ー愛、アムールーAMOUR/LOVE
2012年 フランス/ドイツ/オーストリア
ミヒャエル・ハネケ監督ジャン=ルイ・トランティニャン(ジョルジュ)エマニュエル・リヴァ(アンヌ)イザベル・ユペール(エヴァ)アレクサンドル・タロー(アレクサンドル)ウィリアム・シメル(ジョフ)ラモン・アジーレ(アパルトマン女管理人の夫)リタ・ブランコ(アパルトマン女管理人)カロル・フランク(看護婦)ディナーラ・ドルカーロワ(看護婦)ローラン・カペリュート(警察官)ジャン=ミシェル・モンロック(警察官)スザンヌ・シュミット(女の隣人)ダミアン・ジュイユロ(救急隊員)ワリッド・アフキール(救急隊員)
【解説】
第65回カンヌ国際映画祭で、最高賞にあたるパルムドールに輝いたヒューマン・ドラマ。長年にわたって連れ添ってきた老夫婦が、妻の病を発端に次々と押し寄せる試練に向き合い、その果てにある決断をする姿を映し出す。『ファニーゲーム』『白いリボン』の鬼才ミヒャエル・ハネケが、沈痛かつ重厚なタッチで追い詰められた老夫婦が見いだす究極の愛を浮き上がらせていく。『Z』『消される男』のジャン=ルイ・トランティニャン、『トリコロール/青の愛』のエマニュエル・リヴァと、フランスが誇るベテラン俳優が老夫婦を演じているのにも注目。
【あらすじ】
パリ在住の80代の夫婦、ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)。共に音楽教師で、娘はミュージシャンとして活躍と、充実した日々を送っていた。ある日、教え子が開くコンサートに出向いた2人だが、そこでアンヌが病で倒れてしまう。病院に緊急搬送され、かろうじて死だけは免れたものの、半身まひという重い後遺症が残ってしまう。家に帰りたいというアンヌの強い願いから、自宅で彼女の介護を始めるジョルジュ。しかし、少しずつアンヌの症状は悪化していき、ついに死を選びたいと考えるようになり……。(シネマトゥデイ)
【感想】
昨年度の話題作と言っていいでしょう。
カンヌ国際映画賞ではパルムドールを受賞、アカデミー賞でも作品賞にノミネートされて、外国語映画賞を獲得しました。
オープニングで、この夫婦に重大な問題があったことを観客は知らされます。
封鎖されている玄関ドアや、目張りされている寝室のドアを開けると、そこには花に飾られた死体がありました。
元音楽教師のジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)、一人娘(イザベル・ユペール)も結婚し、80歳を過ぎて、大きな悩みもなく、悠々自適の生活を過ごしていた。
アンヌ
ジョルジュ
アンヌの愛弟子のコンサートに行った次の朝、アンヌに異変が起こった。
発作を起こし、体が不自由になった。
病院から自宅療養となったアンヌは、「二度と病院には入れないで」とジョルジュに約束させる。
そこから、ジョルジュの介護の日々が始まった。
最初は介護人やアパートの管理人夫婦の協力もあり、順調に見えた。
しかし、アンヌの症状がさらに重くなって、ささいなことからジョルジュはアンヌに手を上げてしまった。
☆ネタバレ
このことが引き金となり、ジョルジュは人を遠ざけ、娘までも遠ざけてしまう。
一人娘のエヴァ
そして、ある日、アンヌを窒息死させてしまう結果となった。
そのあとの描き方が、とても抽象的なのですが、迷い込んだ鳩はアンヌの魂、ジョルジュがアンヌに促されてコンサートへと出かけていく姿は、ジョルジュがアンヌに導かれて天国へ旅立ったのだと解釈すれば、ジョルジュの魂は平安を得られたんだと、ほっと安心です。
そして、ラスト、両親のいなくなった家で佇む娘は、寂しそうだけど、満足そうにも見えました。
私も父親を見送り、母と一緒に暮らす身ですが、私自身も含めて老いの行く末にはとても興味があります。
アンヌとジョルジュ夫妻も、自分たちの人生の終わり方について、選べない中で最良のことを選んだと思いました。
アンヌは尊厳を求め、ジョルジュは現実に耐えながら、誠実に答えようとした。
と、私には見えました。
これを不幸と見るかどうかは、それぞれの死生観にもよるでしょうが、否定することはできないと思いました。
しみじみと問題提起してくる、よい作品でした。