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ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

スイギュウ

2011年04月21日 | 動物:哺乳類

 西部劇の景色

 中学の頃、西部劇が好きで、たくさんの映画を観た。テレビで放映された名画といわれるものもほぼ欠かさず観た。『駅馬車』、『荒野の七人』、『真昼の決闘』、『大いなる西部』、『シェーン』などなど。それらの映画にはジョン・ウェイン、ジェームス・スチュワート、アラン・ラッド、ユル・ブリンナーなどなどの名優が出ていた。彼らの顔も名前もよく覚えている。今、手元には何の資料も無いが、他にもクリント・イーストウッドやジュリアーノ・ジェンマといったマカロニウエスタンの俳優たちも覚えている。中学の頃の柔らかい脳味噌は、観たもの聴いたものを深く記憶に留めているようだ。

 西部劇の西部とは、アメリカ合衆国の西部を指しているのであるが、私の記憶にある西部劇の景色は、西部でも主に南方にある西部だったように思う。メキシコ人がよく登場したし、砂漠の景色が多く出てきたように思う。『荒野の七人』の他、『荒野の1ドル金貨』や『荒野の用心棒』など「荒野」と名の付く西部劇がいくつかあって、そのために、西部イコール荒野イコール砂漠というイメージを私は持ったのかもしれない。
 西部にはまた、地平線の見える大草原の景色も多くあり、その中をカーボーイたちが駆けているというシーンも多くある。周りにはたくさんの牛が群れている。なわけで、西部劇の景色といえば砂漠の他、草原のカーボーイと牛も加わっている。
  もう一つ、川や湖といった水辺のシーンには、たいていバッファローの群れがいて、その景色も私の記憶に強く残っている。だから、バッファローといえば西部劇であり、アメリカの動物の代表は、私にとってバッファローとなっていた。

 大学生の頃、八重山旅行へ出かけた。私にとって初めての八重山であった。海がきれいであること、サンゴが豊かであること、道が白いこと、沖縄の伝統である木造赤瓦、石垣塀の建物が多く残っていることなどに驚き、感動したのであるが、一番驚いたのは水牛がいたことである。それもたくさん、そんじょそこらに普通にいたのである。それまで、水牛と言えばバッファロー、バッファローと言えば西部劇の世界、と私は思っていたのである。それがまあ、私のすぐ傍にいて、糞を垂れたりしたのであった

 
 スイギュウ(水牛):主に農耕用の家畜
 ウシ科の哺乳類 アジア、アフリカ、アメリカに分布 方言名:ミジウシ
 スイギュウは、水辺に生活の場を持つウシの総称であり、名前がスイギュウ(水牛)となっている。アジアスイギュウ、アフリカスイギュウなどの種がある。
 沖縄への移入は20世紀初め頃とされているが、おそらくインド、東南アジア、中国に分布するアジアスイギュウが農耕用として持ち込まれたのであろう。
 ぱっと見ただけで、それがウシでは無くスイギュウであると判る。角の大きさと形が普通のウシとは違う。スイギュウの角は大きく、断面が三角形になっている。

 記:ガジ丸 2006.1.16 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


ケラマジカ

2011年04月21日 | 動物:哺乳類

 ふん、ふん、ふん

 心も体も、いつも真っ直ぐ立ち、真っ直ぐ正面を見据えている。いつも自分に厳しくあり、心の中に他人を思いやる余裕をいつも持ちつづけている。長い年月そうしてきたことの結果は、その人の顔になり、その人の人間としての魅力となっているのだろう。
 私は大概、怠け者ではあるが、その人、高倉健のようなオジサン、あるいはジイサンになれたらいいなあなどと思っている。無理とは認識しているが。
 憧れの人というのは男性だけでなく女性にもいる。子供の頃、高倉健のような男になりたいと思い、大人になってからは高倉健のようなオジサンになりたいと思い、オジサンになってからは高倉健のようなジイサン(には見えないが)になりたいと思っていたのと同様に、女だったら、こんな女になれたら最高だろうなあという憧れ。

 液晶テレビのコマーシャルをしている吉永小百合は、御歳60歳になるらしい。とてもそう見えないし、なおかつ、歳取るにつれてさらに魅力が増しているようにも思える。知的であり、上品であり、心の優しさがオーラとなって全身から漂う。
 そんな彼女が昔、雲子の歌を歌っていたという。雲子といっても鹿の糞。
 「奈良の春日の 青芝に 腰を下ろせば鹿の糞 フンフンフン黒豆や・・・」と歌う。鹿の糞が黒豆のようであるというのは解るが、しかし、何でまた、糞、糞、糞と連呼する必要があるのか。吉永小百合が、鹿の糞が大好きみたいに聞こえるではないか。
 一昨年、奈良を旅した。別に鹿の糞を見に行ったわけではないが、思った以上に鹿がいて、芝生の上には確かに黒豆もあった。黒豆はあったが、歌にするほどの価値があるかどうかについては理解できず、まして、吉永小百合が歌う意味については全く理解不能。

