ロシア軍が昨年2月、ウクライナへ侵攻してから約1年4カ月間、戦闘が続いているが、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」がついにロシア軍に反旗を翻す異例の事態となった。その後、ワグネルはモスクワへの進軍を中止したと伝えられているものの、ロシア国内で内乱に発展する恐れも出ている。
ロシアからの報道によると、ワグネル創設者のプリゴジン氏は6月23日夜、ウクライナ侵攻に加わるワグネル部隊の拠点がロシア軍の攻撃を受けたと批判し、「軍幹部の悪事を止めなければならない。抵抗するものは壊滅する」との声明を発表し、ロシア軍への反乱を宣言した。これに対し、プーチン大統領はテレビで演説し、「我々は裏切りに直面している。内部の混乱は国家にとって致命的な脅威だ」としてワグネル部隊に投降を要求した。
その後、プリゴジン氏はモスクワへ向けて進軍していたワグネル部隊に引き揚げを命じた。この間、同氏は、プーチン大統領の指示でルカシェンコ・ベラルーシ大統領と協議し、事態を沈静化することに同意したとされる。同氏は「流血の事態はなかったが、部隊を野営地に戻す」と述べた。
事態はこれでいったん収まった形だが、ワグネル部隊にはプーチン大統領に対して反感を強めている戦闘員も少なくないとされ、このまま収まるかどうか、予断を許さない。ロシア国内には、プーチン大統領のウクライナへの強硬姿勢を批判する勢力も少なくなく、ロシア政界が今後どう動くか注視する必要がある。
プリコジン氏はロシア人の実業家で、プーチン大統領とも親交がある。同氏は2014年、民間軍事会社を創設し、ウクライナ東部のドンバス地方での紛争に参加したのが最初とされる。ロシアとウクライナとの戦争が始まると、受刑者約5万人を戦闘員として採用し、このうち約半数が戦闘で死亡したという。(この項終わり)