日本とロシアの外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)が7月31日、モスクワで開かれた。日露間の2プラス2は3回目だが、モスクワで開催されたのは初めて。双方とも自国の安全保障上の懸念を表明し、議論は平行線のまま終わったようだ。
31日付けのロシア紙・独立新聞(電子版)によると、2プラス2には日本から河野外相、小野寺防衛相が出席、ロシアからラブロフ外相、ショイグ防衛相が加わった。この会議はこれまで13年と17年に、いずれも東京で開かれており、日本の防衛大臣が訪露するのは12年ぶり。このため、ショイグ防衛相は会談冒頭、「我々は今日の会談に大いに期待している」と述べる一幕もあった。
2プラス2では、両国が関係する地域の安保問題を中心に論議した。日本側からは、極東地域、特に北方領土(ロシアは南クリル諸島と呼ぶ)周辺でのロシア軍の軍事的プレゼンスが活発化していることへの懸念が表明された。
一方、ロシア側からは日本が23年までに陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基を国内に配備する決定をしたことに対し、「ロシアの安全保障上、深刻な不安を呼ぶものだ」と指摘した。特にロシア側は、今回の配備決定は米国のミサイル防衛システムの一環だと強調した。
独立新聞は迎撃ミサイル配備問題について「日露平和条約交渉継続にとって良好な雰囲気を損なうものだ」と指摘する一方、「すでに70年以上決まっていない問題だけに、協議で触れないわけにはいかない」とも述べている。さらに、同紙は河野外相がタス通信との最近のインタビューで「一歩一歩、我々の目標である平和条約締結に近づいていくことが重要だ」と語ったことも付け加えていた。
最後に、同紙は日本側が第二次大戦の結果を受け入れて平和条約を結ぶとみており、「日本の降伏後に旧ソ連に編入された北方領土をロシアに返還すると書き換えることなどできない」とのロシア側の見方を伝えている。
独立新聞はロシアでも民主的とみられており、政府の発表を鵜呑みにする保守系新聞とは違うと私はみている。それでも、これだけ第二次大戦の結果にこだわるのは、日本側がすでにこの問題の解決には妥協が不可欠で、現実的な考えに傾いているとみているからだろう。
この背景には、安倍政権が北方領土の2島返還で解決を急ごうとしているという見方がロシア国内で広がっているからではないか。だが、日本国民は今の段階で2島返還で納得しているとは思えない。そうであるなら、やはり安倍政権がきちっと国民に説明して理解を得るべきだ。この間、安倍政権は常に国民への説明責任を後回しにして、国民をないがしろにしてきた。これは領土問題という国家の大問題だけに、必ずきちんとした手続きを踏んでほしい。(この項終わり)