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企業経営と品質管理(第13回)

2011年02月07日 | Weblog
なぜ1億円を超えるコストダウンができたのか

 無駄の撲滅は、政府の事業仕訳にも見るように、どこまでを無駄と言うのか線引きが難しい問題が多い。しかし、最低限無駄かどうかの検討が常に必要なことは言うまでもない。そしてそこに、先にも書いた(本稿第10回「品質管理の真骨頂」)けれど、問題発見能力が問われる。

 問題には、直接コストに跳ね返らない漠然としたものもあるけれど、通常コストは定量的に把握できるわけだから、何にいくら使っているかまずしっかりと現状把握してみることが必要である。品質管理にいうQCストーリーはそこから始まる。企業再建の世界では、事業DD(デューデリジェンス=精査)と言われる。

 会社勤めの41年5カ月の間に、私は数多くの職場を経験した。その事は、今を支える大きな財産である。その勤めの最終段階で担当した物流の仕事では、随分と無駄を見つけ1億円を超えるコストダウンの実を挙げた。その第1歩は、自分の印鑑で決済しているすべての費用の記録を自分で取ることから始まった。経理担当者任せでは、突出した経費の膨らみや、過去に実績のない費用項目の支出が無い限り、問題視されることは少ない。一般に職場のリーダーの面子は守られる。

 企業組織は大きくなるだけ権限移譲は已むを得ず、それぞれの長がシビアに所轄のコストを管理しない限り、大企業病という病に侵される危険が大きくなる。小さい会社ではなおさら、経営者が厳しいコスト意識を持ち続けない限り、繰り返し襲ってくる不況の嵐を乗り越えることは出来ないであろう。

 物流業務においては、在庫管理の費用が大きい。製品在庫管理は本来営業と生産管理部署の仕事となる。物流部門がその量を決められるものではない。しかし、その問題をアピールすることはできる。また、近隣契約倉庫へのシフト費用の削減のために、工場倉庫からの直接出荷割合を増やす算段は出来る。直接出荷の割合を増やせば、契約倉庫への入庫料、保管料、出庫料と多くの費用が削減できる。また、一定量単位で取引される製品では規定量に満たない端数がいつまでも在庫されていることがある。うまくまとめて売ることを考えることが必要である。

 借り上げ倉庫(坪借り倉庫)を見てみると、使わなくなった包装材やパレットの山ということはないか。見て見ぬ振りの問題の先送りかどうかは兎も角、放置されていることがある。面倒でも早めに整理すること。それも廃棄物扱いにすると費用が発生する。使わなくなった仕様のダンボール箱でもフレキシブルコンテナーでも、必要とするところに安くてもいいから売りさばく。その収入は僅かでも、空いた倉庫は製品が置けるし、借り上げ面積を減じることができれば、借り料を倹約出来ることが大きい。

 包装材の発注もリスクを取って取引最小単位で小まめに行う。担当者の心がけ次第で出来るならコストは掛からない。日常的に在庫量の変動が分かるようにエクセル表で管理すればいい。過剰な在庫は保管料が掛かるだけでなく、キャッシュの流出を伴い、陳腐化の恐れもある。

 包装材等も品質には十分配慮しながら、購買部と連携して安価購買を志向して購買先を探索する。原材料なども長年の付き合いというしがらみで、他のメーカーからの購入検討もせず、結果高いままに購入していることがあるのではないか。

 その他、製品配送を委託する物流会社の選択と契約価格交渉から、製品に貼るシール1枚、ロットカード1枚の仕様とその購入先まで検討し直してみることなど必要な検討項目は多い。後は骨身を惜しまず実行することだ。そしてその結果を検証して次につなげるために「PDCA」を確実にまわすことだ。
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