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ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ヤギ

2011年04月21日 | 動物:哺乳類

 沖縄に生まれた運命

 子供の頃は目の中に入れても痛くないほど可愛かったM女だが、大きくなるにつれて、さすがに目の中に入れると痛くなっていった。ではあるが、今でも可愛い。
 そのM女、今は結婚して北海道に住んでいる。一昨年、北海道を旅行した際、札幌に住む彼女を訪ねた。で、彼女の亭主を加えた三人で飲みに行った。シシャモの刺身が食いたいという私のリクエストに応えて、そういう店を選んでくれた。
 その店のシシャモは刺身では無く寿司。三人で大変美味しく頂いた。珍しいモノ好きの私はその他に、鹿の肉を食った。旨かったが、M女はそれを食わなかった。
 「ジンギスカンは大好きなんだろ?」と訊くと、
 「ヒツジは食べ物、シカは食べ物じゃ無い。」とのこと。

 先日、彼女が帰省していた時に食べ物の話になって、
 「ヒージャー汁なんか珍しいだろ、お土産に持って帰ったら?」と提案すると、
 「えーっ、気持ち悪い。」などと抜かす。ウチナーンチュにあるまじき発言だ。
 「ジンギスカンは大好きなんだろ?」と再び訊くと、
 「うん、ジンギスカンは最高。」と答える。
 「ヤギとヒツジではヒツジの方が可愛いと思うんだが。哀れには思わないか?」
 「だって、美味しいものは美味しいんだもん。」ということであった。

  多くの人が食しているものは食べ物であり、少数の人しか食べないものは食べ物では無いという感性なんだと思う。そういう食に対する偏見は彼女の母親譲りである。彼女の家ではゴーヤーが全国的に有名になる最近まで、ゴーヤーチャンプルーが食卓にのぼらなかった。そういう偏見を持っているところが、彼女の「玉に瑕」なのである。

 沖縄では棟上式の時、山羊料理を振舞う慣習がある。ヤギ1匹を潰して、ヒージャー汁、ヒージャー刺しにする。設計士、大工など建築に関わっている人々の他、家族親戚、近所の人たちなどが三々 五々やって来て、食べる。酒も振舞って、宴会となる。
 私が初めてヒージャー料理を見たのは、両親の初となるマイホームの棟上の時。私は小学校1年生であった。その頃、父方の親戚がヤギを養っていた。養って、していた。そこへ、父と二人、ヤギ肉を取りに行った。幸いにも、の現場は見なかったが、大きな肉の塊が料理用に切り刻まれるのを見た。周りで他のヤギが「ベーベー」と煩く鳴いていた。仲間を殺されて、「ベーベー」と泣いていたのかもしれない。
 子供の頃、私はヤギのことを哀れに思ったに違いない。ヤギたちは悲しそうな目をしていた。であるが今は、「沖縄に生まれた運命だ、諦めろ。」という気分である。

 ※=(肉などを利用するため)家畜などの獣類をころすこと。(広辞苑)

 
 ヤギ(山羊):ウシ目の家畜
 ウシ科の哺乳類 原種は中近東 方言名:ヒージャー、ベーベー
 広辞苑に「羊の近代朝鮮字音ヤングyangの転」と名前の由来があった。漢字では山羊、または野羊と書く。羊よりも野生的ということであろう。ヤギとヒツジは同じウシ科で、見た目もよく似ているが、属が違う。肉質も多少違う。マトンは臭いが、ヤギはとても臭い。ヒツジの方が上品なようで、ヤギ肉は倭国では一般的でない。
 方言名のヒージャー、髭のことをウチナーグチではヒージと言い、「髭の生えた者」という意味でヒージャーなのだと思われる。ヒツジのことはメーナーヒージャーと言い、これは「メーと鳴くヤギ」という意味だと思われる。沖縄のヤギは「メー」では無く、「ベー」と鳴く。というわけで、ヤギの幼児語がベーベーとなっている。
 私が子供の頃から身近にあって、高校生の頃からたびたび口にしているヤギだが、どのぐらい前からウチナーンチュはヤギを食っていたのかと調べたら、『沖縄身近な生き物たち』に「山羊の家畜化は紀元前4000年頃」とあり、「沖縄へは15世紀初めに東南アジアなどに分布する小型の山羊が入り、その後、いくつかの品種が移入され、それらの混交によってシマヒージャー(島山羊)ができた。」とあった。
 沖縄ではもっぱら食用となっているヤギであるが、乳用として、毛用としても飼われている。戦後しばらくは沖縄にも乳用のヤギが多くいたらしいが、今はほとんど肉用。
 
