飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ウクライナ紛争余話;米国の過剰な関与の背景は?

2014年12月13日 11時47分03秒 | Weblog
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ウクライナ紛争について調べていると、ロシアに対する米国政府の過剰な関与が目立っている。それも的外れな対応が多いように感じる。国務省高官が自らキエフの革命広場(現地ではマイダンと呼ばれている)に出向いて反ロシアのデモ隊を激励したり、すべてをプーチン政権のせいにして批判したりしている。

なぜなのだろうかと考えていたら、パノフ元駐日ロシア大使がある研究会でこんな説明をしていた。ソ連崩壊後、ソ連・ロシアを研究する米国のシンクタンクがぐんと減ってしまった。この20年間、米国の学者はロシアのシンクタンクにも来なくなった。米国は冷戦に勝ったので、もうロシアを研究する必要がなくなったと思っているというのである。

オバマ政権のエリートは、悪いのはプーチン大統領だけで、国民は問題ないと単純に考えている。だから、ロシアの野党と付き合っていればいいと思っている。要するに、ロシアのことを研究していないので、ロシアのことがよくわかっていないとパノフ氏は嘆いていた。

さらにパノフ氏はオバマ大統領の側近によい研究者がいないので、大統領自身が国際情勢をよく知らないのではないかと話していた。あるとき、オバマ大統領が「私の父はポーランドのアウシェビッツ(ユダヤ人強制収容所)を経験した」と述べていて、びっくりしたと語っていた。

その一方で、プーチン大統領と親交のあるロシア通のキッシンジャー元国務長官のような人物もいる。最近、同氏はドイツのシュピーゲル誌のインタビューでウクライナ紛争に関し「クリミア(半島)は特別なケースだ。もし西側が誠実であろうとするのであれば、過ちを犯したことを認めるべきだろう」と語ったことが注目されている。ロシアのクリミア半島編入を暗に容認する発言だからだ。

さらにキッシンジャー氏は「(欧米は)ウクライナとEUの経済関係の交渉に始まり、のちにキエフのデモに発展した出来事の重要性を理解していなかった。これはロシアと対話すべき問題だった」と語り、米欧側の対応のまずさを指摘している。この発言を米欧側はどう受け止めているのだろうか。

ウクライナ紛争は現在、ウクライナ政府と親ロシア派武装勢力の間で停戦の話が進んでいるが、これまでの経緯をみても一時的停戦に終わるのは目に見えている。米国や欧州がもっと真剣にこの紛争に向き合わなければ、根本的な解決は難しいのではないだろうか。(この項おわり)