三人のおまわりさん

「三人のおまわりさん」(ウィリアム=ペン=デュポア 学習研究社 1965)

訳は渡辺茂男。
スマートな絵は柳原良平。

本書は児童書
1795年、フランス漁船のファーブ船長は、無人島を発見した。
その島は、土地は肥え、魚もたくさん。
船長をはじめとする乗組員たちは大急ぎで移住。
それから、現在にいたるまで、島の暮らしは平和そのもの。

さて、この島には3人のおまわりさんがいた。
島があんまり平和なので、自分たちの制服のデザインを仕事のようにしていたのだけれど、そこに事件が勃発。
漁師が仕掛けていた網が、何者かにより盗まれてしまったのだ。

島の住民は、みんな幸せそのものだし、いまさら魚などほしがる者などだれもいない。
犯人は、島の住民ではなく、ひょっとすると海の怪物かもしれない。
すると、翌日もまた被害が。
おまわりさんの活躍をみてみたい住民たちは、内心喜びながら、怒ったふりをする。
かくして、3人のおまわりさんは調査に乗りだすのだが…。

3人のおまわりさんのところには、ボッツフォードという6才になる黒人の男の子がいる。
ボッツフォードは、おまわりさんの制服のおさがりをもらい、かわりに、おまわりさんたちの自転車の世話をしている。
このボッツフォードはとてもかしこい。
ボッツフォードがなにかいうと、おまわりさんたちはボッツフォードを自転車の世話をさせにいかせたのち、その意見を自分たちの意見のように話す。

3人のおまわりさんたちが、それぞれの性格に応じて意見をならべてから、ボッツフォードが的を得たことをいうというのが毎度のパターン。
このくり返しが楽しい。

物語は、犯人を捕まえるだけでは終わらず、裁判にまで発展。
このあたりが、欧米の児童書らしいところといえるだろうか。
日本の児童書よりも、欧米のそれのほうが、会議や裁判を書くのが好きなような気がする。
ともかく、裁判で、ボッツフォードは弁護人として大活躍する。

じつに、のんきかつ楽しい読み物。
物語の上品さには、柳原良平さんの絵もひと役買っているように思う。
さすがにいまはもう手に入らない本だけれど、手元にある本は1988年の43刷。
こういう本に人気があったのは、喜ばしいことだ。

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