家から数分のところに馴染みの散髪屋がある。およそ2ヶ月に1回、私はそこへ通っている。短く刈ってもらって、髪がボサボサに伸びて、「えーい!鬱陶しい」と我慢できなくなってから行くので、散髪屋通いは2ヶ月に1回となっている。
十数年前から頭頂部の毛髪量に不安のあった私は、11年前、最初にその散髪屋へ行った時から、そこのオヤジに我が禿具合を尋ね、以降、時々その進み具合を訊いている。オヤジさんは優しいので、たいてい「前と変わっていないよ」と答えてくれる。
先月(2月)中頃、今年初の散髪へ出掛けた。店内へ入る前に、ごく近くでヒヨドリの鳴き声が聞こえてきたので、探した。最近はデジカメを持って出掛けるようにしているので、カメラを出し、構えて、声のする方へ近寄った。散髪屋の道に面した花壇にヒヨドリを発見する。花壇には、奥にソテツ、手前にシマヤマヒハツが植わっていて、ヒヨドリはシマヤマヒハツの中にいた。シマヤマヒハツは、私の頭頂部とは反対によく茂っていて、ヒヨドリの姿はそれに隠れて全体が見えない。さらに近付くと逃げてしまった。
シマヤマヒハツは街路樹や民家の庭でよく見かける。この植物にも別項で紹介した沖縄のコショウ、ヒハツのように実が付く。私は長い間、これもまたヒハツのことだと思っていた。蔓性のヒハツもあれば、このように木立性のヒハツもあるのだろうと思っていた。ヒヨドリを逃がしたのは残念だったが、ちょうどその時期であったシマヤマヒハツの実を見ることができたのは幸運であった。写真を撮った。後日調べた。
別項で述べた通り、沖縄のヒハツはヒハツモドキといい、方言名を調べると、八重山でピパーチ、宮古でピパーツ、沖縄でフィファチとある。シマヤマヒハツの方言名はアワグミとあった。違う植物なのであった。ヒハツモドキはコショウ科のツル植物であり、その果実を粉にしたものを香辛料にする。シマヤマヒハツはトウダイグサ科の低木。果実は食用になるが香辛料にはならない。実や葉の姿形も、見た目はっきり違っていた。
シマヤマヒハツ(島山ひはつ):添景・生垣
トウダイグサ科の常緑低木。原産分布は与論島以南、台湾。方言名:アワグミ
別名コウトウヤマヒハツ。高さ3mに達する。枝の分岐が多く、強い刈込みに耐えるので玉作りや生垣に向く。耐陰性があるので、建物の陰になる場所の生垣などに適す。
果実は緑色から桃色、熟すと黒に変わる。食用になり、果実酒にもなる。潮風にはあまり強くない。採種期は9月から2月。
シマヤマヒハツはヤマヒハツ属で、沖縄には同属のヤマヒハツも自生している。ヤマヒハツはしかし、庭木としてはあまり用いられていないようで、私は見たことが無い。
ひはつという漢字、参考文献には無かった。ネットで調べるとあるにはあったが、常用漢字ではない難しい字なので、ここでは取り上げない。ひらがなで良しとした。
花
実
記:島乃ガジ丸 2005.3.8 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
名前にシマの付く物は沖縄に多くある。その際、シマは概ね「島」という意味である。島は「沖縄産の」という意味を含む。シマバナナ、シマゴメ、シマザケなどはそれぞれ、沖縄産バナナ、沖縄産米、沖縄産酒(具体的には泡盛のこと)を指す。
シマゾーリは「島の草履」ということだが、これはたぶん「沖縄産の」ではなく、「田舎風の」という意味合いが強いと思う。沖縄に昔からある薄っぺらなゴム製のビーチサンダル風草履、私が子供の頃から一般庶民の履物であった。
シマにはまた、同じく「島」という意味ではあるが、「劣ったもの」というニュアンスを含む場合もある。昔、泡盛はシマーと呼ばれていた、その頃の泡盛は臭くて、ウィスキーに口の慣らされたウチナーンチュは「劣ったもの」という意味で泡盛をシマーと呼んでいた。タバコについても同じで、沖縄産タバコはシマーと呼ばれていた。
私自身若い頃は、感覚的にはシマーを蔑んでいた。飲み始めの酒はウィスキーで、それに比べると泡盛は不味い酒だった。吸い始めのタバコはアメリカ産で、県産タバコは不味いものであった。どちらも、「シマー」と呼んで、一段下げられていた。
今回紹介するシマヒギリ、このシマという意味が不明であった。ヒギリに比べると艶やかさという点で一段落ちるので、シマと付いたのだろうか、不明。
シマヒギリ(島緋桐):添景
クマツヅラ科の常緑低木 東南アジア原産 方言名:なし
キリ(桐)はゴマノハグサ科の落葉高木、沖縄には産しない。写真で見る限りでは、花は全然似ていなくて、葉が少し似ている。ヒ(緋)は花色から。で、ヒギリの説明はつくが、シマ(島)が不明。シマが付くと沖縄産という意味になることが多いが、本種はヒギリよりずっと後に入ってきたようで、方言名(ヒギリはチリントゥという)も無い。ヒギリより艶やかさに欠けるので、「田舎の」という意味があるかもしれない。
