“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

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■科学技術書・理工学書ブックレビュー■「99.9%は仮説」(竹内薫著/光文社新書)

2012-05-15 10:46:42 |    科学技術全般

書名:99.9%は仮説―思いこみで判断しないための考え方―

著者:竹内薫

出版社:光文社

発行日:2006年2月20日初版第1刷発行

目次:プロローグ 飛行機はなぜ飛ぶのか? 実はよくわかっていない
    第1章 世界は仮説でできている
    第2章 自分の頭のなかの仮説に気づく
    第3章 仮説は180度くつがえる
    第4章 仮説と真理は切ない関係
    第5章 「大仮説」はありえる世界
    第6章 仮説をはずして考える
    第7章 相対的にものごとをみる
    エピローグ すべては仮説にはじまり、仮説におわる

 この竹内薫著「99.9%は仮説―思いこみで判断しないための考え方―」(光文社新書)は、発売当時話題となり、マスコミでも取り上げらるケースが多かったので、お読みになった方も多かろう。量子論だとか、超ひも理論だとかの最新の科学技術にまつわるテーマは、一般の市民にとって、直接触れることのできない世界の話であり、かといって専門技術書を読んでも難解で分りづらい。

 そんなこともあり、科学技術の話は専門家にまかせておけばいい、といったことに落ち着くのが関の山だ。しかし、原子力発電や地球温暖化の問題が現実になってくると一般市民だからといって、知らないで済む話でもなくなってきつつあるのが現代だ。そこで一般市民の目線で、専門の科学技術者はいったいどんな思考方法をしているのかを、やさしく解き明かしたが同書である。

 最初のプロローグで「飛行機はなぜ飛ぶのか? 実はよくわかっていない」からしてぎょっとさせられる。何時も乗っている旅客機の飛行原理が実は専門技術者にもよく分っていないらしいのだ、と。著者は、天才物理学者のリチャード・ファインマンの言葉「科学はすべて近似にすぎない」を紹介し、「科学と真理は、近づくことはできてもけっして重なることはできない、ある意味とても切ない関係なんです」「そもそも科学革命というのは、古い仮説を捨てて新しい仮説に引っ越す作業にほかならないのです」と言う。

 アインシュタインは、当時信じられたいた“エーテル仮説”を否定し、“相対性理論”を打ち立てた。ところが現代に入ると、今度はエーテルに代わり、真空を満たす“ヒッグス場”が新たに登場し、最近になりその存在が実証されつつある。そんな摩訶不思議な科学技術の世界を一度は覗いてみたいと思う人にとって、同書は最適な書と言える。(勝 未来)


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