マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

ブラインドネス

2008-11-26 13:03:44 | 映画ー劇場鑑賞
ーブラインドネスーBLINDNESS
2008年 アメリカ
フェルナンド・メイレレス監督 ジョゼ・サラマーゴ原作 ジュリアン・ムーア(医者の妻)マーク・ラファロ(医者)アリシー・ブラガ(サングラスの娘)伊勢谷友介(最初に失明した男)木村佳乃(最初に失明した男の妻)ドン・マッケラー(泥棒)モーリー・チェイキン(会計士)ミッチェル・ナイ(少年)ダニー・グローヴァー(黒い眼帯の老人)ガエル・ガルシア・ベルナル(バーテンダー/第三病棟の王)

【解説】
『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレスが、ノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説を映画化した心理パニック・サスペンス。視界が真っ白になる伝染病がまん延する状況下で、人間の本性や社会の恐怖をあぶり出していく。出演は『ハンニバル』のジュリアン・ムーアをはじめ、日本からは伊勢谷友介と木村佳乃が参加するなど、国際色豊かなキャストが実現。サスペンスフルな展開と深遠なテーマで見せる注目の衝撃作。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
街の交差点に止まった車の中で、何の前ぶれもなく突然目が見えなくなった男(伊勢谷友介)がパニックに陥る。その後、男は検査を受けるが原因は一向にわからない。しかも彼に接触した者も次々と視界が白くなり、目が見えなくなっていった。そんな中、療養所と呼ばれる隔離病棟が設けられ、発症者は強制的に収容されるが……。(シネマトゥデイ)

【感想】
「シティ・オブ・ゴッド」に驚き、「ナイロビの蜂」に感動した私。
この作品も、カンヌ映画祭のオープニング映画として話題になったのを見て、とても楽しみにしていました。

またまた、お友達が試写会のチケットを下さって、見ることができました。
感謝!!


☆ネタバレ

突然交差点で視力を失った日本人男性(伊勢谷友介)。
パニックに陥り、親切な男が自宅まで車を運転してくれた。



という始まり方ですが、思い返すと、ここから映画のテーマは始まっていたのですね。
正体不明のウィルスが巻き起こすパニックの話ではなく、困っている人につけ込む悪党の方。
この人は、親切ごかしに近づいて、日本人から車を奪って逃走しました。

この時は、この人が悪党だからだと思いましたが、物語が進むにつれて、誰が悪党とか、言えなくなります。
悪が犯罪として存在するのは、社会の規範があるからです。

日本人男性に近づいた人は、みんな失明して行きます。
前述の悪党しかり、彼を診察した医者しかり、妻(木村佳乃)ももちろんです。

政府は、この急激な蔓延を防ぐため、発症した人を片っ端から療養所に送り込みました。
政府はパニック状態で、ただただ患者を隔離することしか考えず、そこから出て来る人を軍隊が銃で威嚇したり、あげくには射殺してしまうほどの混乱状態です。

こうして、社会と隔絶された療養所は無秩序の世界になってしまいました。
医者の妻(ジュリアン・ムーア)以外は目が見えない人々、しかも突然失明した人ばかりです。
ここまでは平等。
人は無秩序のなかで、どう行動するのか。

そう考えたら、この作品は実験映画の性格ももっているなあ、と思いました。

やがて現れる指導者?
リーダー?
キング?

キングって何なのか。
ゴッドって何なのか。
リーダーって何なのか。

 バーのバーテンだったのに、療養所では自らキングだと名乗る(ガエル・ガルシア・ベルナル)。

無秩序な世界では何が起こるかわからない。
もともと盲人だった人が優位性を誇示するとか、見えない閉ざされた社会でも、自分の価値観は変えられないこととかーキング(ガエル・ガルシア・ベルナル)が、食料を独占し、その対価としてまず要求したものは金品でした。療養所では何の役にも立たないのにー
知的で教養もある医者(マーク・ラファロ)が、屈辱に耐えられず、衝動的に女性と関係してしまうとか、やがて食料の対価に女性が差し出されるとか…
そして、最悪の殺人事件がおこり、放火から火事にー。

