イヌビワもハマイヌビワも、何となくそれだろうという風で、特に目立った特長は無いのだが、オオバイヌビワはすぐにそれと判る特徴を持っている。先ず、その名の通り葉が大きい。そして、葉脈がはっきりしている。果実も目立っている。大きくて、イヌビワやハマイヌビワが球形なのに対し、扁平なカボチャ型で、表面にブツブツがある。
職場の庭にもナンクルミー(自然発生、この場合は鳥の糞に混じった種から生える)のオオバイヌビワがあり、果実ができるのを待つまでも無く、その葉っぱを見ただけで「あっ、オオバイヌビワが生えている」とだいたい判る。野原などに生えているのも時々見かける。ちなみに、イヌビワもナンクルミーしたのがあって、これはハマイヌビワと似ているのだが、職場は浜から遠い環境なのでイヌビワと判断している。
オオバイヌビワ(大葉犬琵琶):公園
クワ科の常緑高木 原産分布は奄美以南、沖縄、小笠原 方言名:カブリキなど
同属のイヌビワによく似ていて、イヌビワより葉が大きいのでオオバ(大葉)イヌビワという名前。イヌビワという名前は、果実の見た目がビワに似ているが、ビワの実より小さく、味も劣っているというところからきている。
方言名は他にカブルキともあるが、カブリキもカブルキも、枝が横に広がり、樹冠が傘状となるので「被る」ということからきている。
成長は速い。陽光地を好むが耐陰性も強い。葉の長さは15から25センチ。葉の付け根に直径15ミリほどの無花果をつける。
イヌビワ同様、この木もまたナンクルミー(自然発生)する。で、あちこちでよく見かける。ウチナーンチュには馴染み深い木なのであるが、不思議なことにどの文献にもその高さについての記載が無い。高木と紹介されているので5m以上はあるのだろうが、それほどの高さのものを私はまだ見ていない。
実
記:島乃ガジ丸 2006.9.2 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
2005年7月に、アコウを紹介している。そのすぐ後に、名前も見た目も似ているオオバアコウという樹木があることを知った。が、『沖縄の都市緑化植物図鑑』にも『緑化樹木のしおり』にもオオバアコウの記載が無く、両者の違いが不明。『沖縄植物野外活用図鑑』に載っていたが、「葉の大きさが違う」というだけで、どの程度違うのか不明。
『沖縄植物野外活用図鑑』には、オオバアコウの方言名がウシク、アコーとあって、これはアコウの方言名と同じである。ということはつまり、ウチナーンチュはアコウとオオバアコウを区別していないということになる。よって、私もウチナーンチュなので、両者を区別しないこととし、長い間、オオバアコウの存在を無視していた。
ところが最近になって、『沖縄大百科事典』にアコウとオオバアコウの違いが記載されているのを発見する。「アコウとは隠頭花序の大きさ、果柄の長さ、葉の側脈の数などで区別できる。」とあった。そういう違いがあるのなら調べてみようという気になる。
アコウとオオバアコウのどちらが大きくて、長くて、数が多いのかということまでは記載が無い。で、インターネットに頼る。それによると、果柄の長さは不明だったが、花序はアコウの方が大きく、側脈の数はオオバアコウが多いとのこと。それと、熟した果実の色にも違いがあった。アコウは熟すると黒紫色になり、オオバアコウは白色とのこと。
5月31日、雨模様の中を出かける。「何という情熱」と自画自賛しながら、以前にアコウの写真を撮った金城ダムへ行き、じっくりと観察する。果実の何割かは黒紫色をしている。アコウに間違いない。しかし、果実が小さくて白色をしたアコウに似た樹木は見つからなかった。翌日、首里城公園、翌週、末吉公園も散策したが見つからなかった。
6月8日、末吉公園を散策した翌日もまた、オオバアコウ探しに出かける。「何という情熱」と再度、自画自賛しながら浦添大公園を散策する。
アコウの大木が数本並んでいる場所で、その内の2本が、樹形も葉も他のものと変わらなかったが、果実を見ると「小さく白色」であった。他のものは文献の写真で見るアコウの果実だ。これだ、間違いない。やっと見つけた。「やったぜ!」と思う。
しかし、私の友人の多くはウチナーンチュなので、アコウとオオバアコウの違いを語って自慢したとしても、おそらく、「だから何!」と言われるだけであろう。
オオバアコウ(大葉赤秀):公園
クワ科の常緑高木 分布は沖縄島、八重山諸島、他 方言名:ウシク、アコー
アコウにとても似ていてアコウより葉がやや大きいことからオオバ(大葉)とつく。アコウという名前の由来については資料が無く不詳。アコーという沖縄の方言名がそのまま和名になったと思われる。方言名はウシク、または、ウスクガズマルともある。ウシクは『沖縄大百科事典』に薄久という字が充てられているが、意味は不明。ウスクガズマルは『沖縄の都市緑化植物図鑑』に「石垣に生えるガジュマルという意味」とあった。
岩だけでなく他の樹木にも着生する。根を勢い良く伸ばし、元の樹木を覆い、枯らすこともある。で、シメコロシノキ(絞め殺しの木)という別名がある。
分布は沖縄島、八重山諸島の他、台湾、ニューギニア、東南アジアなど。
高さは20mほど、傘状の樹形となる。陽光地、湿潤を好むが、乾燥にも強い。気根を発生するが、ガジュマルのように支柱根にまでは成長しない。果実は他のイチジク属と同じく無花果、熟すると径8ミリ前後の大きさで、白色になる。
学名、オオバアコウはFicus caulocarpa Miq.
