折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

写真&俳句VOL141 黒目川からの眺め18~慈愛

2013-02-12 | 写真&俳句


寒空に     畝(うね)切る媼(おうな)に     母重ね



先日のように、水温むような暖かい日もあれば、この日のように北風が吹いて寒い日もある。
このところ季節は「三寒四温」で進んでいる。

そして、黒目川の遊歩道を、風に帽子を飛ばされないように注意して歩いていると、一人の年老いた女の人が、道端のすぐ横にある畑で畝(うね)を耕していた。

ちょっと見にも相当ご高齢とわかるのだが、まんのうを上手に使って手際よく耕して行く動きは矍鑠(かくしゃく)としている。

声をかけた。

「90歳」という年齢を聞いて正直驚くと同時に、ふるさとの老母を思い浮かべ、このおばあちゃんに親近感と愛おしさを感じて、その場で長々と立ち話をしてしまった。

お話を聞いた限りでは、「元気のもと」はどうもここの畑仕事にあるようだ。

駅の方から上り下りのある道を手押し車を使って30分も歩いてこの畑にやって来るのだそうだ。

「この歳になると、足が弱ってしまう。ここまで歩いてくるのが、いい運動になるんだよ」

とおばあちゃん。

「生きている以上、自分のことは自分でできないとね。足が丈夫なら、何とかなるからね」

「畑の作業は、もうやめようと思うんだが、止めてしまうと体が弱っちゃうから、身体がいうことを聞くうちは、と思ってやってるんだよ」

等々、色々と小生に話してくれた。

小生も、すっかり気を許して、

「今年97歳になる母がいること」、「その母が昨年11月に転んで骨折し、今は車いすの生活を余儀なくされていること」、「『余り長生きをすると、親しい人が先に逝ってしまって寂しい、長生きするのも善し悪しだ』とぼやいていること」

など老母の話しを、このおばあちゃんに聞いてもらった。

小生が話をしている間、おばあちゃんはじっと小生の目を見て、何度もうなずきながら話を聞いていた。

その慈愛のこもったやさしい眼差しを見て、心が和み、おばあちゃんに話しかけて良かった、と心からそう思った次第である。