医者の妻は、キングへの反逆を決意し、グループの人々を連れて療養所を出ます。



しかし、外の世界も盲人で溢れ、無秩序に成り果てていました。
人々は残飯を漁り、見えない目を見開いて食べ物を奪い合っていました。

この映画は、いろんな比喩や示唆に富んでいると思いました。
突然の集団失明は単なるたとえに過ぎません。
聖書で言えば、ノアの方舟とか、バベルの塔に匹敵する出来事です。
おごった人間への神の怒りの象徴です。

問題は、突然陥った無秩序な世界で、人は何ができるのかということでしょう。

無秩序な世界とは、これから来ることが予想されている新型ウィルスによる病気が蔓延した世界かもしれない。

新しい戦争かもしれないし、世界大恐慌のようなものかもしれない。

人類の歴史はいままでも、幾度となく無秩序を乗り越えてきたし、いまもメイレレス監督の「シティオブゴッド」に描かれていたような貧困と暴力の街があるでしょうし、「ナイロビの蜂」で描かれた文明の届かない場所があるのでしょう。

平和の文明の恩恵にどっぷりの私たちは、他人事の様に、気がつかないだけです。

メイレレス監督に、平和な日常のすぐ隣り合わせにある無秩序の世界を見せられた観客たち。
人間って、生まれながらに悪なのかなあ?
想像するだけでも悲しい恐ろしい世界だけど、それも人間の本質の一部だと冷静に捉えて、この作品の様に、答えを探す努力も必要なのだと思いました。

ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢

2008-11-26 12:45:00 | 映画ー劇場鑑賞
ーブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢ー EVERY LITTLE STEP
2008年 アメリカ
ジェームズ・D・スターン監督

【解説】
ブロードウェイの伝説的ミュージカル「コーラスライン」再演を前に行なわれた、8か月間に渡る出演者オーディションに密着したドキュメンタリー。親友と一つの役を争う日本人ダンサーや、審査員に涙を流させるほど魅了する者など、栄光と挫折のリアルなドラマが繰り広げられる。またこの物語のスタートとなった、貴重なカセットテープや当時の出演者たちの証言も公開。初演時の衝撃や熱狂を知ることができるとともに、現在のダンサーたちの熱い思いから、この舞台に上がる夢の大きさが存分に伝わってくる。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
1975年初演の「コーラスライン」が再演されることとなり、19人のキャストを求め3千人ものダンサーたちがオーディションに集まった。ダンサーたちの半生を基に描かれたこのミュージカルに、誰もが「これはわたしの物語」とキャリアをかけて挑戦。4か月後の2次選考では演技や歌の審査もさらに激しさを増し、ついに運命となるキャスト発表の日が訪れる。(シネマトゥデイ)

【感想】
演出家マイケル・ベネットがいかに「コーラスライン」という作品を作っていったのかーベネットの声が入ったテープが流れます。
「ダンサーをたくさん集めてインタビューを行った。これをもとにミュージカルを作りたいんだ」
彼が情熱を傾けて創り上げたミュージカルは、1975年から90年にかけて、ブロードウェイで記録的ロングランとなりました。

この映画は、「コーラスライン」を2006年にブロードウェイで再演するために行われたオーディションの実録です。

「コーラスライン」は、日本でも劇団四季が上演して、大評判でしたが、私は残念ながら見ていません。
「コーラスライン」もオーディションを受けるダンサーの様子をミュージカルにしたものですが、この映画のオーディションはまさにそのもの。
オーディションを受ける人たちと、セリフが重なり合って、共鳴していきます。

書類選考をくぐって、最初に面接を受けてから、最終選考まで8ヶ月。

その間にも、ダンサーたちにはひとりひとりの生活があって、日常があって、人生があります。

それでも、ひとつの役を得るために、レッスンを重ね、精進し、努力をする様子が映し出されます。

選考する側にも、この作品に対する、ひとりひとりの思い入れがあり、レッスンや振り付けを指導しながら、結果を見守ります。

一番感動したのは、ポールというゲイの役を演じた人の演技。
あまり真に迫っているものですから、選考する側の人たちも泣いていました。
演技ってなんだろう。
この短時間の間に、人の心の中にいとも簡単に入り込んで、揺すぶって泣かせてしまう。
ほんとうに不思議です。