 普通の民家で飼われているヤギ。まだ子供。
 何のために飼っているのか不明だが、1、2匹飼っている民家をたまに見る。ペットとして飼っていると、情が移って、食べるのに躊躇してしまいそうだ。小1の時に初めてヒージャー料理に接したが、あんまり臭くて食えなかった。高校生になって、伯父の家の棟上式の時に初めて口にした。やはり臭かった。ヤギは草食である。ハーブなど食べさせて、香り良い肉にできないだろうか。

 記:ガジ丸 2008.2.3 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


リュウキュウジャコウネズミ

2011年04月21日 | 動物:哺乳類

 余裕で間に合った干支

 すっかり忘れていたが、去年の今頃、「よし、今年はイノシシ年だ。イノシシに会いに行って写真を撮るぞ。イノシシ鍋を食ってその写真も撮り、ガジ丸HPで紹介するぞ。」って思っていた。それをずっと忘れたままで、年が明けてしまった。
  年が明けて今年はネズミ年。じつは、年賀状を出さなかったので、また、来てもいないので、今年がネズミ年であることは私の意識に浅かった。なので、「よっしゃ、ネズミの写真を撮ってHPで紹介するぞ。」なんてこともまったく考えに無かった。ところが偶然にも、ネズミの写真が手に入ったのであった。
 職場で、我々の仕事を手伝ってくれているアルバイトのSさんがリュウキュウジャコウネズミの写真を撮ってくれた。彼の家には頻繁に出現するらしく、年末からネズミ捕りを仕掛けて、写真のネズミは罠に引っかかった3匹目とのことであった。

  ウチナーンチュにはビーチャー(ジャコウネズミの方言名)をモグラだと思っている人が多い。なので、「ネズミ年だからジャコウネズミを紹介する」と言うと、「ネズミじゃないよ、あれは。」と忠告する人がいるかもしれない。確かに、ジャコウネズミはネズミ目では無く、モグラ目に分類されている。ではあるが、生物学的にはモグラに近いかもしれないが、見た目はネズミである。言葉的にもネズミである。広辞苑にもネズミの項で、ジャコウネズミのトガリネズミ科をネズミという範疇に含んでいる。
 ちなみに、沖縄には、土の中をモグモグする、いわゆるあの有名なモグラ目モグラ科のモグラは生息しないらしい。私も多くの原っぱや畑を見ているが、モグラを見たことないし、モグラのモグモグした形跡も見たことが無い。
 ウシの背中に乗って干支の一番となったネズミ。その要領の良さはガジ丸HPでも発揮されて、年明け早々に紹介される栄誉を得たのであった。

