ハーフ?
1972年の本土復帰までアメリカの施政下のあった沖縄、その頃、周りには異人さんがいっぱいいた。インド人も中国人もフィリピン人もいたが、当然のことながらアメリカ人がいっぱいいた。アメリカ人の多くは兵隊で、兵隊の多くは若者で、若者の多くは下半身に抑制が効かない者たちで、したがって、沖縄の娘と恋に落ちる者も多くいたに違いない。本物の恋ではなく、下半身だけの恋というのも多くあったに違いない。
というわけでその頃、私の周りには混血児が少なからずいた。混血児を当時は合の子と呼んだ。合の子、差別用語だろうか?と思って広辞苑を引く。「混血児。また、異種の生物の間に生まれた子」とある。「異種の生物の間」とは随分な表現だ。人種が違うと異種の生物ということになるようだ。まてよ、そもそも人種って何だ?
広辞苑に「コーカソイド(類白色人種群)・モンゴロイド(類黄色人種群)・ネグロイド(類黒色人種群)の三大人種群に分類されるが、オーストラロイド(類オーストラリア人種群)・カポイド(コイサン人種群)を加えた五大分類も行われている」とあり、白色人種、黄色人種、黒色人種と大別されている。なるほどそういうことかと納得。
今年(2014年)6月、畑の向かいにある森に分け入った際、小さなセミが目の前に止まった。見たことの無いセミだったので写真を撮り、図書館から図鑑を借りて何者か を調べた。ニイニイゼミの類と見当はつけていて、確かに、ニイニイゼミの類のいずれにも似てはいた。似ていたが、どれであると特定はできなかった。
体の色、でっぱりの形はニイニイゼミだが、前翅の特徴、生息場所はクロイワニイニイである。「どっちだ?」と悩んだが、ここではニイニイゼミということにした。
でも、もしかしたら、私が見た両方の特徴を併せ持つ個体、ニイニイゼミとクロイワニイニイの混血かもしれない。もしかしたら、アメリカ人と日本人の混血で、髪の毛の色は黒、目の色は青、肌の色は白、鼻は高く脚も長いが、目は一重の混血児がいるかもしれない。そうそう、混血児とか合の子とか言うよりも、もっと優しく、聞こえの良い言い方が今はあったね。瞼は一重の切れ長だけど、瞳の色は青色のハーフ、いるかな?
ニイニイゼミ(にいにい蝉):半翅目の昆虫
セミ科 日本全国、南西諸島(沖縄島が南限)、台湾に分布 方言名:不詳
名前の由来、広辞苑に「じいじいと鳴く」とあり、「じいじい」が「にいにい」となって、ニイニイゼミなのだと思われる。蝉はおそらく漢語だが、発音のセミの由来は、蝉の和音か、鳴き声からか、はっきりしていないとのこと。
クロイワニイニイとよく似ている。『沖縄のセミ』によると本種はクロイワニイニイに比べ体が一回り大きく、体の模様がクロイワニイニイは緑色だが、本種は茶色がかっており、目の後ろのでっぱりがやや大きく、角ばっている。また、前翅の透明な部分が狭い。私が見たのは、体の大きさは比べていないが、「茶色がかっている」、「目の後ろのでっぱりがやや大きく、角ばっている」という2点ではニイニイゼミだが、「前翅の透明な部分」の広さにおいてはクロイワニイニイである。さらに、『沖縄のセミ』によると、日本では沖縄島が南限で、沖縄島でも「沖縄市以北でしか見られません」とある。私が見たのは西原町、沖縄市以南にある。でも、体の特徴はニイニイゼミに近い。
というわけで、写真の個体、どちらか迷うところだが、総合的に見て、図鑑の写真をよく見比べて、ニイニイゼミの雌ということにした。
体長は20~26ミリ(クロイワニイニイは17~21ミリ)。成虫の出現は6月中~9月上(クロイワニイニイは4月~11月)。鳴き声はチィーとかシィー。方言名、クロイワニイニイにはシーミーグヮーと付いているが、本種は不詳。シーミーグヮーはシーミー(清明)の頃から鳴き声が聞こえるのでということだが、本種の出現する頃はシーミーをずっと過ぎているので、見た目が似ていてもその名はつけられない。
斜めから
大きさ
記:2014.8.11 ガジ丸 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『沖縄のセミ』佐々木健志他著、新星出版株式会社発行