沖縄の農繁期である9月10月、9月はまだ暑いが、種播きを終えホッと一息している10月の中頃には沖縄も秋となる。「おらが秋ーーー」と叫びたいほど私の大好きな秋、夜は涼しくてぐっすり眠れて、昼間の畑仕事も太陽の熱が和らいでいるので丸一日畑仕事をしても体力に余力を残し、酒も美味い「おらが秋ーーー」なのである。例年は。
ところが、今年は違う。今年の9月10月は雨の日が多く、畑の土が湿っていて耕すという作業がなかなかできなかった。で、作業が遅れる。しかも、雨は、たいてい夜中に降り、昼間は晴れている日が多く、晴れている日はとても暑かった。「とても」とは具体的にどれくらいかと言うと、「ガンマリどぅヤミ、ワチャクどぅソーミ!」と太陽に向かって悪態をつくほどの暑さ。「ふざけているのか、からかっているのか!」といった意。
具体的にと言いつつ、ついつい感情的になって比喩表現になってしまった。沖縄気象台の資料から、実際にどれほど前代未聞の暑さだったかを具体的に証明する。
10月に最高気温が30度を超えた日数、2011年2日、2012年0日、2013年7日、2014年3日、2015年4日だが、2016年は20日もある。
2011年からの去年までの5年間で31度超えは1日も無いが、今年は9日もある。さらに、10月中旬以降に30度超えとなったのは同じ5年間で2013年の1回だけしかないが、今年は13日もある。その13日の内31度超えは4日。10月としては前代未聞の暑さと言っていいわけだ。忍耐強い私でも参ってしまうわけだ。
ついでに、今年の9月10月(9月はずっと、10月は前半まで)は雨が多かったことも、沖縄気象台の資料から具体的に証明する。2ヶ月分の雨量、2011年283.5ミリ、2012年368.0ミリ、2013年378.0ミリ、2014年364.5ミリ、2015年110.0ミリであるが、今年2016年は417.5ミリ。ちなみに気温も雨量も観測地点は那覇で、畑のある西原は、私の日記による観測では、雨量についてはおそらくもっと多い。
農繁期である9月10月、農夫にとって都合の良い天気は、気温25~30度(無茶なことは言わない、30度くらいなら我慢する)で、午前中は晴れ、真昼間は概ね曇り、週に1~2回程度は夜中に雨が降る。そんな天気なら作業は進むし、作物も育つ。
ところが今年は、夜中に雨が降るのはいいが、3日に2日くらいの頻度で降った。畑へ出勤すると晴れてはいても土はたっぷり濡れている。濡れた土は耕す道具のヘラにベッタリとくっつき、作業は面倒で時間がかかる。除草も同じように時間がかかる。
昼間の空は黒か白かのどちらか、つまり、降るか晴れるかのどちらかで、曇り空というのはごく少なかった。よって、晴れたら太陽の熱が降り注ぐ、それも秋の太陽では無く、真夏の太陽に近い熱線が降り注ぐ。暑さで体も心もヘトヘトになり作業が進まない。
このように、今年の9月10月はまったく、農夫にとって都合の悪い天気であった。それはまるで、天気の神様が農夫を困らせてやろうと意地悪しているのではないかと思うほど。ということで、大人しい私が「ガンマリどぅヤミ、ワチャクどぅソーミ!」と悪態ついたわけ。その他、和語で「糞ったれ!アホッ!」なんて言葉も吐いた。
前に「タッピラカス」、「タックルス」などケンカの際に使われるウチナーグチを紹介しているが、今回紹介している「ガンマリ」、「ワチャク」はケンカの原因になるかもしれない言葉となる。ちょっとしたいたずらのつもりが、ちょっとふざけたつもりが、あるいは、ちょっとからかったつもりが、相手には酷く気に障って、ケンカとなる。
ケンカの原因となる状況がもう1つ(他にもあるかもしれないが沖縄語の専門家ではないので私には不明)ある。それはウセーユン、「バカにする」といったような意。
ウセーユンについては、2015年7月17日付ガジ丸通信『ウセートーン』に例を挙げて判り易く(と自分では思っている)説明しているが、何しろバカにしているのだ、バカにされたら当然のごとく怒る。怒って、そして、
「ィヤー(お前)、ワン(俺を)、ウーセートーラヤー(バカにしているな)。」
「ヌーが(何で)、ワッサミ(悪いか)。」
「ワッサミヰー(悪いかって)、タックルスンドー(殴るぞ)!」
「タックルスーウー(殴るってか)、シナスンドー(殺すぞ)!」
となって、ケンカに発展する。ウチナーンチュは穏やかで心優しい人も多いが、中にはこのようにタンチャー(短気者)も少なからずいる。ガンマリしたりワチャクしたりする者はたいてい子供、または、精神が子供の大人だが、タンチャーは大人にもいる。
以下、沖縄語辞典による説明。
ワチャク:からかうこと。他人にいたずらすること。
ガンマリ:いたずら。ふざけること。
ウセーユン:あなどる。軽蔑する。見くびる。
タンチャー:短気者
記:2016.11.1 ガジ丸 →沖縄の生活目次