 
 リュウキュウジャコウネズミ(琉球麝香鼠):モグラ目の小動物
 トガリネズミ科の哺乳類 南西諸島、東南アジアなどに分布 方言名:ビーチャー
 ジャコウは香料として有名な麝香。麝香はジャコウジカ、またはジャコウネコから採れるもので、本種には無い。ただ、臭気があって、「匂いのするもの」という意味でジャコウとなっているものと思われる。アフリカ北部からインド、東南アジアにかけて広く分布してるが、日本では南西諸島に多く生息していることからリュウキュウと付く。
 本種はネズミ目では無く、モグラ目に分類されているが、ネズミを広辞苑で引くと、広義では「ネズミ目(齧歯類)のネズミ亜目、またリス亜目のホリネズミ、さらにモグラ目のトガリネズミを含む小形哺乳類の総称」とのこと。見た目がネズミ。
 家の周りで普通に見られる。ウチナーンチュには馴染みのあるネズミ。同じく家の周りでよく見かけるクマネズミやドブネズミは胴長20センチあり、尾も長いが、本種は胴長14センチ内外、尾の長さ7~10センチ内外と小さい。口先が尖っているというのも特徴で、クマネズミやドブネズミとの違いがそれでもはっきり分る。
 屋内外、畑、野原などに住む。夜行性で雑食性、昆虫などを好むとのこと。独特の臭気を発し、臭いということもウチナーンチュによく知られている。
 
 同僚たちが食べ終わって捨てた弁当を漁って、ゴミ箱から抜け出せない奴。

 記:ガジ丸 2008.1.13 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


リュウキュウイヌ

2011年04月21日 | 動物:哺乳類

 あっ、アカインだ!

 小学生の頃、私には遊び仲間のグループがいくつかあった。隣近所に住む2、3つ歳の差がある数人のグループ。家は離れていたが、漫画が大好きで、よく一緒に漫画を描いていた同級生のグループ。通り一つ隔てたところに住む同級生Yを中心とした優等生のグループ。少し離れたところに住む勉強もスポーツもできて、ケンカも強かったクラスのリーダーSを中心としたグループなどがあり、そしてもう一つ、Sの近くに家のあった同級生Nを中心としたグループがあった。Nはいわゆる劣等生で、大人たちから見れば悪ガキの代表。ちょっと危険な遊びは、たいてい彼がリーダーであった。
 他人の家の屋根から屋根へ飛び移り、走り回って忍者のような真似をしたり、建築現場から木材をかっぱらって、それで筏を作って大きな池で乗り回したり、近くの外人住宅地に向かってわけもなく石を投げたり、ゴムカン(ゴムで石を飛ばすパチンコのことを我々はこう呼んでいた)でスズメなどを撃ったりしたことなどが記憶に残っている。

  Nのことで最も印象に残っているのは、じつは、そういった遊びとは別にある。セミを食べるという話は父母からも聞いていたので、彼がセミを食べたという話を聞いてもそう驚くことでは無かったが、ある日、一緒に遊んでいると、「あっ、アカインだ!」と急に叫んで、彼が走り出した。しばらくして戻ってきて、「ちぇ、逃がしたひゃー。」と残念がった。アカインとは犬のこと。赤い毛をした犬のことを言う。その後、彼から衝撃的な言葉を聞く。「あれはマーサンドー(美味しいよ)」とのこと。
 犬を食べるという話は、父母からも聞いていなかったので、「犬を食うのか」と私は驚いたのである。あとになって、沖縄では犬も食用としていて、沖縄の伝統的な薬膳料理には犬肉の料理や猫肉の料理があることを知った。

  以前、北朝鮮系中国人の女性数人と付き合いがあった。彼女らから、朝鮮には犬肉料理が現在でも普通にあり、肉屋さんでは犬肉も普通に売られているということを聞いた。なるほど、犬肉も普通に食えるんだなと認識し、Nのことをその時思い出した。
 羊頭狗肉という言葉がある。「見かけが立派で実質がこれに伴わないこと」(広辞苑)ということだが、「羊の頭を看板に出しながら実際には狗(イヌ)の肉を売ることから」(同)とある。つまり、羊の肉は上質で、犬の肉は下等ということ。犬肉はまあ、あまり美味しいものではないということだ。そうであろう。美味しければ、犬肉料理はもっと一般的になっているはず。私が子供の頃は、沖縄は全体が貧乏であったが、その中でも特に貧乏だったNにとっては、犬肉でもご馳走だったのであろう。