重要な役にノミネートされた人たちは、いずれもキャリアも名前もある人たちのようでした。
素人目には甲乙付け難くても、合否が非情に告げられます。

合格を受け取った人の涙、真珠のように清らかで美しいです。

でも、不合格になった人も決して落ち込むことはありません。
この役に自分は合わなかったけれども、いつか自分が主役になれる役があるに違いない。
その日を信じて、さらに技術を磨いて行くのです。

そのストイックな生き方、それがブロードウェイなのでしょう。
そういう、人々の真摯な努力の積み重ねがあって、世界のブロードウェィとして君臨し続けているのだと思いました。

沖縄出身の女性が合格したのもうれしいことでした。
すごいがんばりやさんですね。
彼女の英語の発音に、不安を持つ選考委員もいたのに、それをはねとばすエネルギッシュな演技でした。

テラビシアにかける橋

2008-11-26 12:28:19 | 映画ーDVD
ーテラビシアにかける橋ーBRIDGE TO TERABITHIA
2007年 アメリカ 
ガボア・クスポ監督 キャサリン・パターソン原作 
ジョシュ・ハッチャーソン(ジェス・アーロンズ)アンナソフィア・ロブ(レスリー・バーク)ズーイー・デシャネル(エドマンズ先生)ロバート・パトリック(ジャック・アーロンズ)ベイリー・マディソン(メイベル・アーロンズ)ケイト・バトラー(メリー・アーロンズ)デヴォン・ウッド(ブレンダ・アーロンズ)エマ・フェントン(エリー・アーロンズ)グレイス・ブラニガン(ジョイス・アーロンズ)レイサム・ゲインズ(ビル・バーク)ジュディ・マッキントッシュ(ジュディ・バーク)

【解説】
国際アンデルセン賞を受賞したキャサリン・パターソンの同名ベストセラー児童小説を映画化。いじめられっ子の少年と風変わりな少女が空想の王国テラビシアを作り上げ、友情を育んでいく姿を描く。監督はアニメ界出身のガボア・クスポ。主人公の少年少女を『ザスーラ』のジョシュ・ハッチャーソンと『チャーリーとチョコレート工場』のアナソフィア・ロブが演じる。CG技術を駆使して描いた子どもたちの空想世界と、涙を誘う感動のストーリーが見どころ。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
女兄弟ばかりの貧しい家庭で育った小学5年生のジェス(ジョシュ・ハッチャーソン)と、引っ越してきたばかりの個性的な少女レスリー(アナソフィア・ロブ)。学校を牛耳るいじめっ子のターゲットにされてばかりの2人はやがて親友同士となり、近所の森に美しい空想上の王国“テラビシア”を作る。(シネマトゥデイ)

【感想】
もっと、異世界を描いたファンタジー映画だと思っていました。

でも、この作品は、子供のの想像力の持つ意味と大切さを描いている作品でした。

貧しい家庭、父は働き詰めの上に、兄弟でたった一人の男であるジェス(ジョシュ・ハッチャーソン)に仕事をどんどん言いつける。
母からは女物のお古を使うように命じられる。
姉二人にも抑えつけられ、妹の面倒を押し付けられ、母も赤ちゃんの世話と家事で精一杯で、ジェスにかまう暇はない。

学校ではいじめられっ子で、ジェスの唯一の楽しみは、絵を描くことだった。

絵を描いて想像の世界に閉じこもっているジェス。

そこに転校生のレスリーが現れた。
レスリーは、芸術家の両親の元で自由な独特の感性を持った女の子。
彼女に誘われて、二人は川の向こうの森に入っていった。
レスリーが「心の目を開けてみてごらん」という。
ジェスの目の前に魔法の国が現れ、二人は想像の王国「テラビシア」を創り上げた。

大人になったら忘れてしまう、トム・ソーヤーやハックル・ベリーフィンが作り出す冒険の世界。
でも、それは、現実を受け入れて大人になって行くために必要な生きる力や強さを教えてくれる世界でもあったのですね。

未知の世界に飛び込むための勇気や、闘う強さや、仲間を思いやる気持ちなど。
大人になっても必要な生きる力。

ジェスが悲しみを乗り越えて、テラビシアの王になって行く姿に、感動を覚えました。
愛と寛容を学んだんだね。

大人にも、忘れていたものを思い出させてくれるいい作品でした。