企業統治

外国人社長の解任問題から火が付いたオリンパスの企業買収に絡んでの
疑惑は新たな展開を迎えました。買収に絡んだ取引は有価証券の含み損
の先送りに利用されていたことが会社側の調査で判明したと昨日報道さ
れました。企業スキャンダルで最も株式市場が懸念している粉飾決算の
疑惑も出てきました。上場間もない新興企業の粉飾決算は過去にもいく
つか出てきましたが、歴史ある上場企業でしかも売り上げが八千億円を
超える大手精密機器メーカーで起きた事実は深刻です。

粉飾決算が事実だとすると今回の企業買収に絡んで「違法、不正な事実
はない」とわずか２週間前に発言していた高山新社長がこの難局を乗り
越え再生するトップとして相応しいのかどうか、やや意地悪な見方です
が菊川元会長がこの件の隠ぺいを図るために都合の良い人物を社長に据
えたように思えてならないのです。また過去の決算が適正であったと承
認した監査報告をした公認会計士事務所にも監査責任が出てくるでしょ
う。投資家は企業の発表する企業業績をもとに投資判断をします。その
判断材料である決算報告書に嘘があったという事実は重大です。

また企業業績に絡んで不正があったということはもちろん上場企業とし
ての資格はありません。もしオリンパスが外国人社長を誕生させていな
かったらまたその社長が勇気をもって会社の不正を質していなかったら
外国人社長じゃなく日本人社長が菊川元会長の後任だったなら。もしは
金融市場でも禁句のことがですがオリンパスの不正は闇から闇に葬らさ
れていたのでしょうか。

この問題はいろんな方面に悪影響を与えるでしょう。上場企業のほとんど
がガバナンスに問題がある訳ではないでしょうが、外国人投資家の存在抜
きには成り立たない東京市場です。投資も含めた経済活動は一種の信頼関
係から成り立っています。その判断基準である業績が操作されていたもの
だったら信頼は地に落ちます。上場企業として最悪の事態は粉飾決算がは
っきりした段階で東証の上場廃止基準に触れ上場廃止になることです。今
後は経営陣に対して株主代表訴訟が起こされることも十分考えられます。
粉飾決算とはそれ程重大な事件なのです。しかしここまできたら徹底した
真相解明して再出発しかないでしょう。

世界的に競争力の高い内視鏡部門を持ち技術的には定評があるオリンパス
経営人がもっと違う方向に会社を導いていたら今日のような事態にならな
かったのでしょうか。本当に株主を裏切り得意先に迷惑をかけ社員に大変
な試練を与えてしまったオリンパスの経営陣の罪はとても重いでしょう。