 
 リュウキュウイヌ(琉球犬):ネコ目の家畜
 イヌ科の哺乳類 琉球列島に分布 方言名:トゥラー、アカイン
 改めて考えると、身近な動物である犬、猫、鼠などの名前の由来が解らない。イヌやネコやネズミという発音からも、犬猫鼠の漢字からも、全く見当がつかない。ウシ、ウマ、ブタ、シカ、クマ、タヌキ、キツネなども不明。それらの動物たちは、人間が名前を付ける以前からそれぞれそれらの名前を持って存在していたかのような感じもする。
 沖縄の方言では、犬のことはインと言う。これは日本語のイヌの沖縄読み。リュウキュウイヌの方言名であるトゥラーは虎、体に虎のように線が入っていることから。アカインは赤犬、赤毛であることから。リュウキュウイヌにはいろんな色模様があるようで、赤いトゥラー、黒いトゥラー、白いトゥラーなどもいるとのこと。
 リュウキュウイヌは猟犬として飼われたとのこと。古くからいて、本土ではほとんど消えてしまったらしい縄文犬の血を、今なお維持しているとのこと。中型犬。

 記:ガジ丸 2006.12.17 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


リュウキュウイノシシ

2011年04月21日 | 動物:哺乳類

 野生の味

 猪鍋のことを単にシシ鍋と言うが、また、牡丹鍋とも言う。牡丹は「猪の肉の隠語」と広辞苑にあった。肉の色を牡丹に喩えたのかもしれない。隠語ということは、おおっぴらに「イノシシの肉を食う」とは言えなかったということ。イノシシの肉はまた、ヤマクジラという名でも呼ばれる。仏教の教えなのか、倭国では昔、獣肉を食うことが忌み嫌われた。ウマの肉を桜と呼ぶことなどもその頃の名残なのであろう。
 ※『動物の名前の由来』によると、�肉を牡丹と呼ぶのは花札から来ている。�のある札には牡丹がある。同様に、鹿肉のことは紅葉といい、鹿の札には紅葉がある。

  さて、ウチナーンチュは違う。ウチナーンチュは(たぶん)有史以前から獣肉を食い、仏教が伝来した後でも、「何で美味いものを食ってはいけないの。そんな教え、間違っているさー」と思ったのかどうか知らないが、ずっと獣肉を食い続けている。鳥や豚や山羊や牛を食い、犬や猫なども食った。昔は、肉は貴重品で、庶民は盆正月などにしか食えなかったらしいが、戦後少し経ってからは庶民も日常的に口にしている。

 犬や猫などは、その辺にいくらでもいるが、食用としては一般的ではない。イノシシはその量が少なくて一般的では無い。でも、イノシシは美味である。ふんだんにある犬や猫などを食おうなどとは思わないが、イノシシは食べたいと思う。
  シシ鍋を、私は2度食べている。1度目は、もう20年くらい前になるか、八重山出身の友人Yの家でご馳走になった。2度目は15年ほど前、九州を旅行している時に、大分の日田だったか、湯布院だったかの温泉宿で食べた。それ以来、イノシシの肉には出会っていない。出会いたいと願っている。来年はイノシシ年でもあることだし。ぜひ。
 八重山出身のYの家でご馳走になったと書いたが、西表島にはイノシシの生息数が多いらしく、で、イノシシが名物となっている。ただし、猟が解禁される冬場だけのもの。沖縄島でもヤンバル(山原、沖縄島北部の通称)、国頭村辺りの山には多くいるとのこと。数年前、国頭村の与那覇岳に登った際、途中の道で、イノシシが掘った後らしき現場をいくつも目撃している。イノシシは鼻で土を掘り、地中の虫や小動物、あるいは植物の根などを食うらしいのである。そういった場所は西表島でも多く発見した。
 来年はきっと、寒い時期にヤンバルへドライブし、イノシシを食ってやろうと思う。

