飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアのメディアは衆院選をどう見ているのか?

2012年12月05日 11時35分20秒 | Weblog

 日本の進路を左右する衆院選が4日始まった。今回の選挙に対する外国の関心はいつになく高い。ロシアも例外でなく、民主党と自民党のトップ争いを注視している。日本通のゴロブニン・タス通信東京支局長が5日付けのコメルサント紙(電子版)に寄稿した記事を紹介したい。

 この記事には「領土問題が選挙の前面に出ている」との見出しがつけられ、「近隣諸国との関係が衆院選の主要なテーマの一つになっている」とコメントしている。リード部分では、野党側がロシアを含む外交について、民主党政権の外交力の無さを非難していると指摘している。

 記事では、まず野田佳彦首相、安倍晋三自民党総裁が、ともに東日本大震災で原発事故が起きた福島県で選挙運動の第一声をあげたことを取り上げている。それに続いて、最新の世論調査結果を紹介し、野田首相に民主党政権を押しつぶしかねない、政治的なツナミが押し寄せていると指摘している。

 ゴロブニン支局長は続けて、安倍総裁率いる自民党が政権を取り返そうとしており、民主党政権が選挙前に約束した公約を果たせなかったことがそれを助けていると書いている。また、民主党政権が外交で多くの衝突を起こし、同盟国の米国とも沖縄の米軍基地問題で何度か問題を起こしていると指摘している。

 さらに、ゴロブニン支局長は、中国と韓国との関係に言及し、「慢性化した領土問題が交戦寸前にまで進み、カタストロフィーと言っていいほどの状況だった」と分析。そして「日本は現在、ほぼ孤立した状態にあり、ロシアとの良好な関係を利用して現状を突破することを決めた」と書いている。

 記事によると、野田首相はロシアとの関係を発展させ、北方領土問題でなんらかの成果を得ようとしており、プーチン大統領との2度の会談を成功させ、12月の訪露で合意した。その後、訪露を実現するため、解散・総選挙をなんとか引き延ばそうと全力をあげたと指摘している。

 ところが、11月初めにロシア側が訪露を来年1月頃に延期できないかと打診。ロシア側はこの理由を「大統領の日程が厳しいため」と公表したが、日本のメディアは非公式に「スポーツによる外傷を治療するため」と伝えた。さらに、メディアは何度となく、ロシア側が野田政権の弱体化と展望のなさを考慮して延期したと報道した。これに対し、野田首相は先週、市長との会談で「12月訪露が実現しなかったのは、大統領の健康問題のせいだ」と語ったと伝えられ、その後官房長官が否定した。

 さらに、自民党が「民主党政権下でロシアとの関係は悪化し、メドベージェフ大統領(当時)の国後島訪問を未然に防げなかった」と批判していると書いている。ゴロブニン支局長は「自民党は政権を取り戻したら、ロシアを含む近隣諸国との関係を調整すると主張しているが、安部総裁自身、ナショナリストで中国との関係では強硬な姿勢を示している。安倍氏も今のところロシアとの関係については何も発言しておらず、はっきりしない」とし、安倍氏の外交力に疑問符を付けている。

 この記事からすると、ロシア側は自民党が政権を奪い返すとの世論調査結果に戸惑っている印象だ。安倍総裁のロシアに対するスタンスがはっきりしないため、自民党政権になったからといって関係がよくなるかどうか、確信が持てないからだろう。すべては選挙結果が出てから、というのがロシア側の本音だろう。(この項おわり)
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