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ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ブンタン

2017年08月20日 | 草木:果樹

 もうだいぶ前、どのくらい前だったか思い出せないくらい前、15年とか20年とか25年とか30年くらい前、ザボンを頂き、食べたことがある。いつだったかは確定できないが、貰った相手はほぼ確定できる。おそらく鹿児島の友人N、彼が沖縄へ遊びに来た時に、土産として貰ったと思う。何故そう思うかと言うと、鹿児島はザボンの産地であり、鹿児島に友人はNしかなく、Nは何度も沖縄に来ているからである。
 ボンタン飴は子供の頃からよく目にし、口にもした馴染み深いお菓子だが、それがザボンを原材料としているということを、確かNから聞いている。また、ザボンはブンタンとも言い、鹿児島ではボンタンと言うってこともNから聞いている。
 ザボンが沖縄でも収穫できるということは、だいぶ前、どのくらい前だったか思い出せないが、Nからザボンを頂いた時よりは後に知った。収穫できるといっても経済的生産ができるまでには遠く及ばず、民家の庭にたまに見られる程度のもの。私もまだ、沖縄では2度しかお目にかかっていない。2度目はつい最近、去年の7月に見ている。去年のことであれば、写真を見れば思い出せる。首里の民家でお目にかかった。
 
 ブンタン(文旦):果樹
 ミカン科の常緑高木 アジア南部原産 方言名:チュークニブ、ボンタン
 ザボンとも言い、それが標準和名とのこと。広辞苑にはそうあったが、参考文献の一つ『沖縄園芸大百科』にはブンタンとあり、ザボンは別名となっていた。ザボンはポルトガル語のzamboaに由来するとのこと。同書にはブンタンという名の由来が詳しく書かれてあって、「清国の船が鹿児島に避難し、そのお礼に送られた、その時船の船長の名前が謝文旦だった」ということからブンタンという名前になったとのこと。なお、果肉が紅紫色の種もあり、それはウチムラサキと呼ぶともあった。その種はまだ見たことが無い。
 高さは3m以上になるようだが、私が見たものはちょうど3mくらいのもの。花は白色の5弁で大きく、開花期については初夏と広辞苑にあった。私は未確認。同じミカン科であるシークヮーサーやタンカンの花も5弁で白色なので、似ているのだろう。
 果実は球形で大きく、直径20センチほどにもなる。外皮が厚く果汁は少ない。食用となり、生食の他、菓子や砂糖漬けなどに利用される。葉も大きい。
 菓子と言えば、ボンタン飴がある。私が子供の頃よく目にした飴。「鹿児島県鹿児島市にあるセイカ食品株式会社が製造・販売する飴菓子の一種」とのこと。
 
 実

 記:島乃ガジ丸 2010.8.16 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行


フトモモ

2017年08月20日 | 草木:果樹

 月一回集まる模合(モアイ、頼母子講のような相互扶助の集まりだが、飲み会の口実にもなっている)のメンバーは、ほとんどが高校の同級生で、そうでない人も年齢は一つ二つしか違わない同世代。模合は一次会であり、終わると二次会へ流れる。
 若い頃は私もよく二次会へ付いて行った。が、三十台の前半あたりからはほとんど行かなくなった。皆より肉体の衰えの進み具合が速かったというせいもあるが、二次会へ行って、隣に座った話題の少ないおネェちゃんに気を使って、場が白けないよう話題探しをするのが面倒になったせいもある。居酒屋ほど美味しい肴を出すわけでもないのに、居酒屋と同じ泡盛なのに、居酒屋より数倍高い金額を支払うという不合理さも嫌であった。
 話題の少ないおネェちゃんは、しきりにカラオケを歌うよう勧める。歌っている間は話をしなくて済むからだろうが、ところがどっこい、私はカラオケが嫌い。歌は上手い(自分で言う)のだが、機械に自分の感性を合わせるのが嫌いなのだ。伸ばしたいところは伸ばしたいし、溜めたいところは溜めたいし、さっと流したいところは流したい。のに、機械はそんな私の感性を無視して機械的(当然だが)に先へ先へと進んで行く。「おらぁ貧乏人だが、おめえの奴隷じゃねぇぞ。」と怒鳴りたくなる。

