飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ベラルーシの女子陸上選手、本国の弾圧恐れポーランドへ亡命!

2021年08月03日 08時39分49秒 | Weblog
東京五輪のベラルーシ代表で、女子陸上競技の短距離に出場する予定だったクリスチナ・ティマノウスカヤ選手(24)がコーチ陣を批判したとして強制的に帰国を命じられた。これに対し、同選手は「帰国すれば投獄の恐れがある」として亡命を希望。ポーランドが人道目的でビザを発給し、8月4日、亡命先のポーランド入りした。

タス通信などによると、クリスチナ選手は陸上の100、200メートルに出場する予定だったが、1600メートルリレーに出場予定の選手のうち、2人がドーピング検査を十分行わず、出場を認められなかった。このため、コーチ陣は代わりにクリスチナ選手を出場させると決めた。これに対し、クリスチナ選手は「その種目の経験がないのに、一方的に決められた」とコーチ陣を批判した。その後、同選手は「強制的に帰国を命じられた」と訴え、羽田空港で航空機への搭乗を拒否した。

クリスチナ選手が帰国を拒否したのは、本国に帰国すれば投獄されるとの強い危機感を抱いたからだろう。その背景には、昨年8月からルカシェンコ大統領と民主派との間で、大統領選の結果をめぐって激しい対立が続き、3万人以上の人が拘束されていることがあげられる。クリスチナ選手は、大統領による民主派への容赦のない弾圧を恐れており、帰国すると投獄されるだけでなく、さらなる災難が降りかかってくることを危惧しているに違いない。

報道によると、ベラルーシの国内五輪委員会会長はルカシェンコ大統領の長男が務めているという。大統領は事実上、独裁者であり、国家機関は全て抑えていると見られる。それだけに、クリスチナ選手の不安の深刻さがうかがえる。これに対し、EU(欧州連合)は「ベラルーシのアスリートを本国へ送還させる試みは、ベラルーシでのさらなる弾圧の証拠だ」との声明を出し、ベラルーシ政府に警告を発している。

ベラルーシのルカシェンコ政権と民主派の対立は依然として解決のメドがたっていない。欧州で独裁政権が今も続いているのは、欧州のみならず、世界の国々の無関心さが要因とも言える。今回のクリスチナ選手の亡命を契機に、世界各国がこの問題に向き合う必要がある。それこそオリンピックの正しい意義と言えるのではないだろうか。(この項終わり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする