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●科学技術ニュース●産総研など、南海トラフの深海底堆積物で生きるメタン生成微生物の特徴を解明しメタンハイドレート成因解明の手掛かり

2022-02-17 09:33:08 |    宇宙・地球
 産業技術総合研究所(産総研)地質調査総合センター 片山 泰樹 主任研究員、吉岡 秀佳 研究グループ長、金子 雅紀 主任研究員、坂田 将 招聘研究員、高橋 浩 主任研究員は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、量子科学技術研究開発機構と共同で、メタンハイドレート(MH)を埋蔵する東部南海トラフの海底堆積物から、多様な生きたメタン生成菌を培養することに成功し、これらの菌の性質を明らかにした。

 同時に、堆積物表層からMH濃集帯までのメタン生成ポテンシャルの深度プロファイルを明らかにし、メタン生成菌の生育温度がメタン生成ポテンシャルの重要な要素であることを実験的に証明した。

 南海トラフに埋蔵されているMHは微生物活動によって生成されたメタンに由来すると考えられていることから、同研究による発見により深海底で起こり得る微生物によるメタン生成プロセスの条件の一端が明らかになったことでMH形成過程の解明に近づいた。

 今回、東部南海トラフのコア堆積物試料について、ラジオトレーサー法を用いて、海底表層からMH濃集帯までの範囲において、微生物がどの堆積物深度で、どの程度のメタンを生成し得るのかを調査し、約5年の培養実験を経て、計10株(7属8種)のメタン生成菌を得ることに成功した。

 これまでMHは、ガスの同位体比分析などからメタン生成菌が生成するメタンに由来すると考えられてきた。しかし、MHを埋蔵する海底堆積物から、実際に生きているメタン生成菌の証拠はほとんど得られていなかった。同発見により、系統的・代謝機能的にみて、従来考えられていたよりも多様なメタン生成菌がMH堆積物の中で生きて存在することが示された。得られたメタン生成菌のうちのいくつかは、現場の深海底堆積物環境において優占して生息するメタン生成菌種であった。

 従来、海底堆積物において水素と二酸化炭素からメタンが生成する経路が注目されていたが、この経路に加え、従来見過ごされていたメタノールからメタンが生成する経路も、重要であることを示唆する結果が得られた。この経路は、今後メタン生成ポテンシャルをより正確に評価するための新たな研究対象として位置づけられる。

 今後はメタン生成菌株の培養実験の結果に基づいて、海底堆積物におけるメタン生成プロセスの正確なモデルを組み立て、メタンが海底環境でどのように集積してMHを形成するのかをシミュレーションモデルに基づき評価する。MHの形成条件を明らかにすることで、微生物起源の天然ガス資源の探鉱や資源量の評価に役立つ。<産業技術総合研究所(産総研)>
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