 二次会の店はたいてい、模合メンバーの誰かの知っている店となる。そういった店は、さすが沖縄なので、隣に座るおネェちゃんもカワイイ人が多い。そんなおネェちゃんが体をピッタリ摺り寄せて、上目遣いに「ねぇー、何か歌ってよ。」と言う。彼女の左手は私の股間にごく近いフトモモの上に置かれている。そーなるとだ。カラオケ嫌いの私も機械の奴隷となり、以降店を出るまで、おネェちゃんの奴隷にもなったりしたのである。
 おネェちゃんのフトモモ攻撃は効果絶大であったのだが、そのフトモモは漢字で書くと太腿。今回紹介するフトモモは植物のフトモモで、漢字で書くと蒲桃。桃とあるが、桃はバラ科で、サクラやウメと一緒。こちらはフトモモ科で両者の種は遠い。果実の味も似てはいない。食感も香りも違う。文献には「ビワに似た芳香」とある。
 
 フトモモ(蒲桃):果樹・公園・防潮風
 フトモモ科の常緑高木 原産分布は奄美以南、インド、マレー半島 方言名:フートー
 名前の由来は資料が無く不明。漢字の蒲桃は広辞苑にあった。音読みのホトウで広辞苑を引くと「ブドウの別称、フトモモの漢名」とあった。ということで蒲桃は漢名。中国から沖縄に伝わって、中国読みに近いフートーとウチナーンチュに呼ばれ、それが倭国に渡り、フートーモモからフトモモになったのかもしれない。
 ちなみに蒲桃の蒲はガマと読んで、植物のガマのことを指す、だけでなく、蒲という字は植物という意味もあるようだ。そういえば蒲公英、菖蒲などに使われている。
 高さは10mほど。耐潮風性が強いので、防風防潮林として使える。萌芽力が強く成長も速いので適宜の剪定を要する。民家の庭には使いづらい。
 花は、同科のバンジロウに似て長いおしべが多数ある白い花、バンジロウより大型で、開花期は3月から4月。果実は芳香があり生食できる。果肉は白色で味は淡白。結実期は6月から7月。「果実はビワに似ていて生食できる」とあったが、私は未経験。
 
 花
 
 実
 訂正加筆:2011.7.17

 記:島乃ガジ丸 2005.4.2 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行


ブドウ

2017年08月20日 | 草木:果樹

 子供の頃、私の家には離れが1棟あり、2世帯が住む貸部屋となっていた。それぞれが1DKという小さな部屋の1つには戦争未亡人であった伯母(父の姉)が住んでいた。
 離れの裏側は、隣地境界の塀との間が1メートルほど空いていて、土面であった。ある年、私が小学校3、4年生の頃だったと覚えているが、伯母はそこに棚を設け、ブドウを植えた。ブドウはすくすくと育ち、棚はブドウの葉で覆われた。
 ブドウの果実が実りだした頃のある日、私は伯母の部屋で昼寝した。ベッドは窓の傍にあった。開け放した窓の半分ほどの高さにブドウ棚があり、涼しげな景色であった。
 寝入ってからしばらくして、体がムズムズするのを感じて目が覚めた。見ると、私の体を青虫が這っていた。子供の頃の記憶で確かでは無いが、あるいは、子供の目からは大きく見えたのかしらないが、10センチほどの長さにも見えた大きな青虫であった。私は声にならない叫び声をあげ、虫を手で払い、飛び起きた。ベッドの上には同じ虫が何匹も這っていた。開け放した窓から入ってきたみたいであった。

 ブドウというと、すぐに上記のことを思い出す。それほど、「青虫が体を這う」は少年にとっては衝撃的な出来事なのであった。青虫は少年にとって、叫び声が出るほど気味悪いものだったのだ。オジサンとなった今では触れるんだけどね。
 その時の青虫は「ブドウ虫」だと父は言っていたが、昔のことなので今となっては確かめる術は無い。ブドウ虫は「ブドウスカシバとムラサキスカシバの幼虫」(広辞苑)とのことだが、それらがその時の虫なのかどうかも今となっては不明。
 スーパーには本土産のブドウが並んでいる。秋になると巨峰が旬となり、私も毎年、数回は買って食べている。巨峰以外のブドウはここ数年食べていない。何故かというと、ブドウは種が面倒。巨峰も種があるが、大きいので取り除きやすいからだ。
 
