ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

映画『ラブ沖縄』

2012年06月08日 | 通信-音楽・映画

 先々週土曜日(5月26日)、映画を観に行った。いつもの桜坂劇場。これはぜひ観ておかなくちゃあと思っていた映画、タイトルは『LOVE沖縄』。
 タイトルから恋愛ものか、沖縄観光キャンペーンか沖縄賛歌の映画と想像しそうだが、そうでは無く、反基地闘争を映したドキュメンタリー映画。普天間代替基地建設反対運動をしている辺野古と、ヘリパッド建設反対運動をしている高江を題材とした映画。

  映画が始まってまもなく「国は何てことしやがる!」と腹が立った。私は、自分で言うのも何だが、温厚である。時々腹を立てることもあるが、立てた腹は腹の内に収め、それを広げることはしない。腹を立てること自体が楽しく無いし、ストレスになる。残り少ない人生(平均寿命を生きたとしても残りはせいぜい20年)楽しく生きていたい。
 腹が立った時に私は、すぐにその元凶を忘れるようにするか、その元凶がそこに存在していたとしても知らんふりをする。つまり、元凶を無視することにしている。腹を立てるのはストレスになる、ストレスは健康に害を及ぼすことになるから。
 ところが『LOVE沖縄』、観て腹が立ったが、その腹立ちの元を忘れ去ることができない。無視することがなかなかできなかった。観終わってもムカっとした気分が残った。ということで、その映画、私にとって精神衛生上悪いものとなった。

 映画の最初に米軍基地反対闘争の大まかな経緯がテロップで流された。
 1995年9月、沖縄米兵少女暴行事件、同年10月に事件に抗議する大規模(参加者が8万人超)な県民総決起大会、などが順次現れる。それらのことは私も当時、新聞やテレビで観て知っている。しかし、米兵少女暴行事件の説明を読み、あらためてその非道ぶりに腹が立った。少女はわずか12歳だったのだ。それを3人で強姦したのだ。

 高江のヘリパッド建設反対闘争の現場では、建設工事に従事する作業員と反対派の人達が掴み合い、罵り合っている。それに対しても大いに腹が立った。
  私も肉体労働者であった(今でもたまに現場へ出る)し、肉体労働が辛いことを知っているし、肉体労働者の仲間も多くいる。なので、私の気持ちは作業員たちの方へ肩入れしたくなる。「ただでさえ難儀な仕事だ、邪魔するんじゃ無ぇ」と思う。もちろん、私は新たな基地建設も基地強化も嫌だと思っているので、作業が進むのを阻止したいという気持ちも分かる。どちらも善良なウチナーンチュだ、「ウチナーンチュ同士で喧嘩させるんじゃ無ぇ!」と強く思い、「国は何てことしやがる!」と腹が立ったのだ。
 「防衛施設局の役人達が楯にならんかい!反対派の一人がその楯を潜り抜けたら作業員を一人減らすというルールにして、作業員がいなくなったら作業を中止して引き上げることにしたら良かろう。そうすれば、掴み合うのも罵り合うのも防衛施設局の役人達の仕事になるじゃないか!」と私はそのシーンを観ながら考えていた。

 腹を立てながらも、未来の沖縄のために頑張っている人達のことを思い、辺野古と高江の頑張っている人達にお菓子の一折も持って行って激励し、感謝したくなった。そうでもしないとこの腹立ちは収まらないに違いない、と思って、先週訪問した。
          
          

 記:2012.6.8 島乃ガジ丸


アグーの本物

2012年06月08日 | 飲食:食べ物(材料)

 沖縄の伝統豚肉

 先月の第三金曜日(5月18日)、出張で来沖していた鹿児島の友人Nがアグーに会いに行くというので、私が車を出して彼に同行した。Nは仕事絡み(直接では無く、仕事に繋がるかも、といった軽いもの)で、私は単に本物のアグーに会いたい、できれば本物のアグーを食ってみたい、という、彼よりもさらに軽い動機。
 「本物のアグー」と書いたが、「本物の」には訳がある。食べ物の豚肉としてのアグーについては2006年5月にこのガジ丸HPで既に紹介している。要約すると以下、

