折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

『タンノイオートグラフ』グレードアップ~Kさんの究極の『音』・追及レポート②試聴記

2010-12-29 | オーディオ談笑会
早いもので、オーディオ談笑会を始めてからもう6年余になる。

この集まりは、みんなが聴きたい曲を持ち寄って、持ってきた曲について、それぞれが『蘊蓄』を傾ける、と言う自由気儘な雰囲気でタンノイの音を堪能して来たのだが、Kさんの意向で今回に限りプログラムはKさんが全てセレクトすると事前に連絡があり、当日、われわれは長い談笑会の歴史の中で初めて手ぶらで集合した次第。

さて、注目のプログラムだが、三部構成でKさんがこだわるLPレコードの音、宗教音楽、スーザン・ボイルと言ったポピュラーな曲など色々なジャンルの音楽が網羅されている。

グレードアップしたタンノイを色々な角度から聴いてほしいというKさんの強い思いがうかがえる選曲である。
そして、トリはベートーヴェンの第9。

そんな中から、第一部のヴィラディーミル・アシュケナージのピアノ、第二部の天使の歌声~アヴィニョンからの聖歌、そして、第三部のフェレンツ・フリッチャイ指揮ベートーヴェン交響曲第9番『合唱』の3曲について感想を述べて見たい。

  
リスト『超絶技巧練習曲』ヴィラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)

Kさんは、根っからの『クラシック』党であり、アナログの音をこよなく好み、レコードの溝こそ、さまざまな可能性が刻まれている宝庫であり、レコードの音こそベストの音であると確信する『レコード信奉者』である。

そして、楽器の中で最大のピアノこそ音の良し悪しを判定するに打ってつけの楽器であるというのがKさんの持論。

従って、第一部の冒頭にアシュケナージのピアノを持ってきたのは、いかにもKさんらしい選択と納得。

さて、その音だがグレードアップ前のタンノイでこの曲を聴いていないので比較はできないが、以前のタンノイを聴いて、いつも感じていた音のきつさ、うるささがなくなり、聴きやすい音になっていたので、Kさんに『何時も聴いているボリュームより下げているのか』と確認すると、『いや、その逆で、何時もより若干ボリュームは高目』とのこと。そして、『もし、何時もよりボリュームが低いと感じたのなら、今回のグレードアップで全体の音の「澄み方」が変わったためにそのように感じるのだと思うよ』とのコメント。

低音も以前のタンノイよりすっきりし、余裕が感じられる音に変わっているように聴こえた。


天使の歌声~アヴィニョンからの聖歌

次に第二部は人間の声を合唱、独唱等さまざまな形で表現した曲が中心。人間の声をどこまで再現できているかが、第二部の主たるテーマのようだ。

その中で出色だったのが、天使の歌声~アヴィニョンからの聖歌。

まさに、天から声が降って来るような美しい声、清澄な雰囲気をこれ以上にないくらい実に完璧に再現している。何と言う『心地よい』音か!。いつまでも、いつまでも聴いていたい雰囲気が横溢している。(余りの心地よさに寝入ってしまった人もいた!)

タンノイとの相性の良さと言う点では、第一部から第三部を通して聴いた中で、文句なくベスト1である。


ベートーヴェン交響曲第9番『合唱』
指揮:フェレンツ・フリッチャイ、演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、独唱:イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)、モーリン・フォレスター(アルト)、エルンスト・ヘフリガー(テノール)、ディートリヒ・フイッシャー=ディースカウ(バリトン)、合唱:聖ヘドヴィヒ大聖堂聖歌隊、


第三部は、オーケストラという大編成への対応はどうか、ということが最大のテーマ。

曲は、ベートーヴェンの第9。
演奏は、小生が現在最も入れ込んでいる指揮者フェレンツ・フリッチャイの畢生の名演で、タンノイで聴くのは今回が初である。

第1楽章の低弦の分厚い響き、咆哮する金管楽器群、そして、テインパニーの強打、緊張感に満ち溢れた骨太の演奏を豪快に再現したのは、予測の範囲内のことだったが、特筆すべきは第2楽章のテインパニーの質感、滑らかな弦の表現、これには、鳥肌が立つ思いで、タンノイによって、これは聞きしに勝る名演であり、名録音であることを再認識させられた思いであった。

問題は、第4楽章のコーラス。
音の奥行きと音の広がりが、少々物足りない印象で、全体としてコーラスが平板に聴こえたのは録音のせいか?

第1楽章から第3楽章までは完璧だっただけに、第4楽章は、機会があれば録音が良いと定評のある盤でもう一度聴いて見たいと思った次第である。


今回は、グレードアップしたタンノイオートグラフの音を初めて聴いた訳だが、何と言っても聴いた曲も初めて聴く曲であり、また、グレードアップする前のタンノイでその曲を聴いたこともなかったので、正直なところジャッジが難しかったのは否めない。

次回以降、グレードアップ前のタンノイでも聴いたことのある、それぞれが聴きなれた曲を聴けば、その違いがはっきりするのではないだろうか。

その意味では、次回の談笑会が今から楽しみである。


今年もあと数日を残すのみとなった。

今年も談笑会の主宰者であるKさんには、大変お世話になりました。
心から感謝申し上げる次第です。ありがとうございました。