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ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

リュウキュウカジカガエル

2011年04月28日 | 動物:両性・爬虫類

 夜通しのセレナーデ

  好きな女の部屋の窓辺で、愛を捧げる歌を唄ったことは無い。好きな女を目の前にしてということも無い。高校生の頃からギターが(さほど上手くはないが)弾けて、歌も唄えたのだが、そういった経験は一切無い。好きな女は、もう、両手両足の指の数以上にいたのだが、一人の女に本気で愛の唄を歌うなんて、そんな恥ずかしいこと南の島の純朴な男にはできようはずが無いのだ。能力の範囲外、または感性の範囲外にある。
 でも、まあ、想像上の話としてはあってもいい。というか、そういう想像(妄想といった方がいいか)は何度も頭の中で経験している。というか、じつは、 本音は、ギターを覚えたのも、歌を練習したのも、そういうことがしたかったからに他ならない。南の島の純朴な男は、女の前で愛の唄を歌うなんて自分のような男には似合わないことだと勝手に思い込んでいたのだ。似合う似合わないの問題では無い、情熱の問題なのだ、と今は思うのだが、あいにくオジサンは、その情熱が心の辞書から消えてしまって久しい。

 先日、畑仕事をしていたら、カエルを発見した。調べるとリュウキュウカジカガエルという種類だった。きれいな鳴き声をするとあった。その夜、その 鳴き声が聞えた。聞きなし(どう聞えるか)が文献には書かれていなかったので、正確な記述では無いかもしれないが、私には「キュルキュルキュルキュルルー」という風に聞えた。涼やかな鳴き声である。「ゲロゲロゲロゲロ、グヮッグヮッグヮッ」なんて声とは雲泥の差。うるさいなどとはちっとも感じない。調べていなければ、カエルの声とは思わなかったであろう。
 中年という世代になってから、夜中目が覚めて小便に立つということが増えてしまった私は、その夜も2度ほど夜中に目が覚めた。その時もリュウキュウカジカガエルの涼やかな鳴き声は聞えていた。 朝、目が覚めた時も聞えていた。カエル君はどうやら一晩中鳴いていたようである。その夜通しのセレナーデ、その情熱、その愛情はきっと相手に伝わったことであろう。そして、彼の恋は成就したのであろう。その夜から二日後には、彼の鳴き声は聞えなくなった。もう、セレナーデ、唄う必要は無くなったということだね。

 
 リュウキュウカジカガエル(琉球河鹿蛙)
 アオガエル科。頭胴長25~40mmの小型のカエル。分布はトカラ列島、南西諸島、台湾。方言名:アタビー、アタビチ、アタビチャー。別名ニホンカジカガエル。
 カエルが好き、というわけでは無いので、まじまじとカエルを見たのは、大人になってからはおそらく私はこれが初めて。で、以下は『沖縄大百科事典』から要約して引用。
 「背面の色模様には個体差があるが、左右の目の間のV字型の斑紋はほとんどの固体で明瞭である。海岸近くから山頂まで生息し、夜間に風鈴のようなカワイイ声で鳴く。」
 そうか、セレナーデは風鈴であったのか。確かに良い音色、納得。
 
 人慣れしているのか、近付いてもすぐには逃げようとしない。
 
 職場の庭にいるオタマジャクシ、黒っぽいのでリュウキュウカジカガエルと判断。

 記:ガジ丸 2005.4.14 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


カエル

2011年04月28日 | 動物:両性・爬虫類

 轢き蛙

 ある出来事がいつあったのか、それは何年前の事だったかについて、一年前のことでさえ“何となく”しか覚えていない私は、二年前のことは“おぼろげ”で、三年より前のことになるともう“まるっきり”覚えていない。日記があるので調べれば判ることだが、1999年以降のパソコンに入っている日記は、いちいち中を開いて確認せねばならず、面倒。1998年までの日記は手書きで、開くのは簡単だが、何しろ字が汚いので、書いた本人でさえ判読するのにイライラする。面倒。で、考えた。いつについては“だいたい”ということにして、前後数年は10年前とか20年前とかにひっくるめることにした。

 で、10年前くらいのこと。季節もよく覚えていないが、たぶん、5月の梅雨時ではなかったかと思う。雨がシトシト降っている中、車に乗って宜野湾在の職場へ向かった。首里から西原町の坂田交差点を抜けて、琉球大学付属小学校の少し手前に差し掛かった。
 道路の左手が小学校、右手は原っぱになっている。前方の道路上に何か、夥しい数の小さなものが動いている。動くものは右手の原っぱから左手の小学校の方向に道路を横断している。ぴょんぴょん跳ねている。蛙のようであった。
 車のスピードを緩めたが、急ブレーキは危険なので停めなかった。横断する蛙の行列は後から後からどんどん続いていた。前の車が蛙の行列に突っ込み、ブチブチと蛙を潰していった。向かいの車も同じであった。そして、私の車も行列に突っ込んで行った。
 私は、多くの蛙の命を奪ったことを確信しながら、轢き逃げした。車を降りて確かめることをしなかったので、今となってはその蛙が何という蛙なのか調べようも無いが、とりあえず、ヒキガエルということにしておこう。轢き蛙なので・・・。

