“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「科学文明の起源」(ジェイムズ・ポスケット著/東洋経済新報社)

2024-01-17 09:39:57 |    科学技術全般



<新刊情報>



書名:科学文明の起源~近代世界を生んだグローバルな科学の歴史~

著者:ジェイムズ・ポスケット

訳者:水谷 淳

発行:東洋経済新報社

 ヨーロッパ中心の科学史を覆す!科学革命は大陸を越えた文化交流と、古今東西の知られざる科学者のたゆまぬ努力によってもたらされた。現代世界の見方を変える、かつてない視点で描く近代科学の発達史。コペルニクスやガリレイ、ニュートン、ダーウィン、アインシュタインといった科学者の名前は、誰もが知っている。そして、近代科学は16世紀から18世紀までにヨーロッパで誕生し、19世紀の進化論や20世紀の宇宙物理学も、ヨーロッパだけで築かれたとされている。しかし、科学技術史が専門のウォーリック大学准教授、ジェイムズ・ポスケットによれば、このストーリーは「でっち上げ」であり、近代科学の発展にはアメリカやアジア、アフリカなど、世界中の人々が著しい貢献を果たしたという。科学の未来は、グローバリゼーションとナショナリズムという2つの力の中間の道を見つけられるかどうかに懸かっている。政治やイデオロギーによって書き換えられてしまった科学の歴史を明らかにし、科学発展のグローバルな過去をつまびらかにすることで、科学の未来について考えさせる書。
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●科学技術ニュース●三菱電機など、液体合成燃料製造に向けた「SOEC共電解実用化の研究開発」を開始

2024-01-17 09:39:18 |    ★炭素ニュース★
 電力中央研究所、日本特殊陶業、東京工業大学、三菱電機は、二酸化炭素(CO2)を原料にした液体合成燃料の高効率な製造を目指し、SOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell:固体酸化物形電解セル)共電解の実用化に関する研究開発を 2023年12月20日に開始した。

 同研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発(JPNP16002)/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/液体燃料へのCO2 利用技術開発/次世代 FT 反応と液体合成燃料一貫製造プロセスに関する研究開発」において追加公募した「SOEC 共電解実用化の研究開発」に採択されたもの。

 CO2 を原料とした液体合成燃料は、ガソリンや軽油、灯油、ジェット燃料など、さまざまな燃料に転換できるため、燃料を取り扱う既存の石油サプライチェーンを継続して活用することができる。

 また、燃料の利用によって発生したCO2から再び液体合成燃料を製造できることから、カーボンリサイクルの有効な手段として注目されている。

 一方で、液体合成燃料の普及に向けては、生産効率の低さやコストの高さなどが課題となっている。

 液体合成燃料の製造方法の一つとして、水素(H2)と一酸化炭素(CO)の合成ガスから触媒反応を用いて液体炭化水素を生成する FT 合成(Fischer-Tropsch<フィッシャー・トロプシュ>反応により一酸化炭素と水素から炭化水素を合成する技術)が注目されているが、高効率化と低コスト化に向けては、必要となる合成ガス(H2と CO)の生成効率の向上が求められている。

 同研究開発で取り組むSOEC共電解は、水蒸気(H2O)とCO2を電気分解してH2とCOを生成する技術であり、合成ガスの生成の大幅な効率化が期待されている。

 現在、先行するNEDO事業では SOEC共電解とFT合成を組み合わせた高効率で低コストな液体合成燃料の一貫製造プロセスを構築し、実用化を目指す研究が進められている。

 今後、4者はそれぞれに保有するSOEC共電解に関する技術を結集し、共電解システムの高効率化や大容量化、信頼性向上に向けた研究開発に取り組むとともに、先行する NEDO 事業に参画し、液体合成燃料一貫製造プロセスに関する研究開発に取り組んでいる石油エネルギー技術センター、産業技術総合研究所とも連携し、FT 合成を含めた液体合成燃料一貫製造プロセスの構築に関する技術実証に向けて研究開発を進めていく。同研究開発により、カーボンリサイクルを通じて脱炭素社会の実現に貢献する。<三菱電機>
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●科学技術ニュース●国立極地研究所など、アデリーペンギンが互いに行動を調節しながら群れを維持する様子を明らかに

2024-01-17 09:38:42 |    生物・医学
 今木俊貴(総合研究大学院大学・複合科学研究科極域科学専攻・5年一貫制博士課程2年)、國分亙彦 助教(総合研究大学院大学 / 国立極地研究所・生物圏研究グループ)、塩見こずえ 助教(東北大学・学際科学フロンティア研究所)、高橋晃周 教授(総合研究大学院大学 / 国立極地研究所・生物圏研究グループ)は、アデリーペンギンが互いに行動を調節しながら群れを維持する様子を明らかにした。

 近年バイオロギングの手法によって、動物の個体の行動が詳細に追跡できるようになったが、群れを維持するための個体同士の相互作用については未だに研究が進んでいない。

 同研究では、営巣地から海へ移動するアデリーペンギンの群れの複数個体の行動をバイオロギング手法によって記録した。

 得られた移動経路や行動の記録を詳細に解析することで、ペンギンが休息のタイミングを互いに調節しあうことで移動速度を同調させ、群れを維持し続けることを明らかにした。

 これらの結果は、ペンギンにおける群れの機能を明らかにする上で重要な知見。

 同研究では、抱卵期のペンギンにGPSや加速度の行動記録計を取り付け、営巣地から約40km離れた海氷縁まで移動する間の14個体から記録を取得し、そのうち3つグループの中にいた計7個体のペンギンの行動を調べた。

 同じグループにいる個体は、約40kmの移動中、平均17時間に渡って互いに移動速度を同調させて群れを維持し続けていた。

 さらに、移動速度の同調には互いの休息のタイミングを合わせることが重要であり、グループの中での先頭個体や休息を開始する個体は頻繁に入れ替わることがわかった。

 これらの結果は、長距離を移動中のペンギンが互いに行動を調節しあって群れを維持していることを示している。

 このような群れの維持の仕組みは一部の個体がリーダーになる霊長類の群れとは顕著に異なっており、ペンギンの群れがゆるやかな個体間の関係によって形成されていることを示唆する点で重要。

 今後は、より多くの個体を同時に追跡することにより、群れの形成がペンギンにどのような利益をもたらしているのか、例えば効率的な餌場の発見に寄与するかなどを検証したいと考えている。<国立極地研究所>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「コンパクト建築設計資料集成<第4版>」(一般社団法人 日本建築学会編/丸善出版)

2024-01-17 09:38:18 |    建築・土木



<新刊情報>



書名:コンパクト建築設計資料集成<第4版>

編者:一般社団法人 日本建築学会

発行:丸善出版

 時代の変化をとらえて19年ぶりの全面改訂。同書は学生を主たる対象とし、建築製図の補助資料、建築計画の講義の教材として、膨大な建築設計資料から情報の抽出・編成を行った。情報ネットワークを通じて多様な情報が容易に入手できる時代において、建築の押さえるべき基本、すなわち変わらないところ、変えてよいところ、変えねばならないところ等を判断する基礎を示すもの。今回の改訂においては、共生、多様性、少子高齢化、老朽化、デジタル化、施設マネジメント、災害復興、持続可能性、低炭素化社会などのキーワードをとらえた。急速な変化の中で、社会的かつ建築的な課題を建築計画・設計としてどう受け止めるのか。従来の建物種別を超えて新たな建築像をどう描くのか。「建築デザインの基礎」「アクティビティと空間」「プログラムと建築」の3部構成で、その発想の手がかりを示す。
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