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マーケティングの今を考える4

2009年02月17日 | Weblog
顧客シェア
「強いものが生き残るのではない。環境に適応したものが生き残るのだ」とは、今や誰もが唱えるけれど、どう適応させるのかの命題に応え、それを実行することは難しい。企業規模に係わらず、経営トップの洞察力と決断力、やり抜くための強い意志が問われる。 

 昨年11月17日の日経ビジネスの記事から資生堂の取り組みを診る。資生堂は「一人ひとりのお客様の最高の美しさを実現し、心も豊かになっていただくこと」というコンセプトを実現するために、’06年4月にビューティーコンサルタント、すなわち美容部員の販売ノルマを撤廃した。伴って昨年には営業社員も売上げでの評価を廃止した。「売上げノルマ達成が自己目的化したような手法で積み上げた売上げは、将来の成長を何ら保障しない」という前田社長の信念に基づく変革である。

 化粧品市場は1兆5000億円と言われているが、人口減少時代、当然市場は縮小してゆく。「1人のお客さまの満足度を高め、生涯付き合っていただけるよう100%お客さま志向の会社に生まれ変わらないといけない」。美容部員の頭に「ノルマ」がよぎれば、顧客は商売くささを嗅ぎ取って売り場から足が遠のく。  

すなわち、ここで資生堂が目指したものは「顧客シェア」の拡大であり、「顧客シェアの拡大」は、ブランドロイヤルティすなわち顧客満足を通じて自社や自社商品への「ファン」、を増やすことで達成される。これも近年盛んに言われているけれど、そのための方策が難しい。単なるポイントカードや会員特典のようなテクニックだけでは十分な囲い込みは難しい。成長する企業はその困難さを乗り越えてゆく。

 資生堂はここ数年右肩上がりの増収増益を続けていたが、この3月期決算予測では流石に売上高で3%、営業利益で10%の減収減益を見込んでいる。国内で主力の中価格品が落ち込み、新ブランド投入で伸びを見込んだ高価格品が振るわなかった。*5)

「逆風の中でもヨットは前進する。顧客との絆を深めれば成果は出る」と前田社長は述べられているけれど、長期的な視野に立った施策を展開する企業の今後の成果に期待したい。

 *5)日本経済新聞2009年2月6日「化粧品3社が営業減益」<今期、低価格志向強まる>

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