別名リュウセンカ(竜船花)とあったが、イメージが湧かない。
高さは1~2mしかないが、葉は大きく長さ15~20センチある。枝先に出る円錐形花序もまた大きく、これも長さ20センチほど。花弁は白色、花茎、がく片、雄しべが深紅色をしている。開花期は5月から9月。耐陰性はあるが、耐潮風性は弱い。
ヒギリと似ているが、花序が大きく花弁が白であることが異なる。学名は、
シマヒギリ Clerodendrum paniculatu
ヒギリ Clerodendrum japonicum (Thunb.) Sweet
花
記:島乃ガジ丸 2009.6.25 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
私は十分にオジサンという歳であるけれども悲しいかな(楽なんだけれど)一人暮らしである。カッコの中に「楽なんだけれど」と書いたのには理由(わけ)がある。私は料理が好きなので毎日三食の飯を作るのを苦痛としていない。掃除は好きでないけれど、汚れた部屋にいることを苦痛としていない。洗濯も面倒なことだと思っているが、洗濯機がやってくれるので、さほど苦痛では無い。アイロンの必要な服を着ることは滅多に無い(1年に1回あるかないか)ので、アイロンがけすることも無い。なもんで、楽である。
私は十分にオジサンという歳である、がゆえに老眼である。老眼鏡を持ってはいるが、ケースから出すのが面倒なのでほとんど使っていない。針に糸を通すときは老眼鏡が必要であるが、その時も面倒臭がって老眼鏡を使わない。しばらく挑戦するが、結果として針に糸は通らないことになる。結果として、縫い物はできないということになる。
ボタンの取れたシャツが3枚ある。3枚ともボタンが取れたのはもう2、3年以上も前のことである。ボタンが1つ取れたくらいでは着るのに何の支障も無いので、構わずそのまま着ている。ボタンの取れたズボンも1着ある。これも、チャック(今時はジッパーと言うのか)は元気だし、ボタンの箇所はベルトで隠れるので、構わず穿いている。
取れた4つのボタンは一応保管してある。小物入れの小さな抽斗(ひきだし)に入っている。これらのボタンを私は、ミコンノボタン(未婚の釦)と呼んでいる。
植物のシコンノボタン、シコンとボタンの間にある”ノ”は、”未婚の釦”の”の”とは違い、所有や同格を表す助詞では無い。じつは、紫紺色の野牡丹ということで、同格の助詞”の”を間に入れたいところであるが、シコンノノボタンでは口が回り辛い。名前をつけた人もきっとそう思って、”の”を省いたのだと思う。・・・違うかな。
シコンノボタン(紫紺野牡丹):花壇・鉢物
ノボタン科の常緑低木 ブラジル東南部原産 方言名:なし
園芸店で鉢物として売られているのをよく見る。その名前がノボタンとなっていることが多いが、ノボタンは沖縄を含むアジアの産で、両者は同じ科でも属が違う。
花の色が紫紺で、花や葉の形状がノボタンによく似たノボタン科の植物、というわけでシコンノボタンという名。花や葉がノボタンより少し小ぶりであるという違いがある。
ブラジル原産という熱帯性の植物であるが、耐寒性も少々あるようで、日本の暖地(九州とか四国とか)では露地でも生育するとある。もちろん、沖縄の露地では堂々と生育する。民家の庭先や公園の花壇などでよく見かける。開花期は7月から11月。
英語名にGlory bushとあるように潅木性となる。Gloryは「栄光の」といった意。
記:島乃ガジ丸 2005.11.14 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
超人というと、すぐに頭に浮かぶのはスーパーマン。普段は新聞記者をやっているらしいということから、スーパーマーケットの店員のことではないとは判る。
「スーパーマンってどういう意味?」と誰かに訊いた。
「超人ってことだ。」と誰かが答えた。
「超人ってどういう意味?」と、さらに誰かに訊いた。
「人を超えた能力を持つ者ってことだ。例えば、弾よりも速く、機関車よりも強く、高いビルも飛び越える能力を持っている者のことさ。」と誰かがさらに答えた。
スーパーマンってスゲェーって思っていたら、スーパーキングなんて名前の付いた植物に出会う。王を超える者、超王、超人よりもさらにすごい能力を持っていそうだ。そんなたいそうな名前が付いているので、サンタンカの一品種に過ぎないが、ここは敬意を払って、サンタンカやベニデマリとは別途紹介することにした。