 ブドウ(葡萄):果樹
 ブドウ科の蔓性落葉低木 原産はヨーロッパ、北米 方言名:ブドー
 ブドウは「ブドウ科ブドウ属の蔓性落葉低木の総称」(広辞苑)で、「西域の土語に由来するという」と名前の由来もあった。どこかの方言とのことだが、詳細は不明。
 葡萄はブドウの他、エビとも読み、エビカズラ(葡萄葛)という植物もある。エビカズラはヤマブドウの古名とのこと。ヤマブドウ(山葡萄)は日本の山地に自生する。
 『沖縄園芸百科』に「北海道から沖縄まで全国で栽培されている」とあり、また、「沖縄では昭和57年に巨峰が取り入れられ産業として本格的にスタートしました」ともあるが、私はまだ沖縄産の巨峰を口にしたことが無い。同書に巨峰の収穫期は7月と12月とあるが、その時期にスーパーなどで沖縄産巨峰が並んでいるのも見たことが無い。自然農法をやっていた知人の畑で、まだ実は付いていなかったが巨峰の木を見せてもらったことはある。おそらく、沖縄では生産数が少ないのだと思われる。
 「ヨーロッパ系と北米原産の系統がある」(広辞苑)とのこと。生食に適したブドウが何種類もあり、ワインに適したブドウもたくさんあるらしい。生食、ワインの他に、乾しブドウやジュースにも利用される。
 品種によって違うようだが、収穫期は概ね秋。初夏に淡緑色の小さな花を咲かせる。巻きひげで他のものに絡み付いて伸びる。
 
 実

 記:島乃ガジ丸 2008.1.27 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行


ビワ

2017年08月20日 | 草木:果樹

 去年、東北を旅した。平泉は目的の地では無かったが、日程と宿泊の都合で立ち寄ることになった。訪ねる予定では無かった平泉だが、興味を引くものが多くあった。特に、藤原三代の国造りと治世には深い関心を持った。平和な世を作るという強い意志が存在し、ある一定期間ではあったが、庶民に幸福をもたらせていたのではないだろうか。初代は清衡だったか、国のあり方について明確なビジョンを持っていたのだろう。彼の子、孫がまた、それをしっかり受け継いで、理想の国造りに励んだのであろう。
 今年の大河ドラマは『義経』。義経が平泉で暮らす時期を描いた2回ばかりを観た。平泉と藤原氏がどう描かれているかに関心があったのだが、平泉も藤原氏もドラマの主役ではないので、さほど丁寧には描かれていない。まあ、さすが高橋秀樹と思ったくらい。
 さすが、といえばもう一人、芸達者な役者がいた。清盛役の渡哲也。彼の扮する清盛はなかなか魅力的。清盛もまた、国のあり方についてそれなりのビジョンを持っていたのだと感じた。ただ、彼の場合は、彼に続く優秀な人材がいなかったということだろう。
 それにしても、あの平和な藤原三代の時代は、乱世の源平の時代でもあったのだ、とあらためて認識した。日本国が乱世でも奥州だけは平和、なんてことはやはり、長く続けることは難しい。日本国だけが平和なんてこともこれからの時代はありえない。近くの国とも遠くの国とも仲良くしたいものだ。世界が平和であることを祈るのみである。
 さて、源平といえば『平家物語』、「祇園精舎の鐘の声、沙羅双樹の響きあり」で始まる物語は、琵琶法師によって語り継がれてきたとされている。その琵琶、私はてっきり、形が果物のビワに似ているからビワなのだろうと思っていた。が、調べると違っていた。果物のビワは枇杷と書き、楽器の方は琵琶となっている。広辞苑で琵琶の項を見ると、「胴はなすび形」と書かれ、どこにも「果物の枇杷の形に似ている」などという記述は無かった。

 随分前に、宮崎の友人からビワを頂いたことがある。「名産だから」と言っていたが、沖縄でもビワは普通にできる。植えても無いのに勝手に生えてきたりもする。わざわざ植えようとする人が少ないのは、そう美味しいものでは無いと思っているのか、どうせ植えるのなら飯にもなるパパイアの方がいいと思っているのか、不明。
 宮崎からのビワは美味しかった。沖縄にも生産者がいて、春には(もう過ぎてしまったが)スーパーにも出回る。そのビワを買ってまで私は食べたことは無い。ただ、頂き物でたまに口にする。沖縄のビワも美味しいと私は感じている。だが、ビワにはたいへん申し訳ないことだが、春の果物、買うのなら、ビワよりはイチゴを断然選んでいる。
 