 
 リュウキュウイノシシ(琉球猪):ウシ目の野生動物
 イノシシ科の哺乳類 ニホンイノシシの亜種で南西諸島の固有種 方言名:ヤマシシ
 イノシシはウシ目(偶蹄類)イノシシ科の哺乳類の総称であるとのことで、イノシシにもいろんな種があるみたいである。ここで言うイノシシはその一種で、子供の頃瓜坊(うりぼう)と呼ばれる、テレビや雑誌でよく見るイノシシのこと。
 イノシシという名の由来を調べる時間が無かった。なので不明。瓜坊(うりぼう)は、子供の頃背中に縦線が走っていて、それが瓜に似ていることから。方言名のヤマシシは山のシシということ。シシは獅子では無く肉のことを言う。これは和語でも同じ。広辞苑にはシシ(肉)の項で「にく。特に、食用の獣肉。」とあり、また、シシ(獣・猪・鹿)という項もあり、これには「(肉の意より転じて) けもの。野獣。特に、食肉のために捕獲する猪、鹿をいう。」とあった。日本庭園で見かけるシシオドシ(竹筒に水を流して、その竹がシーソーすることでコンと音を立てるもの)は、鹿脅しとも猪脅しとも書く。
 雄の下の犬歯が発達して牙となっているのが特徴。繁殖力旺盛で、寿命は25年ほど。交雑できるほど遺伝子は豚と近く、イノシシを家畜化したものがブタだと言われるが、あるいはまた、ブタが野生化したものがイノシシという説もある。ブタもそうらしいが、嗅覚が発達していて、匂いを嗅ぎながら鼻先で土の中を掘り、小動物などを捕食する。
 ニホンイノシシの亜種とのことで、それよりずっと小型となっている。
 頭胴長80~120センチ、体重35~55キログラム。
 
 ウリ坊
 
 木の根、草の根を食べるというイノシシの穿った跡。穿った主の姿は見えず。
 
 これは2007年の私の年賀状の一部。

 ニホンイノシシ(日本猪):ウシ目の野生動物
 イノシシ科の哺乳類 本州(およそ関東以南)、四国、九州に生息
 頭胴長110~160センチ、体重50~150キログラム
 雑食性、鼻で地面を掘り返し植物の根や茎、昆虫やミミズなどを食べ、草の葉や木の実なども食べるが、特に冬季は畑の作物も荒らすとのことで害獣になっている。畑に出没する冬場、猟が解禁(原則として11月15日から翌年2月15日まで)される。
 学名、ニホンイノシシ Sus scrofa leucomystax
    リュウキュウイノシシ Sus scrofa riukiuanus Kuroda

 訂正加筆:2012.6.17

 記:ガジ丸 2006.12.16 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『動物の名前の由来』中村浩著、東京書籍株式会社発行


