355-291028題名は「昭和解体」だが内容は「国鉄解体」

台風２１号が足早に通り過ぎ、河川は普段の流れとは一変した。

利根川の支流烏川と碓氷川の合流地点の様子。

 

20代後半から40代前半の頃、自分の仕事に時間の大半を取られ

て新聞やテレビ報道でしか接することがなかった国鉄の分割民営

化の内幕を初めて知った。

自分も共に生きてきた時代の底流に触れることは実に楽しみな事

だ。今の境遇だからできる贅沢だと思う。この本はこのことを如

実に示してくれる。旧国鉄や分割民営化された今のJRに関係する

身内はいない。それもあって民営化の果実だけを知っていただけ

だったと痛感した。

三公社五現業、順法闘争、国労、鉄労、動労、総評や同盟、マル

生（生産性向上運動）、高崎線上尾駅騒動、スト権スト、人材活

用センターなどなどの組織や出来事。十河信二、石田礼介、礒崎

叡、藤井松太郎、仁杉巌、杉浦喬也と続いた国鉄総裁。井手正敬、

松田昌士、葛西敬之等改革を進めたと言われる国鉄キャリア組。

鈴木善幸、中曽根康弘、土光敏夫、瀬島龍三、三塚博、加藤六月、

田辺誠、塚本三郎等の政治家や実業家。細井宗一、富塚三夫、太

田薫、岩井章、松崎明などの労働側の諸氏。

何れの出来事も人物もこの本を読んで初めて知ったわけではない。

この歴史の転換点にある組織をどうするかで諸氏は激しい論戦や

策謀をめぐらした。さらにこの大波をもろに食らった名前が公に

されることもない多くの国鉄職員が早期退職を含む選択を迫られ

た。あるものは新生JRで活躍し、あるものは新しい体制に順応で

きず苦衷を味わう。少数ながら現在も闘争は終わっていないとす

るツワモノもいるらしい。こうした側面も記憶しておこう。

国鉄に関する限り民営化は大成功だったと思う。利用者目線では

なによりサービスが格段に向上したなという実感が当時あった。

しかしJR北海道と四国並びに貨物は未だ株式上場ができないまま

だ。特に北海道は当時から懸念されたいたことが現実化してしま

った。赤字垂れ流し放置は民間企業となったJRにとっては致命傷

になる。バス路線にするという選択肢はないのかな？　住んでも

いない本州の人間に意見する資格はないが・・

本書では特には触れていないが、これほどまでに荒廃した国鉄労

使関係の中で、ストライキが収束すれば即刻世界に冠たる定時発

着ダイヤに戻る労使協働が崩れなかったことは特筆すべきことと

思う。国鉄マンとしての誇りは労使の怨念を越えたところでは共

有されていたのだろう。この土台があったからこそ民営化が少な

くとも本州各社は短時間で軌道に乗ったのではないかと思う。

国鉄並びにJR発足時前後に起こった事々は新聞やテレビ報道を通

じて知ってはいた。しかしその中身はほんの表面的なことだけで

あったと知らされた。それだけ自分の仕事に精一杯だった。いま

それをじっくりと知ることができ知識欲は満たされた。

　本書にあった図表、国鉄の労働組合の変遷がよく理解できる。 

民営化されたJR各社の労働組合は鉄労や動労の流れをくむもので

あり、国鉄時代に最大規模の労組だった国労が見る影もなく凋落

し、ほとんど影響力をなくしてしまっていることを初めて知り衝

撃を受けた。

どちらか言うと本書は当局側の目線で書かれている。知人に当時

現職の国鉄職員の方がいるので、現場から見た国鉄民営化前後の

話を聴いてみたい。辛かったことは思い出したくないと言われる

かもしれないが。

そして

投稿日前日に話を聞く機会があった。いくつかの体験を話してい

ただいたが、思い出したくない、話したくないがやはり本音のよ

うだった。「戦争でつらい思いをされた方々がそれを話したくな

い気持ちがよく理解できる。」と話された。

 

長々と駄文を連ねました。も一つお付き合いください。

バタバタした印象の総選挙が終わった。愛読する森生さんのブロ

グで立憲民主党の枝野幸男代表の街頭演説の模様を写したyoutube

があるのを知った。いつも皮肉の効いた痛烈な政治批判をする御

方だが、最大の賛辞をおくっておられたので紹介します。私同様

に枝野演説を聞いたことがない（原発事故当時官房長官談話は何

度も聞いたが）方々に是非聞いていただきたいと思いURLを貼る。

　　　　　　　　　　　　↓ 

http://blog.goo.ne.jp/rinjuki/e/573e1a4454416f81d457634236493444

３０分近くかかるが最後まで見た。これは出色の演説だ。各党首

の演説の中では断トツの一番と思う。聴衆との立ち位置、話の盛

り上げ方、語りかける話術、誠実さそして何よりそれらに裏付け

された熱さを感じる。終わり近くは涙が流れそうになるほどの心

境になった。この党が掲げる政策に必ずしも全部賛同するもので

はないが、こうしたあふれ出る情熱を持って国民に語りかける政

治家がいることには感動した。　　　　　　　29.10.27　記