サンタンカスーパーキング(山丹花超王):花木・切花
アカネ科の常緑低木 カロリン諸島(園芸品種) 方言名:サンダンクヮ
広辞苑にサンタンカは山丹花、及び三段花とあった。花が連なって咲く様から三段花とは参考文献にあったが、山丹花は不明。丹は「赤」という意味があるので、山に咲く赤い花ということなのかもしれない。三段花はサンダンと濁り、山丹花は濁らない。
スーパーキングなどとたいそうな名前だが、その名の通り、他の種に比べると全体に大柄で、丈も高く、葉も花も大きい。もちろん、山丹花超王の超王は私の当て字。
別名にスマトラサンダンカ、オオバノサンタンカなどがあるが、スマトラは産地から。オオバノは「大葉の」ということ。オオハナサンタンカでも良いような気がする。
他のサンタンカ類が高さ1m程度なのに対し、本種は2mほどになる。丈は高くなっても枝が細いので、大きな花のかたまりが重すぎて倒れているものもよく見る。サンタンカ類の中では花冠が最も大きい。花色は紅色、開花期は6月から8月。
よく日の当たる場所で生育が良く、花付きも良い。他のサンタンカ類は酸性土壌を好むが、本種はアルカリ土壌でも生育する。カイガラムシがつきやすい。
学名、
サンタンカスーパーキングIxora Duffii T. Moore cv. 'Super King'
ベニデマリIxora coccinea L.
サンタンカIxora chinensis Lam.
花
ついでに、学名は不明だがジャワサンタンカの写真
花
実
記:2011.6.7 島乃ガジ丸 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
友人のE子は子供を三人産み、りっぱに育て上げている。長女は成人し、就職し、結婚を間近に控えている。長男は柔道でインターハイの県代表。中二の次男はサッカーで活躍し、ギターの練習にも熱心な努力家。三人の人間を社会に貢献できるよう正しく育て上げたのだ。これだけで既に彼女は、女性としても人間としても尊敬されていい。
十分尊敬に値する母親は、だからもう、今さら水着など着て、亭主や周りの男たちの目を楽しませることなどしなくていい。どちらかというと、そんなことしてくれない方がいいと亭主は思っているかもしれない。どちらかというと、私もそう思う。
彼女の亭主も私も、どちらかというと、くびれたウエストが好きみたいなのだ。三段に折り重なったお腹はあまり好きでは無いみたいなのだ。畳の上に胡坐座りしたE子のお腹は、Tシャツの上からでもはっきり判る見事な三段腹なのである。
一説では、三段に重なるようにして咲くから三段花と名の付いたと言われる植物、サンダンカは沖縄の三大名花の一つ。原産地として沖縄と書いてある書物もあるから、おそらく古い時代から沖縄で愛されていた庭木であろう。どこの町でも、公園や民家の庭に良く見かける。橙色の花は青い空に映えて、美しい。
サンタンカ(山丹花・三段花):花木・切花・生垣
アカネ科常緑低木 原産分布は沖縄、中国 方言名:サンダンクァ、チャサンクヮ
花が連なって咲く様から三段花とは、参考文献にあったが、山丹花は不明。丹は「赤」という意味があるので、山に咲く赤い花ということなのかもしれない。
文献によってサン「タ」ンカとサン「ダ」ンカと表記が違う。山丹花ならサンタンカだし、三段花ならサンダンカと読める。どちらでもいいが、参考文献の多数決でサンタンカと濁らないことにした。私と私の周囲はサンダンカと濁って発音している。
別名をイソクラと言うが、これは属名Ixoraから。イソクラはサンタンカの属名で同属のミニサンダンカやジャワサンダンカなども含まれる。
高さは1mほどになる。剪定が効き、分枝も多いので刈り込んで生垣なども作れる。酸性土壌で、よく日の当たる場所を好む。カイガラムシがつきやすい。
花はマリ状にかたまって咲く。色は橙、開花期は4月から11月(環境によってはほぼ周年)。デイゴ、オウゴチョウと並んで沖縄の三大名花とされている。石川市、佐敷町の指定花、宜野湾市、東風平町の指定花木となっている。
学名、
サンタンカIxora chinensis Lam.
ベニデマリIxora coccinea L.
サンタンカスーパーキングIxora Duffii T. Moore cv. 'Super King'
花
訂正加筆:2011.2.1
記:2004.7.29 島乃ガジ丸 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行