“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「遺伝子とは何か?」(中屋敷 均著/講談社)

2022-05-27 09:39:31 |    生物・医学



<新刊情報>



書名:遺伝子とは何か?~現代生命科学の新たな謎~

著者:中屋敷 均

発行:講談社(ブルーバックス)

 2003年にヒトゲノムの解読が完了したが、これで「遺伝子」がわかったのかというとそうではない。DNAにコードされている遺伝子の構成が判明したことで、ヒトゲノムの複雑さがかえって判明してきた。また、DNAに遺伝子はコードされているが、それらは非コード配列やそのコピーである多様なRNAなどによって、たくみに制御されていることがわかってきた。「遺伝子」とは、それらの制御機構を抜きにしては語れないし、「遺伝子」の概念は新たなステージで考える必要があるのではないだろうか?同書では、メンデルの実験から、ワトソン、クリックによる二重らせんモデルの発表など、「遺伝子」をめぐる科学史を追いかけながら、「遺伝子」の正体を問い続ける。ゲノムの解読は終わりではなく、「遺伝子とは何か?」という、古くて新しい問いとその答えをめぐる研究の始まりであることを明らかにする野心的な一冊。
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●科学技術ニュース●NTTと三菱重工、光イジングマシンLASOLVを活用し大型プロジェクトのリソース計画の工数を大幅削減

2022-05-27 09:39:02 |    情報工学
 NTTと三菱重工業は、光イジングマシンLASOLVを活用し、熟練者に頼っていたプロジェクト人員計画を自動化する共同実証を実施し、人員計画の作成に要する工数を大幅に削減できる可能性を確認した。

 熟練者によるリソース計画が必要な大型プロジェクトの一つとしてプラント点検工事がある。プラント点検工事とは、国内外に納入した発電プラント等の構成機器の健全性を確認し、必要な部品交換や補修を定期的に行う工事であり、さまざまな検査や補修スキルをもった作業員を複数の現地に派遣する必要がある。

 そのため、人員計画では現地間の移動や要求されるスキルと人数、さらに連続勤務日数や残業時間などの制約条件を満足させることが求められる。従来は、熟練の計画者が経験に基づいて人員計画を作成しており、計画に多大な時間を要することやベテランのスキルに頼っていることが課題となっていた。

 NTTと三菱重工は、2014年に「社会インフラ×ICT」に関する研究開発連携に関する基本契約を締結し、NTTの研究所が持つICT(情報通信技術分野)の研究開発成果を三菱重工のエネルギー・環境、交通・輸送等の社会インフラ関連製品や国内外の工場・建設現場等に適用し、新たな価値創造をめざす取り組みの一つとして、光イジングマシンLASOLVの実用化に向けた共同プロジェクトを2018年3月より開始した。

 三菱重工で実業務の工事日程、要求スキル・人数、派遣候補となる作業員の情報、現地サイト間の移動時間等に関するデータを準備し、これらのデータに対し、NTTにて制約条件を満足する人員計画を探索する5万ビット規模のイジングモデルを構築した。

 今回の実証では、点検対象プラント数26カ所、工事数29件、作業員141人、日数64日間の期間で、保有スキルや連続勤務日数、勤務時間上限、プラント間移動日数、休暇予定といった主要な制約条件を満たす人員計画の解候補を、光イジングマシンLASOLVにより導出した。

 その結果、従来は人手で1カ月程度かけて作成していた人員計画を非常に短い時間で得られることを確認し、LASOLVの活用により人員計画作成に要する工数を大幅に削減できる可能性を示した。同成果は人員以外のリソース計画立案にも適用可能と考えられる。

 NTTと三菱重工は、実用化をめざし、システム化など実業務への適用検証を進めるとともに、カーボンニュートラルやエナジートランジションに向けた重要な事業課題の解決に関する取り組みを進めていく。<三菱重工>
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●科学技術ニュース●大阪大学と東京工業大学、世界最高性能のスピントロニクス界面マルチフェロイク構造を実証

2022-05-27 09:38:19 |    電気・電子工学
 大阪大学 大学院基礎工学研究科の藤井 竣平氏(当時 大学院博士前期課程)、宇佐見 喬政 特任研究員、浜屋 宏平 教授、同大学 大学院工学研究科の白土 優准 教授、東京工業大学 物質理工学院の合田 義弘 准教授らの共同研究グループは、スピントロニクスデバイスにおける新たな電圧情報書き込み技術のために、高性能なスピントロニクス界面マルチフェロイク構造を開発し、世界最高レベルの性能指標(磁気電気結合係数)を達成するとともに、電界印加による不揮発メモリー状態の繰り返しスイッチングを実証した。

 次世代の半導体不揮発メモリーとして注目されているSTT-MRAMなどのスピントロニクスメモリーデバイスは、情報書き込み時に電流を印加しているため、書き込み時のエネルギー消費電力が大きいことが課題となっている。そこで、低消費電力書き込み方式として、さまざまな電界印加方式の技術開発が進められている。中でも最近、強磁性体(磁石)と圧電体の2層から構成される界面マルチフェロイク構造を利用した電界印加方式が注目されている。これは、圧電歪みを強磁性体に伝播させることで、強磁性体の磁化方向を制御する手法。

 次世代のスピントロニクスデバイスにおける低消費電力情報書き込み技術への応用を目指すには、より小さな電圧で磁化方向を制御することができる界面マルチフェロイク材料の開発が重要であり、世界中で材料開発が行われている。

 界面マルチフェロイク材料の性能指標は、磁気電気結合係数と呼ばれている。この値が大きいほど、小さな電界で大きな磁化の変化が発現することを意味しており、実用化のためには10~5秒毎メートルを超えることが必要とされている。しかし、これまで強磁性体としてスピン偏極率の高い物質を用いた場合、磁気電気結合係数は10~5秒毎メートル未満にとどまっており、この壁を超えることは非常に困難であった。

 同研究では、強磁性体として高いスピン偏極率を持つことで知られるCo系ホイスラー合金磁石の一種であるCo2FeSiと、高い圧電性能を持つ圧電体の一種であるPb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)を組み合わせた新しい界面マルチフェロイク構造を高品質に作製し、実用化の壁として存在していた10~5秒毎メートル台の磁気電気結合係数を世界で初めて実証した。

 さらに、電界印加による不揮発メモリー状態の繰り返しスイッチングを実証した。

 近年IoT技術・AI技術がますます進展する中、半導体素子の消費電力が爆発的に増加することが予想されている。同成果は、不揮発メモリー素子として期待されるMRAMを含む全てのスピントロニクス素子における低消費電力な磁化方向制御技術として期待されるため、「新たな電圧情報書き込み技術」の可能性を提示するもの。<科学技術振興機構(JST)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「2021年版 電気事業便覧」(経済産業省資源エネルギー庁編/経済産業調査会)

2022-05-27 09:38:00 |    電気・電子工学



<新刊情報>



書名:2021年版 電気事業便覧

編者:経済産業省資源エネルギー庁 

発行:経済産業調査会
 
 同書は、日本の電気事業の現状と累年的推移の概要を統計的に集録。旧一般電気事業者のみならず、新規参入事業者や卸電力取引所の動向も掲載。全面自由化以降の電気事業を取り巻く状況を俯瞰できる一冊。
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