15年ほど前に利根川の流路の変遷についての図書を見たのをきっ
かけに少し調べたことがある。水上のさらに奥、新潟県境の大水
上山南斜面の夏でも消えない雪渓から滴り落ちた一滴の水から始
まった利根川は前橋付近から関東平野の広大な平地を流れ下る。
昔は洪水のたびに流路が大きく蛇行した。群馬埼玉両県は今の流
れの両岸に互いの県の飛び地が存在している。また取り残された
本流跡が細長い湖となっている個所も現存する。こんな地形が北
海道石狩川や天塩川流域に多数の三日月湖があるのは有名。
カシミールの地図を使用した。
そんな本流から取り残された旧河川の一つに埼玉県幸手市の権現
堂川がある。珍しい名前なのではっきりと記憶していた。新聞で
この川の堤のアジサイが素晴らしいと紹介されていたので見に出
かけた。淡々とした田園が続き家から2時間半ほどかかった。時
間がタップリとあるので寄り道しながらの1日旅になった。
伊勢崎市の島村の渡しで利根川を小舟で渡るのを体験する。対岸
に車をおくわけにいかないので、向こう岸に着いてすぐこちらに
戻る。船頭さんはいやな顔をせずに船を返してくれた。船着場は
洪水の度に流され作り替えるので簡単なもの。10年前は木造船に
船外機だったが今は樹脂製の船体に変わっている。県営なので運
賃は無料。なんだか悪いような気がする。川面目線で見る利根川
は迫力満点。滔々とした流れという表現がピッタリ。
伊勢崎、太田、舘林と通過して渡良瀬遊水地を左に見て埼玉県へ
と利根川を渡る。渡った先は加須市。すぐにあった道の駅にて簡
単に昼食を済ます。その裏の休耕田3枚にホテイ草の花が咲いて
いた。金魚鉢でよく見かけるが花を見るのは初めて。なかなか趣
がある。この辺りの堤防は戦後まもなくのカスリーン台風の豪雨
で決壊した。あふれ出た水は東京都まで押し寄せたという。今は
底辺が100mもあろうかと思われるスーパー堤防が築かれてい
る。
ここから1時間ほどで権現堂川に到着。予想に反して大規模な改
が施されて大きな掘割にように見える。川に沿って南下し、中川
と直角に交わるあたりの公園が権現堂公園。土曜日だったので広
い駐車場はほぼ満車。その先の土手の斜面にアジサイが咲きほこ
っている。
アジサイと梅雨は良く似合う。この日のような晴天の日は趣に欠け
るが、それを規模と多彩な花が補ってくれた。鎌倉の寺のような狭
い場所に密度高く咲くのとはまた違った風景。この堤の桜は豪華で
すよ、と地元の方が説明してくれた。アジサイはその桜樹が作る日
陰に心地よく咲いていた。