 ビワ(枇杷):果樹・添景
 バラ科の常緑高木。原産分布は東アジア温帯南部、亜熱帯。方言名:無し
 地上部に比べて根張りが小さく台風に弱い。支柱でしっかり支えておく必要がある。白色の花は枝の先端に房状につく。開花期は11月から2月。
 本土では6月頃からとされる収穫期は、沖縄では3月下旬から4月上旬となっている。他府県に先駆けてビワを味わうことができる。近所のビワたちも3、4週間前が食べ頃となっていた。持ち主が収穫している気配の無いビワ、小鳥たちの食い物となっているのだが、私が黙って、もいで、食うわけにもいかない。葉は薬用、材は木刀などにする。
 
 花
 
 実

 記:島乃ガジ丸 2005.5.3 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行


バンレイシ

2017年08月20日 | 草木:果樹

 もう10年以上も前のことだが、知合いの庭に野球ボールくらいの大きさで、デコボコした実がたくさん生っている大きな木があって、「何ですか?あれ」と訊くと、
 「シャカトーっていうんだ。大き目のもの一つ取って食べてごらん。甘いよ。」と答える。で、お言葉に甘えて、一つ取る。半分に割ってからが食べいいというので、手で半分に割る。割る前から匂いはしていたのだが、割ると甘い匂いが強くした。中は少し黄みがかった白い果肉。黒い小さな種がいっぱいある。
 「種は食えますか?」と訊くと、「食えない」と言うので、スイカを食べる時みたいに
種ごと口に入れて、ペッ、ペッと吐き出すことにした。がぶっと齧りついて口の中に入れ
る。甘い。すごく甘い。香りも甘い。果肉はクリーミーで、まるでアイスクリームのよう
な食感。こんな美味しい果物、他にはあるまいと一瞬は思った。であったが、種が多過ぎ
て、口の中でそれを選り分けるのは面倒な作業であった。しかも、果肉周りの袋が硬く、
気になる。袋と種を選り分けて吐き出し、果肉だけを飲み込むのは至難の業であり、そう
できるまでに5、6分はかかりそうに思われた。「えーいっ!鬱陶しい」と、果肉を一口も飲み込まないまま、私は口に入れたものをそのまま吐き出してしまった。
 訊くと、家の人も面倒臭くてほとんど食べないのだそうだ。「それを早く言えよ」なのであった。それからしばらくして、この木は、撤去されることになった。
 
 バンレイシ(蕃茘枝):果樹
 バンレイシ科の常緑中木 中央アメリカ原産 方言名:シャカトー
 茘枝(れいし)は先に紹介したライチのこと。蕃(ばん)は外国のという意。外国からきたレイシということだが、でも、レイシにはぜんぜん似ていない。
 果実はデコボコした球形。小さな果実がいくつも集まった集合果といわれるもの。小さな果実にある果肉はクリーミーで非常に甘く、香りも高い。しかしながら、小さな果実にはそれぞれ種があるので、結果、種が多く、また、小さな果実同士の間には膜があって、その膜はクリーミーとははるか遠く、口の中で気になる。
 高さは5mほどに留まる。庭木としても使える大きさだが、美味しくても食べ辛いということからあまり人気は無い。種のほとんど無い品種もあるということを、知合いの造園家に聞いたことがあるが、まだお目にかかっていない。
 方言名のシャカトーは釈迦頭(しゃかとう)の意。果実が釈迦(仏像)の頭に似ているところからきている。バンレイシよりもシャカトーの方が言いやすく覚えやすいので、沖縄ではシャカトーで通る。「バンレイシって何?」と思うウチナーンチュの方が多かろう。
 
 実

 ついでに、
 チェリモヤ:果樹
 バンレイシ科の常緑中木 中南米原産 方言名:なし
 学名がAnnona cherimolaで、英語名はそこからきてCherimoyaとなり、和名もチェリモヤとなる。バンレイシと同じく、果肉はクリーム状で甘く、芳香を持っている。

 アテモヤ:果樹 →記事(沖縄の飲食「もっとアイスクリーム」)
 バンレイシ科の常緑中木 園芸品種
 バンレイシとチェリモヤの交配種で、最近から出回るようになった。

 記:島乃ガジ丸 2005.12.4 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行