半年ぶりに映画鑑賞をする。今回は「ラサへの歩き方」と題する
中国映画。シネマテークたかさきで先日公開された。
新聞の解説で知った。その映像に接しこれはすごい映画だと思っ
た。
映画のパンフレットより
五体投地という祈りがチベットにあることは以前から承知していた
が、こんなにすごいものだとは知らなかった。
10歩ほど歩いて、地面に前のめりに倒れこみ額を地につけて祈る。
また立ち上がって10歩。この繰り返しを何万回繰り返しながら目
指すラサへ、そこの建設現場で資金を得てさらに聖なる山カイラス
山を目指す。その距離2400km、知床から佐多岬ほどの距離。
幌馬車の馬を小型のトラクターに変えて生活用具満載で 共に移動す
る。メンバーは11人、その中には小学生の女の子や行進の途中に
生まれた赤ん坊も混じる。チベットの大地は立木はほとんどなく、
草と岩山だけの荒涼とした風景。片側1車線の国道が山を越へ、谷
を渡って延々と伸び、地平線に消えてゆく。一行の脇を大型トラッ
クが怒涛のごとく追い抜いていく。 何が彼らをここまで駆り立て
るのか? その底知れぬエネルギーに圧倒される。
はるか昔からラマ教の修行の一つとして行われてきたらしい。整備
された生活環境にどっぷりと浸かった私にはそのエネルギーの源泉
がわからない。粗末な食事、風呂にも入れない、調子を崩しても近
くに医者もいない、信仰心だけを頼りに無限とも思える同じ祈りを
繰り返して前に進む。聖なる山のふもとに1年かけて到着し祈りの
修行は終わる。しかし一行の精神的支柱だった老人が死ぬ。残され
た者は遺体を鳥葬で弔らう。弔いの場上空には悠然と飛翔する数羽
のワシの影が・・・
ラサに着く直前に女の子がスマートホンを借りて両親に旅の無事を
報告するシーンに救いがあった。ああチベットの奥にもこれがあっ
たのだ。 有線の電話はインフラ整備が大変だ。アフリカのサバン
ナでマサイ族がこれを使っているのをテレビで見たことがある。
ポケモンGOとまではいかないと思うが、彼らの意識を大きく変え
たであろうスマホはインフラ整備が遅れている国でも革新的な道具
として活躍しているなとしみじみ思う。