マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

父のこころ

2014-03-29 14:20:16 | 映画ー劇場鑑賞

 

ー父のこころー

2014年 日本 89

 

監督=谷口正晃 キャスト=大塚まさじ(奥村賢一)・日永貴子(奥村家のお母さん)・古賀勇希(宏志)・上西愛理(恵美)・福本清三

 

【解説】

京都を舞台に一度は崩れてしまった家族の再出発を、大阪を拠点に活動するフォークシンガーである大塚まさじを主演に迎えて描く家族ドラマ。失踪(しっそう)した父親が家族のためではなく世話になった女性のお骨を実家に届けるために帰還、そんな中家族が向き合い、本音をぶつけ合うさまを映し出す。監督は、『時をかける少女』『シグナル~月曜日のルカ~』などの谷口正晃。伝統を残す京都のたたずまいに、家族だからこそもつれ合うしがらみなど、いつの世も変わらぬ町や家族の様子に考えさせられる。

 

【あらすじ】

9年前、仕事に失敗して姿を消した奥村家の主、賢一(大塚まさじ)が京都に戻っていると聞き、息子の宏志はつてをたどって会いにいく。しかし、父は家族との再会を果たすためでなく、世話になった女性のお骨をその人の家に届けるという目的で京都に帰ってきたのだった。それでも娘の恵美は父に結納に出席してほしいと告げ、母には何も知らせないまま、家族が9年ぶりに一堂に会すことになり……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

主演の大塚まさじさんは、1970年代にディランというフォークデュオで活躍されていたときからのファンで、夫が友達ということで家族ぐるみで親しくさせていただいています。

大塚さんが映画で主演されるということで、2月22日、撮影現場ともなった京都の元・立誠小学校で行われた記念ライブに行ってきました。

そのとき、予告編を見せていただいて、谷口監督と大塚さんのトークショーで、この作品へのなみなみならぬ熱意を感じたのですが、日本映画にありがちな暗い映画なんじゃないかなあという不安もありました。

 

残念ながら3月22日のオープニングには参加できず、ウィークデイにひとりで見てきました。

 

暗い映画という不安は、すぐに払拭されました。

音楽もいいし、テンポもいいし、セリフは少ないけど、京都弁が心地よく無駄かありませんでした。

よくねられた脚本だなあと思いました。

 

終始うつむきかげんの大塚さんですが、普段の大塚さんとは全く違う、スクリーンの中の奥村賢一さんそのものでした。

 

9年間家出をしていた父親が京都に戻っていると聞いた長男・宏志(古賀勇希)は、家族に内緒で父(大塚まさじ)に会いに行きます。

しかし、父は、家族に会いに来たのではなく、お世話になった女性が亡くなったので、そのお骨を実家に返しに来たのです。

しかし、その実家でもいい顔をされず、とりあえず返したものの、複雑な気持ちでいました。

 

宏志は妹・恵美(上西愛理)に連絡し、3人で会うことになった。

恵美は父を責めつつも、「もうすぐ結婚するが、結納式に参列して欲しい」という。

その許しを母にもらうため、9年ぶりの我が家に帰った父。

母はもちろん激怒するが、恵美の願いを受け入れ、結納式に臨む。

 

何事もなかったように和やかに結納式を終え、奥村家はまた4人家族に戻れるように感じた瞬間、父は思いがけないことを言い出したー。

 

☆ネタバレ

やはり、壊れた家族は元には戻れないと思いました。

この日舞台挨拶に来られていたお母さん役の日永貴子さんは、「あんなきついお母はんやったら、お父はんも逃げ出すわ、と言われます」とみんなを笑わせておられましたが、それほどの迫力でした。

幸せだった頃の家族の声のテープが流れますが、そのときも、お母さんが「みんなでハワイへ行きたいです。お父さん連れて行ってね」というと、お父さんは軽く「連れて行きます」と答えています。

お父さんは、少しいい格好をしたがる人だったのでしょう。

それが、仕事で失敗したときにお母さんに責められて居場所を失い、失踪してしまったんだなと思いました。

 

亡くなった女性についてはあまり語られていませんでしたが、私なりに想像してみました。

京都の老舗の長女に生まれたけど、当時盛んだった学生運動にのめり込み、親から勘当され、和歌山の自然農法をするところへたどり着いた人。

お酒を飲みながら実家の悪口をからっと言っていたというので、京都への思いはたくさんあったんだと思います。

それを汲んで、お父さんは実家へ預ける決心をしたと思うのですが、実家の両親はすでに無く、家を継いだ妹さんの割り切れない思いもあったようです。

 

このように、見終わったあとにいろいろ想像力が書き立てられる作品でした。

 

誰も悪人は出て来ないけど、幸せはひとりひとりが考えるしかないという、現代的な家族の問題も内包しています。

お父さんは、お母さんの仕事場をそっと見に行き、お母さんはこのままひとりでもやっていけると思ったのでしょう。

 

お母さんが餞別替わりに、お父さんの髪を切るシーンは感動的でした。

宏志とは新しい絆が生まれ、恵美も幸せを掴みました。

 

ラストはハッピーエンドではないけど、それぞれの旅立ちとして希望に満ちていたと思いました。

 

見終わってから誰かとおしゃべりしたくなる作品でした。

多くの人に見てもらいたい作品でした。

 

オススメです。

イラストのポスター