goo blog サービス終了のお知らせ 

ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

オキナワウラボシ

2017年08月13日 | 草木:シダきのこ他

 倭国の風習ではどうなのか知らないが、沖縄ではハチナンカ(初七日)から四十九日まで、ナンカ(週忌)の午前中に毎週、男だけで墓参りをする風習がある。というわけで、このところ毎週、私も我が家の墓を訪れている。
 墓地の入口から我が家の墓まで50mほど歩く。幅1~2mほどの細い道。両側に他家の墓が並んでいる。その道の中間辺りにある他家の墓の壁にオキナワウラボシが付着している。私とは2ヶ月前からの顔見知りだ。2ヶ月前からほとんど変わっていない。仲間を増やしたりせず慎ましい姿、「おう、相変わらず謙虚だな」と挨拶する。
 倭国の風習ではどうなのか知らないが、沖縄では年に2度、墓を掃除する機会がある。1度目はシーミー(清明祭)の時、シーミーは各家の墓で行うが、その日、または前日までに墓を掃除しておく。2度目は七夕の時、旧暦の七夕である。旧暦の七月七日は旧盆の約一週間前で、その日に墓の掃除をする。盆にはご先祖様が家にやってくる。ご先祖様は家に来る前に先ず墓を訪れる。で、墓をきれいにしておく、というわけらしい。

 シーミーの頃には気付かなかったが、七夕の掃除の時にオキナワウラボシに気付く。シーミーの後、七夕の少し前にこのHPでいくつかのシダ植物を紹介していて、その時、図鑑を見ていて、その特徴ある姿が記憶に残っていた。
 
 オキナワウラボシ(沖縄裏星):下草
 ウラボシ科の多年生シダ 琉球列島、小笠原諸島、熱帯亜熱帯に分布 方言名:不詳
 実物の写真を撮って、図鑑と見比べて、「これだ!」と思って、名前を見て、「なるほど」と納得した植物の一つ。他のシダ植物に比べて大きめの胞子嚢が、くっきりと葉の裏に目立っている。胞子嚢は円形、それを星とみなして裏星ということ。
 葉は革質で光沢がある。長さは20から40センチ。胞子嚢は黄褐色をしていて、裂片の主脈と縁の中間に一列に並んでいる。
 海岸から山裾の岩上に自生しているのが見られる。実家の墓は海岸近くの丘にあり、その墓地の他家の墓の壁に本種が2株ほど付着していた。2株とも3、4つの葉をつけているだけで、慎ましい感じを受ける。他の場所でも群生しているのはあまり見ない。その慎ましさは、庭の石組みの根締めに使い良いと思われる。
 
 葉裏

 記:島乃ガジ丸 2007.11.3 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行


オオタニワタリ

2017年08月13日 | 草木:シダきのこ他

 ガジ丸は、大きなガジュマルの老木の傍で生まれた(ということにしている)ので、ガジ丸という名前となっている。というわけで、このHPにとっては、ガジュマルはその名前の由来ともなっている大事な木である。・・・なのであるが、ガジュマルの名前の由来を私は知らない。ガジュマル・・・、なんとも不思議な名前。
 広辞苑によると、ガジュマルは漢字で榕樹とあるが、これはおそらく漢名であろう。ガジュマルという音は琉球語としている。ウチナーグチ(沖縄口)でガジュマルはガジマルと発音する。ガジマルがちょっと訛ってガジュマルとなったようだ。しかし、ウチナーグチのガジマルは意味不明。「ガジガジしていて丸い」という印象なのかもしれない。
 幹肌が黒いからクロキ、赤いからアカギ、茶色いからチャーギなど、ウチナーンチュの名前の付け方は単純である。それに比べ、倭人の名前の付け方は風情がある。今回紹介するオオタニワタリもそんな風情のある名前の一つ。
 樹木の生い茂った山に分け入る。山道をどんどん登っていく。風が吹く、木立がざわめく。幾種もの鳥の声が辺りに響く。深い山の中で突然、視界の開けた場所に出会う。眼下に渓谷があり、その岸壁は茶色い岩肌であるが、その中にポツンポツンと鮮やかな緑色が見える。「ほう」と思わず声が出る。そんな景色が目に浮かぶようである。
 
