかったよ。
あんな人が実際にいたなんて、そして映画にできなかったもっとひどいことがあったなんて・・・・
ラティフさん、ほんとに無事で、来日までできるようになってよかったよね~~