ネコ

2011年04月21日 | 動物:哺乳類

 近所の猫たち

 恩知らずの猫
 3月下旬、2週続けての週末、焼き魚を酒の肴にした。アジ開き、ブリカマ、タラの粕漬け、鮭の西京漬けなどをベランダの七輪で焼いた。美味しかった。
 使い終わった七輪には、コンロ周りに使う油跳ね用のアルミカバーを2重に被せた。風で飛ばされないようカバーの四隅を折り曲げ、しっかりと被せた。
 先週、翌日仕事だったからたぶん火曜日か水曜日のこと。真夜中、ガシャガシャという大きな音に目が覚めた。音はベランダから聞こえている。七輪を置いてある方向から聞こえてくる。どうやら、ガシャガシャという音は、アルミカバーを叩いたり、ゆすったりしている音のようだ。しかし、ベランダには四方に網が張ってあるので、ベランダの中にはゴキブリも侵入できないようになっている。いったい何?
 目は覚めてはいたが、起きたくはなかったので、音の原因を目ではなく耳で判断することにした。しばらく聞いた。音にはいろんなリズムがあったが、その中で、タンタンタンというリズムがあった。アルミカバーを手で叩いている。音の大きさからするとその手は赤ちゃんよりも小さな手。・・・判った。叩いているのは猫だ。
   七輪の網にへばりついている魚の皮を、きっと猫は狙っているのだ。アルミカバーを剥がして、猫がその目的を達したのかどうか不明だったが、程なくして音は止んだ。
 翌朝、ベランダを確かめた。七輪に被せてあったアルミカバーは少しずれていた。七輪の傍に網があった。網にへばりついていた魚の皮はほとんど消えていた。
 夕方、春菊を収穫しようと畑に入ったらハエがいっぱい。畑のどまんなかに新しい猫の糞。「またか」と思う。近所の野良猫たちは私に何の恨みがあるかしらないが、5区画に分けられた畑のうち、私が担当している2区画にのみ糞を垂れる。あとの3区画は誰も手入れしていなくて、雑草が生えていて、猫のトイレにうってつけだと思うのだが、ほとんど100%、猫の糞は私の畑。週に3、4個はやられている。
 今日の糞は、昨夜、私の睡眠を妨害した猫の仕業ではないかと想像すると腹が立った。私のところから美味しいものを食っておきながら、何で私に臭い思いをさせるのだ!と腹が立った。恩を仇で返されて、泣きっ面に蜂ではないか。まったく。
 
 人家近辺で見られるのはイエネコ(家猫)という家畜のネコ。これはたぶんニホンネコ。
 
 毛色で三毛猫、虎猫、黒猫などと呼ばれる。これは近所のネコ、去年生まれた奴。

 猫の額の脳味噌で
  ベランダには四方に網が張ってあるので、ベランダの中にはゴキブリも侵入できないようになっている。のに、いったい猫はどこからベランダに侵入してきたのだろう。翌日、調べた。進入口はすぐに判った。左側の木枠と床の間に8cmほどの隙間がある。その隙間にも網を張ってはいるのだが、床に面した部分は網を垂らしてあるだけになっている。猫はその網を押しのけて入ってきたのだ。
 細かい目の網なので、ちょっと見にはそこは壁のように見えるはずなのに、猫は猫で、その猫の額のような小さな脳味噌で考えたのだろう。もしかしたら向こうへ行けるかもしれない。向こうには新しい世界が待っているかもしれない。何か美味しいものがあるかもしれない。ここは一つ挑戦してみようと思ったのかもしれない。あっぱれ!
 記:2004.4.9 ガジ丸

 ベランダのイリュージョン
 猫に負けっぱなしでは癪だったので、復讐を計画した。翌々日、8cmの隙間を10mm目の金網で閉じて、七輪で鯖を焼く。猫のもっとも好きそうな匂いが出る。その夜、予想通り猫がやってきた。金網で閉じた個所は、私が寝ているところから約1m。猫が金網を爪で引っ掻いている音がよく聞こえる。5分ほどガリガリして、猫は諦めたようだった。「ざまーみろ」だった。猫に勝ったという良い気分で、安らかな睡眠となった。
 翌日、夕方、仕事から帰って、ベランダに干してあった洗濯物を取り入れようとした時だった。洗濯物の真下に猫が寝ていた。びっくりして思わず声が出た。私のその声に気付いて、猫が振り向く。目が合う。今度は猫がびっくりして飛び跳ねる。全速力で反対側へ走る。そこは昨日金網を張った個所。そこからは抜けられないと判ると猫はまたこちらへ戻ってきた。部屋の中へ入られるのは嫌なので、私はガラス戸を閉じた。
 こちら(右)側の木枠と床の間には1cmほどの隙間しかない。いったい猫はどこから侵入したのか、不思議に思って私は、ガラスの向こうの猫を観ていた。「どこから出るのだろう。どこかに網の破れたところでもあるのだろうか」と考えていた。
 それはまるでイリュージョンだった。さっと猫がベランダから消えた。プリンセス天功もびっくりのイリュージョンだった。私はその奇跡をこの目で確かに見た。
 木枠と床の間の1cmほどの隙間は、正確には、木枠と床は20cmほど空いていて、木枠に20cm幅の杉板を打ち付けて床との隙間を塞いである。その杉板と床の間が1cmとなっている。ところが、杉板とベランダの壁との間には3cmほどの隙間があって、猫はそこから抜け出たのだ。それにしても、たったの3cmなのだ。その3cmから猫が抜け出ていくのをこの目で見ながら、私は不思議の世界を見ているかのような思いだった。猫は軟体動物でもある・・・かもしれないと思ったのだった。あっぱれ!
 記:2004.4.9 ガジ丸