 沖縄にもごく少数だが、鹿がいる。慶良間諸島にのみ生息するケラマジカ。17世紀に薩摩から移入されたらしい。鹿は農耕の役には立たないので、おそらく食用として移入されたのだろうが、沖縄の日常食に鹿肉料理は無いと思う。特別なものなのであろう。
  冊封使(簡単に言うと、お前を琉球国王として認めるという明国の使い)を接待したときの料理にシカ肉料理がある。それは、『琉球冊封使一件』(1808年)などに記されている。接待料理の大部分は中国料理で、シカ肉料理もその一つ。
 とん鹿肉(とんしかにく):鹿肉の蒸し煮。
 鹿筋(しかきん):鹿のアキレス腱を使った料理。
などが記されている。文献には、材料は中国から取り寄せたとある。接待料理はなるべく地元の材料を用いようと、当時の役人、特に薩摩の役人が考えて、で、慶良間で鹿を繁殖させようと考えたのかもしれない。実際、使ったのかどうかは不明。 

 
 ケラマジカ(慶良間鹿):ウシ目の野生動物
 シカ科の哺乳類 アジア東部に分布 方言名:コーヌシシ
 慶良間諸島に生息するシカなのでケラマジカという名前。シカは、古い時代にはイノシシを含め単にシシと言い、イノシシと区別する際にカノシシと呼んだらしい。シシは獣のことを指し、猪(い)の獣(しし)、鹿(か)の獣(しし)という意味となる。カがシカになった由来は不明。方言名のコーヌシシはカノシシの沖縄語発音だと思われる。
 『沖縄大百科事典』によると「『琉球国由来記』に、ケラマジカは1628~44の間に薩摩から慶良間諸島に移入された」とのこと。また、「元は、渡嘉敷島、座間味島などにもいたが、農作物に被害が及んだため駆逐された。現在では阿嘉島、外地島、屋嘉比島、慶留間島に生息している。この内屋嘉比島と慶留間島に住むものが天然記念物として保護されている。」とのこと。1972年に国の天然記念物に指定された。
 ケラマジカは他のエゾシカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカ、ヤクシカ、ツシマジカなどと同様、ニホンジカの亜種として位置付けられている。
 学名はCervus Nippon keramae。

 2010年10月追記
 1983年発行の『沖縄大百科事典』に、ケラマジカの生息数は屋嘉比島、慶留間島、阿嘉島の3島合わせて60頭前後とあったが、1996の琉球新報の記事によると、19
95年の調査では約230頭いたらしい。農作物を荒らす厄介者が、絶滅危惧種に指定されてから保護されるようになり、生息数も増えていったものと思われる。
 夜行性の動物で、しかも臆病で警戒心が強いことから人前に姿を現すことは滅多に無いとのことであったが、慶留間島へ行った友人の息子K1によると、昼間でもその辺にウロチョロしていて、近付いても逃げなかったとのこと。絶滅危惧種に指定されてから、人は危害を加えないということを認識するようになり、人慣れしたものと思われる。
 繁殖期の秋になると、雄は鳴き声を発する。鳴き声に関する資料は無いが、私の耳にはヲー、ヲー、ヲーヲと聞こえ、抑揚があり、2、3分間隔で数回鳴き続けた。

 記:ガジ丸 2005.1.14 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


ブタ

2011年03月11日 | 動物:哺乳類

 沖縄の古い民家、例えば、国指定重要文化財となっている中村家住宅などを訪ねると、屋敷の中に豚を養うであろう一角を見ることができる。中村家住宅は300年くらい前の建物だが、そんな大昔まで遡るまでもなく、私が子供の頃、ほんの4、50年前だって、豚小屋のある家はさほど珍しいものでは無かった。当時、私の家は那覇市三原という、現在のモノレール安里駅から徒歩10分とかからない場所にあったが、そんな街中でも豚小屋を見ることができた。識名園から徒歩10分とかからない那覇市繁多川に伯母一家が住んでいたが、伯母の家は山羊、鶏、アヒル、そして、豚を飼っていた。
  子供の頃、それほど身近な動物だった豚だが、今は全く身近では無い。確かな記憶では無いが、私はここ20年ばかり豚さんの姿を見ていないと思う。動物としての豚を紹介しようと思って、写真を撮らなきゃあと思って、あちこち散歩をしている最中も「豚小屋ねぇかなぁ」と意識しながら歩いていたのだが、見つからない。
 「昔は豚小屋なんてどこにでもありましたよねぇ」と、行きつけの散髪屋で、髪を切って貰いながら親父に訊いた。「あー、あったよ。石嶺は田舎だったからなぁ、すぐ近所にもいくつかあったよ。」とのこと。私の記憶は正しかった。
 