アコウはFicus superba Miq. var. japonica Miq.
実
アコウとオオバアコウの比較
上がオオバアコウの葉と果実。下がアコウの葉と果実。たまたま採取したものは小さいが、葉は、オオバアコウがやや大きいらしい。果実は違いがはっきりしている。果柄の長さ、オオバアコウの果柄はごく短い。
記:島乃ガジ丸 2008.6.8 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
数年前のこと、当時同僚だったTが、フクギに似た皮質の葉が数枚ついた枝を持ってきて、「匂い嗅いでみて」と言う。言われた通り嗅ぐ。特に良いとも悪いとも感じられる匂いはしなかった。「何も感じないけど、何ていう木?」と訊きかえす。
「オオバアカテツって言うんだけどね。やはり、臭くは無いよね。いや、これを植えている家の人から、とても臭いと聞いたんだけどね。自分が匂っても、あまり臭いとは感じないもんだからね。自分の鼻が悪いのかと思っていたよ。」ということであった。
先月、現場仕事に出て、昼食後、いつものように近辺の散歩に出る。すると、すぐ目の前の市道に、オオバアカテツが街路樹として使われているのに気付いた。約100mの長さがオオバアカテツ並木道になっていた。同僚のKさんに確認する。
「確か、これはオオバアカテツだよね。昔Tが臭いと言っていたやつだよね。でも、じっさいは臭くも何とも無いんだよね。」と訊いた。
「葉は臭く無いんだけどね、花がどうも臭いらしい。近くに住む人から聞いたんだけどね。この道は、オオバアカテツの花が咲く頃になると臭い道になるらしい。俺もまだ嗅いだことはないから、それが本当かどうかは知らないが、そういう噂。」とのこと。
花の匂いは概ね良い匂いだと、私の常識は思っていたが、臭い花もあるのか、これはぜひ嗅いでみなくちゃ、花が咲く頃に、臭い並木道を歩いてみなくちゃと思ったのである。
オオバアカテツ(大葉赤鉄):街路・公園
アカテツ科の常緑高木 原産分布は台湾、フィリピン 方言名:なし
アカテツと同属で、アカテツより葉が大きいのでオオバアカテツという名。アカテツとは、その大きさを除けば葉がよく似ている。皮質で厚く、長楕円形である。分枝が多く暴れ木になるアカテツとは樹形が異なり、本種は樹幹が真っ直ぐ伸び、枝の横への張り出しは比較的少ない。花の匂いさえ無ければ、街路樹として使いよい。
高さは10mほどになる。陽光地を好み、耐潮風性が強い。昭和50年代後半に台湾から導入された新しい緑化樹とのこと。私はまだその匂いを嗅いだことは無いが、花には臭気があるらしい。その開花期は5月から6月。来年はきっと嗅いでみよう。そして、本当のところはどうなのか、どのくらい臭いかなどはその時、報告しましょう。
花
追記(2010年12月):花には特に匂いは無かった。夜に匂うのかもしれない、また、『新緑化樹木のしおり』に開花期は5~6月とあったが、12月に咲いた。
葉
記:島乃ガジ丸 2005.12.19 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
2005年7月に、那覇市の与儀公園で撮った写真の植物を、てっきりオウゴンジュだと勘違いして、HPでそのように発表したが、3年後の2008年には既に、それが間違いであることを認識していた。その頃、別の場所で撮った黄色の花の植物がキンレイジュだと判り、オウゴンジュだと思っていた写真の植物もそれとそっくりで、また、図鑑を見ると、キンレイジュとオウゴンジュでは葉の形状が大きく異なっていた。
ならば、オウゴンジュを急ぎ探さなければならないとその時思い、以来2年近く、オウゴンジュはいつも頭の中に「探す植物」として留めていた。
今年(2010年)になって、参考文献の一つ『沖縄の都市緑化植物図鑑』にじっくり目を通す機会があって、オウゴンジュのページもじっくり見た。すると、「あれっ?この葉の形はどこかで見たぞ。」となった。「写真は撮ったけど正体不明の植物」をまとめてあるパソコン内のフォルダを開き、確かめる。2009年5月に末吉公園で撮った樹木、図鑑と同じ黄色い花で、図鑑で図示されている葉の形が似ていた。