 オオタニワタリ(大谷渡り):添景・鉢物
 チャセンシダ科の多年生シダ植物 西日本以南に分布 方言名:ヤマガシャ
 オオタニワタリは広辞苑にあり、大谷渡りという漢字が充てられている。なかなか風情のある名前だ。参考にしている文献に名前の由来は無かったが、その字から推理する。オオタニワタリは岩に着生する。岩壁に生えている。昔の、風情のある人が、谷間の岸壁に並んで生えているのを見て、大谷渡りと名付けたのかもしれない。
 方言名はヤマガシャの他にヒラムシルともある。ヤマガシャはたぶん山笠で、全体の見た目から。ヒラムシルはたぶん平筵で、葉の見た目からだと思われる。確かでは無い。ヒラムシルはシマオオタニワタリのことも指す。
 根系は塊状で、葉には短い葉柄があり、長さは1m内外になる。胞子嚢は葉裏に線状となってつく。半日陰で湿地を好む着生植物。
 庭の添景として用いられる。特に池の石組に着生させたものをよく見る。樹木の幹に着生させて添景としたものも多い。観葉植物の鉢物にも使われる。
 学名、オオタニワタリはAsplenium antiquum
 シマオタニワタリはAsplenium nidus L.
 
 葉裏
 
 壁に生えるオオタニワタリ

 記:島乃ガジ丸 2007.5.28 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行


イノモトソウ/リュウキュウイノモトソウ

2017年08月13日 | 草木:シダきのこ他

 数年前、今住んでいるアパートに越してから数年後のこと、断水を経験した。想定外の断水だったのでちょっと慌てた。トイレが水洗だ。1回目はタンクに溜まっていた分で済んだが、2回目から雲子が流せなくなった。大変困った。風呂場兼トイレに常備してある40リットル入りバケツにいくらか水は入っている。それが飲み物以外に使える唯一の水なので、3回目が無いことを祈って、それを使う。
 断水が想定外だったのには理由がある。水不足であるという情報がなかったからだ。この時の断水は水不足のせいでは無く、台風のせいであった。台風で浄水場が停電して、送水できなくなってしまったのであった。幸いにも、3回目の前に断水は解消された。
 断水は、私が中学高校生の頃までは毎年のようにあった。それは停電では無く、直接的な水不足のせい。ダム設備が不十分だったためと思われる。子供の頃、我が家には井戸があった。高校生の頃は、学校の近くに井戸があり、そこへ水を汲みに行ったことがある。井戸は、今は懐かしい景色の一つであるが、私にとって身近なものであった。
 今回紹介するイノモトソウは、漢字で井口辺草と書く。ネットのサイトには井の許草と表記しているものもあった。いずれにせよ、井戸の傍にある草という意味だ。井戸にお世話になっている頃の私は、植物に興味が無かったので、その頃の井戸の傍にイノモトソウがあったのかどうかについては、まったく記憶に無い。
 
 イノモトソウ(井口辺草):野草
 ワラビ科の多年生常緑シダ 東北地方南部以南、南西諸島、他に分布 方言名:なし
 イノモトソウという名前は、広辞苑に井口辺草という字があてられていた。井戸口の辺りに生えている草という意味であろう。その通り、そのような辺りでよく見られる。漢字は他に鳳尾草ともあった。鳳は「古来中国で尊ばれた、想像上の瑞鳥」(広辞苑)のことで、イノモトソウの見た目が、鳳の尾のようであるといったことであろう。
 鳳がその一字で「想像上の瑞鳥」を表すということを、私は今回初めて知った。よく見聞きする二文字の鳳凰は「古来中国で、麒麟・亀・竜と共に四瑞として尊ばれた想像上の瑞鳥」(〃)のこと。これについては私も以前から知っていた。が、「雄を鳳、雌を凰という」(〃)ことについては、これもまた、今回初めて知った。
 広辞苑にイノモトソウ科とあったが、宇和島の公園の名札にはワラビ科イノモトソウ属とあり、また、私が参考にしている文献でもワラビ科となっていた。
 半日陰となるやや湿った場所、石垣の間などに多く生息する。葉は、細いのとやや太目の2種があり、一種は胞子葉で、もう一種は栄養葉とのこと。葉軸に翼がある。リュウキュウイノモトソウにはそれが無い。両者の違いはそれで判別できる。

 
 リュウキュウイノモトソウ(琉球井口辺草):野草
 ワラビ科の多年生常緑シダ 方言名:ツルンガニクサ
 イノモトソウという名前は上記の通り、井戸口の辺りに生えている草という意味。本種は琉球列島以南に生息するところからリュウキュウとついている。
 私の住む近辺でイノモトソウは発見できていないが、本種はあちらこちらでよく見かける。琉球という名前がつくだけに、環境により適しているのかもしれない。 
 高さは30センチほど。低地でも山地でも普通に見られる多年生常緑シダ植物。葉はイノモトソウと同じく、細いのとやや太目の2種があり、一種は胞子葉で、もう一種は栄養葉とのこと。イノモトソウの葉軸に翼があり、本種にはそれが無いという他に、モサモサした感じになるイノモトソウに比べ、本種は葉がまばらであるという違いがある。

 記:島乃ガジ丸 2007.6.25 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行