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閑話つれづれパートⅡその13

2009年10月07日 | Weblog
知の衰退(上)

 日経ビジネス2009年9月14日号の「リポート考える人材」の中に、東京大学大学院教授の姜 尚中(かん・さじゅん)氏の“役立たずの「人文知」が付加価値を生む”と題する談話が載っていた。現在日本の知の衰退を食い止める処方箋とも思える。

 その内容を勝手ながらダイジェスト版に要約させていただくと、「この20~30年は、すぐにカネに結びつくような専門知識がもてはやされてきたが、人文知のような具体的な成果がすぐに見えないものは、あまり重視されなかった。しかし、人文知は組織のリーダーに求められる資質であり、部下に金銭的な報酬以外のモチベーションを発揮させるための、自分の仕事や会社の行動に意味を与える能力は、人文知からしか生まれない。

 コスト高の日本企業が中国やインドの企業と競争するには、価格とは別次元の付加価値をつけなくてはならない。新しい付加価値を生み出す源泉とは人文知、つまり宗教や哲学、日本文化、社会の成り立ちなど、人生をいかに生きるべきかを考えるという、ある種の教養を身につけることである。

 最近書店にマルクスやケインズ、ポラニーなどの古典作品が、ビジネス書コーナーに並ぶようになった。20年前には考えられなかったことであるが、鋭敏なビジネスパーソンほど、見えない総合としての人文知を求めていることではないか。人文知を磨くことは時間のかかる作業であるが、中堅幹部にきっちりと人文知を教育することが、これからの企業には、必要な取り組みになる。」というものである。

 この談話を読み、逆説的に言えば、この20~30年いかに人文知がおろそかにされてきたかということで、砂上の楼閣とよくいわれる足元を固めずに、見える部分のみを飾ろうとしてきたツケが、現在の日本に顕在化してきたことの原因に、ようやく日本の知識層が気付き始めたことに他ならない。

 私が本稿「一陽来復その1、その2」(昨年10月19日、22日)に書いた「戦後日本の指導者層3代目説」を直接的でないにしろ裏付けていただいたような談話で意を強くした。

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