ガジ丸は、大きなガジュマルの老木の傍で生まれた(ということにしている)ので、ガジ丸という名前となっている。というわけで、このHPにとっては、ガジュマルはその名前の由来ともなっている大事な木である。・・・なのであるが、ガジュマルの名前の由来を私は知らない。ガジュマル・・・、なんとも不思議な名前。
広辞苑によると、ガジュマルは漢字で榕樹とあるが、これはおそらく漢名であろう。ガジュマルという音は琉球語としている。ウチナーグチ(沖縄口)でガジュマルはガジマルと発音する。ガジマルがちょっと訛ってガジュマルとなったようだ。しかし、ウチナーグチのガジマルは意味不明。「ガジガジしていて丸い」という印象なのかもしれない。
幹肌が黒いからクロキ、赤いからアカギ、茶色いからチャーギなど、ウチナーンチュの名前の付け方は単純である。それに比べ、倭人の名前の付け方は風情がある。今回紹介するオオタニワタリもそんな風情のある名前の一つ。
樹木の生い茂った山に分け入る。山道をどんどん登っていく。風が吹く、木立がざわめく。幾種もの鳥の声が辺りに響く。深い山の中で突然、視界の開けた場所に出会う。眼下に渓谷があり、その岸壁は茶色い岩肌であるが、その中にポツンポツンと鮮やかな緑色が見える。「ほう」と思わず声が出る。そんな景色が目に浮かぶようである。
オオタニワタリ(大谷渡り):添景・鉢物
チャセンシダ科の多年生シダ植物 西日本以南に分布 方言名:ヤマガシャ
オオタニワタリは広辞苑にあり、大谷渡りという漢字が充てられている。なかなか風情のある名前だ。参考にしている文献に名前の由来は無かったが、その字から推理する。オオタニワタリは岩に着生する。岩壁に生えている。昔の、風情のある人が、谷間の岸壁に並んで生えているのを見て、大谷渡りと名付けたのかもしれない。
方言名はヤマガシャの他にヒラムシルともある。ヤマガシャはたぶん山笠で、全体の見た目から。ヒラムシルはたぶん平筵で、葉の見た目からだと思われる。確かでは無い。ヒラムシルはシマオオタニワタリのことも指す。
根系は塊状で、葉には短い葉柄があり、長さは1m内外になる。胞子嚢は葉裏に線状となってつく。半日陰で湿地を好む着生植物。
庭の添景として用いられる。特に池の石組に着生させたものをよく見る。樹木の幹に着生させて添景としたものも多い。観葉植物の鉢物にも使われる。
学名、オオタニワタリはAsplenium antiquum
シマオタニワタリはAsplenium nidus L.
葉裏
壁に生えるオオタニワタリ
記:島乃ガジ丸 2007.5.28 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行