 見事な戦術
 夜から明け方に掛けて、今でもちょくちょく、猫はベランダの近くにやってくる。唯一の進入口だった3cmの隙間も、2cm以上開かないように工夫したので、猫はもうベランダには入れない。悔しがる猫の顔を思い浮かべながら、安らかな睡眠を得る。
 しかし、そんな私に復讐するかのように猫は、畑に糞をする。週に3、4回だったものが、最近は毎日だ。大家が耕した箇所にもやっているが、私の畑のほうが遥かに多い。猫たちは完全に私のことを敵と思っている。とことん嫌がらせをしようとしている。
  猫たちの挑発に乗ってはいけないと、私はその糞を無視することに決めた。畑の糞を嫌がってはいない、と思わせておけば、そのうち、こんなことやっても無駄なようだと思うに違いない。臭い思いをしながら畑仕事をする、という我慢の日々が続いた。
 ある朝、正確にはこの火曜日の朝、「ならば、こんなのはどうだ!」と猫の新しい戦術に引っ掛かった。見事な戦術だった。「敵ながらあっぱれ!」と感じ入ってしまった。
 アパートの駐車場は今、よその車が入らないようロープが張られている。車を出すたんびにそのロープをはずし、車を出した後、ロープを金網に掛ける作業をしている。その金網のところは、当然、私が毎日足を踏み入れる。猫はそれを見ていて知っていた。
 丈の短い雑草が生えていて、それには気付かなかった。車に乗ったとき、臭いことに気付く。どうやら踏んでしまったようだ。確かめに行く。ロープを金網に掛けるために私が立つところにそれは在った。新しい糞には、出来立ての靴底の型がついていた。
 記:2004.4.16 ガジ丸

 近所の猫ども
 
 散歩の途中、こっちに向かって歩いて来た。こっちが止まると、向こうも止まって、しばらく見詰め合う。カメラを構えたら、「そんなヒマ無ぇぜ」とばかりにスタコラ走り去っていった。
 
 散歩の途中。まだ若いネコのようで、好奇心旺盛。カメラを構えると、「何やってんの?オジサン」とこっちをじっと見ていた。
 
 那覇市の公園。首輪をしているので飼い猫と思われるが、「迷子の迷子の子猫ちゃん」なのかもしれない。痩せているのは、しばらく飯を食っていないからかも。
 
 畑に入るところに遭遇。糞をしようと思っていたに違いない。本人は「いやー、ただ、日向ぼっこをしているだけだよ」と何食わぬ顔。最近、もっともよく見る猫。
 
 畑の向こう、隣の敷地からこっちの様子を伺っている。隙あらば畑に忍び込もうと思っていたのか、長いことこっちを見詰めていた。まだ若いネコ。
 
 隣の部屋のベランダ。このネコは古参。私のベランダにもやってくる。ふてぶてしい顔をしている。畑に糞を垂れるのは、主にこのネコと思われる。
 
 職場にも野良猫はいっぱいいる。いっぱいいて子供もいっぱい作る。このネコはまだ若い方。若いネコはすぐには逃げない。「あんた誰?食いもん持っている?」みたいな顔をする。
 
 愛の行為の最中。昼間から露天で、人目もはばからず。この2匹、最近から顔を出すようになった新参者の割りに、古参のネコ(他に3匹ほどいる)どもより威張っている。

 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行