 某スーパーで仕入れ担当の親分をしている友人のKYに、「豚さんの顔が見たい。昔はあちこちで豚さんに会えたんだが、今は、田舎を散歩していても、牛や山羊や鶏は見つかるが、豚はまったく見えない。どこに行けば会える?」と訊いた。
 「昔みたいに個人が小規模で養っている豚はもういない。今の養豚はある程度の規模を持った養豚場に集約されている。だから、養豚場へ行けば豚はいる。しかし、養豚場は個人が勝手に入ることはできない。口蹄疫の問題があるからだ。」とのこと。
  その数日後、友人の脱サラ農夫KSに、「そっちの畑の近くに養豚場ってないか?」と訊いた。「あるよ、畑から車で5分とかからない場所だ。」ということで、さっそく、その場所へ出かけた。養豚場はあった。しかし、門があり、門は門扉で閉じられていて、中に入ることができない。豚舎はまた、そこから2、30メートルは離れていて、豚の姿どころか、鳴き声もよく聞こえなかった。警戒は厳重なようであった。

 それから一ヶ月ほども経って、仕入れ担当親分から連絡があった。「仕事で養豚場へ行くことがあ る。俺と一緒なら豚に会える」と彼は前に言っていて、その連絡であった。彼は行かないが、彼の部下が行くので「彼と一緒に」ということであった。
 その部下、Yさんから事前にメールがあった。私への質問だった。「最近、外国に行った事はありませんか?また他の畜産関係の農場に出入りしていませんか?かぜやインフルエンザにかかっていませんか?家族にインフルエンザがいませんか?」といった内容。その全てに「いいえ」でないと、案内はできないらしい。厳重である。

 全てが「いいえ」であった私は、Yさんに案内され て、豚舎を見学することができた。豚さんの顔を見るのはおそらく十年から二十年以上ぶり。豚さん達は相変わらずの顔をしていたが、何か、昔の豚さんとは印象が違う。どこだ?体つきだ。
 「私が以前によく目にしていた豚とは体格が違いますね、スマートですね。」
 「昔は残飯などを与え、豚が栄養過多になって、健康状態も肉質も悪かったのですが、現在では配合飼料によって豚の肉質や健康が管理されています。」とYさんは言う。
 そう、豚は雑食性で、昔は餌とするために農家の人が家々を回って残飯を集めていた。そういう 光景は私が中学生の頃まではよく見かけた。

 ブタの餌というと、戦前までは人糞だったと『沖縄身近な生き物たち』にある。トイレの下にブタを飼い、人が糞をすると、それをブタが食べる、そのトイレのことをウヮーフール(フールが便所の意)と言う。ブタの餌が人糞であったことも、ウヮーフールというものがあったということも、戦前を生きた父母から私は聞いている。
 ブタは食用として世界に広く飼育されている。沖縄でも日常に欠かせない食材。倭国が仏教の普及で肉食が禁じられていた頃も、仏教の教えは無視して沖縄はブタを食った。その頃は庶民の日常食ではなく、盆正月などの特別食だったらしいが。
 沖縄にブタ肉料理は数多くある。赤肉や脂を食い、顔も食えば、耳も食い、内臓も食って、爪先まで食う。戦後は庶民の日常食となり、ブタに感謝している。
 
 イノシシを家畜化したもので、沖縄では17世紀頃から養豚が広がった。
 
 私が子供の頃は、豚の餌は残飯だった。そのせいか、豚は臭かった。
 
 私が子供の頃は無かったと思うが、もっと昔、豚の餌は人糞だった。
 
 現在、豚の餌は配合飼料で、匂いも和らいだらしいが、やはり臭かった。
 
 臭いと言っても、たぶん昔ほどでは無い。十分我慢できる。
 
 口蹄疫の関係であまり近付けなかったが、触っても構わない程の臭さ。

 ブタ(豚):ウシ目の家畜
 イノシシ科の哺乳類 イノシシを家畜化したもの 方言名:ウヮー
 ブタの名前の由来は資料が無く不明。イノシシを家畜化した後にブタと名前が付いたと思うが、シシ(イノシシの古い呼び名)がブタとは革命的な変化だ。何事があったのか興味が湧く。あるいは、「太いシシだなぁ」とどこかの誰かが仰って、「太い」が「フト」→「ブタ」と変化した、なんて、単純な話なのかもしれない。
 方言名のウヮーは、鳴き声からだと私は思う。ブタの鳴き声、倭国では「ブー、ブー」のようだが、沖縄のブタは「ウヮー」と鳴く。少なくとも私にはそう聞こえる。
 『沖縄大百科事典』に、沖縄への伝来はいつごろか不明で、甘藷(サツマイモ)を栽培するようになって庶民の生活が安定した17世紀ころから養豚が広く普及したと記述されている。『沖縄身近な生き物たち』も同様の記述があった。
 イノシシを家畜化した結果、野山を駆け回るイノシシとは体型が異なっていった。運動せず食べてばかりの人が太るのと同じようになった。太って、皮下脂肪が増えた。きっと運動能力も低下している。ただ、嗅覚はイノシシと同じく鋭いとのこと。
 肉は食肉として、世界で広く食されている。皮は皮革製品に利用される。多くの品種があって、沖縄ではアグー(純粋種はごく少ないらしい)豚が有名。

 記:2011.1.25 ガジ丸 →沖縄の動物目次