クワ科ゴムノキ属(Ficus属)の仲間は熱帯性の植物が多く、したがって、倭国には少ないが、沖縄にはたくさんの種類がある。沖縄に古い時代からあったアコウやガジュマル、ハマイヌビワ、オオバイヌビワ、オオイタビ、ヒメイタビなどの他、割と新しい移入種であるシロガジュマル(ベンジャミナ)、ベンガルボダイジュ、インドボダイジュ、インドゴムノキ、カシワバゴムノキ、フィカスハワイなども同じ仲間である。
これらクワ科ゴムノキ属の仲間は、蔦植物であるオオイタビ、ヒメイタビを除いて大木になるものが多い。アコウとガジュマルも大木になる。が、この二つの大木のあり方は少々違っていて。ガジュマルがずんぐりとしたウチナーンチュ体型であるのに比べ、アコウはスラリと高く、横にも力強く枝葉を伸ばした西洋人体型といえる。背の高さはアコウに軍配があがり、幹の太さはガジュマルの方が勝っている。
ガジュマルの幹の太さは気根のお陰でもある。幹の途中、枝の途中からたくさんの気根を出し、それが成長し、幹に張り付いて、幹の一部となり、幹を太らせる。
アコウも気根を出すが、老人のあごひげのようにボーボーと出すガジュマルに比べると量は少ない。したがって、アコウの幹は割とすっきり、スラッとしたままとなる。ところが、根の勢いは強く、他の樹木の上に種が落ちて、それが芽吹いて成長すると、どんどん根を伸ばし、元の樹木を覆い、枯らしてしまう。「絞め殺しの木」とも呼ばれる。
ガジュマルはウチナーンチュに人気があり、その名を知らない人はいないくらいだ。アコウも沖縄に自生していて古くからある樹木なのだが、さほど人気は無い。100人の子供を集めて、「この木何の木」と聞いた時、ガジュマルが90人の正解者を出すとしたら、アコウは10人ていどの正解者数であろう。我が身だけでしっかりと地面に根を生やし、スラリと天高く伸び、枝葉を茂らすアコウもカッコいいのだが、「絞め殺しの木」なんていうあだ名が、平和好きのウチナーンチュに不評なんだろうか。
以下は2008年6月追記。
アコウ(赤秀):公園
クワ科の常緑高木 分布は和歌山以南、南西諸島、台湾、他 方言名:アコー、ウシク
アコウは広辞苑にあり、赤秀という字が充てられている。名前の由来については資料が無く、不明。沖縄の方言名がそのまま和名になったものと思われる。方言名は別に、ウスクガズマルともある。「石垣に生えるガジュマル」という意味らしい。岩や石垣に着生するからとのこと。岩だけでなく他の樹木にも着生する。根を勢い良く伸ばし、元の樹木を覆い、枯らすこともある。で、別名をシメコロシノキ(絞め殺しの木)と言う。
秋から冬にかけての短期間落葉する。ということで、『沖縄の都市緑化植物図鑑』には落葉樹とあった。しかし、『緑化樹木のしおり』と『寺崎日本植物図譜』には常緑樹とある。落葉の期間がごく短いということなのだろう。幹と枝だけになったアコウを私は見た記憶が無いし、見た目の雰囲気は常緑樹。で、ここでも常緑樹とした。
分布については、『沖縄の都市緑化植物図鑑』には南日本とあり、広辞苑に「愛媛県三崎町と佐賀県肥前町のアコウ樹林は北限分布地」とあったが、『緑化樹木のしおり』に和歌山以南とあり、『沖縄大百科事典』に北限は和歌山とあったので、それを信じる。
高さ20m。傘状の広い樹冠となる。陽光地、湿潤を好むが、乾燥にも強い。気根を発生するが、支柱根は形成しない。落葉後、春に白色の苞に包まれた紅茶色の新葉を出す。白い苞が花のようにも見えてきれい。果実はイチジク属らしく無花果、やや楕円形で、熟すると径12ミリ前後になる。熟した果実は、はじめ白色で後に淡紅~黒紫色になる。
なお、『寺崎日本植物図譜』には、開花期は5月、果実が熟するのは8~9月。
『緑化樹木のしおり』には、開花期は2から3月、結実期は3~6月。
『沖縄の都市緑化植物図鑑』には、結実期は周年とあった。
実
葉
新芽
幹
記:島乃ガジ丸 2005.7.3 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
私は知ったかぶりする癖があるが、「聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥。」という精神も持ち合わせている。「あれ何?これ何?何で?どうして?」などと、知識欲に目覚めた小学生ほどではないが、いろんな人にあれこれ質問している。
