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米国第一主義をかかげ、外交、安保問題で過激な発言を繰り返していたドナルド・トランプ氏が米国の新大統領に当選し、世界中にトランプ・ショックが広がっている。一方、オバマ政権との確執を強めていたロシアでは、トランプ氏当選に安堵する見方が広がっている。
そんな中、プーチン大統領のペスコフ報道官がAP通信とのインタビューで、ロシアの専門家が選挙期間中、米国のトランプ、クリントン両陣営の選対代表、とりわけトランプ陣営と何度か接触していたことを明らかにした。これに対し、トランプ陣営は接触はなかったと否定している。
ロシアのコメルサント紙によると、ペスコフ報道官は選挙期間中に候補者側とコンタクトを取るのは当然だと話している。彼の発言で注目されるのは、プーチン大統領とトランプ氏は外交政策で意見が合っていたと述べていることだ。その根拠としてプスコフ報道官は、最近行われたバルダイ会議でのプーチン大統領の発言の一部がトランプ氏の大統領当選後の発言と似ていることを指摘している。
また、プスコフ報道官は、米露間の対話再開の可能性について楽観的な見方をしている。実際にトランプ氏は選挙期間中、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の一方的な編入を容認する姿勢を示していた。西側諸国はクリミア問題で一致してロシアに経済制裁を科しており、トランプ氏の発言はこうした西側の態度と相反している。それだけに、ロシア側はトランプ氏の大統領就任に大いに期待していることは明らかだ。
だが、プーチン大統領は9日のクレムリンでの演説で「(対米関係の改善は)容易ではない」とも語った。トランプ氏は政治家の経験がなく、どれだけ指導力を発揮できるかどうか不透明だからだろう。
過去の米国大統領の旧ソ連、ロシアとの関係を振り返ると、民主党よりも共和党の大統領との関係の方がうまくいっているのは明白だ。しかも、トランプ氏はプーチン大統領と同様、「強い大統領」になると見られるだけに、両者はウマが合うかもしれないからだ。
ロシアとともに米国との関係が好転するのでは、との見方が出ている中国も、トランプ氏の内向きな政治姿勢に期待感が強まっている。いずれにしろ、トランプ氏の登場で米国の一極支配が緩和され、多極化傾向が強まる可能性が高い。さらに、欧州で強まりつつある既成勢力への反発が今後一層激化することが予想される。世界はますます不安定化することは避けられないだろう。こうした情勢に日本はどう対応すべきなのか。安倍政権の動向を注視する必要がありそうだ。(この項終わり)