“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「ウイルス学者さん、うちの国ヤバいので来てください。」(古瀬祐気著/中央公論新社)

2024-01-26 09:54:36 |    生物・医学



<新刊情報>



書名:ウイルス学者さん、うちの国ヤバいので来てください。

著者:古瀬祐気

発行:中央公論新社(中公新書ラクレ)

 地元の医者は逃げ、インフラは停まり、遺体が道に転がる中、僕はアフリカに派遣された――引継ぎゼロ、報酬1ドルもなんのその!ウイルスでパニックになった世界を救う感染症専門家のドキドキ・アウトブレイク奮闘記。
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●科学技術ニュース●NTTと日本大学、世界初、通信波長の光に共鳴する電子とギガヘルツ超音波のハイブリッド状態を実現

2024-01-26 09:53:32 |    電気・電子工学
 NTTと日本大学は、通信波長の光に共鳴する希土類元素を添加した超音波素子を作製することにより、数ミリ秒の長い寿命を持つ光励起電子とギガヘルツ超音波のハイブリッド状態を生成することに成功した。

 同成果により、低電圧な超音波励起を用いたコヒーレンスの高い希土類電子の制御が可能となるため、将来的な省エネ量子光メモリ素子への応用が期待される。
 
 今回NTTと日本大学は、Erを添加した結晶基板上に超音波の一種である表面弾性波を生成する素子を作製することにより、約2GHzの振動歪を結晶表面に集中させ、Erの光共鳴周波数を高速変調することに成功した。

 この変調速度は励起電子の寿命よりも速く、電子が共鳴線幅を上回る周波数で変調されるため、通信波長帯に共鳴する電子とギガヘルツ超音波のハイブリッド状態が生み出される。

 この状態を用いることにより、コヒーレンスの高いEr励起電子の光応答を超音波で低電圧制御することができるため、将来的な省エネ量子光メモリ素子への応用が期待される。

 今回作製した超音波素子には、同位体純化されたErが使用されている。電子と超音波のハイブリッド状態を実現するためには、Erの共鳴線幅を上回る周波数でEr電子準位を高速変調する必要があるため、なるべく細い線幅を与えるErを用いる必要がある。

 Erには共鳴周波数が僅かに異なる複数の同位体が存在するため、一般的に得られる共鳴線幅は数GHz程度の広がりを見せるが、同位体純化したErの利用により、共鳴線幅は500MHzにまで狭線化される。

 これに2GHzの超音波を作用させることにより、電子と超音波のハイブリッド状態を実現した。

 このような狭い共鳴線幅の光吸収を評価するためには、実験に使用するレーザー光の周波数を高精度に安定化する必要がある。

 NTTと日本大学は、光周波数コム(周波数上で櫛のように多数の等間隔なピークを持ったレーザー光)を利用したレーザー光の周波数安定化機構を共同開発することにより、従来に比べて3桁ほど周波数精度の高い実験を可能とした。

 今回の実験では、振動歪が結晶表面付近に集中する表面弾性波を用いているが、歪の大きさが表面からの深さ位置に依存するため、ハイブリッドの程度が位置によって異なる。

 今後、NTTと日本大学は、最表面のみにErを添加した材料の利用や、最表面のErだけ選択的に光アクセスできるような構造を導入することにより、ハイブリッド状態の均一性向上に取り組む。

 ハイブリッド状態の均一性と制御性を高めることにより、通信波長帯で動作する省エネ量子光メモリ素子の実現と長距離量子通信への応用をめざす。<NTT>
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●科学技術ニュース●中央大学など、ナノ科学×情報工学によって非破壊検査技術の壁を突破  

2024-01-26 09:53:04 |    化学
 中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科の李 恒助教、河野 行雄教授、木下 祐哉大学院生(理工学研究科 電気電子情報通信工学専攻・博士前期課程2年)、国立情報学研究所(NII)・コンテンツ科学研究系の佐藤 いまり教授、Zhenyu Zhou研究員(研究当時)らを中心とする研究チームは、中央大学グループが独自に開発した「多機能な光-電磁波撮像デバイス・システム」とNII グループのコンピュータビジョンの手法で画像データから三次元立体的に構造を復元する技術を有機的に組み合わせることで、非破壊で検査物の内部材質と内部構造をより確実に推定する新たな検査技術を創出した。
 