最も多いのはウチナーグチ(沖縄口)について、ウチナーグチの唄を作ると、そのウチナーグチが正しいかどうか、友人のE子、父、従姉の亭主、散髪屋のオヤジ、行きつけの喫茶店の常連客である老夫婦などに尋ねている。
また、親戚、友人知人の家を訪ね、そこに知らない植物があると、それがなんであるかをすぐに訊いている。叔父の家ではイーチョーバーやアシタバを教わった。散髪屋のオヤジからはキクイモ、ウンナンヒャクヤク、ブラックベリーなどを教わった。
先日、知人の家を訪ねたら、見たことの無い木があり、早速、それが何であるかを主に尋ねた。「アカメガシワです。」とのこと。すると私は、「あー、ヤンバルのですね。」と応じる。アカメガシワはヤンバル(山原、沖縄島中北部の通称)に特に多いというわけではない。アカメガシワと聞いて、ヤンバルアカメガシワが思い浮かんで、つい口からそのような言葉が出てしまったのだ。知ったか振りしたかったのである。
「やはり、新芽は赤いですか?」とも訊いた。新芽が赤いからアカメガシワという名前であることは知っていたのだが、しかし、それもまた、アカメガシワのことは概ね知っているんですよと、知ったかぶりしたい欲求の表れである。
「新芽だけでなく、葉柄も赤いですよ。」と主が言う。葉柄も赤いということは文献に記載が無く、私も知らなかったのだが、「それは知りませんでした。」とは言わず、黙って肯く。知ったかぶりオジサンはなかなかズルイのである。
アカメガシワ(赤芽柏):公園
トウダイグサ科の落葉高木 本州~九州、沖縄、朝鮮などに分布 方言名:ヤマユーナ
春の新芽が赤いことからアカメ(赤芽)、カシワ(柏)のように葉が大きいことからカシワとついて、アカメガシワという名前。
『寺崎日本植物図譜』と『新緑化樹木のしおり』には落葉高木とあったが、『沖縄植物野外活用図鑑』には常緑高木とあった。私が見た個体は、12月にも見ているが落葉の気配はまったく無かった。亜熱帯の沖縄だと落葉の必要が無いのであろう。
新芽は鮮やかな紅色をしているとのことだが、私は未確認。また、秋には美しく黄葉するらしいが、私は見たこと無い。おそらく落葉しない沖縄では黄葉もしないかも。
日本の山野に普通に見られるとのこと。高さは10m、傘状の樹形となる。
花色は白で、開花期は、沖縄では4月から6月。果実は表面に多くの棘があり、成熟すると三裂開するとのこと。結実期は6月から8月。雌雄異株。
沖縄にはヤンバルアカメガシワもある。本種とは同属で、学名は、
アカメガシワ Mallotus japonicus Muell.-Arg.
ヤンバルアカメガシワ Melanolepis multiglandulosa Reichb. f. & Zoll
葉
記:島乃ガジ丸 2009.6.14 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
荷物があまり無くて晴れた日には、たいてい私はバイクで通勤している。250ccの私のバイクは購入してから10年近くが経つ。最初の1、2年は、付き合い始めの恋人のように大事に扱っていたが、さらに年月が過ぎていくにつれて、手入れする回数が月に1、2回から年に5、6回へと減っていった。文句を言わない機械だから、それでもまだいい方なのである。恋人に「好きだ」という回数はもっとはるかに速く、もっとはるかに急激に減っていく。2次関数みたいなのである。・・・そんな話では無い。
バイクの手入れ、2、3年ほど前からは半年に1回となっていた。それが去年の夏頃(あるいは春頃だったか、記憶が不鮮明)にやって以来今日(10月4日)まで、1年以上やっていない。ガジ丸HPを始めてから、バイクの手入れにかける時間を惜しむようになったのである。今では、もはや修復不可能なほどにバイクは錆付いてしまっている。
沖縄の土壌の多くを占める赤土は、酸化した鉄が混じって、その色となっているらしい。赤い惑星、火星の表土も同じ理由で赤いとのこと。鉄は、酸化すると赤くなる。
