すっかり忘れていたが、猛鳥物語の続き。前回、「この続きはまたいつか」と話してから1ヶ月ほどが過ぎて、マナも、もう興味を無くしたようだが、強引に話す。
その前にちょっと前回のあらすじ。
恐竜人は好戦的な性格をしており、彼らの世界では戦争が絶えなかった。が、定住農耕生活をするようになって、戦争が減った。戦争が減ると人口が増えた。恐竜人の人口が増えると、他の生き物たちの生存が脅かされた。そこで、他の生き物たちはその星に住む最も強い鳥人に助けを求めた。鳥人は彼らの願いを聞き入れた。
そしてついに、恐竜人対鳥人の戦いが始まる。
鳥人は、強力な爪と嘴を武器として、素早い動きと空中からの攻撃で、1対1で戦う限りにおいては恐竜人に不覚を取ることは無かった。だが、相手が複数だと不利になる。人口においては圧倒的に恐竜人が多く、その割合は1000人対1人である。全面戦争となれば、負ける恐れもあった。よって、肉弾戦を避け、飛び道具を用いることにした。
彼らが用いたのは弓矢、鳥人はそういった武器を発明する頭脳を持ち、そういった武器を作れる手先の器用さも持っていた。弓矢を大量に生産し、戦いに備えた。
恐竜人を殺すことが目的では無い。恐竜人の人口が増えないようにしたいのである。よって、鳥人の矢は概ね恐竜人のキンタマを狙った。生殖不能にするためである。鳥人はこれを「恐竜人不妊化作戦」と呼んだ。そして、ついに開戦する。
鳥人は空を飛び、空中から弓矢を放った。恐竜人の戦士の全ては男である。男の一番痛い所に矢は突き刺さった。鳥人の放つ矢は強力で、その激しい痛みを恐れて一番痛い所をかばったとしても、矢は恐竜人の体を突き刺した。離れた場所から矢が飛んでくるのである。恐竜人たちは成す術も無くバタバタと倒れていった。
恐竜人対鳥人の戦いは圧倒的に鳥人の優勢で進んでいった。ただ、人口では恐竜人の方がはるかに多い。戦いは短期で終わるものではなかった。日が経つうちに、恐竜人も鳥人の使う弓矢を真似て、作って、反撃した。上から攻撃する鳥人の優位に変わりは無かったが、そのうち、恐竜人は戦士以外の農夫が戦いに参加し、また、多くの女も参加するようになり、鳥人に向かって矢を放った。情勢は一進一退となり、戦争は泥沼化した。
1年が経った。恐竜人の死者は開戦前の人口を半減するほど膨大な数であったが、鳥人の死者数も日を追うごとに増え、開戦前人口の2割を失っていた。
鳥人は作戦を変更せざるを得なくなった。このまま進めば、数においてはるかに勝る恐竜人がどんどん優勢となり、鳥人の敗北になりかねない。
「キンタマを射抜いて、これからの人口を減らす作戦だけではダメです。今現在の人口を激減させなくてなならないでしょう。」と幹部の一人が言う。
「その通りだな。」と長老が肯き、
「で、その方法は何かあるか?」と周りを見渡す。
「火矢を使いましょう。彼らの住処を焼き討ちにしましょう。」と別の幹部が言う。
「火矢か。うーん、しかし、それもすぐに真似られるな。」
「今日のような風の強い日に、各地でいっせいに火を放ちましょう。火は瞬く間に広がって、彼らに反撃する暇を与えないでしょう。」
「皆殺し作戦となるな。・・・しょうがないか。やるか。」
その後、その作戦の細かい打ち合わせが行われた。失敗の許されない作戦であった。熱心に時間をかけて会議が成された。その時誰も、自分たちの住む島のあちらこちらに火矢が放たれたことに気付かずにいた。「ギャー!」と叫び声が聞こえてきた時にはもう、彼らの周りは火に包まれていた。鳥人の羽は水を弾くよう油分を含んでいた。燃え易くできていたのである。風の強い日であった。逃げる暇は無かった。
その強さから、多少鷹揚な性質である鳥人よりも先に、好戦的な性質である恐竜人が焼き討ち皆殺し作戦を思い付き、それを実行したのであった。鳥人の住む島は、焼けた死体で埋め尽くされた。多くの生き物たちがやってきて、ご馳走を味わった。
そして、猛鳥物語は、一部の地域では焼け鳥物語として伝わったのであった。
場面はユクレー屋に変わる。初め興味無さそうに聞いていたマナであったが、
「ふーん、その焼き鳥、美味しかったのかな?」と訊く。感想はそれだけであった。どうやら、最後まで興味無く聞いていたようだ。まあ、マナの感想はともかく、猛鳥物語のお話はこれでお終い。強さを過信してはいけないという教訓話である。
語り:ケダマン 2007.11.9