 と、オチがついたところで終わるつもりだったが、今日、図書館へ行く日だったので、蛙のことが載っている本を借りてきた。調べた。夥しい数ということと、平地の原っぱに生息しているということから、私が轢き殺した蛙はきっとヌマガエルであろうと推測される。沖縄でもっとも数の多い、普通に見られるのはヌマガエルであると文献にあった。ヒキガエルは、石垣辺りにはいるらしいが沖縄本島には生息していないとのこと。

 今回参考にした本、『沖縄身近な生き物たち』は知性と教養に溢れた本で、蛙のページを読んだだけだが、深く感心した。知性と教養の少ない(ちったぁある)ガジ丸に参考にされては著者の知念盛俊さんも迷惑だろうが、無断借用しました。
 カエルのことをウチナーグチ(沖縄口)ではアタビー、アタビチ、アタビチャーなどと言う。『沖縄身近な生き物たち』には「アタビチ呼ばわりは軽蔑の意」とある。私も子供の頃よく親父にアタビチ呼ばわりされていた。外見が蛙に似ているというわけでは無い。「親んかい反抗どぅすみ!くぬアタビチャーひゃー」(親に反抗するのか!この蛙め)などと怒鳴られた。バカとかアホでは言い足りない時に、どうも使っていたようだ。

 記:2005.1.22 ガジ丸 →沖縄の動物目次

 訂正追記:2005.4.15
 水田の少なくなった現在では、ヌマガエルの数も減少しているとのこと。今、沖縄の市街地で最も多く見られるのはリュウキュウカジカガエルとのこと。で、おそらく、上記の文の中に出てきたカエルたちはリュウキュウカジカガエルであろう。

 訂正追記:2011.3.14
 上記の訂正から6年も過ぎて、さらに訂正。この6年間、近所のカエルたちの様子を見てきた経験から言うと、沖縄の市街地で最も多く見られるのは、確かにリュウキュウカジカガエルもそうなのだが、ヒメアマガエルはそれ以上によく見る。首里近辺でヌマガエルはほとんど見られない。そして、大群になるのはヒメアマガエルの方が多い。

 ヌマガエル →詳細「親の感性子の感性」
 リュウキュウカジカガエル →詳細「夜通しのセレナーデ」
 ヒメアマガエル →詳細「痩せガエル、生き残れ」

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


アカマタ

2011年04月28日 | 動物:両性・爬虫類

 村の掟

  7、8年前のこと、鹿児島在の友人NHと、体験ダイビングをする予定で渡嘉敷島へ行った。あいにく天気が悪く、ダイビングは中止となった。
 中止となって、他にやることと言えば私は決まっている、野山の散歩だ。朝食を取ってから12時の帰りの船便までの間、NHを民宿に残し、私は一人散歩に出た。
 小雨の中、傘をさして山へ向かった。その途中の舗装道路の上に一匹のヘビを発見。まだら模様ではあったが、ハブでは無さそう。座間味島にハブはいないが、渡嘉敷島にはいると聞いている。だが、ハブの頭は三角形だが、路上のヘビはそうで はない。ハブではないし、動かないので死んでいるみたいだし、怖くはない。近づいて写真を撮る。
 帰って、民宿の人にその写真を見せると、「それはアカマタでしょう」と言う。「車に踏まれたのでしょう」と言う。「道路上に長いものがくねくねしていたら、それが何であれ車で踏み潰す」というのが村の掟となっているとのこと。アカマタは無害であるのに、ヘビに生まれたばっかりに何とも災難なこったと私は思った。南無阿弥陀仏。

 
 アカマタ
 ヘビ(ナミヘビ)科の爬虫類 方言名:アカマター
 奄美諸島と沖縄諸島の固有種で、沖縄での呼び名アカマターがそのまま和名になったものと思われる。アカマターの意味は資料が無く不明。全体的に赤っぽく見えるのでアカは赤と思われるが、マターとは何のことか?・・・股か?又か?・・・私には推理不能。奄美諸島での呼び名はマッタブとのこと。これはマッタク解らない。
 全長80~180センチにも達する大型のヘビ。性質は荒く、食性は魚、鼠、鳥、トカゲ、蛇・蛙などと幅広い。赤褐色のまだら模様に黒い斑点があり、見た目はいかにも毒々しいのだが無毒。平地、山地の森林、畑地などいろんな所に生息する。
 那覇のような都市ではもう見られないかもしれないが、古くから身近なヘビだったようで、美男に化けて娘を犯したなんていう「アカマタ伝説」もある。夜間活動性。
 