私のバイク、錆からの修復は不可能となった今、もはや手入れしようなどという気はさらさら起きない。放っておくつもりである。あと2、3年もすれば、錆がさらに広がり、遠目には赤いバイクに見えるようになるかもしれない。そうなればまた、私には良いアイデアがある。鉄は、小鉄、鉄五郎、鉄次など強そうな名前になり、赤もまた強いというイメージを持っている。私のバイク、錆に覆われ赤く見えるようになったら、名前を赤鉄にしようと思っている。赤鉄、いい名前だ。ユクレー島の登場キャラクターにも使おう。
植物のアカテツ、公園などで目にする樹木だが、これもまたその名にふさわしく、見た目も丈夫で、強そうな姿形をしている。じっさい、その材は硬いらしい。
アカテツ(赤鉄):公園
アカテツ科の常緑高木 南日本、沖縄、他に分布 方言名:アンマーチー・チーギ
樹木全体が遠目には赤味がかっているのと、材が堅く、赤味を帯びているからアカテツ(赤鉄)という名であると『沖縄の都市緑化植物図鑑』に説明がある。方言名のアンマーチー、アンマーは母ちゃんのこと、チーは乳で「母ちゃんのお乳」という意。樹液が乳状であることからと、これも『沖縄の都市緑化植物図鑑』による説明。
高さ10mほどになる。陽光地を好み、成長は遅い。沖縄の海岸地に自生しているのを見かける。分枝が多く、樹形が乱れることがあるので適宜剪定する。剪定後の切口から腐朽しやすいので、蝋を塗るなどの腐朽防止をした方がよい。
葉はフクギのような革質。花は小さい。材は建築や船舶に用いられる。
実
記:島乃ガジ丸 2005.10.4 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
真面目なオジサンである私は、60年前の悲劇を体験はしていないが、聞いて知っていて、人が人で無くなる悲惨な状況は、二度と繰り返してはいけないと強く願っている。にも関わらず私は、「ひめゆり」という言葉を聞いて、「ひめゆり学徒隊」や「ひめゆりの塔」よりも先に、「ひめゆり通り」を思い浮かべてしまう。
那覇市の安里十字路から与儀十字路までの直線の道を「ひめゆり通り」と呼んでいる。現在は無いが、以前、安里十字路近くの栄町に「沖縄師範学校女子部」と「沖縄県立第一高等女学校」(注1)があったことから通称としてそう呼んでいるとのこと。
私の実家は那覇市泊にあって、「ひめゆり通り」までは歩いて15分もかからない、今から思えば我が庭のような範囲にあるが、「ひめゆり通り」は、中学生の私にとって恐怖の道であった。その通り沿いに神原中という学校があって、そこは不良の多い学校で、私は2度ばかり、「ひめゆり通り」でカツアゲにあっている。で、「ひめゆり通り」という言葉は心の奥の記憶に強く残っている。「ひめゆり」が「ひめゆりの塔」では無く「ひめゆり通り」を真っ先にイメージするというのは、それに起因する。
「あかぎ」という言葉を聞いて、「赤城の山」や、それを今宵限りとした「国定忠治」を思い浮かべる人が倭人には多いだろうが、私は真っ先に「ひめゆり通り」をイメージしてしまう。中学の頃そうであったかは記憶に無いが、だいぶ前から「ひめゆり通り」の街路樹はアカギの木であった。アカギは今もあり、もう大木になっている。
注1:「沖縄師範学校女子部」の交友会誌の名前を白百合といい、「沖縄県立第一高等女学校」の交友会誌の名前を乙姫といった。両校が併置された時、両者の交友会誌も統合されて名前が姫百合となった。「ひめゆり学徒隊」もここから来ている。
アカギ(赤木):公園・街路
トウダイグサ科の常緑高木。原産分布は沖縄、台湾、インド、他。方言名:アカン
高さ20mにもなる。成長が速く、萌芽力が強く、枝が混みやすいので、特に街路の場合は適宜の剪定を必要とする。切り口から腐朽しやすいので、蝋などを塗って予防する。
大木になるので民家の庭には不向きだが、枝が横に広がり、良い形の緑陰樹となるので、公園や街路樹に多く用いられている。陽光地を好む。
与那国島に生息する世界最大の蛾、ヨナグニサンの食草でもあるが、直径1センチほどの実が多数つき、鳥の好餌木ともなっている。結実期は10月から4月。
樹皮や材が赤いのでアカギという名前。その材は有用で、建築材、家具材として利用されている。
首里金城町の大アカギ群は国の天然記念物。
花
記:島乃ガジ丸 2005.7.2 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行