 私はもう何年も前からアグーを知っており、たまには(高いので、頻繁には買えない)食べてもいる。近くにあるAスーパーではだいぶ前からアグーを置いていた。
 その名前が面白かったので、数年前に私はアグーを調べている。沖縄に古くから食用として飼われており、成豚の体重は100キログラム内外と、食用豚にしてはそう大きくは無い。全身黒色の毛で覆われており、いわゆる黒豚といわれるものであるが、素肌は肌色である。鼻先が尖っていて、イノシシに似た強そうな顔をしている。
 アグーが、普通の豚とどの程度味が違うのか、明確には言えないが、まあ、美味しいのだと思う。値段が高いから美味しいと感じるのかもしれないが・・・。

 その高いアグー肉が実は本物では無かったのだ。いや、「本物では無い」という言い方には語弊がある。スーパーに出回っているアグー肉のほとんどはアグーと別種の豚とのハーフなのである。そのハーフの事をアグーとして商標登録しているので名称的には、あるいは法律的にはそれがアグーの本物なのである。しかし、

 友人Nとアグーを求めて具志川のアグー養豚場、今帰仁のアグー養豚場、などを訪ねた後、アグー養豚農家であったD氏と会い、氏からアグーの話を聞いた。
 沖縄県農業協同組合がハーフのアグーをアグー(あぐー)として商標登録し、使用料を払わなければ、D氏のようにアグーとアグーを掛け合わせた正真正銘本物のアグーであってもアグー(あぐー)という名前を使うことができないようにしたらしい。
  本物アグーは出荷できるほどに成長するまでの期間が長く、成長しても100キロ程度と肉量も少なく、また、出産数も少ないので、養豚農家としては経済的メリットが無い。舶来の白豚の方がはるかに儲かる。ただでさえ不経済なアグーであるのにその上商標使用料を支払えなんて、まったくJA沖縄も欲が深い。純粋アグーを育ててきたD氏もこれでは生活が成り立たなくなって、去年の11月には養豚を廃業したとのこと。

 沖縄の食肉文化である豚、その中でも沖縄で古くから飼われ食されてきたアグー、その血を絶やさないよう努力してきたD氏、彼の努力と苦労に感心し、同情はしたが、しかし私の興味は別の所にあった。「アグーってそんなに美味しいの?」だ。
  D氏よると、「そりゃあもう、美味しいです」とのこと。「特に脂身が美味しいです。網焼きするよりフライパンでソテーした方が抜ける脂が少なくて美味しいです。フライパンに残った脂でチャンプルーなど作ると、それもまた美味しいです。」とのこと。
  
 D氏にアグーの本物(100%)肉を置いてある店を教えて貰い、家に帰る途中にその店に寄って、ソテー用のバラ肉を1パック(4切れ)買い、近所の飲み屋に行き、女将さんにソテーして貰い、友人Nと2切れずつ食った。その感想は、
  「脂身が美味しんだったらあまり焼き過ぎない方がいいね」と女将さんは、火がやっと通った程度、焼き色がほとんど着かない程度にソテーしてくれた。Nは美味しいと言っていたが、普段、獣肉の脂をあまり食べない私にはやはり、脂のほとんど残っている脂身は少々きつかった。したがって、アグーの本物が普通の豚(白豚)肉に比べて美味しいのかどうか判断がつかなかった。いやしかし、今考えてみると、普通の豚の脂身をあれだけ食べればもっときついと感じたはず。それを思えば、アグーの脂身はサッパリしていると言える。となれば、アグーの本物は普通のより美味しいと判断しても良い。
 
 
 アグー(あぐー):ウシ目の家畜
 イノシシ科の哺乳類 中国渡来なのか在来なのか不詳 方言名:アグー
 ウシ目(偶蹄類)イノシシ科の哺乳類 方言名:アグー
 沖縄のブランド豚として有名なアグーだが、1980年頃には絶滅の危機にあったとのこと。そこから有志の方々が戻し交配などの努力をして、限り無く本来のアグーに近いアグーの生産に成功し、現在では他の大型、多産系品種との交配種も含め、全県で数百頭にまで回復しているらしい。交配種も「アグー」と呼んでいる。
 アグー同士の交配による純血アグーの肉を生産する農家を二ヶ所訪ねたが、その二ヶ所の豚舎で私が見た限りでは、純血アグーは数十頭ほどである。
 一般に販売されている豚肉に比べ、ビタミンなどの栄養が豊富で、旨味成分のグルタミン酸が多く含まれているとのこと。肉質は柔らかく臭みも少ないとのこと。

 記:2012.6.12 ガジ丸 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行