 アカマタの頭
 ハブはエラが張っていて頭が三角形になるが、アカマタの頭は丸っこい。
 
 アカマタ15_1
 2015年12月に発見。生きているのを見るのは初体験。「性質は荒く」と文献にあった通り、しきりに私を威嚇していた。
 
 アカマタ15_2
 冬眠中を起こして、巣から追い出して長さを見る。体を伸ばすと80センチはあった。

 2010年9月 訂正加筆
 2015年12月 写真追加

 記:ガジ丸 2004.11.12 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


ホオグロヤモリ

2011年04月28日 | 動物:両性・爬虫類

 万に一つの不運

 職業に暴の字が付くその男は、その夜たまたま機嫌が悪かった。すごく悪かった。
 その日の夕方、弟分の一人がシートベルトごときで警官に止められた。その時、たまたまちょっと飲んでいて警官に反抗したものだから、挙動不審と見なされ、「降りなさい」となり、車の中を調べられた。車内から白い粉が見つかって、ひと騒ぎとなった。
 その車は、男がたまたま弟分に貸してあった車だった。で、男も警察に呼ばれた。白い粉は、だいぶ前にダミーとして組に持たされたもので、中身は小麦粉か何かのはず。その一袋だけがたまたまシートの隙間にもぐりこんでいたもののようであった。
 薬では無いことが判り、警察からは開放された。が、長い時間こってり絞られて、疲れた。時間は、夜9時を過ぎていた。家に着いたのは10時前。玄関に子供をおぶって、手に大きな荷物を持った女房が立っていた。女房は静かに言った。「今日が最後のチャンスって言ったでしょ。しばらく、実家に帰っているわ」・・・そして、出て行った。
 その日は4つになる娘の誕生日だった。半年前に浮気がばれて、離婚騒ぎになって、謝り倒して、二度と浮気はしない、娘の誕生日に家族水入らずの時間を過ごし、娘と家族の将来を祝う、などと誓い、何とか許して貰うことになっていたのだった。
 誰もいない部屋で、泡盛を飲む。「ちくしょう、何でこんなことになるんだ!」と口の中で叫ぶ。泡盛をがぶがぶ飲んで、ベッドに入って寝た。寝られなかった。やり場の無い怒りが込み上げてきた。外へ出た。半年前浮気した女のいる飲み屋へ向かった。
 午前2時過ぎ、店に入ると女は奥の部屋にいた。傍に見知らぬオヤジがいて、女の手を握ったり、腰に手を回したり、時々頬擦りしたりしていた。男は頭に血が上った。

 その夜、私は職場の仲間たちとの飲み会があり、二次会まで付き合わされる。その二次会はたまたま入ったスナックバー。そして、たまたま私の傍に19歳のカワイイ子が座った。私好みの女だったので、10分もすると仲良くなり、そういう店に似合う程度にイチャイチャするようになった。久々の柔肌に私は有頂天になっていた。
  午前2時を過ぎた頃だった。ヤクザみたいな顔つきの男がフラフラとやってきて、私の目の前に立った。男は何やら私に向かって怒鳴っていた。何を言っているか判らない。
 たまたまその日、数年ぶりに有頂天になっているオジサンは、たまたまその日、人生でもそう無いくらいに怒りに狂った男に、訳もわからず殴られた。晴天の霹靂だった。
 "たまたま"という偶然が10位も重なって生まれた、万に一つの不運というやつが、どうやら私を襲ったようであった。人生にはこんなこともあるんだなぁと思った。

 玄関のドアを開け、右足を外に一歩出す。玄関の内と外では15cmほどの段差があるので、いつもドカッっといった感じで右足を下ろす。
  そうやって足を下ろすのは1日当たり平均2回、1回当たり約1秒。下ろした足裏の面積は約0.02㎡、ヤモリ1匹の行動面積は約60㎡。ということで、1日に、ヤモリがたまたま私の足の裏にいる確立は、約2億6千万分の1。"万が一"どころでは無い。2億6千万分の1の機会に出会うということは、ほとんど奇跡に近い出来事なのだ。
 ある日、玄関のドアを開け、右足を外に一歩踏み下ろした時に、グチャっという音がした。足をどけて、見ると、子供のヤモリが平たくつぶれていた。何たる不運!!
 私の場合は万に一つの不運だったが、子ヤモリは何と、約2億6千万分の1に遭遇したのだ。しかも、私の不運はちょっと痛かっただけだが、子ヤモリは、その幼い命までも失ってしまった。こんなことが世の中にはあるんだなぁと、私は思った。南無阿弥陀仏。

 
 ホオグロヤモリ(頬黒守宮)
 ヤモリ科 方言名:ヤールー
 沖縄には数種類のヤモリ科の仲間がいるが、ヤマトゥのヤモリに比べると沖縄のヤモリは敏捷に動く。ハエ、カ、ガなどもすばやく捕らえるし、ゴキブリだって捕まえる。
 ホオグロヤモリは家の中でよく見かけるヤモリ。私が奪った幼い命もこのヤモリ。家の中のどこからか聞こえてくるケッ、ケッ、ケッという鳴き声は、このヤモリの声。
 私の家にも家守がいる。時々家出して、声も姿も見せないことがあるが、今は2匹。
 
 外にいたヤモリ。体の模様を背景に合わせて変える。
 
 沖縄ではお馴染みのヤモリの卵。どの種のヤモリかは不明。

 記:ガジ丸 2004,9,27 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行