図鑑の写真は樹冠全体に花が付いているが、その写真の樹木はちょぼちょぼとしか付いていない。「違うの?」と思いつつ、説明文を読むと「沖縄では開花数が少ない」とあった。「そうか、ならば、お前がオウゴンジュだな。」と、私は犯人を突き止めた探偵のような気分になった。犯人は原産地と異なる環境の中で、その環境に沿った形に変装していたのだ。探偵は1年前に犯人を見ていたが、その変装に気付かなかったのだ。
オウゴンジュ(黄金樹):公園
ノウゼンカズラ科の常緑高木。原産分布は熱帯アメリカ。方言名:無し
『沖縄の都市緑化植物図鑑』にはオオゴンジュと表記されているが、別名としてゴールドツリーともあり、それは英名のGold treeからきていると思われので、黄金樹(オウゴンジュ)とした。『沖縄園芸百科』には黄金樹の字があてられている。
高さは10m以上にもなる高木だが、強風に弱いため、台風時に倒木しやすいとある。花はラッパ状の鮮やかな黄色。枝先にかたまって咲く。開花期は4月から6月。
花
葉
記:島乃ガジ丸 2010.4.5 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
キリスト教徒では無い私は、クリスマスだからといって浮かれることは無い。敬虔な気分になることもまったく無い。もちろん、子供の頃はそうでは無かった。クリスマスは大好きな行事だった。親や伯母らからプレゼントが貰えた。ご馳走もあった。
中学、高校、浪人、大学の頃もクリスマスは概ね楽しかったと覚えている。パーティーなどがあったと思う。恋人と過ごしたこともある。社会人になってからも概ね楽しかったと思う。友人たちとお姉ちゃんのいる飲み屋へ出かけ、バカ騒ぎをしていた。
30歳を少し過ぎた辺りから、クリスマスに飲み屋へ出かけることも無くなった。別にクリスマスだからと言って、キリスト教徒でも無いのに浮かれることも無かろうと思い始めたのである。友人たちと酒を飲むこともほとんど無くなっていた。
ところが、去年のクリスマスイブは飲み屋へ出かけた。1年ぶりの友人と会うという目的もあったが、街の、クリスマスの喧騒を久々に感じてみたいという思いもあった。イルミネーションのチカチカする中を歩いた。「平和だなー」という気分を深く感じる。
仏教徒では無い私であるが、菩提樹が聖樹であるということは知っていた。なぜ、聖樹であるかということも知っている。仏教徒で無いわりにはなかなかの知識である、と自画自賛するのであるが、じつは、手塚治虫の「ブッダ」を読んだお陰なのである。
インドボダイジュを発見したのは、現場作業の途中で立ち小便する場所を探している時であった。面白い形をした葉っぱだなあと思いつつ、仏教徒では無い私は何のためらいも無くその木の下に小便を垂れる。仏教徒では無いので、罰を受けることは無かろう。
インドボダイジュ(印度菩提樹):公園
クワ科の落葉高木 原産分布はインド、熱帯アジア 方言名:なし
釈尊は樹の下に座って悟りを開いたのであるが、その樹が本種、インドボダイジュであると伝えられている。菩提樹は、菩薩が堤(土手)のように座っているという意味なのかもしれない。インドに産するのでインドボダイジュという名。テンジク(天竺)ボダイジュという別名もある。ただ単にボダイジュといっても本種を指す場合が多い。
じつは、菩提樹(ぼだいじゅ)という名のつく樹は別にもある。中国原産で、シナノキ科の落葉高木であるが、私が参考にしている文献にはその記載が無い。よって、どういう木なのか不明だが、インドと名の付くボダイジュの方がどうも本家らしい。
高さは20mほどになる。成長は速く、耐陰性があり、乾燥にも多湿にも強い丈夫な樹木。釈尊の言い伝えもあって、インドでは聖なる樹とされている。葉脈のはっきりした光沢のある葉がきれい。自然に傘状の樹形となり、緑陰樹に向く。
葉
記:島乃ガジ丸 2006.1.4 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行