 同研究では、日本発の先端ナノ材料:カーボンナノチューブ(CNT)をセンサに用いた中央大学グループ独自の材質同定型デバイス・システムに対して、対象物の影(シルエット)の重ね合わせから外観を推定するNIIグループの構造復元手法を導入することで、品質評価の分野にブレークスルーをもたらす新たな非破壊検査技術を創出した。

 これら要素技術は、工業・日用品の製造流通において忠実な再現度の品質管理の実現につながると考えられる。

 光-電磁波計測が非破壊検査を主導する中、電波と可視光の間のミリ波(MMW)・テラヘルツ波(THz)・赤外線(IR)帯域が注目されている。

 これらの波長は、電波由来の物体を通り抜ける透過性と可視光由来の直進性を両立し、ヒトの眼では見えないモノの内部を可視化できる。

 さらに、非金属材料を中心に波長毎に透過率がさまざまに変化することから、広帯域かつ多波長なMMW-IR計測により材質同定につながる。

 このような背景の下、同帯域での検査デバイス・システムの研究開発は李助教らを含め世界中で盛んに行われている。
 
 それらの代表例であるテラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)やフーリエ変換型赤外分光法(FTIR)等の分光装置は、食品・日用品・樹脂製品といった品質評価に活用されている。
 
 一方で李助教らは独自にCNT型のMMW-IRセンサの設計・作製に着手し、波及効果として機能的な非破壊撮像手法を確立してきた。

 食品ラップのような薄さ・柔らかさ・伸縮性が特徴で、一般的な平面視野の撮像素子(いわゆるカメラ)では死角となる湾曲検体(例えば、ガス/水道管、飲料ボトル等)の側面・裏面へのセンサの貼り付けによって360°視野の全方位計測が可能になる。
 
 しかし、分光計測やCNTセンサを含め、MMW-IR計測の構造復元への拡張は不十分と言える。

 材質同定が品質評価において重要であるという前提に加え、気温や湿度の外因による検体全体または局所部位の変形や、内部の特定材質の異常拡大といったケースを捉えながら構造を復元することも検査項目として不可欠。

 構造復元技術としては光-電磁波撮像時の反射や散乱の信号強度・時間遅れ・位相ずれの光学情報を、座標や角度という空間情報とひも付けるコンピュータビジョン(CV)手法が代表的。

 一方で従来のCVは美術映像技術向けの外観復元という可視光での利用が中心であり、モノの内部理解を志向するMMW-IR帯への拡張は依然として限定的。

 これら材質同定・構造復元双方の課題解決、そして相乗効果の新規創出に向けて、同研究チームは、CVの観点では未踏領域と言えるMMW-IR計測に対してMMW-IR帯域の特性を最大限に活かすCNTセンサによる広帯域・多波長撮像を通じて、両者の融合に取り組んだ。<国立情報学研究所(NII)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「機械材料学<第2版>」(荘司郁夫、小山真司、井上雅博、山内 啓、安藤哲也著/丸善出版)

2024-01-26 09:52:15 |    機械工学



<新刊情報>



書名:機械材料学<第2版>

著者:荘司郁夫、小山真司、井上雅博、山内 啓、安藤哲也

発行:丸善出版

 航空機から自動車、ロボット、電子機器まで、機械や装置をつくるために必須の「機械材料学」を学ぶための教科書。高度情報化社会ともよばれる昨今、機械材料に求められる要求はより高度になり、鉄鋼を中心とした金属材料のみではなく、高分子材料、無機材料、複合材料を学ぶことがこれからの技術者・研究者には求められる。そこで同書はこれからの学習者にとって最良の教科書となるよう書かれた。新しい知見を取り入れながら基礎から丁寧に、様々な材料をバランスよく解説。同時に、現役の技術者・研究者にとっても基礎を即座に復習できる使い勝手の良い一冊である。内容は機械工学科の通年の講義に相当し、同書前半で機械材料の基礎事項を、後半で各種材料に特有な性質とそのメカニズムを学ぶことができる。また第2版では、材料の腐食と防食に関する内容を追加。豊富な図版でわかりやすく、実務への応用も意識した、これからの「機械材料学」に役立つ教科書。
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